197 / 356
王位簒奪編 〜ロイの元カレ〜
192.おっさん、未来の王妃に出会う
しおりを挟む
朝6時過ぎに薄目を開けるが、まだ窓の外は暗い。日は短くなって日の出も6時半くらいだった。
二度寝を決め込もうと思ったが、起きられる自信がなかったのでベッドから降りた。
身支度を済ませて共有リヴィングに出ようとして寝室を出ると、個別リヴィングから明るくなってきた外の景色が目に入った。
慌てて共有リヴィングに続くドアを開けると、キースがいつもの執事服で朝のお茶の用意をしている所だった。
「キース!!外!!」
思わず大声で叫んでしまった。
「はい。初雪ですね」
おはようございます、と挨拶しながら初雪が降った景色に興奮する俺にニコリと微笑んだ。
「うわー、雪だー、真っ白だよー」
リヴィングに面したベランダにもうっすらと雪が積もり、ベランダの向こう側に広がる瑠璃宮前の庭園が銀世界になっていた。
「雪が珍しいですか?」
「俺がいた世界でも降るけどなー。一晩でこの景色は滅多にない」
目をキラキラさせて窓に張り付いている翔平に、子供みたいだ、とクスクス笑う。
「まだ初雪ですから数日で溶けてしまいます。
12月に入れば根雪になりますから、あっという間にうんざりすることになると思いますよ」
以前、一晩で民家のドアが開かなくなるほど積もることもあると聞いていたから、うんざりという言葉も頷けた。
「後で外に出てもいいかな」
「構いませんよ」
雪に触りたい。その冷たさを感じたいと思った。
「雪が触りたいなんて、ショーヘーちゃん子供みたい」
「このくっそ寒いのに外に出たがる気持ちがわからん」
ジャニスがクスクスと笑い、オスカーが自分を抱きしめるように、寒い寒いと両腕を察すって肩をすくめた。
「冷たい!」
地面に積もった雪に触れて声を上げる。
歩く度に鳴るギュッギュッという音、振り返れば真っ白い道に自分の足音だけが残っており、それが何故か嬉しい。
雪を見てこんなに感動するなんて、子供の頃以来だ。
39にもなってこんな童心に帰るなんてと自分でも呆れてしまうが、楽しいものは楽しい。
地面にしゃがむと、真っ白いフワフワの雪を手に取って丸めた。
「おりゃ!」
振り返って、3人に向かって投げる。
キース、ジャニス、オスカーの順で縦1列に並んでいる配置だったので、キースに向かって投げたのだが、ヒョイっとキースがかわし、ジャニスもかわし、ばしっとオスカーの顔面に雪玉が当たった。
「あっはっはっは!!」
力強く握ったわけではなかったので、オスカーの顔面に当たってすぐに砕ける。
「……」
顔面を雪まみれにしたオスカーがスンと真顔になり静かにしゃがむ。それを見て俺もしゃがむと再び雪玉を作った。
「おら!」
「うら!」
2人でせっせと雪玉を作りながら、ぶつけ合う。
ボスッ、バスッと互いに何発かの雪玉をくらいつつ、投げ合った。
「ショーヘイさん、ほどほどに…」
雪まみれの俺にキースが停戦を促したが、そのキースの側頭部にオスカーの投げた雪玉がスパン!と音を立ててあたった。
「あはははは!」
それを見てジャニスが爆笑し、その向こう側でオスカーがニヤニヤしていた。
「…」
キースが素早くしゃがむと同時に雪を掬い取り、次の瞬間オスカーに向かってヒュン!と結構な速度の雪玉が飛ぶ。
だが、オスカーはジャニスを腕を背後から掴むと盾にしてその雪玉から身を守る。
「っぶ!」
もろにジャニスの顔面に雪玉が当たった。
「いった~い!!」
ジャニスが両手で顔面を覆い、雪を払いながら叫んだ。
「当てられるもんなら、当てて…へぶ!!」
ワハハと笑いながらドヤ顔を決めたオスカーにキースからの雪玉がヒットする。
「このやろうw」
「オスカー!」
ジャニスがその場にしゃがむと雪玉を作る。
俺もせっせと雪玉を作ってキースに渡した。
オスカーが3人からの雪玉集中砲火を浴び、半分以上かわされるが、かわすことに精一杯で反撃の猶予を与えない。
「お前ら3対1なんて卑怯だぞ!」
叫ぶオスカーの顔面に雪玉が当たり、ゲラゲラ笑う俺とジャニスの顔にも雪玉が当たった。
「あっはっはっは!!」
笑いながら次なる雪玉を作ろうとしてしゃがむが、あっという間に瑠璃宮前の僅かに積もっていた雪がなくなってしまっていた。
「もう終わりです」
石畳が剥き出しになったことで、キースが終了の言葉を告げる。
「あー面白かった」
顔を赤くして満面の笑顔で満足気な翔平に苦笑する。
「雪投げなんて何年ぶりかしら。
結構楽しいわね」
「いい運動になった」
ジャニスもオスカーも動いて熱くなったと、着ていたコートを脱いだ。
「もっと積もったらまたやろう」
笑いながら宮に戻るために一歩踏み出したが、つるん!と思いっきり足が滑った。まるでコントのようにドシャッと地面に転ぶ。
「っぶ!わはははは!!!」
オスカーに指をさされて笑われ、そばにいたジャニスも笑い、キースも噴き出す。
「いてて…」
「大丈夫ですかw」
キースに手を引かれて助け起こされ立ち上がり、最後の最後でしまらないなぁと苦笑した。
「楽しそう…」
「混ざりたい~」
その雪合戦を物陰からこっそり覗くロイとディーがいた。
くそぉ、と悔しがりながらも、笑顔の翔平をじっと見つめて顔がデレデレと歪む。
「ショ~ヘ~…今日も可愛い~」
そばに行けない悔しさが涙を誘う。
触れたい、抱きしめたい、キスしたい
でも今は我慢だ。
見るだけで我慢せねば。
翔平からの許しが出るまでの我慢。
その姿が見えなくなるまで見つめた後、2人でガックリと肩を落として王宮へと戻って行った。
4人での雪合戦が終わり瑠璃宮に戻る。
いい感じに体を動かして体がホカホカと暖かくなって、それと同様に心も暖かくなった。
「あっちぃ…」
すぐにコートを脱いでしまいに行き、共有リヴィングに戻ると4人でお茶を飲む。
「2人とも戻ったかな」
「あいつらw」
俺たちの雪合戦をこっそり覗いていたロイとディーを笑う。
「ばればれだっつーのw」
2人が覗いていたことは全員が気付いていた。じっとこっちを見て、その魔力が嫉妬のような羨望のようなものを含んでいることにも気付いていた。
少し可哀想だ、と仏心もないわけではないが、グッとその気持ちを押し殺す。
2人の過去はきっとこれからの俺たちの関係に今後も影を落とす。全て払拭することは出来ないだろうが、改めて過去を見つめ直して決別してもらう良い機会だと思った。
本音を言えば今すぐにでも2人に会いたい。そばにいてほしい。抱きしめて2人の体温を感じたい。とろけるまでキスがしたい。
