11 / 78
11
しおりを挟む
葛城能吐の引き起こした事件から、その後2週間が過ぎていた。
葛城円も既に回復し、彼も無事に元通りの生活を送れるようになっていた。
そんな父親を見て、韓媛もとりあえずはひと安心している。
「やはり、能吐は処刑される事になってしまった。でもこれは、流石にどうする事も出来ない……」
韓媛はそう言いながら、今回の事件の解決に使った剣を眺めていた。
あの不思議な光景を見なければ、この事件は解決されないままで、父親も大変な事になっていたはずだ。
また彼女はそれ以降、今回のような危機に合わないためにも、この剣は出来るだけ肌身離さず持ち歩く事にした。
ちなみに普段は、剣は腰の紐の中に隠すようにして入れている。
「災いごとを断ち切るって、やはり今回のような事を意味していたのね」
事件からすでに2週間が経ってはいたが、まだこの事件の興奮が収まっていない。それぐらいこの2週間はとても目まぐるしく、本当に気が休む日がなかったと彼女は思った。
それと意外だったのが、今回の大泊瀬皇子の敏速な対応である。
彼は能吐を捕えた後、直ぐさま大和に毒の件を確認させた。
ただでさえ今は雄朝津間大王の体調不良と、木梨軽皇子の問題が持ち上がっている。
そんな中で、彼が能吐が毒を受け取った証拠を大和内で見つけるとは、なんて凄い人だろうと彼女は思った。
恐らく、能吐と彼に協力した大和の人間も、大泊瀬皇子がここまで出来た人物だとは思っていなかったのであろう。
こうした事があったため、ここまで早く対応出来た彼に関して、韓媛の中でかなり評価が上がった。
「でも、いくらお父様の事で動揺していたとはいえ、彼の前で散々泣いて本当にみっともない真似をしてしまった」
ただ彼にあんな優しい一面があったとは、彼女からしてもとても意外だった。
「それと、彼にまだお礼をきちんと言えていない。皇子は今度いつここに来られるのかしら」
そんな事を韓媛が考え込んでいると、彼女の部屋に誰かがやって来たようだ。
「韓媛、突然で悪い。俺だ、大泊瀬だ」
いきなり彼女の部屋の外から、大泊瀬皇子の声が聞こえて来た。
「え、大泊瀬皇子?」
何故突然に彼が自分の部屋にやって来たのだろう。韓媛は余りに突然すぎて、少し混乱した。
「円に、ここに来る許可はとってある。部屋の中に入っても良いか」
彼が来た理由は分からないが、ひとまずは部屋に入って貰った方が良さそうだ。
彼女は急いで剣をしまうと、外にいる皇子に返事をした。
「皇子、分かりました。では中に入っていただいて大丈夫です」
韓媛はそう言って、彼を部屋の中に招き入れた。
大泊瀬皇子は部屋の中に入って来ると、彼女の前に来て座った。
「韓媛、突然で済まない。どうやら円の体調も無事に回復したようだ。それに今回の事件では、お前にも危害が出なくて本当に良かった」
(皇子は、私の事も心配されてたのね)
韓媛はそう思うと、何だかとても嬉しい気持ちになった。これが4年前、かなりの問題児だった少年だとは到底思えない。
「今回は大泊瀬皇子には本当に感謝してます。もし犯人が捕まらなかったら、今頃私の父はどうなっていた事か……」
彼女はそう言うと、また感情が込み上げて来た。
「俺は別に、そんな対した事はしてない。元々円には、俺が小さい頃から色々と世話になっていた」
大泊瀬皇子は特に何ともないような感じで、彼女にそう答えた。
「あの事件があって以降、私皇子にはずっとお礼を言いたいと思ってました。父を助けて下さって本当にありがとうございます」
韓媛は彼に対して、ただただ感謝の思いでいっぱいだった。
そんな彼女の態度を見て、大泊瀬皇子も少しやれやれと言った感じの表情を見せる。
