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46《大泊瀬皇子の訪問》
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穴穂大王の暗殺により、眉輪と葛城円が亡くなってから早2週間が立っていた。
韓媛は父親が死んでしまい、自身の住居も炎で燃え尽きて失くなってしまった。
その後は、彼女の母親の紫津媛の実家に身を寄せていた。これは葛城円が生前から決めていた処置である。
円は以前に起こった葛城能吐の事件後、もし自身に何かあっては娘を守れなくなると思い、彼のもう1人の従弟である葛城蟻臣と話しをしていたのである。彼は市辺皇子の妃の荑媛の父親にあたる人だ。
お互いにもしものことがあれば、その後は葛城や相手の家族を助けてやって欲しいと。
よって今後は韓媛の後見人はこの蟻臣が引き受けることとなる。韓媛もこのことについては、生前の葛城円より聞かされていた。
その後大泊瀬皇子も葛城円の娘の韓媛を殺すことはしなかった。
もしそのつもりなら、そもそもあんな危ない状況の中、彼女を助けにはこなかったはずだ。
そして葛城円が亡くなったことにより大臣が不在になってしまったため、その代わりに平群真鳥が新たに大臣に付く。
また大連も大伴室屋以外に新たに物部目も付く形となった。
こうして豪族葛城は大和の中央の実権から退くこととなる。
だが韓媛に至っては母親の実家で問題なく過ごすことができており、また彼女の後見人も決まった。
その後見人の蟻臣も近々韓媛に会いにきてくれる話になっている。
そのため、彼女の生活と身の安全は何とか守られる形となった。
一方大和の方ではまだ次の大王は決まっていない。
今回の大泊瀬皇子自身の身勝手な行動には、周りの者達もひどく驚かされる形となったが、そこまで責められてはいないようだ。
だが葛城円が自身の死によって大臣から降りたため、大泊瀬皇子が葛城の元を訪れる理由が亡くなってしまった。
そのため韓媛も、この2週間彼とは全く会っていない。
「大泊瀬皇子は元々他の女性を正妃や妃に考えていた。だからこのまま彼と会わない方が、互いのためにも良いのかもしれない」
(それに彼が他の女性と幸せにしている所なんて、余り見る気にもなれないわ……)
ただ韓媛もいずれはどこかに嫁がないといけない。それについては後見人の葛城蟻臣が今後は対応するのかもしれない。
ただ彼女自身、今は中々そんな気分にはなれない。まだ父親が亡くなって2週間しか経っていないのだ。その悲しみからもまだ完全には立ち直れていない。
「本当に私はこれからどうなるのかしら」
とりあえず今度葛城蟻臣が自分に会いにきてくれると聞いている。今後のことについてはそれから考えれば良いだろう。
丁度その時だった。彼女のいる部屋の外から女性らしき人の声が聞こえてきた。
「韓媛様、今少し宜しいでしょうか?」
彼女はこの家に仕えている使用人の女性で、名を布津与といった。
「まぁ布津与、どうかしたの。とりあえず中に入ってきてもらって大丈夫よ」
韓媛にそういわれたので、彼女はそのまま静かに部屋の中に入ってきた。
彼女は丁度40歳になったばかりの女性で、彼女にも子供はいるようだが、その子供達は既に成人しているとのことだった。
「韓媛様、突然で申し訳ありません。先ほど韓媛様に会いたいと訪問されてきた方がおられまして……」
(え、私に会いに? 一体誰がきたのかしら)
葛城蟻臣が来るのはまだ先だと聞いているので、誰が自分に会いにきたのか彼女は全く想像がつかない。
それに布津与の様子もどこか戸惑い気味のように見える。
「それで、布津与。誰がこられたの?」
すると布津与は少しいいにくそうにしながらいった。
「それが今さっき大泊瀬皇子がこられまして、皇子が韓媛様に会わせて欲しいとおっしゃられました」
韓媛は意外な訪問者の名前にとても驚く。今はただでさえ大王が不在でとても大変な状況だ。なので当然彼も忙しくしているに違いない。
(どうして大泊瀬皇子がここにきているの?)