我慢しているのは、2人だけじゃない。俺だって苦しいし、辛い。
あと数日の我慢。
アレックスの件が決着すれば、晴れて解禁だ。
みんながロイ達の関係に愛はなく、今回の見合いは本人ではなくベルナール家の意思によるもの。本来ならディーに求婚したいところだが、本人の素行の悪さからそれは叶わず、階級は平民であるが英雄と呼ばれるロイに白羽の矢が立ったということだろう、と言われた。
99%の確率で間違いないと言われても、100%の確実ではないため、離れた状態のままにした。
ロイが断りを入れ、その事実が決定的になるまで距離を置く。そう決めていた。
それでも、辛い。
ふぅとため息をつき、温かいお茶を口に含んだ。
午後2時過ぎ、聖女へと変身が始まる。
1時から定例議会が開催されており、王城の大会議室には各家当主が揃っていた。
今日は議会開催の挨拶と、今日から1週間続く議会の内容や進行について話し合われるらしい。
話し合いと行っても、単純に流れを説明するだけらしいが、急ぎの案件や領地を管理する貴族からの申告などで、討議する順番を決定すると聞いた。
とはいえ、初日は4時前には終了する。長引いても3時半には終わるだろうと予測されていた。
おそらく、翔平が転移魔法の大広間に向かう頃には会議は終了しており、通路には貴族達が溢れかえる。
さらに、王太子の伴侶であり将来の王妃、現外務局長のダリアが帰国することもすでに周知されているため、出迎えのために大広間前の通路には全貴族当主が勢揃いすることになるらしい。
なので、きっちりと聖女仕様の衣装で、聖女の演技もばっちりこなさなければならなかった。
約2ヶ月半前の謁見式の時のような美麗な衣装に着替え、ヘアメイクを施される。ばっちりしっかりのフルメイクは久しぶりだ。
アイシャドウや紅までひかれ、髪もきっちり結い上げられ飾られる。
約1時間かけて衣装班の3人に変身させられて共有リヴィングに出ると、全員が俺を見てほぅと息を吐いた。
騎士達もキースもビシッと正装の出立ちになっていた。
「似合うわよ」
「綺麗ねぇ」
ジャニスとアビゲイルがいつものように褒めてくれ、ありがとう、とお礼を言うが、心の中で、俺もいつかかっこいい騎士服を着てみせると決意を固めた。
「では、参りましょう」
キースの先導で瑠璃宮を後にする。
ズルズルの引きずりそうな無駄に多い布を手で持ちながら静々と歩いた。
3時半過ぎ、その人の多さと貴族という特権階級にある人達の圧に心臓がバクバクと鳴り響く。その音が周囲に聞こえるんじゃないかと思うほど緊張していた。
記憶にある顔も、まったく覚えていない顔も、ズラッと通路に並ぶ。
転移魔法の大広間に近付くほど高位貴族になる。各家当主、後継である長子、側近の執事たち。100名近い人たちの間をゆっくりと進む。
護衛騎士3人が三角形で俺を取り囲んでいて、誰も近寄って話しかけてくることはないが、ほぼ全員の視線が俺に集中しており、気を抜けば手足が揃って動いてしまい転びそうになるほどガチガチに固まってしまっていた。
時折り、ヒソヒソと俺のことを話す言葉も聞こえてくる。
「なんと美しい」
「相変わらず神秘的だ」
「神々しい」
そんな褒め言葉の中に混ざって、
「色気が増したな」
「シギアーノが襲いたくなるのもわかる」
「マールデンやキドナの王子も虜にしたらしいぞ」
「男好きしそうな体だ」
そんな下卑た言葉も微かに聞こえてきたが全て無視する。
一番後ろを歩いていたキースにも当然聞こえており、俺は前を歩いていたのでわからないが、キースのウサ耳がずっとピクピクとあらゆる方向を向き、無表情のままその言葉を聞いて誰が言っていたのかをしっかりと記憶していた。
そんな貴族達の中でも熱心に俺に視線を送ってくる人がいて、流石に無視することが出来ず、その人を見て薄く微笑みながら会釈した。
ワグナー子爵家のドナルド。
ドルキア男爵家のデニー。
マース侯爵家のデイヴィス。
狩猟祭で俺に求婚してきた12人のうちの3人。皆後継ぎであり、現在は爵位を持っている親の補佐役を務めている。
3人とも俺に魔石を贈り求婚してきたが、ドナルドとデイヴィスは俺が聖女でなくなったらという話をした時に目を逸らしたのを覚えている。要するに俺の立場だけが欲しいのだ。
だがデニーは真剣に正面から俺に求婚してきた。今もうっすらと頬を染めて、その視線はとても熱かった。
そしてもう1人、後継ぎではないが列に加わっているジョンと目が合った。
俺は友人としてジョンに微笑みかけるとジョンもニコリと笑い、小さく手を振ってきた。流石に手を振り返すことはしないが、笑顔のまま会釈した。
ジョンの笑顔の意味がわからない。
正式に結婚を見据えたお付き合いを、と申し込まれて、次の逢瀬の時にははっきりと断りを入れなくては、と考えた。
近衞が大扉を開け中に入る。
まだレイブン達は来ておらず、広間の隅に移動して忙しく転移魔法陣の設定をする魔導士達を眺める。
そのすぐ後にレイブン、サイファー、アラン、ディー、ユリアが入ってきた。
パチッとディーと目が合ったが、キースと話していて笑顔だった顔をスンと真顔に戻してわざと視線を逸らすと、ディーがガーンとショックを受けたような表情になりガックリと項垂れた。それを見た騎士達が肩を震わせて笑いを堪えている。
転移の時間が近付くにつれて緊張が高まる。
もうすぐダリアに会える。
それと同時に俺とロイの見合い相手にも会う。
実際に汗はかいていないが、緊張しすぎて冷や汗が流れるような感覚と、体温が1、2度下がったような悪寒が走り、鳥肌が立った。
午後4時。
魔法陣が起動する。
前回見た時と同様に光の柱が立ち上がり、その中央が揺らめいたと思った後、数度の瞬きをしているうちに7人の姿が現れた。
「はぁ…」
あまりの緊張にため息をつく。
じっと魔法陣の中央を見つめ、現れた人達を大きく目を開いて見つめた。
ダリア、ユージーン、モーリス、執事が2人、白と赤の騎士服の男性が2人。
前列中央に立っているのがダリアなのはすぐにわかった。
わかったが、は?と頭の中でそのダリアの姿に唖然とした。
てっきりドレスに近いものを着ていると思っていた。
だが、ダリアのその姿は。
騎士そのものだった。
真っ白い騎士服に瑠璃色の髪の短髪。
7:3に分けられた、前下がりのヘアースタイル。
キリッとした髪と同じ瑠璃色の細めの眉に切長で涼しげなの目。高い鼻、薄めの唇に紅が引かれている。
ヒールのせいもあるだろうが、背も高く、おそらく伴侶であるサイファーとほぼ並ぶ。