彼が思うに、韓媛はとても賢くて聡明な娘の印象である。そんな彼女がこんなにしおらしい態度を見せるのは、本当に意外だなと思った。
出来る事なら、子供の頃にこんな彼女を見てみたかったと思う。
「まぁ、お前が元気そうで俺も安心した。所でちょっと、お前に聞きたい事がある」
どうやら大泊瀬皇子がここに来たのは、その事を聞くのが目的のようだ。
「私に聞きたい事ですか? 皇子一体どのような事でしょう」
韓媛は一体何の事だろうと思った。
「今回の件で、能吐相手にお前は毒の話しをしていた。しかも奴が俺に濡れ衣を着せようとしてた話しまで。どうしてお前はその事を知っていた?」
それを聞いた韓媛は、内心「しまった!」と思った。あの時は自分も本当に必死で、そんな事を考えずに能吐に話していた。
それにまさかあの場面で大泊瀬皇子が現れるなんて、誰が想像出来ただろうか。
(これは油断していたわ。とりあえず今はどうにかして彼に誤魔化さないと)
「大泊瀬皇子、申し訳ありません。私も父は何か毒を盛られたのではと、あの時考えてました。
それで能吐を見て、何故か彼が怪しい気がしたもので……それで思わず彼にかまをかけてみました」
大泊瀬皇子は、それを聞いてとても驚いた。まさか彼女が、そのような事をするとはとても想像がつかない。それ程までに、あの時は父親の事で気が動転していたのだろうか。
「ふーん、それは意外だな。お前がそんな行動に出るとは……まぁ、お前が何かしたとは全く思っていない。ただ俺が少し気になっただけだ」
大泊瀬皇子にそう言われて、韓媛はとりあえず安心した。
(大泊瀬皇子に信じてもらえて、本当に良かったわ)
「でも、大泊瀬皇子もとてもご立派になられましたね。子供の時とは本当に別人だわ」
韓媛は少し嬉しそうにしながら、彼に言った。これは彼女からしてみても本心である。
葛城円も既に回復し、彼も無事に元通りの生活を送れるようになっていた。
そんな父親を見て、韓媛もとりあえずはひと安心している。
「やはり、能吐は処刑される事になってしまった。でもこれは、流石にどうする事も出来ない……」
韓媛はそう言いながら、今回の事件の解決に使った剣を眺めていた。
あの不思議な光景を見なければ、この事件は解決されないままで、父親も大変な事になっていたはずだ。
また彼女はそれ以降、今回のような危機に合わないためにも、この剣は出来るだけ肌身離さず持ち歩く事にした。
ちなみに普段は、剣は腰の紐の中に隠すようにして入れている。
「災いごとを断ち切るって、やはり今回のような事を意味していたのね」
事件からすでに2週間が経ってはいたが、まだこの事件の興奮が収まっていない。それぐらいこの2週間はとても目まぐるしく、本当に気が休む日がなかったと彼女は思った。
それと意外だったのが、今回の大泊瀬皇子の敏速な対応である。
彼は能吐を捕えた後、直ぐさま大和に毒の件を確認させた。
ただでさえ今は雄朝津間大王の体調不良と、木梨軽皇子の問題が持ち上がっている。
そんな中で、彼が能吐が毒を受け取った証拠を大和内で見つけるとは、なんて凄い人だろうと彼女は思った。
恐らく、能吐と彼に協力した大和の人間も、大泊瀬皇子がここまで出来た人物だとは思っていなかったのであろう。
こうした事があったため、ここまで早く対応出来た彼に関して、韓媛の中でかなり評価が上がった。
「でも、いくらお父様の事で動揺していたとはいえ、彼の前で散々泣いて本当にみっともない真似をしてしまった」
ただ彼にあんな優しい一面があったとは、彼女からしてもとても意外だった。
「それと、彼にまだお礼をきちんと言えていない。皇子は今度いつここに来られるのかしら」
そんな事を韓媛が考え込んでいると、彼女の部屋に誰かがやって来たようだ。
「韓媛、突然で悪い。俺だ、大泊瀬だ」
