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18《葛城にて》
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木梨軽皇子の事件については、ここ葛城にも直ぐに伝わる事となる。
木梨軽皇子が流刑となり、伊予国へ旅立ってから早1週間が経過していた。
韓媛も軽大娘皇女とは過去に数回会った事があり、そんな彼女は韓媛より6歳年上の20歳になる。
「軽の姉上は、木梨軽の兄上が伊予国に行って以降、泣いてばかりいた。だが1週間が経ち、ようよく落ち着いて来た」
韓媛は、今日葛城に来ていた大泊瀬皇子を捕まえて、彼から色々話しを聞き出していた。
「まぁ、それは軽大娘皇女もさぞお心を痛めてる事でしょうね……」
韓媛はそんな彼女が不憫で為らなかった。大事な人が遠くに行ってしまい、それが本人にとってはどれ程辛い事か。
また木梨軽皇子の場合、刑が許されでもしない限り、大和に戻る事もまず難しい。
「姉上には気の毒だが、こればかりはどうしようもない。これは、実の兄妹で道ならぬ恋に落ちてしまった2人の責任だ」
大泊瀬皇子は、特に感情を表す事もなく平然として言った。彼の中では既に気持ちの整理は出来ているのだろう。
それよりも今後の大和がどうなるのか、そちらの方が彼にとっては気になる所である。
「大泊瀬皇子、あなたのお姉様なのよ。もう少し気持ちをいたわって上げないと」
韓媛からしたら同じ女性として、彼女の事が心配でならない。相手が本当に心から好いていた者なら尚更だ。
「まぁその点、母上はまだマシだった。父上が亡くなった時は、凄く乱れていたが、それも今はかなり落ち着いている」
そんな大泊瀬皇子の発言を聞いて、韓媛は「はぁー」とため息をついた。
「それは、皇后がわざと弱音を見せないようにしているだけの事。大王と皇后もお互いとても好きあった仲だったのでしょう?」
大泊瀬皇子も両親の仲の良さは、いつも見ていたので良く知っている。父上が大王に即位する際も、母親の説得があったからだこそだ。
「それはそうだが……それに母上は父上の妃になって以降、父上や大和の事をとても良く考えていたと聞く」
そんな大泊瀬皇子を見て彼女は思った。
どうも彼は、自身の目線で人の色恋ごとを見ているような気がする。
(大泊瀬皇子は、きっとまだ本気で誰かを好きになった事がないのね。ただ私も人の事はいえないけど)
彼の場合、見た目もそれほど悪くはなく、体型もとても男らしい。
普通に考えたら、若い娘が言い寄って来ても、全くおかしくはない。
(大泊瀬皇子は、きっとこの性格が問題なのでしょうね。そこさえ変われば……)
そんな彼を見て韓媛は思う。
大泊瀬皇子の、浮いた話しの1つや2つが全く聞こえて来ないのは、彼のこの少し傲慢な態度が関係しているのだろうと。
女性に対しての、口説き文句の1つでも言えたなら、きっと相手の女性もその気になるだろうに。
「大泊瀬皇子も本気で好きな女性が現れたら、きっと変わるのでしょうね」
韓媛は少し大泊瀬皇子をからかうようにして言った。
だが大泊瀬皇子は、そんな彼女の発言を聞いて、とても驚いたような表情をした。そしてひどく言葉に詰まっているようにも見える。
(あら、意外な反応ねぇ?)
「大泊瀬皇子どうかされたの」
韓媛は不思議そうにして彼に言った。
最近の彼はどういう訳か、時々彼女にこんな奇妙な表情を見せてくる。
すると大泊瀬皇子は肩を落とし、少し呆れるような素振りで言った。
「お前は、何も分かってない……」
韓媛は皇子にそう言われ、彼が発する言葉の意味を全く理解出来ないでいた。
(私が何も分かってない? 一体どう言うことかしら)
そもそも韓媛もまだまともに男性を好きになった事はない。もしかすると、何か問題のある発言でもしてしまったのだろうか。
すると皇子は、急に彼女に質問をしてきた。
「それを言うなら、お前はどうなんだ。好きな男でも出来たのか?」
韓媛は、皇子から意外な質問が出てとても驚く。まさか彼からこんな事を聞かれるとは、夢にも思っていなかった。
(まさか、大泊瀬皇子からこんな質問が来るなんて)
余りに意外な質問だったので、彼女も少し動揺しながら答えた。
「えっと、それは特にはないです。それにその辺は、元々お父様にある程度任せようと思ってましたから……」
それを聞いた大泊瀬皇子は、今度は少し落胆したような感じになった。
(駄目だ。これじゃ、全然らちがあかない)
すると彼は、急に何かの意を決したかのようにして、韓媛を真っ直ぐ見つめてきた。
(うん、一体何?)