男装の麗人。
まさに某女性だけの歌劇団の男役。
超絶美人でイケメンな女性がそこにいた。
「……」
その姿に口を閉じることを忘れて魅入ってしまった。
美しい、カッコいい、凛々しい。
そんな言葉でもまだ足りないと思った。
ダリアを見て、どんどん頬が紅潮していく。興奮のような感覚が全身を包む。
ポーッとダリアを見つめる俺の横顔をチラリと見たキースがクスッと笑った。
「王、ただいま戻りました」
その声も耳に心地よい。
ダリアがレイブンの前で膝と腰を折って挨拶する。
「大義であった。帰りを待っていたぞ」
レイブンがすぐにダリアを立ち上がらせる。
「ダリア」
サイファーがうっとりした目で伴侶に声をかけた。
「サイファー」
ダリアも嬉しそうにサイファーを見ると、静かにそばに寄って互いに手を取り合う。
「お帰り。会いたかった」
「ただいま。私も会いたかった」
レイブンが気を利かせて一歩下がると、正面で向かい合う2人の視線が合わさり、どちらかともなく挨拶のような口づけをかわす。
それを見て、その2人の愛に満ちた雰囲気に引き込まれ、飲まれそうになる。
手を取り合ったまま、ダリアの頭が動き、アラン、ディー、ユリアを見て破顔した。
「ただいま」
ニコリと微笑むダリアに弟妹が嬉しそうに笑顔を作った。
「モーリス、ユージーン、元気だったか?」
レイブンの声が響く。ダリアの背後にいたバルト家の2人の名前に俺はハッとした。
すっかりダリアばかりに気を取られてその存在は忘れていた。それほどダリアの存在感が強烈で圧倒されてしまっていた。
慌ててバルト家2人、さらに背後にいる騎士2人の姿を確認する。
「レイブン様、ご無沙汰しております。ご息災で何よりでございます」
ユージーンが一歩前に進むと、レイブンに跪き、その手に口付けする。
モーリスも挨拶しニコニコと笑顔を絶やさない。
ユージーン・バルト24歳。
子供っぽいと聞いていたが、立ち上がってニコニコしているその顔は、思っていた以上に青年のキリッとした表情をしていた。
口を開けば子供っぽいのかもしれないが、ぱっと見は社会人1、2年目といった初々しく元気の良い青年という印象だ。
金髪に近い薄茶色の短髪とピシッと伸びた背筋が若々しい。
片やモーリス・バルト55歳。
その姿を見て驚いてしまった。
とても若い。50代(この世界では40代前半)には見えない。俺と同じくらい、いや下手をすれば俺よりも若く見える。
額の中央で分けられた焦茶色の真っ直ぐな長い髪。騎士のように鍛えられた体をしているわけでもないが、その立ち姿はモデルようだった。
背も高く、両手足が長い。
着ているスーツのような服も上品で、首元のスカーフが嫌味もなく似合っている。
そして、2人いる騎士の内の1人。
どちらがアレックスなのかは、一目見てわかってしまった。
聞いていた通りのイケメンだった。
ロイやディーもかなりのイケメンだ。綺麗な顔をしている。それと同じくらいアレックスの顔もかなり整っていた。どちらかというと、レインやメルヒオールといったエルフの美しさに近い。
黙っていれば作り物のような美しさだが、アレックスにはまた別の魅力があると思った。
そう。色気だ。
うっすら微笑んでいる表情が色っぽい。言い換えれば、エロい。
その全身から色気が漂っていた。
これなら男女問わず手を出せるわけだ、と冷静に頭の中で思った。
じっくりと全員の姿を観察し、それぞれの特徴を捉え、頭の中で聞いていた情報と擦り合わせて行く。
先入観に捉われないように、なるべく自分の目で確かめようと、じっと見つめ続けた。
そして、バチッとユージーンと目が合う。
「あの…、レイブン様…」
ユージーンが待ちきれないと言わんばかりにレイブンに話しかけ、チラチラと俺へ視線を送ってくる。
「ああ、そうだな。ショーヘー、こちらへ」
「はい」
壁際で観察していていた俺をレイブンが呼び、すぐにそばへ近づいた。
「聖女のショーヘーだ」
ニコニコしながら、レイブンが俺の背中に手を回して、そっと前に押し出し、俺は全員の前に進み出ると、片足を後ろへ一歩下げて膝を折り頭を下げた。
「初めまして。ショーヘイと申します。聖女と言われてはおりますが、どうかショーヘイとしてお見知りおきくださいませ」
自ら聖女とは名乗らず、一個人として挨拶した。
俺個人ではなく、聖女との見合いを望んでいるユージーンへの牽制の意味を込めているのだが、果たしてそれが伝わるかどうか、と反応を伺いつつ顔を上げた。
「初めまして、ユージーン・バルトです」
すぐにユージーンがニコニコと満面の笑顔で元気良く挨拶してくる。その顔は本当に嬉しそうで子供のようだった。
隣にいるモーリスは目を細めて微笑み、ダリアはニヤリと口元を歪める。
その様子から俺の牽制に気付かなかったのはユージーンだけのようだった。
モーリスが俺の前に跪き俺の手を取り口付けると、ユージーンは、あ、と自分の行動に恥ずかしそうに頬を染めた。
「モーリス・バルトです。ショーヘイ様にお会い出来て誠に光栄に存じます」
モーリスが聖女ではなく、俺の意図を汲みとってあえてショーヘイと呼んでくれた。
「あ、聖女…、ショーヘイ様、どうかよろしくお願いいたします」
慌てたユージーンがモーリスの後に続いて、俺の手に口付けた。
「ユージーン様、モーリス様、こちらこそ、どうぞよろしくお願い申し上げます」
2人にニコリと微笑むと、モーリスは優しく微笑み、ユージーンは俺の笑顔に照れた笑顔を浮かべた。
「叔父上、ユージーン、長旅で疲れたでしょう。まずはゆっくりなさってください」
ディーが進み出て俺たちの間に割って入った。
「やぁ、ディーゼル。いつ見ても綺麗だね。姉上を思い出すよ。
アランも元気そうだ。キースとの婚約おめでとう」
モーリスがそれぞれに一言づつ挨拶するが、ユージーンはそれどころではなく、俺をじっと見てニコニコしていた。
「今日のところは離宮で疲れを癒し、明日また話をしよう」
レイブンが区切りをつけ、それぞれを促すような仕草をした。
「義兄上、お気遣い感謝致します」
それにモーリスが謝辞を述べて、促されるままに歩き出すと、ユージーンが俺から視線を外さずに後に続いていく。
王家、バルト家、執事と騎士の後に俺が最後に連なって大広間を出る。
通路に出ると、待ち構えていた貴族たちが、ダリアとバルト家に口々に挨拶を始めた。
王城から王宮に続く廊下の手前でバルト家一行と別れる。
これから彼らは瑠璃宮とは反対側にある来客用の離宮へ向かい、次に会うのは明日となる。
