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キドナ編 〜キドナ最後の夜〜
276.おっさん、捜索隊に加わる
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俺が感知魔法を展開し、気持ちの悪い魔力を補足したこと。
その魔力の持ち主は、ロイ達が戻る2、3分前にバシリオと共に会場の外へ出て行った。
金髪男はバシリオに何かする気だと思い、フィンとオリヴィエに向かってもらった。
俺は早口で説明すると、会場内にいる3人は顔を見合わせた。
『外に出たんだな?』
ロイが確認するのと同時に、動き出していた。
「ああ。飲食コーナーでバシリオと話した後、一緒に外に出て行ったのをフィンが見てる。
金髪男は、俺に言い寄ってきたハルバート公爵家の次男、サイラスかもしれない。遠目だから断定は出来ないけど、オリヴィエがそう言ってた」
俺は話を続けながら3人が外へ出て行くのを目で追った。
『フィンとオリヴィエが追ってるんですね』
「ああ。だけど、見つけたかどうかはわからない」
姿は見えなくなっても、声だけは聞こえてくる。
俺は柵から離れると、エミリアと並んでソファに座った。
「バシリオの魔力がおかしかったんだ。大きく揺らいで制御不能みたいだった」
すると、ッチっとロイの舌打ちが聞こえた。
「何があったんだ?」
バシリオの魔力の揺らぎと、ロイとディーが消えたことが関係があるのかと尋ねる。
『リオは、媚薬を盛られた』
「はああ!?」
俺は思わず声が裏返って大きな声を上げてしまった。
「媚薬って…あの媚薬……?」
『その媚薬です』
ディーが冷静に答え、俺はバシリオの魔力の揺らぎがそのせいかと悟った。
数ヶ月前、王都に到着してすぐに俺も媚薬を盛られて酷い目にあった。
どうしようもなく情欲が溢れ出して理性が吹っ飛んだ。
俺はかろうじて愛している2人とSEXして媚薬による性欲を発散出来たが、もし駆けつけられる場所に2人がいなかったら、俺はあの時そばにいたオスカーに抱いてくれと泣いて懇願していただろう。
それを思い出してゾッとした。
そして、あの金髪男から感じた魔力の気持ち悪さの意味を瞬間的に理解した。
あれは、情欲、支配欲、加虐性欲、所有欲など、あらゆる負の欲望の塊だった。
そんなものがバシリオに向けられているとわかり、俺は怖気を感じて鳥肌が立つ。
「急いでくれ……リオが……」
レイプされる、と最後まで言えなかった。
バシリオとニコラスは会場の外に出て廊下を歩く。自分達と同じように涼みに来た参加者達の間を通り抜けながら奥へ進む。
体が異常なほど火照っており、バシリオはさらに涼しい所、と建物からも出ようと考えていた。
0度近い外気の中に2、3分もいれば治るだろうと、廊下から外へ出られる扉を目指し、廊下を曲がって外へ続く通路へと入った。
流石にここまで来るともう誰もいない。
この先は行き止まりだし、中庭へ通じるガラス扉があるだけだ。
夏なら、庭園パーティーも開かれるが、冬は通路の除雪はされていても使われることはない場所だ。
「リオ、大丈夫か?」
前を歩くニコラスが振り返って気にかけてくれる。
「う…ん」
返事をするが、自分でもわかるほど息が熱かった。
ニコラスはふらふらしながらついてくるバシリオを気にして立ち止まると、そのまま進んで近づいて来たバシリオに並び、覚束ない足取りのバシリオを支えるために、その肩を掴み抱き寄せた。
その瞬間、バシリオの体に電流のような衝撃が走り、ニコラスの手が肩から腕をなぞるように下がると、ゾクゾクとしたざわつきを感じた。
「リオ?」
ニコラスが痙攣するように細かく震え出したバシリオの顔を覗き込む。
「本当に大丈夫なのか?」
心配するように問いかけられるが、バシリオは答えることが出来なかった。
支えるように添えられた手から皮膚が泡立つような感覚が広がって行く。
「ふ…ぅ……」
バシリオの口から小さな呻き声が漏れ、そのまま俯いて立ち止まる。
バシリオよりも頭一つ分背の高いニコラスは、右手でバシリオの右肩を、左手で左腕を掴むと、さらに自分の方へ引き寄せて密着しバシリオの耳元に口を寄せた。
「身体が熱い?」
唇が触れるほど耳のそばで囁かれ、バシリオは耳にかかった息と、低い声の振動に先ほどよりももっと強烈な電流が体を駆け抜けた。
「あ……」
全身から力が抜けるのを、止められなかった。
膝がガクガクと震えて、ニコラスに支えられていなければ立ってもいられない。
体の震えに合わせるかのように、どんどん体が熱くなっていった。
なんだ、これ。
何が、どうなって……。
自分の体なのにまるで言うことがきかない。かつ体の熱が頭にまで侵食し始めて思考がまとまらない。