「韓媛、実は俺……」
大泊瀬皇子がその先を言おうとした丁度その時、遠くから使用人の者の声がした。
「大泊瀬皇子ーー! お持たせして申し訳ありません!! 今丁度、円様がご自宅に戻られました。直ぐにお会い出来るそうです」
それを聞いた大泊瀬皇子は、その場で思いっきり脱力感を露にした。
(何で、よりによってこんな時に……)
「あら、やっとお父様が戻られたのね。大泊瀬皇子が来られてからだいぶ時間が立っていたから、心配していたの……あ、大泊瀬皇子ごめんなさい! お話の途中で」
韓媛はどうも、今は彼より父親の方が気になっていたようだ。
「いや、良い。別に急ぎの話しではないから、また今度にする」
「あら、そうですか。では大泊瀬皇子もお忙しいでしょうから、私も自分の部屋に戻る事にしますね」
こうして、大泊瀬皇子はその後葛城円の元に行き、韓媛は自分の部屋に戻る事にした。
木梨軽皇子が流刑となり、伊予国へ旅立ってから早1週間が経過していた。
韓媛も軽大娘皇女とは過去に数回会った事があり、そんな彼女は韓媛より6歳年上の20歳になる。
「軽の姉上は、木梨軽の兄上が伊予国に行って以降、泣いてばかりいた。だが1週間が経ち、ようよく落ち着いて来た」
韓媛は、今日葛城に来ていた大泊瀬皇子を捕まえて、彼から色々話しを聞き出していた。
「まぁ、それは軽大娘皇女もさぞお心を痛めてる事でしょうね……」
韓媛はそんな彼女が不憫で為らなかった。大事な人が遠くに行ってしまい、それが本人にとってはどれ程辛い事か。
また木梨軽皇子の場合、刑が許されでもしない限り、大和に戻る事もまず難しい。
「姉上には気の毒だが、こればかりはどうしようもない。これは、実の兄妹で道ならぬ恋に落ちてしまった2人の責任だ」
大泊瀬皇子は、特に感情を表す事もなく平然として言った。彼の中では既に気持ちの整理は出来ているのだろう。
それよりも今後の大和がどうなるのか、そちらの方が彼にとっては気になる所である。
「大泊瀬皇子、あなたのお姉様なのよ。もう少し気持ちをいたわって上げないと」
韓媛からしたら同じ女性として、彼女の事が心配でならない。相手が本当に心から好いていた者なら尚更だ。
「まぁその点、母上はまだマシだった。父上が亡くなった時は、凄く乱れていたが、それも今はかなり落ち着いている」
そんな大泊瀬皇子の発言を聞いて、韓媛は「はぁー」とため息をついた。
「それは、皇后がわざと弱音を見せないようにしているだけの事。大王と皇后もお互いとても好きあった仲だったのでしょう?」
大泊瀬皇子も両親の仲の良さは、いつも見ていたので良く知っている。父上が大王に即位する際も、母親の説得があったからだこそだ。
「それはそうだが……それに母上は父上の妃になって以降、父上や大和の事をとても良く考えていたと聞く」
そんな大泊瀬皇子を見て彼女は思った。
どうも彼は、自身の目線で人の色恋ごとを見ているような気がする。
(大泊瀬皇子は、きっとまだ本気で誰かを好きになった事がないのね。ただ私も人の事はいえないけど)
彼の場合、見た目もそれほど悪くはなく、体型もとても男らしい。
普通に考えたら、若い娘が言い寄って来ても、全くおかしくはない。
(大泊瀬皇子は、きっとこの性格が問題なのでしょうね。そこさえ変われば……)
そんな彼を見て韓媛は思う。
大泊瀬皇子の、浮いた話しの1つや2つが全く聞こえて来ないのは、彼のこの少し傲慢な態度が関係しているのだろうと。
女性に対しての、口説き文句の1つでも言えたなら、きっと相手の女性もその気になるだろうに。
「大泊瀬皇子も本気で好きな女性が現れたら、きっと変わるのでしょうね」
韓媛は少し大泊瀬皇子をからかうようにして言った。
だが大泊瀬皇子は、そんな彼女の発言を聞いて、とても驚いたような表情をした。そしてひどく言葉に詰まっているようにも見える。
(あら、意外な反応ねぇ?)
「大泊瀬皇子どうかされたの」
韓媛は不思議そうにして彼に言った。
最近の彼はどういう訳か、時々彼女にこんな奇妙な表情を見せてくる。
すると大泊瀬皇子は肩を落とし、少し呆れるような素振りで言った。
「お前は、何も分かってない……」
韓媛は皇子にそう言われ、彼が発する言葉の意味を全く理解出来ないでいた。
(私が何も分かってない? 一体どう言うことかしら)
そもそも韓媛もまだまともに男性を好きになった事はない。もしかすると、何か問題のある発言でもしてしまったのだろうか。
すると皇子は、急に彼女に質問をしてきた。
「それを言うなら、お前はどうなんだ。好きな男でも出来たのか?」
韓媛は、皇子から意外な質問が出てとても驚く。まさか彼からこんな事を聞かれるとは、夢にも思っていなかった。
(まさか、大泊瀬皇子からこんな質問が来るなんて)
余りに意外な質問だったので、彼女も少し動揺しながら答えた。
「えっと、それは特にはないです。それにその辺は、元々お父様にある程度任せようと思ってましたから……」
それを聞いた大泊瀬皇子は、今度は少し落胆したような感じになった。
(駄目だ。これじゃ、全然らちがあかない)
すると彼は、急に何かの意を決したかのようにして、韓媛を真っ直ぐ見つめてきた。
(うん、一体何?)
「韓媛、実は俺……」
大泊瀬皇子がその先を言おうとした丁度その時、遠くから使用人の者の声がした。
「大泊瀬皇子ーー! お持たせして申し訳ありません!! 今丁度、円様がご自宅に戻られました。直ぐにお会い出来るそうです」
それを聞いた大泊瀬皇子は、その場で思いっきり脱力感を露にした。
(何で、よりによってこんな時に……)
「あら、やっとお父様が戻られたのね。大泊瀬皇子が来られてからだいぶ時間が立っていたから、心配していたの……あ、大泊瀬皇子ごめんなさい! お話の途中で」
韓媛はどうも、今は彼より父親の方が気になっていたようだ。
「いや、良い。別に急ぎの話しではないから、また今度にする」
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