だが相手が自分に会いたいといってわざわざここまできている。ならばさすがに会わない訳にはいかないだろう。
それに前回の大王の暗殺のこともあるので、その件で何か自分に話しがあるのかもしれない。
彼女は葛城円の唯一の近い肉親である。
「分かったわ。大泊瀬皇子に会うことにするわ。それで彼はこの部屋まできてくれるのかしら?」
「そうですね、ではその旨を大泊瀬皇子にお伝えしてみます。 それでもし何か問題があるようなら、また韓媛様に伝えに参りますので」
布津与はそういうと大泊瀬皇子に韓媛の伝言を伝えるため、彼女の部屋をいそいそと出ていった。
それから韓媛は自身の部屋で静かに待つことにする。
そして暫くして人の足音が聞こえてくる。誰かが彼女の部屋の前までやってきたようだ。
「韓媛、大泊瀬だ。中に入っても良いか」
どうやら彼は韓媛からの伝言を聞いて、そのまま部屋にまでやってきたようだ。
「はい、大丈夫です。皇子このまま入ってきて下さい」
韓媛からそういわれたので、大泊瀬皇子はそのまま彼女のいる部屋の中に堂々と入ってきた。
そして彼女も立ち上がり、皇子が自身の前までやってくると「大泊瀬皇子、どうもご無沙汰しております」と少し微笑んで、彼に挨拶をした。
そんな彼女を見て皇子も少しほっとしたような表情を見せる。
とりあえず立ち話しも何なので、2人は床に座って話しを始めることにした。
韓媛は父親が死んでしまい、自身の住居も炎で燃え尽きて失くなってしまった。
その後は、彼女の母親の紫津媛の実家に身を寄せていた。これは葛城円が生前から決めていた処置である。
円は以前に起こった葛城能吐の事件後、もし自身に何かあっては娘を守れなくなると思い、彼のもう1人の従弟である葛城蟻臣と話しをしていたのである。彼は市辺皇子の妃の荑媛の父親にあたる人だ。
お互いにもしものことがあれば、その後は葛城や相手の家族を助けてやって欲しいと。
よって今後は韓媛の後見人はこの蟻臣が引き受けることとなる。韓媛もこのことについては、生前の葛城円より聞かされていた。
その後大泊瀬皇子も葛城円の娘の韓媛を殺すことはしなかった。
もしそのつもりなら、そもそもあんな危ない状況の中、彼女を助けにはこなかったはずだ。
そして葛城円が亡くなったことにより大臣が不在になってしまったため、その代わりに平群真鳥が新たに大臣に付く。
また大連も大伴室屋以外に新たに物部目も付く形となった。
こうして豪族葛城は大和の中央の実権から退くこととなる。
だが韓媛に至っては母親の実家で問題なく過ごすことができており、また彼女の後見人も決まった。
その後見人の蟻臣も近々韓媛に会いにきてくれる話になっている。
そのため、彼女の生活と身の安全は何とか守られる形となった。
一方大和の方ではまだ次の大王は決まっていない。
今回の大泊瀬皇子自身の身勝手な行動には、周りの者達もひどく驚かされる形となったが、そこまで責められてはいないようだ。
だが葛城円が自身の死によって大臣から降りたため、大泊瀬皇子が葛城の元を訪れる理由が亡くなってしまった。
そのため韓媛も、この2週間彼とは全く会っていない。
「大泊瀬皇子は元々他の女性を正妃や妃に考えていた。だからこのまま彼と会わない方が、互いのためにも良いのかもしれない」
(それに彼が他の女性と幸せにしている所なんて、余り見る気にもなれないわ……)
ただ韓媛もいずれはどこかに嫁がないといけない。それについては後見人の葛城蟻臣が今後は対応するのかもしれない。
ただ彼女自身、今は中々そんな気分にはなれない。まだ父親が亡くなって2週間しか経っていないのだ。その悲しみからもまだ完全には立ち直れていない。
「本当に私はこれからどうなるのかしら」
とりあえず今度葛城蟻臣が自分に会いにきてくれると聞いている。今後のことについてはそれから考えれば良いだろう。
丁度その時だった。彼女のいる部屋の外から女性らしき人の声が聞こえてきた。
「韓媛様、今少し宜しいでしょうか?」
彼女はこの家に仕えている使用人の女性で、名を布津与といった。
「まぁ布津与、どうかしたの。とりあえず中に入ってきてもらって大丈夫よ」
韓媛にそういわれたので、彼女はそのまま静かに部屋の中に入ってきた。
彼女は丁度40歳になったばかりの女性で、彼女にも子供はいるようだが、その子供達は既に成人しているとのことだった。
「韓媛様、突然で申し訳ありません。先ほど韓媛様に会いたいと訪問されてきた方がおられまして……」
(え、私に会いに? 一体誰がきたのかしら)
葛城蟻臣が来るのはまだ先だと聞いているので、誰が自分に会いにきたのか彼女は全く想像がつかない。
それに布津与の様子もどこか戸惑い気味のように見える。
「それで、布津与。誰がこられたの?」
すると布津与は少しいいにくそうにしながらいった。
「それが今さっき大泊瀬皇子がこられまして、皇子が韓媛様に会わせて欲しいとおっしゃられました」
韓媛は意外な訪問者の名前にとても驚く。今はただでさえ大王が不在でとても大変な状況だ。なので当然彼も忙しくしているに違いない。
(どうして大泊瀬皇子がここにきているの?)
だが相手が自分に会いたいといってわざわざここまできている。ならばさすがに会わない訳にはいかないだろう。
それに前回の大王の暗殺のこともあるので、その件で何か自分に話しがあるのかもしれない。
彼女は葛城円の唯一の近い肉親である。
「分かったわ。大泊瀬皇子に会うことにするわ。それで彼はこの部屋まできてくれるのかしら?」
「そうですね、ではその旨を大泊瀬皇子にお伝えしてみます。 それでもし何か問題があるようなら、また韓媛様に伝えに参りますので」
布津与はそういうと大泊瀬皇子に韓媛の伝言を伝えるため、彼女の部屋をいそいそと出ていった。
それから韓媛は自身の部屋で静かに待つことにする。
そして暫くして人の足音が聞こえてくる。誰かが彼女の部屋の前までやってきたようだ。
「韓媛、大泊瀬だ。中に入っても良いか」
どうやら彼は韓媛からの伝言を聞いて、そのまま部屋にまでやってきたようだ。
「はい、大丈夫です。皇子このまま入ってきて下さい」
韓媛からそういわれたので、大泊瀬皇子はそのまま彼女のいる部屋の中に堂々と入ってきた。
そして彼女も立ち上がり、皇子が自身の前までやってくると「大泊瀬皇子、どうもご無沙汰しております」と少し微笑んで、彼に挨拶をした。
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