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第一章 出会い
拾われた子が人を拾う
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ルシルは今日も朝早くに目を覚ます。
いつもと同じように作物と家畜の様子を確認をしてから、朝食を食べる。
冬が近付き朝晩は冷え込みが厳しくなってきており、吐く息が白く、畑の作物もそろそろ終わりかと思う。
来年のために今植えてある作物を抜き、家畜の糞と合わせて堆肥作りに取り掛かろうと考えた。
根菜は成長までもう少しかかるから、まずは葉野菜をと、堆肥作りの計画を頭の中で考え、さらに冬籠り用の備蓄食糧の準備を始めなければと、平行してチーズ作りの手順も頭に浮かべた。
朝食を終えて食後のお茶を飲みながら少しだけ休むと、早速行動を開始する。
農作業や家畜の世話は力仕事が多いが、養父に教わった身体強化の魔法で簡単に済ませることが出来る。
生活魔法と言われる、火や水の魔法、そして夜の明かりに使う魔鉱灯への魔力充填は養母のマリーから教わった。
繰り返し魔法を使い、枯渇ギリギリまで魔力を消費することで、魔力総量が少しづつ増えていくと習った。
完全に枯渇させてしまえば総量は大幅に増えるが、枯渇すれば確実に2、3日は思うように動けなくなる。農作業や家畜の世話は毎日の仕事であり、休むわけにはいかない。だから昏倒しないギリギリの状態で魔力を使っていた。
自分の魔力を正確にコントロールし、その量を常に把握することが大切だと教わった。
おかげで現在ルシルは一般の平均値の数十倍の魔力量がある。
全て畑仕事と生活のための魔力であり、養父のように戦闘に使うものではない。
元騎士であったドンは、一般人であるルシルに戦闘技術を教えることはなく、身体強化をメインに教えた。
とは言っても、住んでいる森は肉食の魔物が数多く棲息する危険な森である。
対人戦の戦闘技術は教えられなかったが、魔物を倒すための技術と、身を守るすべだけは叩き込まれた。そしてその技術は対魔物であり、人には絶対に使ってはならないと教え込まれていた。
ジェイド達に襲われた時、本当はその力を発揮することも出来た。
だが、人に対して使うことは禁じられており、本能剥き出しの魔物に対しての技術は、確実に人を殺せるものであるという教えがルシルを抑え込んだ。
ドンが今のルシルの状況を知ったなら、きっと自分の教えがルシルを苦しめていると後悔したであろう。
街に行った数日後、ルシルは備蓄食料の確保のために、さらに森の奥に入った所にある川へと向かう。
手作りの釣竿を持って、通い慣れた道なき道を身体強化をかけた脚力でぴょんぴょんと跳ねながら進んで行く。
「たくさん釣れるかな」
ニコニコしながらポイントに到着すると、持ってきたシャベルでその辺の土を掘り返して餌となるミミズを採ると、川の対岸にある木々の影になっているポイントに向かって釣竿を振った。
釣竿を垂らして数分後、早速反応があってタイミングを見て引き上げると、70センチほどの魚が釣れた。
幸先のいい当たりにルシルは笑顔になると、同じポイントへまた竿を振った。
1時間ほどで3匹の魚を確保したところで木陰で休憩していると、上流の方から何かが流れてくるのを見つけた。
「??」
ルシルはすぐに立ち上がって川のそばに近寄ると、その流れてくるものを見て、鞄であることに気付く。
「なんで鞄が…」
ルシルは休憩場所に戻って釣竿を持ってくると何度か鞄に向かって竿を振る。
3度目で釣り針が鞄に引っかかり、鞄を手繰り寄せると川から引き上げた。
