ブラッティーメアリー

プロローグ

予感

「お母さん……お母さん！！ 起きてよ！！」
昔の私が、血まみれの母にすがりついて泣いている。
何度呼んでも、母は動かない。温かかったはずの身体が、冷たくなっていく。

──また、この夢か……。

「──っ！！ はぁっ……はぁっ……」
息を荒げながら、私は飛び起きた。
最近、あの夢を見ることが増えた。あの夜の記憶が、何度もフラッシュバックする。

私はメアリー・メア。探偵よ。

四年前、母は殺された。
犯人は── デビル・スビット。
五年以上にわたり、女性ばかりを狙い続けている殺人鬼。

どうして彼が女性ばかりを狙うのか？
その理由は、殺された女性の遺体にある。

すべての遺体は、必ず身体のどこか一部を奪われているのだ。
母の遺体もそうだった。右目が、無くなっていた……。

なぜ母が狙われたのか。なぜ彼はそんな殺し方をするのか。
そして、なぜまだ捕まっていないのか。

警察は何年も捜査しているが、決定的な手がかりを掴めずにいた。
ならば、私がこの手で探し出すしかない。
母の仇を討つために。
そして、この謎を解き明かすために。

だから私は探偵になった。
ブラッディ・メアリー探偵事務所を設立し、数々の難事件を解決。
十八歳にして、一流の探偵と呼ばれるまでになった。

でも──私にとって、本当に解くべき事件はまだ終わっていない。

プルルルルル……

電話のベルが鳴る。
私はすぐに受話器を取り、応答した。

「こちら、ブラッディ・メアリー。……ウィード家で殺人？ わかりました、すぐ向かいます」

電話を切った瞬間、胸の奥で妙な感覚がした。
まるで──私の過去と繋がっているかのような、そんな予感が。

──この事件が、すべての真実を暴く鍵になるとは、この時の私は思いもしなかった。