「リオ…辛い?」
再びニコラスに耳元で囁かれ、バシリオの体がビクン!と大きく反応した。
その反応は自分でもはっきりとわかるほど下半身の1箇所に集中しており、腰が抜けるようなゾクゾクとした快感の伴う気だるさに襲われた。
自分の男の象徴が膨張し始めている。
まるで、体の熱がその1箇所に集まっていくようだった。
突然体を襲った情欲に、しゃがみたい、座りたいと思うが、ニコラスの手がそれを許さなかった。
嵌められた。
バシリオはここでようやく自分が罠に嵌まったと気付いた。
この体の異常が媚薬のせいであることを理解し、そう仕向けたのがニコラスであると悟った。
抵抗しようと震える手でニコラスの腕を掴むが、指の一本すら自分の意思でまともに動かすことが出来なかった。
ニコラスはバシリオを支えながら、ニヤアと口角を吊り上げて歪んだ表情で笑顔を作った。
「リオ、すぐに楽にしてあげるよ」
目を細め、頬を紅潮させたニコラスは、とても嬉しそうに笑うと、バシリオを抱えるように歩き始めた。
フィンとオリヴィエはすぐに会場の外に飛び出して左右を確認する。
隠密魔法を展開しているせいで、人を探す様子の2人に気付く者は誰1人いない。
見える範囲にバシリオと金髪男の姿はなかった。
あれだけ見事な金髪なら、すぐに目につきそうなものだが、会場外にまで溢れている参加者を見渡しても見つけることは出来なかった。
廊下にも溢れている参加者に、隠密を解除して見かけたかどうか尋ねることも出来るが、大事になる可能性もあることを考えて止めた。
「あたしはあっちに行くわ」
オリヴィエが左へ行くと言ったので、フィンは頷いて右側へ進む。
急ぎつつも注意して辺りを見渡しながら感知魔法を展開して、翔平が感じたという強烈な違和感の魔力を探しながら移動する。
だが、どれだけ範囲を広げても、一緒にいるはずのバシリオの魔力すら感じられなかった。
「っちぃ…」
フィンは小さく舌打ちする。
あの金髪男は意図時にバシリオに近付き、言葉巧みに誘い出した。そして隠密魔法を展開したのだ。
完全に出遅れてしまった。
もし、翔平に言われてすぐに動いていれば、見つけられたかもしれないと、判断を
誤ったことに後悔する。
だが、こうなってしまってはもうどうしようもない。
他国の夜会会場である建物の構造も見取り図も頭にない。しかも、増築を繰り返したせいなのか、通路は相当入り組んでいるし部屋数も多い。いくら隠密で姿を隠しているといっても、人の目がある中で一つ一つのドアを開けて確認することなど出来なかった。
フィンは早々に見切りをつけて会場へ戻るために踵を返す。
見つからない以上、単独行動は避けて何か別の方法を模索するべきだと考えた。
会場入口の大扉の近くに戻ると、反対側へ探しに行ったオリヴィエも戻ってくるのが見えた。
彼女も自分と同じように考えたのだろう、フィンの姿を見とめると小さく首を振って顔をしかめた。
「見当たらないわ」
そばに寄ると、オリヴィエが苛立つように報告してきたので、俺もだ、と短く答えた。
だが、
「バシリオ様とニコラス様、お似合いよね」
すぐ後ろを通過した女性が、一緒に歩いていた友人に話すのが聞こえた。
咄嗟に彼女達へ視線を向けその話に集中する。
「……ここだけの話しよ?」
話しかけられた女性が立ち止まり、素早く周囲を見渡して、内緒話をするように友人に近付いて腕を引っ張ると廊下の隅に移動した。
フィンとオリヴィエも同じように移動してそばに立つ。
「ニコラス様、バシリオ様のことがお好きなのよ。
だからナイゼル様の伴侶候補に上がった時もすぐに辞退したの」
「ええ!?そうなの?そんな話聞いたこともないわよ?」
驚いた女性が大きめの声を上げたので、もう1人がしーと口の前に指を立てる。
「間違いないわ。サイラス様から聞いたもの。でも、秘密なんですって」
「どうしてよ」
「ほら…、ハルバート家は中立派でしょ?噂が立つと面倒くさいことになるらしいわ」
「ああ……そういうこと…」
「でも、派閥の障害が無くなって、ニコラス様はようやく想いを打ち明けられる時がきたのよ」
女性2人は、ニコラスの恋物語にうっとりとした表情を浮かべる。
「アメリアの像の方へ向かったから、きっとその前で告白されるのよ」
「きゃぁ~、どうなるのかしら。バシリオ様お受けになるかしら」
女性2人が頬を染めながらキャッキャッと恋愛話に盛り上がっていた。
すぐそばでその話を聞いていたフィンとオリヴィエは、振って沸いた情報にキュッと口を結んだ。
アメリアの像の方に向かった。
すぐに行かなければ、と思ったが、その像が何処にあるのかがわからなかった。
アメリアとは、創造神の妻となった人の名前である。
創造神に見初められたその女性は聖母と呼ばれ、愛と献身の女神として信仰を集めている。
その像の前で愛を告げること、プロポーズすることが、この世界において最もポピュラーな告白方法であり、想いを受け入れられれば、女神から祝福を与えられるという言い伝えもあった。
フィンとオリヴィエは、一旦戻って報告し、すぐにアメリアの像の場所を突き止めようと思い会場へ体を向けた。
「フィン、オリヴィエ」
だが、肩を掴まれて行く手を阻まれた。
「ロイ」
「ディー」
接触したことで、互いに掛けられた隠密魔法が解除される。
「良くわかったな」
フィンが自分にかけた隠密魔法が完璧ではなかったのかと焦ったような表情になった。
「大丈夫だ、完璧だよ」
そんなフィンの表情で、彼が思ったことを察したロイが笑う。
「こっちにはショーヘイが居ますから」
ディーも笑い、翔平がフィンとオリヴィエの場所を教えてくれたと言った。
だが、それは翔平が離れた場所にいた状態でも隠密魔法を見破ったということになり、フィンは苦笑する。
『会えた?』
「ああ、合流したぞ」
ロイが翔平の質問に答え、翔平の声が聞こえなかったオリヴィエは首をかしげつつ、ロイとディー、デクスターの耳に通信用魔鉱石が付けられていることを把握した。
フィンがロイの通信用魔鉱石が付けられている右耳を引っ張ると、その耳に向かって話しかける。
ロイが耳を引っ張られて痛いと顔をしかめつつ、フィンに耳を差し出す。
「ショーヘイさん、すまん、見つからなかった。だが、アメリアの像へ向かったという情報を入手した」
『あめりあのぞー?』
その言葉は初めて聞く言葉で、聞こえた音のまま聞き返す。
「だが、その像の場所がわからん」
フィンが顔をしかめ、向かった場所はわかったが、その位置が特定出来ず、これは誰かに聞くしかないなと思った。
「ねえ、今どういう状況なの?」
オリヴィエもロイの耳に顔を近付けて聞いた。
翔平にバシリオが危険だから向かえと言われたが、その理由もわからなければ、ロイとディーが戻って合流した理由も知りたいと言った。
「……ああ…丁度いいな」
その時、黙って聞いていたデクスターが口を開く。
「ウィルから連絡だ。オリバーと合流出来てこっちに向かってる。
会場西側にある、アンバーの間で落ち合おうと」
デクスターが黒騎士専用の通信用魔鉱石で連絡が来たと報告した。
『アンバーね、了解』
すぐに翔平から返事が来た。
「おい、ショーへーも来るつもりなのか」
ロイが顔をしかめる。
『当然だろ』
短い返事だけでプツンと通信が切れ、ロイとディーは顔を見合わせて苦笑いを浮かべた。
翔平とエミリアがロイ達と合流するのを待つ間、デクスターは一度会場内に戻り、ギルバートに現時点の報告をしに行った。
ギルバートに、隠密状態のまま静かに近寄ると、早口で状況報告してその手に通信用間鉱石を握らせると、素早く戻ってくる。
「こちらも動きますか」
ギルバートは会場に戻ってから再び、集まってきた者と話をしていたが、小さく呟くと話を打ち切って移動を開始した。
耳に渡された魔鉱石を装着し、静かにバルカム伯爵の元へ向かう。
バルカムはすでに引退した元騎士団長だが、今回の件で、暫定的に統括騎士総長という役職についていた。
騎士団の再編や今後の役割についてまとめる重要なポストだ。その任は騎士団が正常に稼働するまでという暫定的なものではあり、本人も早く他の者に任せてまた引退しようと思っている。
ギルバートはたまたま見つけた、という体でバルカムに近寄ると、軍部関係者と話をしている中に混ざった。
会場入口近辺でそれぞれが隠密魔法を施した状態で集合すると、足早に指定されたアンバーの間という休憩室へ移動する。
廊下に並ぶドアの上に掛けられた名称を確認しながら進み、すぐにその場所へ辿り着いた。
ドアの前に戦闘メイドのキーラが立っており、利用しようと近寄ってくる参加者へ丁寧に断りを入れているのが見えた。
「キーラさん」
俺は先頭を走って彼女に近寄ると、軽く肩に手を触れさせて、彼女にだけに隠密を解除すると、キーラはすぐにドアを開けて中に全員を促した。
急いで中に入ると、すでに中にウィルとオリバーが待っていた。
「待たせたか?」
「いえ、我々も今着いたところです」
ロイの質問にウィルが答え、その背後でキーラも中に入ると静かにドアを閉め、誰も入って来れないように鍵をかけ、遮音魔法を展開させた。
「リオ様は」
オリバーが青ざめて焦ったように聞いてくる。
彼は普段元男爵家の従者オリバーとして顔を晒して働いておりバシリオの近い所にいるが、常にぴったりと張り付いているわけではない。
こういった夜会の席では、影として隠密行動を取りながら情報収集に従事していることの方が多く、今日も会場内や通路などで会話される内容に聞き耳を立て、人間関係や噂話の収集と調査にあたっていた。
それはメイドして働くキーラも同様である。
まずはロイが全員に早口で簡潔に説明する。
バシリオに媚薬が盛られた。
盛ったのはロビンという給仕で、彼もまた媚薬を打たれてしまったので隔離し、ダニエルが付き添っている。
ロビンに媚薬を渡し実行させた3人はすでに拘束し騎士団に引き渡し済みである。
バシリオは金髪男に誘導され会場の外へ出た。
翔平が金髪男の異常な魔力に気づいて、フィンとオリヴィエを向かわせたが、見つけられなかった。
要点だけを説明し終わると、オリバーはどんどん青ざめて俯き、両拳を握りしめて小さく震え始めていた。
「金髪男は、ニコラス・ハルバートだ。
殿下と一緒に歩いているのを目撃した者がいた」
さらにフィンが得た情報を報告する。
「目撃ではアメリアの像へ向かったらしい」
オリバーがすぐに顔を上げてすぐに救出をと部屋を出ようとするのをデクスターが止めた。
「オリバー、落ち着け」
焦る気持ちはわかる。
バシリオが姿を消して10分以上経っている。きっと何処かの部屋に連れて行かれ、今まさにその状況に陥っているかもしれない。
だが、デクスターはバシリオが身を守るための訓練を受けていることも知っている。
自分の身体の異常が媚薬によるものだと気付けば、時間稼ぎのために魔力と精神力を総動員して抵抗をするはずだし、直接体内に打ち込まれたのではなく、経口接種だ。完全に媚薬に支配されるまでは時間がかかる。
確実にバシリオを助け、同時にニコラスを捕らえるためには、感情に任せて行動するのではなく、全員が現状を理解して連携する必要があった。
「ニコラスはバシリオ殿下に好意を寄せているそうだ」
「え?」
フィンが更なる情報を伝えると、オリバーが驚いた声を上げた。
そんな話聞いたこともなければ、そんな素振りを見たこともなかった。王子と高位貴族の後継という関係で、友人という位置にいたはずだ。
確かにナイゼルの伴侶候補に名前が上がった時、彼は様々な理由を上げて即座に辞退していた。その本当の理由は、バシリオへの想いがあったせいだったと初めて知った。
翔平もフィンの言葉を聞き驚いたが、同時にその想いは普通じゃないと考えた。
「……ただの好意じゃないよ」
眉間に皺を寄せながら話す。
「あいつの魔力に混ざる感情は、好きとか愛とかそんな綺麗なもんじゃなかった」
俺はあの魔力から感じたドス黒い欲望を思い出し鳥肌が立つ。
「あれは、汚い欲望の塊だ。
情欲とか支配欲、加虐性を伴う真っ黒い感情だった」
俺は鳥肌を抑えるように腕を摩りながら言うと、オリバーの顔がさらに青ざめる。
そんな感情を持った男に、主が、愛している人が連れ去られたとわかり、オリバーが低い呻き声を上げる。
「皆様、こちらを」
キーラが急ぐように通信用魔鉱石を差し出す。
「チャンネルは…」
「1150で」
デクスターがすぐに答え、今現在使用している公国側の魔鉱石のチャンネル番号を伝える。
すぐに持っていない騎士達がキーラの手に伸び魔鉱石を取るとチャンネルを合わせて耳に装着した。
「後は移動しながら詰めよう。ギル、聞こえてるな」
ロイが全員に魔鉱石が渡ったこと確認して、会場にいるギルバートへ声をかける。
『聞こえてますよ。こちらでもバルカム伯に近づいていつでも動けるようにしてあります』
「了解。オリバー、像の場所へ案内してくれ」
ロイが促すと、オリバーは震える体を抑え込み動き出す。
「私はその給仕がどこの屋敷の者か調べます」
キーラは、今回の夜会において各貴族から応援に来ている使用人の名簿をあたると言った。
自分達のように諜報の訓練を受けた者なら、使用人として紛れ込むことは可能だろうが、ロビンも被害を受けたと聞いて、彼は普通の人であり、利用するために誰かに送り込まれたのだろうと推察した。
おそらくは名前の上がったハルバート公爵家の使用人だ。
「全員隠密を展開。出るぞ」
ロイの指示にすぐに全員が隠密を展開すると部屋を出て、オリバーに着いて走り出した。
「ショーへー、像周辺に到着したら、感知魔法を展開させて奴の居場所を探せ。出来るよな?」
「出来る。なんならその魔法もぶち破れる」
俺も隠密を展開し、一緒に部屋を出ると走りながら答えた。
「遠慮せずにやれ」
「了解」
ロイが俺に向かってニヤリと笑い、俺もニヤリと笑った。
出し惜しみなどするものか。魔力全開にして、見つけるだけでなく奴の魔法をぶち抜いてやると意気込んだ。
「奴1人で行動しているとは思えん。全員臨戦体制を取れ」
ロイは真っ直ぐ前を向きさらに指示を出す。
オリバーを先頭に、廊下を猛スピードで移動していくが、廊下には多くの参加者がいる。
騎士達はともかく、俺は隠密をかけているとはいえ、彼らのように参加者を避けながら機敏に移動は出来なかった。
あっという間において行かれて最後について行く形になったが、それでも俺も身体強化の魔法をかけ、見失わないように懸命に走った。
その魔力の持ち主は、ロイ達が戻る2、3分前にバシリオと共に会場の外へ出て行った。
金髪男はバシリオに何かする気だと思い、フィンとオリヴィエに向かってもらった。
俺は早口で説明すると、会場内にいる3人は顔を見合わせた。
『外に出たんだな?』
ロイが確認するのと同時に、動き出していた。
「ああ。飲食コーナーでバシリオと話した後、一緒に外に出て行ったのをフィンが見てる。
金髪男は、俺に言い寄ってきたハルバート公爵家の次男、サイラスかもしれない。遠目だから断定は出来ないけど、オリヴィエがそう言ってた」
俺は話を続けながら3人が外へ出て行くのを目で追った。
『フィンとオリヴィエが追ってるんですね』
「ああ。だけど、見つけたかどうかはわからない」
姿は見えなくなっても、声だけは聞こえてくる。
俺は柵から離れると、エミリアと並んでソファに座った。
「バシリオの魔力がおかしかったんだ。大きく揺らいで制御不能みたいだった」
すると、ッチっとロイの舌打ちが聞こえた。
「何があったんだ?」
バシリオの魔力の揺らぎと、ロイとディーが消えたことが関係があるのかと尋ねる。
『リオは、媚薬を盛られた』
「はああ!?」
俺は思わず声が裏返って大きな声を上げてしまった。
「媚薬って…あの媚薬……?」
『その媚薬です』
ディーが冷静に答え、俺はバシリオの魔力の揺らぎがそのせいかと悟った。
数ヶ月前、王都に到着してすぐに俺も媚薬を盛られて酷い目にあった。
どうしようもなく情欲が溢れ出して理性が吹っ飛んだ。
俺はかろうじて愛している2人とSEXして媚薬による性欲を発散出来たが、もし駆けつけられる場所に2人がいなかったら、俺はあの時そばにいたオスカーに抱いてくれと泣いて懇願していただろう。
それを思い出してゾッとした。
そして、あの金髪男から感じた魔力の気持ち悪さの意味を瞬間的に理解した。
あれは、情欲、支配欲、加虐性欲、所有欲など、あらゆる負の欲望の塊だった。
そんなものがバシリオに向けられているとわかり、俺は怖気を感じて鳥肌が立つ。
「急いでくれ……リオが……」
レイプされる、と最後まで言えなかった。
バシリオとニコラスは会場の外に出て廊下を歩く。自分達と同じように涼みに来た参加者達の間を通り抜けながら奥へ進む。
体が異常なほど火照っており、バシリオはさらに涼しい所、と建物からも出ようと考えていた。
0度近い外気の中に2、3分もいれば治るだろうと、廊下から外へ出られる扉を目指し、廊下を曲がって外へ続く通路へと入った。
流石にここまで来るともう誰もいない。
この先は行き止まりだし、中庭へ通じるガラス扉があるだけだ。
夏なら、庭園パーティーも開かれるが、冬は通路の除雪はされていても使われることはない場所だ。
「リオ、大丈夫か?」
前を歩くニコラスが振り返って気にかけてくれる。
「う…ん」
返事をするが、自分でもわかるほど息が熱かった。
ニコラスはふらふらしながらついてくるバシリオを気にして立ち止まると、そのまま進んで近づいて来たバシリオに並び、覚束ない足取りのバシリオを支えるために、その肩を掴み抱き寄せた。
その瞬間、バシリオの体に電流のような衝撃が走り、ニコラスの手が肩から腕をなぞるように下がると、ゾクゾクとしたざわつきを感じた。
「リオ?」
ニコラスが痙攣するように細かく震え出したバシリオの顔を覗き込む。
「本当に大丈夫なのか?」
心配するように問いかけられるが、バシリオは答えることが出来なかった。
支えるように添えられた手から皮膚が泡立つような感覚が広がって行く。
「ふ…ぅ……」
バシリオの口から小さな呻き声が漏れ、そのまま俯いて立ち止まる。
バシリオよりも頭一つ分背の高いニコラスは、右手でバシリオの右肩を、左手で左腕を掴むと、さらに自分の方へ引き寄せて密着しバシリオの耳元に口を寄せた。
「身体が熱い?」
唇が触れるほど耳のそばで囁かれ、バシリオは耳にかかった息と、低い声の振動に先ほどよりももっと強烈な電流が体を駆け抜けた。
「あ……」
全身から力が抜けるのを、止められなかった。
膝がガクガクと震えて、ニコラスに支えられていなければ立ってもいられない。
体の震えに合わせるかのように、どんどん体が熱くなっていった。
なんだ、これ。
何が、どうなって……。
自分の体なのにまるで言うことがきかない。かつ体の熱が頭にまで侵食し始めて思考がまとまらない。
「リオ…辛い?」
再びニコラスに耳元で囁かれ、バシリオの体がビクン!と大きく反応した。
その反応は自分でもはっきりとわかるほど下半身の1箇所に集中しており、腰が抜けるようなゾクゾクとした快感の伴う気だるさに襲われた。
自分の男の象徴が膨張し始めている。
まるで、体の熱がその1箇所に集まっていくようだった。
突然体を襲った情欲に、しゃがみたい、座りたいと思うが、ニコラスの手がそれを許さなかった。
嵌められた。
バシリオはここでようやく自分が罠に嵌まったと気付いた。
この体の異常が媚薬のせいであることを理解し、そう仕向けたのがニコラスであると悟った。
抵抗しようと震える手でニコラスの腕を掴むが、指の一本すら自分の意思でまともに動かすことが出来なかった。
ニコラスはバシリオを支えながら、ニヤアと口角を吊り上げて歪んだ表情で笑顔を作った。
「リオ、すぐに楽にしてあげるよ」
目を細め、頬を紅潮させたニコラスは、とても嬉しそうに笑うと、バシリオを抱えるように歩き始めた。
フィンとオリヴィエはすぐに会場の外に飛び出して左右を確認する。
隠密魔法を展開しているせいで、人を探す様子の2人に気付く者は誰1人いない。
見える範囲にバシリオと金髪男の姿はなかった。
あれだけ見事な金髪なら、すぐに目につきそうなものだが、会場外にまで溢れている参加者を見渡しても見つけることは出来なかった。
廊下にも溢れている参加者に、隠密を解除して見かけたかどうか尋ねることも出来るが、大事になる可能性もあることを考えて止めた。
「あたしはあっちに行くわ」
オリヴィエが左へ行くと言ったので、フィンは頷いて右側へ進む。
急ぎつつも注意して辺りを見渡しながら感知魔法を展開して、翔平が感じたという強烈な違和感の魔力を探しながら移動する。
だが、どれだけ範囲を広げても、一緒にいるはずのバシリオの魔力すら感じられなかった。
「っちぃ…」
フィンは小さく舌打ちする。
あの金髪男は意図時にバシリオに近付き、言葉巧みに誘い出した。そして隠密魔法を展開したのだ。
完全に出遅れてしまった。
もし、翔平に言われてすぐに動いていれば、見つけられたかもしれないと、判断を
誤ったことに後悔する。
だが、こうなってしまってはもうどうしようもない。
他国の夜会会場である建物の構造も見取り図も頭にない。しかも、増築を繰り返したせいなのか、通路は相当入り組んでいるし部屋数も多い。いくら隠密で姿を隠しているといっても、人の目がある中で一つ一つのドアを開けて確認することなど出来なかった。
フィンは早々に見切りをつけて会場へ戻るために踵を返す。
見つからない以上、単独行動は避けて何か別の方法を模索するべきだと考えた。
会場入口の大扉の近くに戻ると、反対側へ探しに行ったオリヴィエも戻ってくるのが見えた。
彼女も自分と同じように考えたのだろう、フィンの姿を見とめると小さく首を振って顔をしかめた。
「見当たらないわ」
そばに寄ると、オリヴィエが苛立つように報告してきたので、俺もだ、と短く答えた。
だが、
「バシリオ様とニコラス様、お似合いよね」
すぐ後ろを通過した女性が、一緒に歩いていた友人に話すのが聞こえた。
咄嗟に彼女達へ視線を向けその話に集中する。
「……ここだけの話しよ?」
話しかけられた女性が立ち止まり、素早く周囲を見渡して、内緒話をするように友人に近付いて腕を引っ張ると廊下の隅に移動した。
フィンとオリヴィエも同じように移動してそばに立つ。
「ニコラス様、バシリオ様のことがお好きなのよ。
だからナイゼル様の伴侶候補に上がった時もすぐに辞退したの」
「ええ!?そうなの?そんな話聞いたこともないわよ?」
驚いた女性が大きめの声を上げたので、もう1人がしーと口の前に指を立てる。
「間違いないわ。サイラス様から聞いたもの。でも、秘密なんですって」
「どうしてよ」
「ほら…、ハルバート家は中立派でしょ?噂が立つと面倒くさいことになるらしいわ」
「ああ……そういうこと…」
「でも、派閥の障害が無くなって、ニコラス様はようやく想いを打ち明けられる時がきたのよ」
女性2人は、ニコラスの恋物語にうっとりとした表情を浮かべる。
「アメリアの像の方へ向かったから、きっとその前で告白されるのよ」
「きゃぁ~、どうなるのかしら。バシリオ様お受けになるかしら」
女性2人が頬を染めながらキャッキャッと恋愛話に盛り上がっていた。
すぐそばでその話を聞いていたフィンとオリヴィエは、振って沸いた情報にキュッと口を結んだ。
アメリアの像の方に向かった。
すぐに行かなければ、と思ったが、その像が何処にあるのかがわからなかった。
アメリアとは、創造神の妻となった人の名前である。
創造神に見初められたその女性は聖母と呼ばれ、愛と献身の女神として信仰を集めている。
その像の前で愛を告げること、プロポーズすることが、この世界において最もポピュラーな告白方法であり、想いを受け入れられれば、女神から祝福を与えられるという言い伝えもあった。