「ショーヘイ様、また明日」
ユージーンが俺に近寄ると手を握ってきた。
「はい。また明日」
それにニコリと答えると、嬉しそうに笑ったユージーンが立ち去って行く。
その背中を見送りつつ、彼が俺に向ける視線は恋愛感情のそれではなく、本当にヒーロー・ヒロインに向ける憧れそのものだな、と考えていた。
「ショーヘイさん、行きましょう」
キースに促されて王宮に進む。
この先は王家とそれを守る近衞など、認められた者しか入れない。
俺たちの後ろにいた貴族達が、レイブンに向かって挨拶しながら立ち去って行く。今日の会議は終わりで、一度王都邸にそれぞれが帰宅し、明日の会議に合わせて登城してくる。
そんな大勢の貴族たちに見送られながら王宮へと進むが、いくら聖女とはいえ、一緒に王宮へ入っていく俺をおかしいと思っている者もいるだろう。実際に訝しんでいる視線も感じた。
建前上は初めて会うダリアと聖女の交流ということになっているので問題はないのだが、巷に流れる出所不明の様々な噂がそんな訝しむ目線を産んでいた。
これも黒幕の流した噂という情報のせいかも、と一瞬考えるが深く考えることは止めた。
王宮の奥、全員が入れる広間に入る。
談話室や娯楽室のような作りになっているが、隣にある王族専用の食堂と直結した休憩室のような広間だった。
サンドラーク王家がここに全員揃った。それに加えてキースと俺。
オスカー達護衛は外で近衞と共に待機する。
部屋に入る時に、ダリアとオスカーが互いの拳を突き合わせて、挨拶をしていたのを見て、元帝国騎士仲間の2人の仲の良さを垣間見た。
「ダリア」
サイファーが静かにダリアに近付き、優しく抱きしめた。
「長かった…」
「たった3ヶ月だろう?大袈裟だな」
ダリアがクスクスと笑いながらよしよしとサイファーの頭を撫でた。
「3ヶ月もだ」
言いながら、ダリアの頬に手を添えると優しく口付ける。
目の前でイチャイチャする2人に誰もが微笑んだ。
「それより…」
ダリアがそっとサイファーの手を離すと、俺を見た。
「ダリア様、初めまして」
お互いに歩みよると、正面からダリアを見て頭を下げる。
「うん。いいね。想像通りだ」
ダリアがじっと俺を上から下までじっと眺めニコッと微笑む。
「こちらこそ初めまして。
と言いたいが、色々話は聞いていたから初めてという気がしないね」
微笑みながら言うと、握手を交わす。
本当にかっこいい女性だと思った。
アビゲイルも綺麗でかっこいいし、オリヴィエやエミリアも同様だ。
だが、ダリアはその見た目もそうだが、雰囲気が王族の伴侶という立場のせいなのか、気品や威厳といったものも感じる。
持っている雰囲気がレイブンに近い。
そう思った。
そんなダリアに突然正面から抱きしめられた。
え!?と驚くが、女性らしい柔らかくしなやかな腕に包まれて一気に赤面する。
「あ!あの!」
流石にサイファーのいる前でこれは、と思って離れようとするが全くその腕から逃れることが出来ない。
こんなに細い腕なのに、やはり騎士なのか、全く歯が立たなかった。
「ショーヘー。色々と大変だったね。聞いているよ」
ギュウッと抱きしめられて、頭を撫でられる。
女性に抱きしめられ体を密着されて、ますます顔を赤くした。
「う~ん、可愛い!思った通りだ!本当に可愛い!」
グリグリと顔を押し付けられ、頬を両手ではさまれて、その深い青い瞳で顔を見つめられる。
「ディーゼル!でかしたな!」
パッと俺を離すとディーに向き直る。
ようやっと解放されたが、ドキドキと心臓が早鐘を打っていた。
「お姉様、私には?」
ユリアが撫でられた俺を羨ましそうに見る。
「もちろんユリアも可愛いぞ!
私の大切な可愛い妹だ!」
ダリアがユリアに近づくとその小さな体をギュッと抱きしめる。
「寂しかったですわ」
「私もだよ。色々と情報を飛ばしてくれてありがとう。流石だね」
ダリアがチュッとユリアの頬にキスを落とすと、ユリアが嬉しそうに頬を染める。
その光景に頬が緩む。
その時ドアのノックとともに、ロイが部屋に入ってくる。
一瞬目が合ったが、スッと俺から視線を逸らすと、ロイの表情が一瞬だけ曇らせる。
「ダリア。お帰り」
気を取り直したロイがニカッとダリアに笑顔を向ける。
「ロイ、ディーゼル。そこに並べ」
ダリアがロイを手招きし、素直にロイがディーゼルの隣に立つ。
「サイファー、アランも並べ」
さらに2人にも指示した。
それを見てレイブン、ユリア、キースが静かに並んだ4人から離れて行く。
「?」
なんだろうと、その行動が不思議に思ったが、キースに腕を引かれて4人から距離を取らされる。
「色々ユリアから聞いているよ」
並んで立った兄弟の前にダリアがニコニコしながら立つ。
だが、その言葉を聞いた4人の表情が引き攣った。
「ほんと色々ね」
ダリアが笑顔のまま威圧の魔力を一気に放った。
「う…」
「ひっ」
「うぅ…」
「ひぇ」
4人がその威圧に小さく呻いた。
「ショーヘーに酷いことをしたそうだね」
ダリアが威圧しながら笑顔で言い放つ。
その言葉と並べられた4人から、数ヶ月前の猥談話の件だとすぐに気付く。
ユリアがしっかりとダリアに報告し、ダリアはその内容に激怒したようだ。
「覚悟はいいかい?」
ズモモモモ…という威圧の魔力が4人を包み、4人は歯を食いしばった。
「天誅!」
ゴン!パン!と拳骨と平手打ちの音が部屋に鳴り響いた。
4人がその場に蹲り痛みに耐えるのを無視して、ダリアが俺に近付くと、優しく抱きしめてくれる。
「辛かったね、ショーヘー。
私が戻ったからもう大丈夫だよ」
抱きしめた体を離すとそっと頬を撫でてくれた。
「キース、ショーヘーを守ってくれてありがとう」
「いいえ。私の方こそ、ショーヘイさんの専属になるよう後押ししてくれてありがとうございます」
キースが微笑みダリアに頭を下げた。
「それと、キース、おめでとう。
そして、ありがとう。アランを受け入れてくれて」
ダリアが今度はキースを抱きしめた。
「ショーヘイさんのおかげです。
私はショーヘイさんに救われました」
それを聞いてダリアが微笑む。
「ショーヘー。君は本当に素晴らしい。君と家族になれることを誇りに思うよ」
再び俺見て微笑む。
「ディーゼルとロイ。こんな奴らだが、可愛い弟達をよろしく頼むよ」
チラッと制裁を受けて蹲る弟達を見て、聞こえないように小さい声で耳打ちしてきた。
「はい」
それにクスクスと笑いながら返事をする。
「今もアレックスのことで冷戦中なんだろう?