頑丈に作られている革製の鞄は、中に水が入り込まなかったために浮いていたらしかった。
鞄を置いて再び上流を見ると、もう一つ同じような鞄が流れてくる。
ルシルは再び鞄を釣り上げた。
「……」
しばらく待ったが他に流れてくる様子はなく、ルシルは二つの鞄をその場に置いて、何気に上流が気になって向かってみることにした。
高低差10mほどの滝の横をひょいひょいと軽やかな足取りで上がって行くと、そのまま川づたいに進んで行く。
そして、川の中に胸から下を水に浸からせた状態でうつ伏せに岩にしがみつくように倒れている男を発見した。
ルシルは慌てて駆け寄ると男の体を川から引き上げる。
「大丈夫ですか!!」
自分の体が濡れるのも構わずに男を仰向けにすると、その胸や腕、全身に斬り付けられた傷があることに気付いた。
胸の傷からは今もじわじわと血が滲み出ており、触れた手が赤く染まる。
咄嗟に胸に手を当ててヒールを使うが、ルシルは血を止める程度しか治癒魔法を使えない。
胸の傷は獣によるものではなく明らかに剣傷だった。おそらく街道の細道で野盗に襲われたと理解した。きっとあの鞄もこの男の物だ。
何度かヒールをかけると血が止まり、男の口元に耳を当て呼吸を確認すると、微かに息もあり、胸も上下に動いている。他の傷も浅いようで致命傷には至っていないとわかりホッとする。
だが、男の体が異常に冷たくなっている。冬が迫る川水はとても冷たく体温を奪っていた。
ルシルは身体強化の魔法を全身にかけると、自分よりも背が高くガタイのいい男を肩に担ぎ上げ、来た時と同じように軽々と下流へ降りて行く。
「えっと……」
釣竿、釣った魚、鞄が二つ、男。
どうやって運ぼうかと考えたが、ルシルは人命優先だと、荷物をそこに残したまま男を背負い走り出す。
全速力で家に戻れば30分もかからない。
ドンに教えられた身体強化魔法が人命救助に役立つことになった。
ルシルはなるべく男の体に負担がかからないよう静かに、だが急いで来た道を走って戻った。
家に到着するとすぐに暖炉に火を入れる。
男の体から濡れた衣服を剥ぎ取り、タオルで丁寧に拭き取ると自分の部屋のベッドから布団や毛布などをたくさん持ってきて暖炉の前へ男を寝かせた。
暖炉にどんどん薪を焚べて火を大きくし部屋を温めていくが、男の体は冷たいままだった。
必死に手で摩ったり布団を何重にも重ねて温めようとするのだが、男の顔色はどんどん白くなり唇は青くなっていく。
「どうしよう…」
ルシルはオロオロと狼狽え、懸命に男の体を摩擦で温めようとした。
だが一向に体温が回復せず、ルシルはグッと口を真横に結ぶと、意を決した。
おもむろに立ち上がると着ていた衣服を脱ぎ捨てて全裸になると、同じ布団に潜り込む。
「冷た…」
肌が触れると氷のように冷たい男の体に声が出たが、我慢して肌を密着させた。
自分よりも大きな男の体を抱きしめ、肌を触れ合わせて体温を移していく。それと同時に体を擦り続け、必死に男の体を温め続けた。
一体何時間そうしていたのだろうか。
とっくに陽は落ちて外は真っ暗になっている。
ルシルはふと顔を上げ、そばにある男の横顔を見て、その頬に赤みがさしていることを確認するとホッと息をはいた。
「お腹空いたな…」
そう呟いたが、魔力をたくさん使って疲労感に襲われており、起き上がることをせずにそのまま男を抱きしめたまま目を閉じた。
温かい。
ふわふわとした物に包まれている感覚と、全身を包む温かさにアシェルはゆっくりと覚醒していく。
覚醒が近いのだが、かなりゆっくりとした速度で、アシェルはあまりにも気持ちが良い微睡みに何度も再び睡魔に引き摺り込まれそうになった。
何が起こった…?