いきなり彼女の部屋の外から、大泊瀬皇子の声が聞こえて来た。
「え、大泊瀬皇子?」
何故突然に彼が自分の部屋にやって来たのだろう。韓媛は余りに突然すぎて、少し混乱した。
「円に、ここに来る許可はとってある。部屋の中に入っても良いか」
彼が来た理由は分からないが、ひとまずは部屋に入って貰った方が良さそうだ。
彼女は急いで剣をしまうと、外にいる皇子に返事をした。
「皇子、分かりました。では中に入っていただいて大丈夫です」
韓媛はそう言って、彼を部屋の中に招き入れた。
大泊瀬皇子は部屋の中に入って来ると、彼女の前に来て座った。
「韓媛、突然で済まない。どうやら円の体調も無事に回復したようだ。それに今回の事件では、お前にも危害が出なくて本当に良かった」
(皇子は、私の事も心配されてたのね)
韓媛はそう思うと、何だかとても嬉しい気持ちになった。これが4年前、かなりの問題児だった少年だとは到底思えない。
「今回は大泊瀬皇子には本当に感謝してます。もし犯人が捕まらなかったら、今頃私の父はどうなっていた事か……」
彼女はそう言うと、また感情が込み上げて来た。
「俺は別に、そんな対した事はしてない。元々円には、俺が小さい頃から色々と世話になっていた」
大泊瀬皇子は特に何ともないような感じで、彼女にそう答えた。
「あの事件があって以降、私皇子にはずっとお礼を言いたいと思ってました。父を助けて下さって本当にありがとうございます」
韓媛は彼に対して、ただただ感謝の思いでいっぱいだった。
そんな彼女の態度を見て、大泊瀬皇子も少しやれやれと言った感じの表情を見せる。
彼が思うに、韓媛はとても賢くて聡明な娘の印象である。そんな彼女がこんなにしおらしい態度を見せるのは、本当に意外だなと思った。
出来る事なら、子供の頃にこんな彼女を見てみたかったと思う。
「まぁ、お前が元気そうで俺も安心した。所でちょっと、お前に聞きたい事がある」
どうやら大泊瀬皇子がここに来たのは、その事を聞くのが目的のようだ。
「私に聞きたい事ですか? 皇子一体どのような事でしょう」
韓媛は一体何の事だろうと思った。
「今回の件で、能吐相手にお前は毒の話しをしていた。しかも奴が俺に濡れ衣を着せようとしてた話しまで。どうしてお前はその事を知っていた?」
それを聞いた韓媛は、内心「しまった!」と思った。あの時は自分も本当に必死で、そんな事を考えずに能吐に話していた。
それにまさかあの場面で大泊瀬皇子が現れるなんて、誰が想像出来ただろうか。
(これは油断していたわ。とりあえず今はどうにかして彼に誤魔化さないと)
「大泊瀬皇子、申し訳ありません。私も父は何か毒を盛られたのではと、あの時考えてました。
それで能吐を見て、何故か彼が怪しい気がしたもので……それで思わず彼にかまをかけてみました」
大泊瀬皇子は、それを聞いてとても驚いた。まさか彼女が、そのような事をするとはとても想像がつかない。それ程までに、あの時は父親の事で気が動転していたのだろうか。
「ふーん、それは意外だな。お前がそんな行動に出るとは……まぁ、お前が何かしたとは全く思っていない。ただ俺が少し気になっただけだ」
大泊瀬皇子にそう言われて、韓媛はとりあえず安心した。
(大泊瀬皇子に信じてもらえて、本当に良かったわ)
「でも、大泊瀬皇子もとてもご立派になられましたね。子供の時とは本当に別人だわ」
韓媛は少し嬉しそうにしながら、彼に言った。これは彼女からしてみても本心である。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~
bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる