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王位簒奪編 〜ジョンとの2度目のデート〜
198.おっさん、情報屋を聞き出す
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ジョンは完全な白。
黒幕に操られそうになった、ただただ正義を愛する男だ。
俺の頭の中でクラッカーが鳴り響いて拍手した。
ジョンが眉を顰めてニコニコしている俺を怪訝な表情で見つめる。
「囮と言われて、なんでそんなに嬉しそうなんだ」
「え?」
「すごい笑ってるが…」
ハッとして、緩んでしまった表情筋を慌てて両手で摩る。嬉しくてついつい笑顔になってしまった。
しばらくさすさすと両頬を擦り、なんとか表情を元に戻すと、ジョンに向き直った。
「正解。ジョンの言う通りだよ」
ニカッと笑うと、ジョンが呆れたような表情になる。
「自分の意思でか」
ジョンはもう俺が利用されているという思い込みは捨てたとわかる発言をした。
「そう。自分の意思で」
「殿下のため?」
何故か怒ったように聞かれる。
「…まぁ…それもある…」
何故怒っているんだろうと首を傾げながら答える。
「愛した王子のために囮を引き受けて、敵を誘き出そうとしている。
これであってるか?」
まだムッとした表情で、なかば吐き捨てるように確認してきた。
「まぁだいたいは…」
「だいたいって…。まだ他に何かあんのか」
あからさまに舌打ちされた。
怒っているその理由を聞きたいが、今は優先事項が別にあるので無視することにする。
「ディーのため。ロイのため。一緒に俺を守ってくれたグレイのため。
3人は、この国を好きだと言ったから」
俺が囮を引き受けた理由を話す。
「それに、俺を保護してくれたこの国のため。王家の人達は、本当に俺を大切に思ってくれている」
「それはお前がジュノーで聖女だから…」
「そうだね。その理由もあると思うよ」
ニコリとジョンに微笑みかける。
「俺はベルトラーク領でロイに見つけてもらって保護された。
それから色々と狙われて、王都に到着するまで4ヶ月もかかった」
この世界に迷い込んで、まだたった半年。本当に色々あった。今でもはっきりと思い出せるほど、内容が濃かった。
「4ヶ月の間旅をして、色々な村や街、そこで暮らす人々を見て、話して、大変だったけど、楽しかったこともたくさんあったんだよ」
目線を落とし、記憶の中にある光景を思い出す。
徒歩移動の時に行き先が一緒だからと荷馬車に乗せてくれた行商人。立ち寄った村で一緒に遊んだ子供達。酒場で楽しそうに飲む人達。
どこに行っても笑顔で溢れていた。
無論、そうではない人達もたくさんいるだろうが、それは国という大きな枠で捉えると必然とも言える。そして、そういう人達を救おうとする人も見てきた。
浮浪児だったキースを救い育てたギルバート。圧政に苦しむ領民を救ったジュリア・イグリット。そして目の前にいるジョン。
「この国は素晴らしいと思う」
顔を上げジョンの目を見つめて微笑む。
「この国を守りたい。だから国を統べる王家を守りたいと思ったんだ」
ニコリと優しく微笑む翔平を見て、ジョンの怒ったような表情が緩んだ。
「ジョン」
微笑みながらも、しっかりとジョンの目を見る。
「同じだよ。俺も、悪人は大嫌いだ」
ニカッと歯を見せて笑うと、釣られるようにジョンも思わず笑顔になった。
が、気を取り直してすぐに真顔になると確認する。
「王家には敵がいて、そいつは聖女を利用したい。そいつを誘き出すために囮を引き受けた、で間違いないな?」
返事の代わりにニコリと微笑む。
ジョンはほんの少しだけ考える表情になると、残っていた冷めたお茶を一気に飲み干す。
「シアに会ってくれ。一緒にあいつから話を聞いて欲しい」
真剣に俺を見つめた。
だが、俺は即答出来なかった。
ジョンが簒奪とは無関係であると確信したが、はたしてシアはどうなのか。
シアに関しては、オスカーが本人から仕入れたものと、その背景を探ったフィッシャーからの情報だけだった。
シアがジョンの情報屋であることは、先ほどジョンにそう匂わせて否定されなかったので、まず確定である。
だが、ジョンだけの情報屋という保証はない。
ジョンを操るために情報を与えた者。
黒幕が操作しているのは情報であり、おそらく手駒として諜報活動に長けた者を使っているはずだ。
それがシアである可能性が充分に考えられる。
ジョンはシアのことを全く疑っていないようで、色々と聖女に関する情報を受け取り、かつ相談もしているだろう。
もちろん、デートのことも知っているだろう。今、俺に護衛がついていないことも。
考え込んで、シアに疑念を抱き始めた。
「ジョン、会うかどうか決める前に教えて欲しい」
ジョンを見つめ、シアのことを聞き出すことにする。その上で、会うかどうかを決めようと思った。
「シアは、ジョンの情報屋ってことで間違いないんだな?」
「……ああ。そうだ」
少し逡巡した後、観念したように答えた。
「俺をシアに会わせたい理由は?」
「シアの方から、会いたいと連絡があった」
「シアから?」
わざわざ今日のデートの日に?、と考えてますますシアが怪しく思えてきた。
「今朝、いきなり連絡が来てな。
今夜会いたいと。ショーヘーも一緒に」
俺も一緒にということは、やはり今日のデートのことをシアに話しているとわかった。
「急に連絡が来てすぐにと言われたのは初めてなんだ。おそらく何か急を要する情報が入ったんだと思う」
「その触りも聞いてない?」
その俺の質問にジョンは眉間に皺を寄せると、テーブル越しに俺の方へ身を乗り出し、低く小さな声で言った。
「ナイゼル、とだけ」
その名前に、ゾクッと悪寒が走った。
「…ナイゼル・クルーズ?」
俺がフルネームでジョンに聞き返すと、乗り出した体を戻しながらジョンが苦笑する。
「知ってるのか」
「常日頃の勉強の賜物です」
ニコリと笑顔で答えたが、頭の中は驚きすぎて細胞が大騒ぎしていた。心臓が大きく脈打ち、心なしか手も震えているような気がする。
キドナの王太子。
半年前にいち早く刺客を送り込みジュノー強奪を計った。しかも1度ならず2度までも。
現在、弟のバシリオが行方不明で、現王が病に倒れた今、キドナの実権は彼が握っている。
父親であるフォスター王と弟の第2王子バシリオを暗殺しようとしている疑いもある人物。
「ごめん、ちょっと考える時間をもらえるか」
次から次へと情報が出てきて頭の中がお祭り騒ぎになってしまった。どうにかそれらをまとめないと、とジョンに断りを入れる。
ジョンが頷くと、ウエイトレスを呼び、新たなお茶を注文した。
椅子に深く腰掛け足と腕を組んで、自分の膝を見つめて思考をフル回転させる。
まさかここでナイゼルの名前が出てくるとは思わなかった。
数日前にジャニスに頼んだ、ギルバートとの面会はまだ叶っていない。それが悔しかった。ギルバートに相談したい内容に、まさにキドナのことが含まれていたからだ。
だが悔やんでも仕方がない。
もしシアが敵の駒だった場合。
ジョンに聖女救出の大義を植え付けたのがシアだとするなら、会いに行くのは完全に悪手だ。確実に罠だと思う。
だが、ジョンは情報に踊らされたと気付いているが、シアを疑ってはいない。それだけ巧みにジョンを誘導したということになる。
要するに、ジョンの聖女救出が成功しようがしまいが、どちらでも良かったんだ。シアの、その誰かの本当の目的はジョンを介して俺とシアが会うことにあった。
ナイゼルの名前が出た今、シアの雇い主が黒幕なのか、ナイゼルなのかは不明だ。もしくは黒幕がナイゼルという可能性も浮上する。
情報を授けるとジョンを通じて俺を呼びだし、拉致する可能性がある。
眉間に皺を寄せ、腕を組みながら唇を触り、ムニムニと摘む翔平をジョンがじっと見つめる。
時折り、目線が左右に動き、ぱちぱちと瞬きする様子を眺めながら、クスッと笑った。
シアに似てる。
心の中で、そう呟いた。
逆に、シアが純粋にジョンのために動いている場合。
ジョンが俺を守ろうとしているように、シアも俺を守るべくそう動くはず。
ジョンの話だと、シアからの連絡は初めてで、しかも至急だという。
朝に連絡があったということは、情報を手に入れたのは昨晩以前ということになる。
通常のパターンだと、ジョンがシアの元を訪れた時に受授を行うから、数日後のはずだ。それが今回は昨日の今日という至急案件。
そして、その内容がナイゼルに関すること。
ナイゼルはジェラール聖王国の公国侵略戦争に裏で加担して魔鉱石鉱山を手に入れたかった。
さらに聖女がジュノーであることを知っており、やはり手に入れたい。
全ては国の拡大のため。己の欲のため。
ハッとした。
パチッと大きく目を瞬かせると、唇から手を離した。
シアは、ナイゼルが俺を拉致する計画の情報を得たのか。
昨日の今日なのは、それが今夜だから?
それじゃ、俺を呼び出す理由は?
今の俺に護衛はついていないし、俺を守れるのはジョンだけで、普通に考えれば、今日のデートを取りやめるように進言すればいい。
……ジョン、だけ?
いや、違う。俺は黒騎士に密かに護衛されている。100名以上と聞いていたが、実際に俺の周囲に張り付いているのは多くても4、5人だろう。一般人に溶け込んで、通りや立ち寄る店、場所を移動するたびにそれらが入れ替わって、総勢100名を超えるという意味だ。
今このカフェにも数名いるはず。
チラッとカフェの店内に視線を動かすと、店員や客、合わせて20人ほどが居ることがわかった。その中の数人が黒騎士だろうが、あからさまに俺たちを注視している者はおらず、完璧に周囲に溶け込んでいる。
シアの洞察力なら、目に見えない護衛がついていることを察しているだろう。
そしてその状況を考え、ある考えに思い至った。
一気にザワッと全身に鳥肌が立つ。
シアは、襲撃を利用する気なのか。
単純に情報を伝えてデートを中止しろと言えば、俺は王城に閉じこもる。
そうすれば襲撃はされないが、逆を言えば襲ってくる輩を捕らえられない。つまり、生き証人を逃す。
ナイゼルが放った刺客から確実に守られると、そう判断したんだ。そこは100%ではないが、他にも俺を守る何か秘策があるのかもしれない。
とにかくシアは襲撃を未然に防ぐのではなく、俺を呼びだして守り、襲撃者を捕らえるのが目的ではないか。
ジョンを利用した奴を炙り出すために、俺を利用しようとしている。
俺がディーため、ロイのためと言うのと同じように、シアはジョンのため。
ジョンを操ろうとした者と、王家の敵は同じで、利害が一致する。
ゾクゾクと全身がざわついて、思わず手で腕や足を摩った。
だが、シアが敵か味方かは全く判断出来ない。こちらにそこまでの情報はなく、全て俺の妄想。
ただ、シアと会う会わないにしても、ナイゼルという名前が出た以上、俺の拉致計画が進んでいると考えるべきだろう。
もしここで俺が会わずに帰ると言えば、もしかしたら拉致計画は流れるかもしれない。
チラリと壁にかけられた時計を見た。
午後6時半を過ぎた所だ。
このカフェからは見えないが、もう陽も落ちて外は暗くなっているはず。
拉致計画が事実なら、会わずに帰ろうとしても、その帰り道で襲われる可能性も出てくるし、シアが敵だった場合はその姿を晦ますことも考えられる。
逆にシアと会えば、他に何らかの情報は手に入る。シアが敵か味方かの判断も出来るだろう。
そして気がかりなのはジョンだ。
ジョンの様子からすると、襲撃の話は知らされていない。
ジョンは巻き込まれる形になる。
俺を守るために、必死に戦うだろう。
「なぁ、ジョン」
考え込んでしばらく経っていた。
ようやっと翔平が口を開き、ジョンがティーカップから顔を上げ、微笑む。
「ジョンは、シアを信頼してる?」
その質問にポカンとした。
「ああ。信頼してる」
即答してニカッと歯を見せて笑った。
「シアは俺にとってかけがえのない友人だ。いつも俺にアドバイスをくれて、助けてくれるし…」
癒してくれる、という言葉を飲み込んだ。
情報をアドバイスという言葉に変換したジョンに笑う。
本当にジョンはシアに恋愛感情がないのだろうか、とその表情を見て思った。もしかしたら、気付いていないだけなのかもしれないと考えてクスリと笑う。
そして、そんなジョンの言葉を信じようと思った。
「シアに会うよ」
「本当か?」
「ああ。だけど、条件がある」
「なんだ」
「キースに連絡を入れたい。これからシアに会うことと、その場所を連絡してもいいなら、会いに行くよ」
もし、俺の妄想が正解なら、その準備をしておきたかった。だからこれが最低条件だった。
キースに連絡すれば、すぐに動いてくれる。
襲撃については憶測なので伏せるが、おそらくキースなら察して、関係各所に連絡し護衛体制を強化するはずだ。
「それは構わない」
すぐにジョンは了承した。
「時間は8時。場所はジュリエッタという酒場兼宿屋だ」
「わかった」
頷いて右手の平を上に向けると光の玉を作る。
「伝達魔法も使えるのか」
「ああ。最近使えるようになったよ。まだ距離は出せないけど、ここから王城くらいなら大丈夫かな」
言いながら光の玉に魔力を込め、鳩くらいの大きさの白い鳥を作り出す。
今まで見てきたのは黒い魔鳥だったが、俺が作ったのは白くて、目が金色の魔鳥だった。
手に留まった鳥が顔を上げてじっと翔平を見つめる。
「キース、今夜8時にジュリエッタという酒場で情報屋のシアと会うことになった。多分帰りが遅くなるよ。
それと、お客様のために客間の用意もお願いしたい。
みんなへの連絡をよろしく頼む」
言い終わると、鳥が翼を広げて数度羽ばたかせてフワリと浮き、そのまま数回頭上を旋回した後、鳥ではあり得ない速度であっという間に飛んで行った。
「お見事」
「ありがとう」
見ていたジョンが感心したように言い、俺は微笑みながら礼を言う。
襲撃のことを伏せて、客間を用意するよう言ったが、キースは察してくれるだろうか、と心の中で期待する。
おそらく襲撃後、ジョンとシアを王城へ連れていくことになるだろう。
そう予測した上での依頼だった。
「もう一つ確認していいかな」
「ん?ああ」
「ジョンはどのくらい強いんだ?」
その質問にキョトンとする。
「強さ?」
「ああ。この間、魔石狩りの話が出たろ?ダンジョンで深い階層に潜るって言ってたから、結構強いのかなって思ってさ」
ニコニコしながらジョンの強さを測る。襲撃があるとするなら、ジョンの強さを知っておきたかった。
それに、シアがジョンに襲撃の可能性を知らせていないのが気になった。
事前にジョンに知らせた場合、デートをキャンセルされる可能性が出てくるし、猪突猛進型のジョンが何らかの行動を取るかもしれない。そうなれば、襲撃者は逃げ、やはり捕えられない。
おそらく、だから知らせていない。
だが、シアが敵なら。
ジョンは、今はまだ突き止めていないが、自分を操ろうとした情報を与えた者を知っている。だから襲撃に合わせて口封じのために始末しようとしている、とも考えられた。
もし後者なら、襲撃の最中、ジョンを守るように動かなければならないと思った。
「俺のクラスはSだ。そこそこ強いぞ」
何故今そんなことを質問するのか、と訝しみながらもジョンが答える。
「S…そりゃ強いな」
確か、EからAが通常クラスで、さらに上位のSから SSSまで存在していたはず。ディー、グレイももちろんクラスS以上。ロイ、ギルバートに至ってはクラスで括れないほど強い。
Sと聞いてなかなか強くて安心する。
「惚れ直した?」
「なんでだよw」
軽口を言われて突っ込みつつ笑う。
「まだ時間あるな。デートの続きしよう」
ジョンが席を立ち、俺も素直に従うが、デートという言葉には従えなかった。
「もうデートごっこは…」
「ごっこなんて言うなよ。俺はマジでデートのつもりなんだから」
ニヤニヤと笑うジョンに、この状況でいつまで続けるんだと呆れた。
ジュリエッタという酒場までは、今いる街からさらに1階層下がった下町にあると教えてもらった。
「あんまり治安も良くないし、聖女様が行くような場所じゃないんだけどな」
苦笑しながら言われるが、俺は今聖女じゃないと答えた。
「今はただのショーヘーか」
「そ。ただのショーヘーです」
「だが念のため」
ジョンが認識阻害の魔法をさらに自分たちに強めにかける。
「本当は髪色も変えたいところだが、俺は使えん」
「俺もだ」
聖女の絵姿は王都中に出回っている。
一体いつ描かれたのか、肖像画ほどではないが、特徴は捉えていてまぁまぁ似ていた。
ただ今出回っている絵姿は最新のものではなく黒髪のままだ。今の俺は髪の一部が白いため、それだけでも変装しているようなものだと思った。
ショッピングモールのような施設を出ると、昼間は暖かかったのに、陽が落ちてだいぶ冷え込んで来ていた。
思わずブルブルッと体を震わせると、ジョンが俺の肩を抱き寄せる。
「おい」
「デートだから」
文句を言うが、ジョンは笑うだけで抱いた手を離してくれなかった。
そのまま散策を続けて、ゆっくりとジュリエッタに向けて歩き出した。
大勢の人で店内が賑わっている。
出入口付近でたむろする人達をかわして、フードを被った男が店内に入ると、カウンター越しにジュリエッタに声をかける。
「女将さん」
ジュリエッタに向かって手を差し出して、持っていたお金を渡し、わざと指を触れさせた。
「ああ、もうそんな時間かい」
指が触れた瞬間誰なのかわかり、ジュリエッタが笑顔になる。
お金を受け取って、カウンター下にあるキーケースから鍵を取り出した。
「3階305だよ」
「ありがとう。連れも後で来ます」
「あいよ」
男が鍵を受け取り、酒場の端にある階段を上がり指定された部屋に向かった。
1時間ほど時間をかけて、街の中を散策しながら1階層下がる。
時刻は午後7時半を過ぎており、ジュリエッタには約束の時間通りに到着出来ると言われた。
肩を抱いていた手は外されたが、俺はまたジョンの右腕に腕を絡ませている。
「こっちは本当に治安が悪い。頼むからピッタリくっついてくれ」
頭一つ分上から見下ろされて言われるが、どうしてもニヤついているその顔が揶揄いを含んでいるように見えて納得いかなかった。
だが、歓楽街に入って周囲を見渡すと、確かに今まの街とは雰囲気がまるで違うと思った。仕方なく、ジョンの腕にしがみつくように腕を回す。
ジュリエッタという酒場はセドアとルヴァンの間の第2階層にある。
たった1階層、徒歩で30分くらいの距離しか離れていないのに、雰囲気がガラッと変わった。
階級で言えば中から下という比較的下層の者が多く、日雇い労働者や出稼ぎ、流れのハンターや傭兵。中層以上の歓楽街に比べて雑多で騒がしく、ガラが悪い。
時折り聞こえてくる怒鳴り声、物が壊れる音に、ビクッと反応して無意識にジョンに絡めた腕に力を込もる。
ギュッと翔平が音に驚いて腕に力を込めるたびにジョンの顔が緩んでいたが、それに翔平は気付いていなかった。
歓楽街に入ってしばらくすると、慌ただしく駆け出す人を目撃する。
「あー、またか」
「え?何?」
「喧嘩だよ」
歩くペースを少し落としつつ、走ってその喧嘩を見に行く人達を目で追った。
「おい、えらい美人の兄ちゃんたちが傭兵崩れとやりあってるってよ」
「兄ちゃんたちやべえよな」
口々にそんな会話が聞こえてくる。
こちらの世界でも喧嘩を見物したいという奴はいるものなんだな、と思った。