俺は…何を……
再び意識が混濁しそうになるのを、思考によって繋ぎ止めようとするが、気を抜けばブツブツと途切れ、意識が飛んでしまいそうになる。
必死に目覚めようとするが、体が異常に重たく感じて極度に疲労していることも理解した。
何度かゆっくりと瞬きを繰り返し、薄目を開けると、白い何かが視界の隅を掠めて眼球だけを動かしてその何かを見た。
白い毛が目に入り、そしてゴツゴツとした年輪のような模様のある乳白色の物にも気付く。
その何かは自分の呼吸に合わせるように、僅かに上下に揺れていた。
人の頭であり、白い髪の毛と角であると理解したのだが、状況が理解出来ない。
目線を動かし、次にパチパチと音を立てて爆ぜる暖炉の火が周囲をオレンジ色に照らし、暖かい布団や毛布に包まれていることを理解する。
視線を戻すと天井が見え何処かの小屋であることも理解した所で、アシェルの意識は再び遠のいていった。
いつもと同じように作物と家畜の様子を確認をしてから、朝食を食べる。
冬が近付き朝晩は冷え込みが厳しくなってきており、吐く息が白く、畑の作物もそろそろ終わりかと思う。
来年のために今植えてある作物を抜き、家畜の糞と合わせて堆肥作りに取り掛かろうと考えた。
根菜は成長までもう少しかかるから、まずは葉野菜をと、堆肥作りの計画を頭の中で考え、さらに冬籠り用の備蓄食糧の準備を始めなければと、平行してチーズ作りの手順も頭に浮かべた。
朝食を終えて食後のお茶を飲みながら少しだけ休むと、早速行動を開始する。
農作業や家畜の世話は力仕事が多いが、養父に教わった身体強化の魔法で簡単に済ませることが出来る。
生活魔法と言われる、火や水の魔法、そして夜の明かりに使う魔鉱灯への魔力充填は養母のマリーから教わった。
繰り返し魔法を使い、枯渇ギリギリまで魔力を消費することで、魔力総量が少しづつ増えていくと習った。
完全に枯渇させてしまえば総量は大幅に増えるが、枯渇すれば確実に2、3日は思うように動けなくなる。農作業や家畜の世話は毎日の仕事であり、休むわけにはいかない。だから昏倒しないギリギリの状態で魔力を使っていた。
自分の魔力を正確にコントロールし、その量を常に把握することが大切だと教わった。
おかげで現在ルシルは一般の平均値の数十倍の魔力量がある。
全て畑仕事と生活のための魔力であり、養父のように戦闘に使うものではない。
元騎士であったドンは、一般人であるルシルに戦闘技術を教えることはなく、身体強化をメインに教えた。
とは言っても、住んでいる森は肉食の魔物が数多く棲息する危険な森である。
対人戦の戦闘技術は教えられなかったが、魔物を倒すための技術と、身を守るすべだけは叩き込まれた。そしてその技術は対魔物であり、人には絶対に使ってはならないと教え込まれていた。
ジェイド達に襲われた時、本当はその力を発揮することも出来た。
だが、人に対して使うことは禁じられており、本能剥き出しの魔物に対しての技術は、確実に人を殺せるものであるという教えがルシルを抑え込んだ。
ドンが今のルシルの状況を知ったなら、きっと自分の教えがルシルを苦しめていると後悔したであろう。
街に行った数日後、ルシルは備蓄食料の確保のために、さらに森の奥に入った所にある川へと向かう。
手作りの釣竿を持って、通い慣れた道なき道を身体強化をかけた脚力でぴょんぴょんと跳ねながら進んで行く。
「たくさん釣れるかな」
ニコニコしながらポイントに到着すると、持ってきたシャベルでその辺の土を掘り返して餌となるミミズを採ると、川の対岸にある木々の影になっているポイントに向かって釣竿を振った。
釣竿を垂らして数分後、早速反応があってタイミングを見て引き上げると、70センチほどの魚が釣れた。
幸先のいい当たりにルシルは笑顔になると、同じポイントへまた竿を振った。
1時間ほどで3匹の魚を確保したところで木陰で休憩していると、上流の方から何かが流れてくるのを見つけた。
「??」
ルシルはすぐに立ち上がって川のそばに近寄ると、その流れてくるものを見て、鞄であることに気付く。
「なんで鞄が…」
ルシルは休憩場所に戻って釣竿を持ってくると何度か鞄に向かって竿を振る。
3度目で釣り針が鞄に引っかかり、鞄を手繰り寄せると川から引き上げた。
頑丈に作られている革製の鞄は、中に水が入り込まなかったために浮いていたらしかった。
鞄を置いて再び上流を見ると、もう一つ同じような鞄が流れてくる。
ルシルは再び鞄を釣り上げた。
「……」
しばらく待ったが他に流れてくる様子はなく、ルシルは二つの鞄をその場に置いて、何気に上流が気になって向かってみることにした。
高低差10mほどの滝の横をひょいひょいと軽やかな足取りで上がって行くと、そのまま川づたいに進んで行く。
そして、川の中に胸から下を水に浸からせた状態でうつ伏せに岩にしがみつくように倒れている男を発見した。
ルシルは慌てて駆け寄ると男の体を川から引き上げる。
「大丈夫ですか!!」
自分の体が濡れるのも構わずに男を仰向けにすると、その胸や腕、全身に斬り付けられた傷があることに気付いた。
胸の傷からは今もじわじわと血が滲み出ており、触れた手が赤く染まる。
咄嗟に胸に手を当ててヒールを使うが、ルシルは血を止める程度しか治癒魔法を使えない。
胸の傷は獣によるものではなく明らかに剣傷だった。おそらく街道の細道で野盗に襲われたと理解した。きっとあの鞄もこの男の物だ。
何度かヒールをかけると血が止まり、男の口元に耳を当て呼吸を確認すると、微かに息もあり、胸も上下に動いている。他の傷も浅いようで致命傷には至っていないとわかりホッとする。
だが、男の体が異常に冷たくなっている。冬が迫る川水はとても冷たく体温を奪っていた。
ルシルは身体強化の魔法を全身にかけると、自分よりも背が高くガタイのいい男を肩に担ぎ上げ、来た時と同じように軽々と下流へ降りて行く。
「えっと……」
釣竿、釣った魚、鞄が二つ、男。
どうやって運ぼうかと考えたが、ルシルは人命優先だと、荷物をそこに残したまま男を背負い走り出す。
全速力で家に戻れば30分もかからない。
ドンに教えられた身体強化魔法が人命救助に役立つことになった。
ルシルはなるべく男の体に負担がかからないよう静かに、だが急いで来た道を走って戻った。
家に到着するとすぐに暖炉に火を入れる。
男の体から濡れた衣服を剥ぎ取り、タオルで丁寧に拭き取ると自分の部屋のベッドから布団や毛布などをたくさん持ってきて暖炉の前へ男を寝かせた。
暖炉にどんどん薪を焚べて火を大きくし部屋を温めていくが、男の体は冷たいままだった。
必死に手で摩ったり布団を何重にも重ねて温めようとするのだが、男の顔色はどんどん白くなり唇は青くなっていく。
「どうしよう…」
ルシルはオロオロと狼狽え、懸命に男の体を摩擦で温めようとした。
だが一向に体温が回復せず、ルシルはグッと口を真横に結ぶと、意を決した。
おもむろに立ち上がると着ていた衣服を脱ぎ捨てて全裸になると、同じ布団に潜り込む。
「冷た…」
肌が触れると氷のように冷たい男の体に声が出たが、我慢して肌を密着させた。
自分よりも大きな男の体を抱きしめ、肌を触れ合わせて体温を移していく。それと同時に体を擦り続け、必死に男の体を温め続けた。
一体何時間そうしていたのだろうか。
とっくに陽は落ちて外は真っ暗になっている。
ルシルはふと顔を上げ、そばにある男の横顔を見て、その頬に赤みがさしていることを確認するとホッと息をはいた。
「お腹空いたな…」
そう呟いたが、魔力をたくさん使って疲労感に襲われており、起き上がることをせずにそのまま男を抱きしめたまま目を閉じた。
温かい。
ふわふわとした物に包まれている感覚と、全身を包む温かさにアシェルはゆっくりと覚醒していく。
覚醒が近いのだが、かなりゆっくりとした速度で、アシェルはあまりにも気持ちが良い微睡みに何度も再び睡魔に引き摺り込まれそうになった。
何が起こった…?
俺は…何を……
再び意識が混濁しそうになるのを、思考によって繋ぎ止めようとするが、気を抜けばブツブツと途切れ、意識が飛んでしまいそうになる。
必死に目覚めようとするが、体が異常に重たく感じて極度に疲労していることも理解した。
何度かゆっくりと瞬きを繰り返し、薄目を開けると、白い何かが視界の隅を掠めて眼球だけを動かしてその何かを見た。
白い毛が目に入り、そしてゴツゴツとした年輪のような模様のある乳白色の物にも気付く。
その何かは自分の呼吸に合わせるように、僅かに上下に揺れていた。
人の頭であり、白い髪の毛と角であると理解したのだが、状況が理解出来ない。
目線を動かし、次にパチパチと音を立てて爆ぜる暖炉の火が周囲をオレンジ色に照らし、暖かい布団や毛布に包まれていることを理解する。
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