フィンとオリヴィエは、一旦戻って報告し、すぐにアメリアの像の場所を突き止めようと思い会場へ体を向けた。
「フィン、オリヴィエ」
だが、肩を掴まれて行く手を阻まれた。
「ロイ」
「ディー」
接触したことで、互いに掛けられた隠密魔法が解除される。
「良くわかったな」
フィンが自分にかけた隠密魔法が完璧ではなかったのかと焦ったような表情になった。
「大丈夫だ、完璧だよ」
そんなフィンの表情で、彼が思ったことを察したロイが笑う。
「こっちにはショーヘイが居ますから」
ディーも笑い、翔平がフィンとオリヴィエの場所を教えてくれたと言った。
だが、それは翔平が離れた場所にいた状態でも隠密魔法を見破ったということになり、フィンは苦笑する。
『会えた?』
「ああ、合流したぞ」
ロイが翔平の質問に答え、翔平の声が聞こえなかったオリヴィエは首をかしげつつ、ロイとディー、デクスターの耳に通信用魔鉱石が付けられていることを把握した。
フィンがロイの通信用魔鉱石が付けられている右耳を引っ張ると、その耳に向かって話しかける。
ロイが耳を引っ張られて痛いと顔をしかめつつ、フィンに耳を差し出す。
「ショーヘイさん、すまん、見つからなかった。だが、アメリアの像へ向かったという情報を入手した」
『あめりあのぞー?』
その言葉は初めて聞く言葉で、聞こえた音のまま聞き返す。
「だが、その像の場所がわからん」
フィンが顔をしかめ、向かった場所はわかったが、その位置が特定出来ず、これは誰かに聞くしかないなと思った。
「ねえ、今どういう状況なの?」
オリヴィエもロイの耳に顔を近付けて聞いた。
翔平にバシリオが危険だから向かえと言われたが、その理由もわからなければ、ロイとディーが戻って合流した理由も知りたいと言った。
「……ああ…丁度いいな」
その時、黙って聞いていたデクスターが口を開く。
「ウィルから連絡だ。オリバーと合流出来てこっちに向かってる。
会場西側にある、アンバーの間で落ち合おうと」
デクスターが黒騎士専用の通信用魔鉱石で連絡が来たと報告した。
『アンバーね、了解』
すぐに翔平から返事が来た。
「おい、ショーへーも来るつもりなのか」
ロイが顔をしかめる。
『当然だろ』
短い返事だけでプツンと通信が切れ、ロイとディーは顔を見合わせて苦笑いを浮かべた。
翔平とエミリアがロイ達と合流するのを待つ間、デクスターは一度会場内に戻り、ギルバートに現時点の報告をしに行った。
ギルバートに、隠密状態のまま静かに近寄ると、早口で状況報告してその手に通信用間鉱石を握らせると、素早く戻ってくる。
「こちらも動きますか」
ギルバートは会場に戻ってから再び、集まってきた者と話をしていたが、小さく呟くと話を打ち切って移動を開始した。
耳に渡された魔鉱石を装着し、静かにバルカム伯爵の元へ向かう。
バルカムはすでに引退した元騎士団長だが、今回の件で、暫定的に統括騎士総長という役職についていた。
騎士団の再編や今後の役割についてまとめる重要なポストだ。その任は騎士団が正常に稼働するまでという暫定的なものではあり、本人も早く他の者に任せてまた引退しようと思っている。
ギルバートはたまたま見つけた、という体でバルカムに近寄ると、軍部関係者と話をしている中に混ざった。
会場入口近辺でそれぞれが隠密魔法を施した状態で集合すると、足早に指定されたアンバーの間という休憩室へ移動する。
廊下に並ぶドアの上に掛けられた名称を確認しながら進み、すぐにその場所へ辿り着いた。
ドアの前に戦闘メイドのキーラが立っており、利用しようと近寄ってくる参加者へ丁寧に断りを入れているのが見えた。
「キーラさん」
俺は先頭を走って彼女に近寄ると、軽く肩に手を触れさせて、彼女にだけに隠密を解除すると、キーラはすぐにドアを開けて中に全員を促した。
急いで中に入ると、すでに中にウィルとオリバーが待っていた。
「待たせたか?」
「いえ、我々も今着いたところです」
ロイの質問にウィルが答え、その背後でキーラも中に入ると静かにドアを閉め、誰も入って来れないように鍵をかけ、遮音魔法を展開させた。
「リオ様は」
オリバーが青ざめて焦ったように聞いてくる。
彼は普段元男爵家の従者オリバーとして顔を晒して働いておりバシリオの近い所にいるが、常にぴったりと張り付いているわけではない。
こういった夜会の席では、影として隠密行動を取りながら情報収集に従事していることの方が多く、今日も会場内や通路などで会話される内容に聞き耳を立て、人間関係や噂話の収集と調査にあたっていた。
それはメイドして働くキーラも同様である。
まずはロイが全員に早口で簡潔に説明する。
バシリオに媚薬が盛られた。
盛ったのはロビンという給仕で、彼もまた媚薬を打たれてしまったので隔離し、ダニエルが付き添っている。