そんな野次馬達の会話から察するに、美人な男達V S傭兵崩れ。単純に考えて傭兵崩れが美人を誘って断られた腹いせなんだろうなぁ、と思った。
それなら。
「えっと…、止めなくていいのか…?」
じっと喧嘩がある方向を見つめるジョンを見上げた。
彼の中の正義感がウズウズしてるのが、触れている腕から伝わってくる。
「え?あ、いや…」
きっと俺が一緒でなかったら、今がこういう状況でなかったのなら、きっとすぐに駆け付けるんだろうなぁ、とフフッと笑う。
「様子だけでも、見てく?」
そうジョンの後押しをすると、ジョンがバッと俺を振り向き、キュッと口を真横に結ぶんだ瞬間、俺の手を握って引っ張る。
「すまん」
手を引っ張られて喧嘩の場所に急いで歩くジョンについていきながら、助けたいんだなぁ、とニヤつく顔を抑えられなかった。
「なんだ、ジュリエッタの裏か…」
通りの角を曲がってすぐに人だかりが見えた。その路地に入る時に「ジュリエッタ」という看板が見えたので、目的の店の裏手だとわかった。
「だらしねぇな!」
「1発も当たんねえじゃねえか!」
「それでも自称クラスSかよ!」
口々に野次が飛ぶ。
が、思っていたのと違うものだった。
ジョンが立ち止まり、2mの身長ですぐにその喧嘩の場面を見ることが出来たのだろうが、俺には野次馬の壁に阻まれて見ることが出来ない。
「ジョン、どうなってる?美人な人は大丈夫なのか?」
壁の向こう、喧嘩中の場所からドカン、バシッ、ドサッ、ザザザー、という音が聞こえ、その度に煽る笑い声を含んだ野次が飛ぶ。
「どうしたどうした!しっかりしろよ!」
「やられっぱなしじゃねえか!」
ジョンのコートの腕の部分を手で握り込み、ぴょんぴょんと喧嘩現場を見ようと飛び跳ねるが、全く見ることが出来ない。
「ほら」
突然ジョンが俺を引き寄せると、突然俺の尻あたりから腰に腕が回された瞬間、軽々と持ち上げられた。
「うわっ」
子供を抱っこするように持ち上げられてかなり驚き、その体勢がとても恥ずかしくて赤面する。だが、野次馬の壁よりも高く上に持ち上げられ、ジョンよりも高い目線で、ようやっと喧嘩現場を見ることが出来た。
「あらら…」
ドカッと、白髪が拳を、黒髪が蹴りを男達にそれぞれ入れている場面を目撃する。殴られ蹴られた男達が吹っ飛んで地面を転がった。
スッと静かに何もなかったように立つ白黒コンビの姿を見つめた。
うわ、ほんとに美人。
その立ち姿が美しい。
顔は遠いせいではっきりとは見えないが、とても顔だちが整った美人だと遠目でもわかった。
白髪短髪に白い尻尾。黒髪長髪に黒い犬耳尻尾。
その姿に犬族かな、と考えつつ、脳内に霧がかかるような違和感を覚える。考えようとすればするほどモヤがかかる。
「あ…」
そして唐突に気付いてしまった。
ブワッと鳥肌が立ち、じっと白黒コンビを見つめる。
ロイだ!
はっきりとそう思った。
ロイの顔ははっきり思い出せるのに、目に見えているその顔を認識しようとするとボヤける。
脳内で、記憶の顔と目視の顔が重ならない。
認識阻害魔法を使っているとすぐに気付いた。ということは、一緒にいる黒髪はアレックスだ。
ああ、それは勝てるわけないわな。
2人の前に倒れている傭兵崩れを憐れむように見つめた。はっきりと実力が違い過ぎると思った。
「ジョン、もういいよ。降ろしてくれ」
「もういいのか?このまま抱っこしててもいいぞ?」
今度は俺を見上げてくるジョンがヘラッと笑う。
「いいから降ろせよ」
そんなジョンのクマ耳を掴んで引っ張ると、笑いながら俺を降ろしてくれた。
「見えたか?」
「ああ」
「すげえな、あの美人」
「…そうだな…」
そりゃそうだろう。ロイはクラスという格付けで測れる強さじゃない。さらに帝国騎士団第1部隊所属のアレックスも、騎士だから称号持ちではないが、おそらくはクラストリプルSはくだらない実力の持ち主なんだろうと思った。
「心配ないようだし、行くか」
ジョンが俺の手を握ると、野次馬の中から連れ出した。
そのまま隣接するジュリエッタに足を向ける。
俺はジョンに、あの美人のうちの1人がロイであると言おうかどうか判断に迷った。
店に到着するまでの数分の間考えて、手を引かれるまま店に入る。
うん。言わない方がいいな。
止めておこう。
ロイとアレックスと遭遇したのは本当に偶然で、まさか、関係精算のための飲み会をこの街でしているとは思わなかった。
なんて偶然だよ、と思わず脱力したようにハハハと小さく笑い、俺が近くにいるとバレなくて、本当に良かったと心から思った。
遠目だったのもあるが、こちらも認識阻害魔法をかけている。
俺が気付くまでに時間がかかったように、おそらくロイも目が合ったとしても気付かないだろう。
もし気付かれたら、それはもうシアに会う所の話ではなくなってしまう。きっと大騒ぎして、デート相手であるジョンに敵意を剥き出しにして食ってかかるだろう。
そんな事態は避けねばならない。
俺は今から、シアの正体を探り、彼から情報を引き出さなくてはならない。
申し訳ないが、今はロイに構っている暇はない、と考えた。だが、それが少しだけ寂しくも感じ、自虐的な笑みを浮かべる。
ただ、襲撃が事実なら近くにロイがいるという事実は大きな助けになると思った。
ロイがいつまでこの街にいるかはわからないが、まだ午後8時。きっとそんなすぐには帰らないだろう。
ロイが近くにいる。
それだけで大きな安心感が得られ、心が暖かくなった。
ジュリエッタの店内は混雑していた。
1階の酒場はほぼ満席状態で、ウエイトレスが忙しそうに酒や食べ物を配膳して回っている。
ワイワイと大声で話す男達や、男女入り混じった笑い声で賑やかだった。
ジョンに手を引かれるまま、カウンターに近付くと、ジョンがカウンター内の厨房にいる膨よかな女性に話しかけ、言葉をかわすのを眺めた。
「上だ」
そして、誘導されるままに酒場の端にある階段で上階に向かう。
2階から3階へ行くに従って一階の喧騒は聞こえなくなったが、逆に別の声が耳に入った。
まさにSEX中の喘ぎ声で、その声に耳まで真っ赤になってしまった。
「悪いな。ここはそういう宿でもあるんだ。遮音魔法かけずに事に及ぶ奴も多くて困る」
そんな俺を見てジョンが申し訳なさそうに言い、その声を聞かせまいと急ぎ足になる。
他人の喘ぎ声を聞いて、少しだけパニックになった。
もしかして、早まったか!?
ジョンは俺に求婚していて、シアの話は全くの嘘で、俺をここに連れ込むために!?
俺はこれからジョンに…!?