わからせるためにも、徹底的にやりなさい」
さらに小声で言われ、今度は声に出して笑ってしまった。
「ううぅ…ダリアァ」
サイファーが情けない声を出し、流石にダリアも苦笑すると、夫の手を取った。
「さぁさぁ、挨拶はこのくらいにして、久方ぶりに家族水入らずで食事にしよう」
レイブンが楽しそうに笑った。
二度寝を決め込もうと思ったが、起きられる自信がなかったのでベッドから降りた。
身支度を済ませて共有リヴィングに出ようとして寝室を出ると、個別リヴィングから明るくなってきた外の景色が目に入った。
慌てて共有リヴィングに続くドアを開けると、キースがいつもの執事服で朝のお茶の用意をしている所だった。
「キース!!外!!」
思わず大声で叫んでしまった。
「はい。初雪ですね」
おはようございます、と挨拶しながら初雪が降った景色に興奮する俺にニコリと微笑んだ。
「うわー、雪だー、真っ白だよー」
リヴィングに面したベランダにもうっすらと雪が積もり、ベランダの向こう側に広がる瑠璃宮前の庭園が銀世界になっていた。
「雪が珍しいですか?」
「俺がいた世界でも降るけどなー。一晩でこの景色は滅多にない」
目をキラキラさせて窓に張り付いている翔平に、子供みたいだ、とクスクス笑う。
「まだ初雪ですから数日で溶けてしまいます。
12月に入れば根雪になりますから、あっという間にうんざりすることになると思いますよ」
以前、一晩で民家のドアが開かなくなるほど積もることもあると聞いていたから、うんざりという言葉も頷けた。
「後で外に出てもいいかな」
「構いませんよ」
雪に触りたい。その冷たさを感じたいと思った。
「雪が触りたいなんて、ショーヘーちゃん子供みたい」
「このくっそ寒いのに外に出たがる気持ちがわからん」
ジャニスがクスクスと笑い、オスカーが自分を抱きしめるように、寒い寒いと両腕を察すって肩をすくめた。
「冷たい!」
地面に積もった雪に触れて声を上げる。
歩く度に鳴るギュッギュッという音、振り返れば真っ白い道に自分の足音だけが残っており、それが何故か嬉しい。
雪を見てこんなに感動するなんて、子供の頃以来だ。
39にもなってこんな童心に帰るなんてと自分でも呆れてしまうが、楽しいものは楽しい。
地面にしゃがむと、真っ白いフワフワの雪を手に取って丸めた。
「おりゃ!」
振り返って、3人に向かって投げる。
キース、ジャニス、オスカーの順で縦1列に並んでいる配置だったので、キースに向かって投げたのだが、ヒョイっとキースがかわし、ジャニスもかわし、ばしっとオスカーの顔面に雪玉が当たった。
「あっはっはっは!!」
力強く握ったわけではなかったので、オスカーの顔面に当たってすぐに砕ける。
「……」
顔面を雪まみれにしたオスカーがスンと真顔になり静かにしゃがむ。それを見て俺もしゃがむと再び雪玉を作った。
「おら!」
「うら!」
2人でせっせと雪玉を作りながら、ぶつけ合う。
ボスッ、バスッと互いに何発かの雪玉をくらいつつ、投げ合った。
「ショーヘイさん、ほどほどに…」
雪まみれの俺にキースが停戦を促したが、そのキースの側頭部にオスカーの投げた雪玉がスパン!と音を立ててあたった。
「あはははは!」
それを見てジャニスが爆笑し、その向こう側でオスカーがニヤニヤしていた。
「…」
キースが素早くしゃがむと同時に雪を掬い取り、次の瞬間オスカーに向かってヒュン!と結構な速度の雪玉が飛ぶ。
だが、オスカーはジャニスを腕を背後から掴むと盾にしてその雪玉から身を守る。
「っぶ!」
もろにジャニスの顔面に雪玉が当たった。
「いった~い!!」
ジャニスが両手で顔面を覆い、雪を払いながら叫んだ。
「当てられるもんなら、当てて…へぶ!!」
ワハハと笑いながらドヤ顔を決めたオスカーにキースからの雪玉がヒットする。
「このやろうw」
「オスカー!」
ジャニスがその場にしゃがむと雪玉を作る。
俺もせっせと雪玉を作ってキースに渡した。
オスカーが3人からの雪玉集中砲火を浴び、半分以上かわされるが、かわすことに精一杯で反撃の猶予を与えない。
「お前ら3対1なんて卑怯だぞ!」
叫ぶオスカーの顔面に雪玉が当たり、ゲラゲラ笑う俺とジャニスの顔にも雪玉が当たった。
「あっはっはっは!!」
笑いながら次なる雪玉を作ろうとしてしゃがむが、あっという間に瑠璃宮前の僅かに積もっていた雪がなくなってしまっていた。
「もう終わりです」
石畳が剥き出しになったことで、キースが終了の言葉を告げる。
「あー面白かった」
顔を赤くして満面の笑顔で満足気な翔平に苦笑する。
「雪投げなんて何年ぶりかしら。
結構楽しいわね」
「いい運動になった」
ジャニスもオスカーも動いて熱くなったと、着ていたコートを脱いだ。
「もっと積もったらまたやろう」
笑いながら宮に戻るために一歩踏み出したが、つるん!と思いっきり足が滑った。まるでコントのようにドシャッと地面に転ぶ。
「っぶ!わはははは!!!」
オスカーに指をさされて笑われ、そばにいたジャニスも笑い、キースも噴き出す。
「いてて…」
「大丈夫ですかw」
キースに手を引かれて助け起こされ立ち上がり、最後の最後でしまらないなぁと苦笑した。
「楽しそう…」
「混ざりたい~」
その雪合戦を物陰からこっそり覗くロイとディーがいた。
くそぉ、と悔しがりながらも、笑顔の翔平をじっと見つめて顔がデレデレと歪む。
「ショ~ヘ~…今日も可愛い~」
そばに行けない悔しさが涙を誘う。
触れたい、抱きしめたい、キスしたい
でも今は我慢だ。
見るだけで我慢せねば。
翔平からの許しが出るまでの我慢。
その姿が見えなくなるまで見つめた後、2人でガックリと肩を落として王宮へと戻って行った。
4人での雪合戦が終わり瑠璃宮に戻る。
いい感じに体を動かして体がホカホカと暖かくなって、それと同様に心も暖かくなった。
「あっちぃ…」
すぐにコートを脱いでしまいに行き、共有リヴィングに戻ると4人でお茶を飲む。
「2人とも戻ったかな」
「あいつらw」
俺たちの雪合戦をこっそり覗いていたロイとディーを笑う。
「ばればれだっつーのw」
2人が覗いていたことは全員が気付いていた。じっとこっちを見て、その魔力が嫉妬のような羨望のようなものを含んでいることにも気付いていた。
少し可哀想だ、と仏心もないわけではないが、グッとその気持ちを押し殺す。
2人の過去はきっとこれからの俺たちの関係に今後も影を落とす。全て払拭することは出来ないだろうが、改めて過去を見つめ直して決別してもらう良い機会だと思った。
本音を言えば今すぐにでも2人に会いたい。そばにいてほしい。抱きしめて2人の体温を感じたい。とろけるまでキスがしたい。
我慢しているのは、2人だけじゃない。俺だって苦しいし、辛い。
あと数日の我慢。