ロビンに媚薬を渡し実行させた3人はすでに拘束し騎士団に引き渡し済みである。
バシリオは金髪男に誘導され会場の外へ出た。
翔平が金髪男の異常な魔力に気づいて、フィンとオリヴィエを向かわせたが、見つけられなかった。
要点だけを説明し終わると、オリバーはどんどん青ざめて俯き、両拳を握りしめて小さく震え始めていた。
「金髪男は、ニコラス・ハルバートだ。
殿下と一緒に歩いているのを目撃した者がいた」
さらにフィンが得た情報を報告する。
「目撃ではアメリアの像へ向かったらしい」
オリバーがすぐに顔を上げてすぐに救出をと部屋を出ようとするのをデクスターが止めた。
「オリバー、落ち着け」
焦る気持ちはわかる。
バシリオが姿を消して10分以上経っている。きっと何処かの部屋に連れて行かれ、今まさにその状況に陥っているかもしれない。
だが、デクスターはバシリオが身を守るための訓練を受けていることも知っている。
自分の身体の異常が媚薬によるものだと気付けば、時間稼ぎのために魔力と精神力を総動員して抵抗をするはずだし、直接体内に打ち込まれたのではなく、経口接種だ。完全に媚薬に支配されるまでは時間がかかる。
確実にバシリオを助け、同時にニコラスを捕らえるためには、感情に任せて行動するのではなく、全員が現状を理解して連携する必要があった。
「ニコラスはバシリオ殿下に好意を寄せているそうだ」
「え?」
フィンが更なる情報を伝えると、オリバーが驚いた声を上げた。
そんな話聞いたこともなければ、そんな素振りを見たこともなかった。王子と高位貴族の後継という関係で、友人という位置にいたはずだ。
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翔平もフィンの言葉を聞き驚いたが、同時にその想いは普通じゃないと考えた。
「……ただの好意じゃないよ」
眉間に皺を寄せながら話す。
「あいつの魔力に混ざる感情は、好きとか愛とかそんな綺麗なもんじゃなかった」
俺はあの魔力から感じたドス黒い欲望を思い出し鳥肌が立つ。
「あれは、汚い欲望の塊だ。
情欲とか支配欲、加虐性を伴う真っ黒い感情だった」
俺は鳥肌を抑えるように腕を摩りながら言うと、オリバーの顔がさらに青ざめる。
そんな感情を持った男に、主が、愛している人が連れ去られたとわかり、オリバーが低い呻き声を上げる。
「皆様、こちらを」
キーラが急ぐように通信用魔鉱石を差し出す。
「チャンネルは…」
「1150で」
デクスターがすぐに答え、今現在使用している公国側の魔鉱石のチャンネル番号を伝える。
すぐに持っていない騎士達がキーラの手に伸び魔鉱石を取るとチャンネルを合わせて耳に装着した。
「後は移動しながら詰めよう。ギル、聞こえてるな」
ロイが全員に魔鉱石が渡ったこと確認して、会場にいるギルバートへ声をかける。
『聞こえてますよ。こちらでもバルカム伯に近づいていつでも動けるようにしてあります』
「了解。オリバー、像の場所へ案内してくれ」
ロイが促すと、オリバーは震える体を抑え込み動き出す。
「私はその給仕がどこの屋敷の者か調べます」
キーラは、今回の夜会において各貴族から応援に来ている使用人の名簿をあたると言った。
自分達のように諜報の訓練を受けた者なら、使用人として紛れ込むことは可能だろうが、ロビンも被害を受けたと聞いて、彼は普通の人であり、利用するために誰かに送り込まれたのだろうと推察した。
おそらくは名前の上がったハルバート公爵家の使用人だ。
「全員隠密を展開。出るぞ」
ロイの指示にすぐに全員が隠密を展開すると部屋を出て、オリバーに着いて走り出した。
「ショーへー、像周辺に到着したら、感知魔法を展開させて奴の居場所を探せ。出来るよな?」
「出来る。なんならその魔法もぶち破れる」
俺も隠密を展開し、一緒に部屋を出ると走りながら答えた。
「遠慮せずにやれ」
「了解」
ロイが俺に向かってニヤリと笑い、俺もニヤリと笑った。
出し惜しみなどするものか。魔力全開にして、見つけるだけでなく奴の魔法をぶち抜いてやると意気込んだ。
「奴1人で行動しているとは思えん。全員臨戦体制を取れ」
ロイは真っ直ぐ前を向きさらに指示を出す。
オリバーを先頭に、廊下を猛スピードで移動していくが、廊下には多くの参加者がいる。
騎士達はともかく、俺は隠密をかけているとはいえ、彼らのように参加者を避けながら機敏に移動は出来なかった。
あっという間において行かれて最後について行く形になったが、それでも俺も身体強化の魔法をかけ、見失わないように懸命に走った。
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