焦ってそんなことを考えていると、目的の部屋に到着する。
ジョンがノックすると、すぐにドアが開けられて、引っ張られるままに部屋に入れられた。
俺の前に黒髪の線の細い男性が立つ。
優しそうな黒い瞳の、儚げな表情で微笑む男性が俺をじっと見つめている。
「初めまして聖女様。シアと申します」
低い声だが、とても綺麗ないい声で、聞いた瞬間ゾクッとしてしまった。
じっとシアを見つめ、オスカーの言葉を思い出した。
シアは聖女の演技をしたお前に似ている。
確かに似ているかも、というか、シアの方が聖女に相応しい、とそう思った。
彼の持つ雰囲気、その立ち姿が、俺が見聞きし演じた聖女そのものだった。
黒幕に操られそうになった、ただただ正義を愛する男だ。
俺の頭の中でクラッカーが鳴り響いて拍手した。
ジョンが眉を顰めてニコニコしている俺を怪訝な表情で見つめる。
「囮と言われて、なんでそんなに嬉しそうなんだ」
「え?」
「すごい笑ってるが…」
ハッとして、緩んでしまった表情筋を慌てて両手で摩る。嬉しくてついつい笑顔になってしまった。
しばらくさすさすと両頬を擦り、なんとか表情を元に戻すと、ジョンに向き直った。
「正解。ジョンの言う通りだよ」
ニカッと笑うと、ジョンが呆れたような表情になる。
「自分の意思でか」
ジョンはもう俺が利用されているという思い込みは捨てたとわかる発言をした。
「そう。自分の意思で」
「殿下のため?」
何故か怒ったように聞かれる。
「…まぁ…それもある…」
何故怒っているんだろうと首を傾げながら答える。
「愛した王子のために囮を引き受けて、敵を誘き出そうとしている。
これであってるか?」
まだムッとした表情で、なかば吐き捨てるように確認してきた。
「まぁだいたいは…」
「だいたいって…。まだ他に何かあんのか」
あからさまに舌打ちされた。
怒っているその理由を聞きたいが、今は優先事項が別にあるので無視することにする。
「ディーのため。ロイのため。一緒に俺を守ってくれたグレイのため。
3人は、この国を好きだと言ったから」
俺が囮を引き受けた理由を話す。
「それに、俺を保護してくれたこの国のため。王家の人達は、本当に俺を大切に思ってくれている」
「それはお前がジュノーで聖女だから…」
「そうだね。その理由もあると思うよ」
ニコリとジョンに微笑みかける。
「俺はベルトラーク領でロイに見つけてもらって保護された。
それから色々と狙われて、王都に到着するまで4ヶ月もかかった」
この世界に迷い込んで、まだたった半年。本当に色々あった。今でもはっきりと思い出せるほど、内容が濃かった。
「4ヶ月の間旅をして、色々な村や街、そこで暮らす人々を見て、話して、大変だったけど、楽しかったこともたくさんあったんだよ」
目線を落とし、記憶の中にある光景を思い出す。
徒歩移動の時に行き先が一緒だからと荷馬車に乗せてくれた行商人。立ち寄った村で一緒に遊んだ子供達。酒場で楽しそうに飲む人達。
どこに行っても笑顔で溢れていた。
無論、そうではない人達もたくさんいるだろうが、それは国という大きな枠で捉えると必然とも言える。そして、そういう人達を救おうとする人も見てきた。
浮浪児だったキースを救い育てたギルバート。圧政に苦しむ領民を救ったジュリア・イグリット。そして目の前にいるジョン。
「この国は素晴らしいと思う」
顔を上げジョンの目を見つめて微笑む。
「この国を守りたい。だから国を統べる王家を守りたいと思ったんだ」
ニコリと優しく微笑む翔平を見て、ジョンの怒ったような表情が緩んだ。
「ジョン」
微笑みながらも、しっかりとジョンの目を見る。
「同じだよ。俺も、悪人は大嫌いだ」
ニカッと歯を見せて笑うと、釣られるようにジョンも思わず笑顔になった。
が、気を取り直してすぐに真顔になると確認する。
「王家には敵がいて、そいつは聖女を利用したい。そいつを誘き出すために囮を引き受けた、で間違いないな?」
返事の代わりにニコリと微笑む。
ジョンはほんの少しだけ考える表情になると、残っていた冷めたお茶を一気に飲み干す。
「シアに会ってくれ。一緒にあいつから話を聞いて欲しい」
真剣に俺を見つめた。
だが、俺は即答出来なかった。
ジョンが簒奪とは無関係であると確信したが、はたしてシアはどうなのか。
シアに関しては、オスカーが本人から仕入れたものと、その背景を探ったフィッシャーからの情報だけだった。
シアがジョンの情報屋であることは、先ほどジョンにそう匂わせて否定されなかったので、まず確定である。
だが、ジョンだけの情報屋という保証はない。
ジョンを操るために情報を与えた者。
黒幕が操作しているのは情報であり、おそらく手駒として諜報活動に長けた者を使っているはずだ。
それがシアである可能性が充分に考えられる。
ジョンはシアのことを全く疑っていないようで、色々と聖女に関する情報を受け取り、かつ相談もしているだろう。
もちろん、デートのことも知っているだろう。今、俺に護衛がついていないことも。
考え込んで、シアに疑念を抱き始めた。
「ジョン、会うかどうか決める前に教えて欲しい」
ジョンを見つめ、シアのことを聞き出すことにする。その上で、会うかどうかを決めようと思った。
「シアは、ジョンの情報屋ってことで間違いないんだな?」
「……ああ。そうだ」
少し逡巡した後、観念したように答えた。
「俺をシアに会わせたい理由は?」
「シアの方から、会いたいと連絡があった」
「シアから?」
わざわざ今日のデートの日に?、と考えてますますシアが怪しく思えてきた。
「今朝、いきなり連絡が来てな。
今夜会いたいと。ショーヘーも一緒に」
俺も一緒にということは、やはり今日のデートのことをシアに話しているとわかった。
「急に連絡が来てすぐにと言われたのは初めてなんだ。おそらく何か急を要する情報が入ったんだと思う」
「その触りも聞いてない?」
その俺の質問にジョンは眉間に皺を寄せると、テーブル越しに俺の方へ身を乗り出し、低く小さな声で言った。
「ナイゼル、とだけ」
その名前に、ゾクッと悪寒が走った。
「…ナイゼル・クルーズ?」
俺がフルネームでジョンに聞き返すと、乗り出した体を戻しながらジョンが苦笑する。
「知ってるのか」
「常日頃の勉強の賜物です」
ニコリと笑顔で答えたが、頭の中は驚きすぎて細胞が大騒ぎしていた。心臓が大きく脈打ち、心なしか手も震えているような気がする。
キドナの王太子。
半年前にいち早く刺客を送り込みジュノー強奪を計った。しかも1度ならず2度までも。
現在、弟のバシリオが行方不明で、現王が病に倒れた今、キドナの実権は彼が握っている。
父親であるフォスター王と弟の第2王子バシリオを暗殺しようとしている疑いもある人物。
「ごめん、ちょっと考える時間をもらえるか」
次から次へと情報が出てきて頭の中がお祭り騒ぎになってしまった。どうにかそれらをまとめないと、とジョンに断りを入れる。
ジョンが頷くと、ウエイトレスを呼び、新たなお茶を注文した。
椅子に深く腰掛け足と腕を組んで、自分の膝を見つめて思考をフル回転させる。
まさかここでナイゼルの名前が出てくるとは思わなかった。
数日前にジャニスに頼んだ、ギルバートとの面会はまだ叶っていない。それが悔しかった。ギルバートに相談したい内容に、まさにキドナのことが含まれていたからだ。
だが悔やんでも仕方がない。
もしシアが敵の駒だった場合。
ジョンに聖女救出の大義を植え付けたのがシアだとするなら、会いに行くのは完全に悪手だ。確実に罠だと思う。
だが、ジョンは情報に踊らされたと気付いているが、シアを疑ってはいない。それだけ巧みにジョンを誘導したということになる。
要するに、ジョンの聖女救出が成功しようがしまいが、どちらでも良かったんだ。シアの、その誰かの本当の目的はジョンを介して俺とシアが会うことにあった。
ナイゼルの名前が出た今、シアの雇い主が黒幕なのか、ナイゼルなのかは不明だ。もしくは黒幕がナイゼルという可能性も浮上する。
情報を授けるとジョンを通じて俺を呼びだし、拉致する可能性がある。
眉間に皺を寄せ、腕を組みながら唇を触り、ムニムニと摘む翔平をジョンがじっと見つめる。
時折り、目線が左右に動き、ぱちぱちと瞬きする様子を眺めながら、クスッと笑った。
シアに似てる。
心の中で、そう呟いた。
逆に、シアが純粋にジョンのために動いている場合。
ジョンが俺を守ろうとしているように、シアも俺を守るべくそう動くはず。
ジョンの話だと、シアからの連絡は初めてで、しかも至急だという。
朝に連絡があったということは、情報を手に入れたのは昨晩以前ということになる。
通常のパターンだと、ジョンがシアの元を訪れた時に受授を行うから、数日後のはずだ。それが今回は昨日の今日という至急案件。
そして、その内容がナイゼルに関すること。
ナイゼルはジェラール聖王国の公国侵略戦争に裏で加担して魔鉱石鉱山を手に入れたかった。
さらに聖女がジュノーであることを知っており、やはり手に入れたい。
全ては国の拡大のため。己の欲のため。
ハッとした。
パチッと大きく目を瞬かせると、唇から手を離した。
シアは、ナイゼルが俺を拉致する計画の情報を得たのか。
昨日の今日なのは、それが今夜だから?
それじゃ、俺を呼び出す理由は?
今の俺に護衛はついていないし、俺を守れるのはジョンだけで、普通に考えれば、今日のデートを取りやめるように進言すればいい。
……ジョン、だけ?
いや、違う。俺は黒騎士に密かに護衛されている。100名以上と聞いていたが、実際に俺の周囲に張り付いているのは多くても4、5人だろう。一般人に溶け込んで、通りや立ち寄る店、場所を移動するたびにそれらが入れ替わって、総勢100名を超えるという意味だ。
今このカフェにも数名いるはず。
チラッとカフェの店内に視線を動かすと、店員や客、合わせて20人ほどが居ることがわかった。その中の数人が黒騎士だろうが、あからさまに俺たちを注視している者はおらず、完璧に周囲に溶け込んでいる。
シアの洞察力なら、目に見えない護衛がついていることを察しているだろう。
そしてその状況を考え、ある考えに思い至った。
一気にザワッと全身に鳥肌が立つ。
シアは、襲撃を利用する気なのか。
単純に情報を伝えてデートを中止しろと言えば、俺は王城に閉じこもる。
そうすれば襲撃はされないが、逆を言えば襲ってくる輩を捕らえられない。つまり、生き証人を逃す。
ナイゼルが放った刺客から確実に守られると、そう判断したんだ。そこは100%ではないが、他にも俺を守る何か秘策があるのかもしれない。
とにかくシアは襲撃を未然に防ぐのではなく、俺を呼びだして守り、襲撃者を捕らえるのが目的ではないか。
ジョンを利用した奴を炙り出すために、俺を利用しようとしている。
俺がディーため、ロイのためと言うのと同じように、シアはジョンのため。
ジョンを操ろうとした者と、王家の敵は同じで、利害が一致する。
ゾクゾクと全身がざわついて、思わず手で腕や足を摩った。
だが、シアが敵か味方かは全く判断出来ない。こちらにそこまでの情報はなく、全て俺の妄想。
ただ、シアと会う会わないにしても、ナイゼルという名前が出た以上、俺の拉致計画が進んでいると考えるべきだろう。
もしここで俺が会わずに帰ると言えば、もしかしたら拉致計画は流れるかもしれない。
チラリと壁にかけられた時計を見た。
午後6時半を過ぎた所だ。
このカフェからは見えないが、もう陽も落ちて外は暗くなっているはず。
拉致計画が事実なら、会わずに帰ろうとしても、その帰り道で襲われる可能性も出てくるし、シアが敵だった場合はその姿を晦ますことも考えられる。
逆にシアと会えば、他に何らかの情報は手に入る。シアが敵か味方かの判断も出来るだろう。
そして気がかりなのはジョンだ。
ジョンの様子からすると、襲撃の話は知らされていない。
ジョンは巻き込まれる形になる。
俺を守るために、必死に戦うだろう。
「なぁ、ジョン」
考え込んでしばらく経っていた。
ようやっと翔平が口を開き、ジョンがティーカップから顔を上げ、微笑む。
「ジョンは、シアを信頼してる?」
その質問にポカンとした。
「ああ。信頼してる」
即答してニカッと歯を見せて笑った。
「シアは俺にとってかけがえのない友人だ。いつも俺にアドバイスをくれて、助けてくれるし…」
癒してくれる、という言葉を飲み込んだ。
情報をアドバイスという言葉に変換したジョンに笑う。
本当にジョンはシアに恋愛感情がないのだろうか、とその表情を見て思った。もしかしたら、気付いていないだけなのかもしれないと考えてクスリと笑う。
そして、そんなジョンの言葉を信じようと思った。
「シアに会うよ」
「本当か?」
「ああ。だけど、条件がある」
「なんだ」
「キースに連絡を入れたい。これからシアに会うことと、その場所を連絡してもいいなら、会いに行くよ」
もし、俺の妄想が正解なら、その準備をしておきたかった。だからこれが最低条件だった。
キースに連絡すれば、すぐに動いてくれる。
襲撃については憶測なので伏せるが、おそらくキースなら察して、関係各所に連絡し護衛体制を強化するはずだ。
「それは構わない」
すぐにジョンは了承した。
「時間は8時。場所はジュリエッタという酒場兼宿屋だ」
「わかった」
頷いて右手の平を上に向けると光の玉を作る。
「伝達魔法も使えるのか」
「ああ。最近使えるようになったよ。まだ距離は出せないけど、ここから王城くらいなら大丈夫かな」
言いながら光の玉に魔力を込め、鳩くらいの大きさの白い鳥を作り出す。
今まで見てきたのは黒い魔鳥だったが、俺が作ったのは白くて、目が金色の魔鳥だった。
手に留まった鳥が顔を上げてじっと翔平を見つめる。
「キース、今夜8時にジュリエッタという酒場で情報屋のシアと会うことになった。多分帰りが遅くなるよ。
それと、お客様のために客間の用意もお願いしたい。
みんなへの連絡をよろしく頼む」
言い終わると、鳥が翼を広げて数度羽ばたかせてフワリと浮き、そのまま数回頭上を旋回した後、鳥ではあり得ない速度であっという間に飛んで行った。
「お見事」
「ありがとう」
見ていたジョンが感心したように言い、俺は微笑みながら礼を言う。
襲撃のことを伏せて、客間を用意するよう言ったが、キースは察してくれるだろうか、と心の中で期待する。
おそらく襲撃後、ジョンとシアを王城へ連れていくことになるだろう。
そう予測した上での依頼だった。
「もう一つ確認していいかな」
「ん?ああ」
「ジョンはどのくらい強いんだ?」
その質問にキョトンとする。
「強さ?」
「ああ。この間、魔石狩りの話が出たろ?ダンジョンで深い階層に潜るって言ってたから、結構強いのかなって思ってさ」
ニコニコしながらジョンの強さを測る。襲撃があるとするなら、ジョンの強さを知っておきたかった。
それに、シアがジョンに襲撃の可能性を知らせていないのが気になった。
事前にジョンに知らせた場合、デートをキャンセルされる可能性が出てくるし、猪突猛進型のジョンが何らかの行動を取るかもしれない。そうなれば、襲撃者は逃げ、やはり捕えられない。
おそらく、だから知らせていない。
だが、シアが敵なら。
ジョンは、今はまだ突き止めていないが、自分を操ろうとした情報を与えた者を知っている。だから襲撃に合わせて口封じのために始末しようとしている、とも考えられた。
もし後者なら、襲撃の最中、ジョンを守るように動かなければならないと思った。
「俺のクラスはSだ。そこそこ強いぞ」
何故今そんなことを質問するのか、と訝しみながらもジョンが答える。
「S…そりゃ強いな」
確か、EからAが通常クラスで、さらに上位のSから SSSまで存在していたはず。ディー、グレイももちろんクラスS以上。ロイ、ギルバートに至ってはクラスで括れないほど強い。
Sと聞いてなかなか強くて安心する。
「惚れ直した?」
「なんでだよw」
軽口を言われて突っ込みつつ笑う。
「まだ時間あるな。デートの続きしよう」
ジョンが席を立ち、俺も素直に従うが、デートという言葉には従えなかった。
「もうデートごっこは…」
「ごっこなんて言うなよ。俺はマジでデートのつもりなんだから」
ニヤニヤと笑うジョンに、この状況でいつまで続けるんだと呆れた。
ジュリエッタという酒場までは、今いる街からさらに1階層下がった下町にあると教えてもらった。
「あんまり治安も良くないし、聖女様が行くような場所じゃないんだけどな」
苦笑しながら言われるが、俺は今聖女じゃないと答えた。
「今はただのショーヘーか」
「そ。ただのショーヘーです」
「だが念のため」
ジョンが認識阻害の魔法をさらに自分たちに強めにかける。
「本当は髪色も変えたいところだが、俺は使えん」
「俺もだ」
聖女の絵姿は王都中に出回っている。
一体いつ描かれたのか、肖像画ほどではないが、特徴は捉えていてまぁまぁ似ていた。
ただ今出回っている絵姿は最新のものではなく黒髪のままだ。今の俺は髪の一部が白いため、それだけでも変装しているようなものだと思った。
ショッピングモールのような施設を出ると、昼間は暖かかったのに、陽が落ちてだいぶ冷え込んで来ていた。
思わずブルブルッと体を震わせると、ジョンが俺の肩を抱き寄せる。
「おい」
「デートだから」
文句を言うが、ジョンは笑うだけで抱いた手を離してくれなかった。
そのまま散策を続けて、ゆっくりとジュリエッタに向けて歩き出した。
大勢の人で店内が賑わっている。
出入口付近でたむろする人達をかわして、フードを被った男が店内に入ると、カウンター越しにジュリエッタに声をかける。
「女将さん」
ジュリエッタに向かって手を差し出して、持っていたお金を渡し、わざと指を触れさせた。
「ああ、もうそんな時間かい」
指が触れた瞬間誰なのかわかり、ジュリエッタが笑顔になる。
お金を受け取って、カウンター下にあるキーケースから鍵を取り出した。
「3階305だよ」
「ありがとう。連れも後で来ます」
「あいよ」
男が鍵を受け取り、酒場の端にある階段を上がり指定された部屋に向かった。
1時間ほど時間をかけて、街の中を散策しながら1階層下がる。
時刻は午後7時半を過ぎており、ジュリエッタには約束の時間通りに到着出来ると言われた。
肩を抱いていた手は外されたが、俺はまたジョンの右腕に腕を絡ませている。
「こっちは本当に治安が悪い。頼むからピッタリくっついてくれ」
頭一つ分上から見下ろされて言われるが、どうしてもニヤついているその顔が揶揄いを含んでいるように見えて納得いかなかった。
だが、歓楽街に入って周囲を見渡すと、確かに今まの街とは雰囲気がまるで違うと思った。仕方なく、ジョンの腕にしがみつくように腕を回す。
ジュリエッタという酒場はセドアとルヴァンの間の第2階層にある。
たった1階層、徒歩で30分くらいの距離しか離れていないのに、雰囲気がガラッと変わった。
階級で言えば中から下という比較的下層の者が多く、日雇い労働者や出稼ぎ、流れのハンターや傭兵。中層以上の歓楽街に比べて雑多で騒がしく、ガラが悪い。
時折り聞こえてくる怒鳴り声、物が壊れる音に、ビクッと反応して無意識にジョンに絡めた腕に力を込もる。
ギュッと翔平が音に驚いて腕に力を込めるたびにジョンの顔が緩んでいたが、それに翔平は気付いていなかった。
歓楽街に入ってしばらくすると、慌ただしく駆け出す人を目撃する。
「あー、またか」
「え?何?」
「喧嘩だよ」
歩くペースを少し落としつつ、走ってその喧嘩を見に行く人達を目で追った。
「おい、えらい美人の兄ちゃんたちが傭兵崩れとやりあってるってよ」
「兄ちゃんたちやべえよな」
口々にそんな会話が聞こえてくる。
こちらの世界でも喧嘩を見物したいという奴はいるものなんだな、と思った。
そんな野次馬達の会話から察するに、美人な男達V S傭兵崩れ。単純に考えて傭兵崩れが美人を誘って断られた腹いせなんだろうなぁ、と思った。
それなら。