アレックスの件が決着すれば、晴れて解禁だ。
みんながロイ達の関係に愛はなく、今回の見合いは本人ではなくベルナール家の意思によるもの。本来ならディーに求婚したいところだが、本人の素行の悪さからそれは叶わず、階級は平民であるが英雄と呼ばれるロイに白羽の矢が立ったということだろう、と言われた。
99%の確率で間違いないと言われても、100%の確実ではないため、離れた状態のままにした。
ロイが断りを入れ、その事実が決定的になるまで距離を置く。そう決めていた。
それでも、辛い。
ふぅとため息をつき、温かいお茶を口に含んだ。
午後2時過ぎ、聖女へと変身が始まる。
1時から定例議会が開催されており、王城の大会議室には各家当主が揃っていた。
今日は議会開催の挨拶と、今日から1週間続く議会の内容や進行について話し合われるらしい。
話し合いと行っても、単純に流れを説明するだけらしいが、急ぎの案件や領地を管理する貴族からの申告などで、討議する順番を決定すると聞いた。
とはいえ、初日は4時前には終了する。長引いても3時半には終わるだろうと予測されていた。
おそらく、翔平が転移魔法の大広間に向かう頃には会議は終了しており、通路には貴族達が溢れかえる。
さらに、王太子の伴侶であり将来の王妃、現外務局長のダリアが帰国することもすでに周知されているため、出迎えのために大広間前の通路には全貴族当主が勢揃いすることになるらしい。
なので、きっちりと聖女仕様の衣装で、聖女の演技もばっちりこなさなければならなかった。
約2ヶ月半前の謁見式の時のような美麗な衣装に着替え、ヘアメイクを施される。ばっちりしっかりのフルメイクは久しぶりだ。
アイシャドウや紅までひかれ、髪もきっちり結い上げられ飾られる。
約1時間かけて衣装班の3人に変身させられて共有リヴィングに出ると、全員が俺を見てほぅと息を吐いた。
騎士達もキースもビシッと正装の出立ちになっていた。
「似合うわよ」
「綺麗ねぇ」
ジャニスとアビゲイルがいつものように褒めてくれ、ありがとう、とお礼を言うが、心の中で、俺もいつかかっこいい騎士服を着てみせると決意を固めた。
「では、参りましょう」
キースの先導で瑠璃宮を後にする。
ズルズルの引きずりそうな無駄に多い布を手で持ちながら静々と歩いた。
3時半過ぎ、その人の多さと貴族という特権階級にある人達の圧に心臓がバクバクと鳴り響く。その音が周囲に聞こえるんじゃないかと思うほど緊張していた。
記憶にある顔も、まったく覚えていない顔も、ズラッと通路に並ぶ。
転移魔法の大広間に近付くほど高位貴族になる。各家当主、後継である長子、側近の執事たち。100名近い人たちの間をゆっくりと進む。
護衛騎士3人が三角形で俺を取り囲んでいて、誰も近寄って話しかけてくることはないが、ほぼ全員の視線が俺に集中しており、気を抜けば手足が揃って動いてしまい転びそうになるほどガチガチに固まってしまっていた。
時折り、ヒソヒソと俺のことを話す言葉も聞こえてくる。
「なんと美しい」
「相変わらず神秘的だ」
「神々しい」
そんな褒め言葉の中に混ざって、
「色気が増したな」
「シギアーノが襲いたくなるのもわかる」
「マールデンやキドナの王子も虜にしたらしいぞ」
「男好きしそうな体だ」
そんな下卑た言葉も微かに聞こえてきたが全て無視する。
一番後ろを歩いていたキースにも当然聞こえており、俺は前を歩いていたのでわからないが、キースのウサ耳がずっとピクピクとあらゆる方向を向き、無表情のままその言葉を聞いて誰が言っていたのかをしっかりと記憶していた。
そんな貴族達の中でも熱心に俺に視線を送ってくる人がいて、流石に無視することが出来ず、その人を見て薄く微笑みながら会釈した。
ワグナー子爵家のドナルド。
ドルキア男爵家のデニー。
マース侯爵家のデイヴィス。
狩猟祭で俺に求婚してきた12人のうちの3人。皆後継ぎであり、現在は爵位を持っている親の補佐役を務めている。
3人とも俺に魔石を贈り求婚してきたが、ドナルドとデイヴィスは俺が聖女でなくなったらという話をした時に目を逸らしたのを覚えている。要するに俺の立場だけが欲しいのだ。
だがデニーは真剣に正面から俺に求婚してきた。今もうっすらと頬を染めて、その視線はとても熱かった。
そしてもう1人、後継ぎではないが列に加わっているジョンと目が合った。
俺は友人としてジョンに微笑みかけるとジョンもニコリと笑い、小さく手を振ってきた。流石に手を振り返すことはしないが、笑顔のまま会釈した。
ジョンの笑顔の意味がわからない。
正式に結婚を見据えたお付き合いを、と申し込まれて、次の逢瀬の時にははっきりと断りを入れなくては、と考えた。
近衞が大扉を開け中に入る。
まだレイブン達は来ておらず、広間の隅に移動して忙しく転移魔法陣の設定をする魔導士達を眺める。
そのすぐ後にレイブン、サイファー、アラン、ディー、ユリアが入ってきた。
パチッとディーと目が合ったが、キースと話していて笑顔だった顔をスンと真顔に戻してわざと視線を逸らすと、ディーがガーンとショックを受けたような表情になりガックリと項垂れた。それを見た騎士達が肩を震わせて笑いを堪えている。
転移の時間が近付くにつれて緊張が高まる。
もうすぐダリアに会える。
それと同時に俺とロイの見合い相手にも会う。
実際に汗はかいていないが、緊張しすぎて冷や汗が流れるような感覚と、体温が1、2度下がったような悪寒が走り、鳥肌が立った。
午後4時。
魔法陣が起動する。
前回見た時と同様に光の柱が立ち上がり、その中央が揺らめいたと思った後、数度の瞬きをしているうちに7人の姿が現れた。
「はぁ…」
あまりの緊張にため息をつく。
じっと魔法陣の中央を見つめ、現れた人達を大きく目を開いて見つめた。
ダリア、ユージーン、モーリス、執事が2人、白と赤の騎士服の男性が2人。
前列中央に立っているのがダリアなのはすぐにわかった。
わかったが、は?と頭の中でそのダリアの姿に唖然とした。
てっきりドレスに近いものを着ていると思っていた。
だが、ダリアのその姿は。
騎士そのものだった。
真っ白い騎士服に瑠璃色の髪の短髪。
7:3に分けられた、前下がりのヘアースタイル。
キリッとした髪と同じ瑠璃色の細めの眉に切長で涼しげなの目。高い鼻、薄めの唇に紅が引かれている。
ヒールのせいもあるだろうが、背も高く、おそらく伴侶であるサイファーとほぼ並ぶ。
男装の麗人。
まさに某女性だけの歌劇団の男役。
超絶美人でイケメンな女性がそこにいた。
「……」
その姿に口を閉じることを忘れて魅入ってしまった。
美しい、カッコいい、凛々しい。
そんな言葉でもまだ足りないと思った。
ダリアを見て、どんどん頬が紅潮していく。興奮のような感覚が全身を包む。
ポーッとダリアを見つめる俺の横顔をチラリと見たキースがクスッと笑った。
「王、ただいま戻りました」
その声も耳に心地よい。
ダリアがレイブンの前で膝と腰を折って挨拶する。
「大義であった。帰りを待っていたぞ」
レイブンがすぐにダリアを立ち上がらせる。
「ダリア」
サイファーがうっとりした目で伴侶に声をかけた。
「サイファー」
ダリアも嬉しそうにサイファーを見ると、静かにそばに寄って互いに手を取り合う。
「お帰り。会いたかった」
「ただいま。私も会いたかった」
レイブンが気を利かせて一歩下がると、正面で向かい合う2人の視線が合わさり、どちらかともなく挨拶のような口づけをかわす。
それを見て、その2人の愛に満ちた雰囲気に引き込まれ、飲まれそうになる。
手を取り合ったまま、ダリアの頭が動き、アラン、ディー、ユリアを見て破顔した。
「ただいま」
ニコリと微笑むダリアに弟妹が嬉しそうに笑顔を作った。
「モーリス、ユージーン、元気だったか?」
レイブンの声が響く。ダリアの背後にいたバルト家の2人の名前に俺はハッとした。
すっかりダリアばかりに気を取られてその存在は忘れていた。それほどダリアの存在感が強烈で圧倒されてしまっていた。
慌ててバルト家2人、さらに背後にいる騎士2人の姿を確認する。
「レイブン様、ご無沙汰しております。ご息災で何よりでございます」
ユージーンが一歩前に進むと、レイブンに跪き、その手に口付けする。
モーリスも挨拶しニコニコと笑顔を絶やさない。
ユージーン・バルト24歳。
子供っぽいと聞いていたが、立ち上がってニコニコしているその顔は、思っていた以上に青年のキリッとした表情をしていた。
口を開けば子供っぽいのかもしれないが、ぱっと見は社会人1、2年目といった初々しく元気の良い青年という印象だ。
金髪に近い薄茶色の短髪とピシッと伸びた背筋が若々しい。
片やモーリス・バルト55歳。
その姿を見て驚いてしまった。
とても若い。50代(この世界では40代前半)には見えない。俺と同じくらい、いや下手をすれば俺よりも若く見える。
額の中央で分けられた焦茶色の真っ直ぐな長い髪。騎士のように鍛えられた体をしているわけでもないが、その立ち姿はモデルようだった。
背も高く、両手足が長い。
着ているスーツのような服も上品で、首元のスカーフが嫌味もなく似合っている。
そして、2人いる騎士の内の1人。
どちらがアレックスなのかは、一目見てわかってしまった。
聞いていた通りのイケメンだった。
ロイやディーもかなりのイケメンだ。綺麗な顔をしている。それと同じくらいアレックスの顔もかなり整っていた。どちらかというと、レインやメルヒオールといったエルフの美しさに近い。
黙っていれば作り物のような美しさだが、アレックスにはまた別の魅力があると思った。
そう。色気だ。
うっすら微笑んでいる表情が色っぽい。言い換えれば、エロい。
その全身から色気が漂っていた。
これなら男女問わず手を出せるわけだ、と冷静に頭の中で思った。
じっくりと全員の姿を観察し、それぞれの特徴を捉え、頭の中で聞いていた情報と擦り合わせて行く。
先入観に捉われないように、なるべく自分の目で確かめようと、じっと見つめ続けた。
そして、バチッとユージーンと目が合う。
「あの…、レイブン様…」
ユージーンが待ちきれないと言わんばかりにレイブンに話しかけ、チラチラと俺へ視線を送ってくる。
「ああ、そうだな。ショーヘー、こちらへ」
「はい」
壁際で観察していていた俺をレイブンが呼び、すぐにそばへ近づいた。
「聖女のショーヘーだ」
ニコニコしながら、レイブンが俺の背中に手を回して、そっと前に押し出し、俺は全員の前に進み出ると、片足を後ろへ一歩下げて膝を折り頭を下げた。
「初めまして。ショーヘイと申します。聖女と言われてはおりますが、どうかショーヘイとしてお見知りおきくださいませ」
自ら聖女とは名乗らず、一個人として挨拶した。
俺個人ではなく、聖女との見合いを望んでいるユージーンへの牽制の意味を込めているのだが、果たしてそれが伝わるかどうか、と反応を伺いつつ顔を上げた。
「初めまして、ユージーン・バルトです」
すぐにユージーンがニコニコと満面の笑顔で元気良く挨拶してくる。その顔は本当に嬉しそうで子供のようだった。
隣にいるモーリスは目を細めて微笑み、ダリアはニヤリと口元を歪める。
その様子から俺の牽制に気付かなかったのはユージーンだけのようだった。
モーリスが俺の前に跪き俺の手を取り口付けると、ユージーンは、あ、と自分の行動に恥ずかしそうに頬を染めた。
「モーリス・バルトです。ショーヘイ様にお会い出来て誠に光栄に存じます」
モーリスが聖女ではなく、俺の意図を汲みとってあえてショーヘイと呼んでくれた。
「あ、聖女…、ショーヘイ様、どうかよろしくお願いいたします」
慌てたユージーンがモーリスの後に続いて、俺の手に口付けた。
「ユージーン様、モーリス様、こちらこそ、どうぞよろしくお願い申し上げます」
2人にニコリと微笑むと、モーリスは優しく微笑み、ユージーンは俺の笑顔に照れた笑顔を浮かべた。
「叔父上、ユージーン、長旅で疲れたでしょう。まずはゆっくりなさってください」
ディーが進み出て俺たちの間に割って入った。
「やぁ、ディーゼル。いつ見ても綺麗だね。姉上を思い出すよ。
アランも元気そうだ。キースとの婚約おめでとう」
モーリスがそれぞれに一言づつ挨拶するが、ユージーンはそれどころではなく、俺をじっと見てニコニコしていた。
「今日のところは離宮で疲れを癒し、明日また話をしよう」
レイブンが区切りをつけ、それぞれを促すような仕草をした。
「義兄上、お気遣い感謝致します」
それにモーリスが謝辞を述べて、促されるままに歩き出すと、ユージーンが俺から視線を外さずに後に続いていく。
王家、バルト家、執事と騎士の後に俺が最後に連なって大広間を出る。
通路に出ると、待ち構えていた貴族たちが、ダリアとバルト家に口々に挨拶を始めた。
王城から王宮に続く廊下の手前でバルト家一行と別れる。
これから彼らは瑠璃宮とは反対側にある来客用の離宮へ向かい、次に会うのは明日となる。
「ショーヘイ様、また明日」
ユージーンが俺に近寄ると手を握ってきた。
「はい。また明日」
それにニコリと答えると、嬉しそうに笑ったユージーンが立ち去って行く。
その背中を見送りつつ、彼が俺に向ける視線は恋愛感情のそれではなく、本当にヒーロー・ヒロインに向ける憧れそのものだな、と考えていた。
「ショーヘイさん、行きましょう」
キースに促されて王宮に進む。
この先は王家とそれを守る近衞など、認められた者しか入れない。
俺たちの後ろにいた貴族達が、レイブンに向かって挨拶しながら立ち去って行く。今日の会議は終わりで、一度王都邸にそれぞれが帰宅し、明日の会議に合わせて登城してくる。