「えっと…、止めなくていいのか…?」
じっと喧嘩がある方向を見つめるジョンを見上げた。
彼の中の正義感がウズウズしてるのが、触れている腕から伝わってくる。
「え?あ、いや…」
きっと俺が一緒でなかったら、今がこういう状況でなかったのなら、きっとすぐに駆け付けるんだろうなぁ、とフフッと笑う。
「様子だけでも、見てく?」
そうジョンの後押しをすると、ジョンがバッと俺を振り向き、キュッと口を真横に結ぶんだ瞬間、俺の手を握って引っ張る。
「すまん」
手を引っ張られて喧嘩の場所に急いで歩くジョンについていきながら、助けたいんだなぁ、とニヤつく顔を抑えられなかった。
「なんだ、ジュリエッタの裏か…」
通りの角を曲がってすぐに人だかりが見えた。その路地に入る時に「ジュリエッタ」という看板が見えたので、目的の店の裏手だとわかった。
「だらしねぇな!」
「1発も当たんねえじゃねえか!」
「それでも自称クラスSかよ!」
口々に野次が飛ぶ。
が、思っていたのと違うものだった。
ジョンが立ち止まり、2mの身長ですぐにその喧嘩の場面を見ることが出来たのだろうが、俺には野次馬の壁に阻まれて見ることが出来ない。
「ジョン、どうなってる?美人な人は大丈夫なのか?」
壁の向こう、喧嘩中の場所からドカン、バシッ、ドサッ、ザザザー、という音が聞こえ、その度に煽る笑い声を含んだ野次が飛ぶ。
「どうしたどうした!しっかりしろよ!」
「やられっぱなしじゃねえか!」
ジョンのコートの腕の部分を手で握り込み、ぴょんぴょんと喧嘩現場を見ようと飛び跳ねるが、全く見ることが出来ない。
「ほら」
突然ジョンが俺を引き寄せると、突然俺の尻あたりから腰に腕が回された瞬間、軽々と持ち上げられた。
「うわっ」
子供を抱っこするように持ち上げられてかなり驚き、その体勢がとても恥ずかしくて赤面する。だが、野次馬の壁よりも高く上に持ち上げられ、ジョンよりも高い目線で、ようやっと喧嘩現場を見ることが出来た。
「あらら…」
ドカッと、白髪が拳を、黒髪が蹴りを男達にそれぞれ入れている場面を目撃する。殴られ蹴られた男達が吹っ飛んで地面を転がった。
スッと静かに何もなかったように立つ白黒コンビの姿を見つめた。
うわ、ほんとに美人。
その立ち姿が美しい。
顔は遠いせいではっきりとは見えないが、とても顔だちが整った美人だと遠目でもわかった。
白髪短髪に白い尻尾。黒髪長髪に黒い犬耳尻尾。
その姿に犬族かな、と考えつつ、脳内に霧がかかるような違和感を覚える。考えようとすればするほどモヤがかかる。
「あ…」
そして唐突に気付いてしまった。
ブワッと鳥肌が立ち、じっと白黒コンビを見つめる。
ロイだ!
はっきりとそう思った。
ロイの顔ははっきり思い出せるのに、目に見えているその顔を認識しようとするとボヤける。
脳内で、記憶の顔と目視の顔が重ならない。
認識阻害魔法を使っているとすぐに気付いた。ということは、一緒にいる黒髪はアレックスだ。
ああ、それは勝てるわけないわな。
2人の前に倒れている傭兵崩れを憐れむように見つめた。はっきりと実力が違い過ぎると思った。
「ジョン、もういいよ。降ろしてくれ」
「もういいのか?このまま抱っこしててもいいぞ?」
今度は俺を見上げてくるジョンがヘラッと笑う。
「いいから降ろせよ」
そんなジョンのクマ耳を掴んで引っ張ると、笑いながら俺を降ろしてくれた。
「見えたか?」
「ああ」
「すげえな、あの美人」
「…そうだな…」
そりゃそうだろう。ロイはクラスという格付けで測れる強さじゃない。さらに帝国騎士団第1部隊所属のアレックスも、騎士だから称号持ちではないが、おそらくはクラストリプルSはくだらない実力の持ち主なんだろうと思った。
「心配ないようだし、行くか」
ジョンが俺の手を握ると、野次馬の中から連れ出した。
そのまま隣接するジュリエッタに足を向ける。
俺はジョンに、あの美人のうちの1人がロイであると言おうかどうか判断に迷った。
店に到着するまでの数分の間考えて、手を引かれるまま店に入る。
うん。言わない方がいいな。
止めておこう。
ロイとアレックスと遭遇したのは本当に偶然で、まさか、関係精算のための飲み会をこの街でしているとは思わなかった。
なんて偶然だよ、と思わず脱力したようにハハハと小さく笑い、俺が近くにいるとバレなくて、本当に良かったと心から思った。
遠目だったのもあるが、こちらも認識阻害魔法をかけている。
俺が気付くまでに時間がかかったように、おそらくロイも目が合ったとしても気付かないだろう。
もし気付かれたら、それはもうシアに会う所の話ではなくなってしまう。きっと大騒ぎして、デート相手であるジョンに敵意を剥き出しにして食ってかかるだろう。
そんな事態は避けねばならない。
俺は今から、シアの正体を探り、彼から情報を引き出さなくてはならない。
申し訳ないが、今はロイに構っている暇はない、と考えた。だが、それが少しだけ寂しくも感じ、自虐的な笑みを浮かべる。
ただ、襲撃が事実なら近くにロイがいるという事実は大きな助けになると思った。
ロイがいつまでこの街にいるかはわからないが、まだ午後8時。きっとそんなすぐには帰らないだろう。
ロイが近くにいる。
それだけで大きな安心感が得られ、心が暖かくなった。
ジュリエッタの店内は混雑していた。
1階の酒場はほぼ満席状態で、ウエイトレスが忙しそうに酒や食べ物を配膳して回っている。
ワイワイと大声で話す男達や、男女入り混じった笑い声で賑やかだった。
ジョンに手を引かれるまま、カウンターに近付くと、ジョンがカウンター内の厨房にいる膨よかな女性に話しかけ、言葉をかわすのを眺めた。
「上だ」
そして、誘導されるままに酒場の端にある階段で上階に向かう。
2階から3階へ行くに従って一階の喧騒は聞こえなくなったが、逆に別の声が耳に入った。
まさにSEX中の喘ぎ声で、その声に耳まで真っ赤になってしまった。
「悪いな。ここはそういう宿でもあるんだ。遮音魔法かけずに事に及ぶ奴も多くて困る」
そんな俺を見てジョンが申し訳なさそうに言い、その声を聞かせまいと急ぎ足になる。
他人の喘ぎ声を聞いて、少しだけパニックになった。
もしかして、早まったか!?
ジョンは俺に求婚していて、シアの話は全くの嘘で、俺をここに連れ込むために!?
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じっとシアを見つめ、オスカーの言葉を思い出した。
シアは聖女の演技をしたお前に似ている。
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