そんな大勢の貴族たちに見送られながら王宮へと進むが、いくら聖女とはいえ、一緒に王宮へ入っていく俺をおかしいと思っている者もいるだろう。実際に訝しんでいる視線も感じた。
建前上は初めて会うダリアと聖女の交流ということになっているので問題はないのだが、巷に流れる出所不明の様々な噂がそんな訝しむ目線を産んでいた。
これも黒幕の流した噂という情報のせいかも、と一瞬考えるが深く考えることは止めた。
王宮の奥、全員が入れる広間に入る。
談話室や娯楽室のような作りになっているが、隣にある王族専用の食堂と直結した休憩室のような広間だった。
サンドラーク王家がここに全員揃った。それに加えてキースと俺。
オスカー達護衛は外で近衞と共に待機する。
部屋に入る時に、ダリアとオスカーが互いの拳を突き合わせて、挨拶をしていたのを見て、元帝国騎士仲間の2人の仲の良さを垣間見た。
「ダリア」
サイファーが静かにダリアに近付き、優しく抱きしめた。
「長かった…」
「たった3ヶ月だろう?大袈裟だな」
ダリアがクスクスと笑いながらよしよしとサイファーの頭を撫でた。
「3ヶ月もだ」
言いながら、ダリアの頬に手を添えると優しく口付ける。
目の前でイチャイチャする2人に誰もが微笑んだ。
「それより…」
ダリアがそっとサイファーの手を離すと、俺を見た。
「ダリア様、初めまして」
お互いに歩みよると、正面からダリアを見て頭を下げる。
「うん。いいね。想像通りだ」
ダリアがじっと俺を上から下までじっと眺めニコッと微笑む。
「こちらこそ初めまして。
と言いたいが、色々話は聞いていたから初めてという気がしないね」
微笑みながら言うと、握手を交わす。
本当にかっこいい女性だと思った。
アビゲイルも綺麗でかっこいいし、オリヴィエやエミリアも同様だ。
だが、ダリアはその見た目もそうだが、雰囲気が王族の伴侶という立場のせいなのか、気品や威厳といったものも感じる。
持っている雰囲気がレイブンに近い。
そう思った。
そんなダリアに突然正面から抱きしめられた。
え!?と驚くが、女性らしい柔らかくしなやかな腕に包まれて一気に赤面する。
「あ!あの!」
流石にサイファーのいる前でこれは、と思って離れようとするが全くその腕から逃れることが出来ない。
こんなに細い腕なのに、やはり騎士なのか、全く歯が立たなかった。
「ショーヘー。色々と大変だったね。聞いているよ」
ギュウッと抱きしめられて、頭を撫でられる。
女性に抱きしめられ体を密着されて、ますます顔を赤くした。
「う~ん、可愛い!思った通りだ!本当に可愛い!」
グリグリと顔を押し付けられ、頬を両手ではさまれて、その深い青い瞳で顔を見つめられる。
「ディーゼル!でかしたな!」
パッと俺を離すとディーに向き直る。
ようやっと解放されたが、ドキドキと心臓が早鐘を打っていた。
「お姉様、私には?」
ユリアが撫でられた俺を羨ましそうに見る。
「もちろんユリアも可愛いぞ!
私の大切な可愛い妹だ!」
ダリアがユリアに近づくとその小さな体をギュッと抱きしめる。
「寂しかったですわ」
「私もだよ。色々と情報を飛ばしてくれてありがとう。流石だね」
ダリアがチュッとユリアの頬にキスを落とすと、ユリアが嬉しそうに頬を染める。
その光景に頬が緩む。
その時ドアのノックとともに、ロイが部屋に入ってくる。
一瞬目が合ったが、スッと俺から視線を逸らすと、ロイの表情が一瞬だけ曇らせる。
「ダリア。お帰り」
気を取り直したロイがニカッとダリアに笑顔を向ける。
「ロイ、ディーゼル。そこに並べ」
ダリアがロイを手招きし、素直にロイがディーゼルの隣に立つ。
「サイファー、アランも並べ」
さらに2人にも指示した。
それを見てレイブン、ユリア、キースが静かに並んだ4人から離れて行く。
「?」
なんだろうと、その行動が不思議に思ったが、キースに腕を引かれて4人から距離を取らされる。
「色々ユリアから聞いているよ」
並んで立った兄弟の前にダリアがニコニコしながら立つ。
だが、その言葉を聞いた4人の表情が引き攣った。
「ほんと色々ね」
ダリアが笑顔のまま威圧の魔力を一気に放った。
「う…」
「ひっ」
「うぅ…」
「ひぇ」
4人がその威圧に小さく呻いた。
「ショーヘーに酷いことをしたそうだね」
ダリアが威圧しながら笑顔で言い放つ。
その言葉と並べられた4人から、数ヶ月前の猥談話の件だとすぐに気付く。
ユリアがしっかりとダリアに報告し、ダリアはその内容に激怒したようだ。
「覚悟はいいかい?」
ズモモモモ…という威圧の魔力が4人を包み、4人は歯を食いしばった。
「天誅!」
ゴン!パン!と拳骨と平手打ちの音が部屋に鳴り響いた。
4人がその場に蹲り痛みに耐えるのを無視して、ダリアが俺に近付くと、優しく抱きしめてくれる。
「辛かったね、ショーヘー。
私が戻ったからもう大丈夫だよ」
抱きしめた体を離すとそっと頬を撫でてくれた。
「キース、ショーヘーを守ってくれてありがとう」
「いいえ。私の方こそ、ショーヘイさんの専属になるよう後押ししてくれてありがとうございます」
キースが微笑みダリアに頭を下げた。
「それと、キース、おめでとう。
そして、ありがとう。アランを受け入れてくれて」
ダリアが今度はキースを抱きしめた。
「ショーヘイさんのおかげです。
私はショーヘイさんに救われました」
それを聞いてダリアが微笑む。
「ショーヘー。君は本当に素晴らしい。君と家族になれることを誇りに思うよ」
再び俺見て微笑む。
「ディーゼルとロイ。こんな奴らだが、可愛い弟達をよろしく頼むよ」
チラッと制裁を受けて蹲る弟達を見て、聞こえないように小さい声で耳打ちしてきた。
「はい」
それにクスクスと笑いながら返事をする。
「今もアレックスのことで冷戦中なんだろう?
わからせるためにも、徹底的にやりなさい」
さらに小声で言われ、今度は声に出して笑ってしまった。
「ううぅ…ダリアァ」
サイファーが情けない声を出し、流石にダリアも苦笑すると、夫の手を取った。
「さぁさぁ、挨拶はこのくらいにして、久方ぶりに家族水入らずで食事にしよう」
レイブンが楽しそうに笑った。
392
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
転生執事は氷の公爵令息の心を溶かしたい【短編】
堀川渓
BL
事故で命を落とし、目覚めたそこはーー生前遊んでいた女性向け恋愛ゲームの世界!?
しかも最推し・“氷の公爵令息”セルジュの執事・レナートとして転生していてーー!!
短編/全10話予定
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる