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56《阿佐津姫》
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大泊瀬皇子は遠飛鳥宮の中を歩いていた。
まだ大王が決まってない中、大和の皇族と大臣達との協力で、今はこの国をまとめている。
今日は彼の母親である忍坂姫から、自分の部屋に来るよういわれていた。
「くそ、今のままでは母上の負担が多くなってしまう。もっとしっかりとした体制を整えていかなければ。
そうしないと、いずれ母上の無理がたたってしまうかもしれない」
大泊瀬皇子はそんな自身の母親のことを心配した。
今大王が不在の上に、大臣も変わったばかりだ。そう考えると葛城円の存在は本当に大きかった。
彼が今後の政り事をどうしていくべきか、あれこれと考えながら歩いていると、ようやく忍坂姫の部屋の前までくる。
(とりあえず、まずは母上の話を聞いてみよう)
大泊瀬皇子はそう思って、部屋の外から声をかけた。
「母上、大泊瀬です。中に入っても良いですか」
すると中にいた忍坂姫から返事が返ってくる。
「大泊瀬、やっと来たのね。良いからそのまま中に入ってきてちょうだい」
大泊瀬皇子は忍坂姫にそう言われたので、そのまま何も言わずに中に入っていく。
彼が中に入ると、忍坂姫とは別にもう一人女性がやってきていた。どうやらその2人は雑談をしていたようだ。
大泊瀬皇子は、もう一人の女性の顔を見る。
少しふわっとした髪を櫛等で優雅に纏めていて、顔立ちもとても整っている。そしてこの女性とは彼も面識があった。
「見覚えがあると思ったら、阿佐津姫か。どうしてこちらに?」
大泊瀬皇子はそう言いながら、2人の元にやってきた。
彼女は亡き瑞歯別大王の唯一の皇女で、今は物部の元へ嫁いでいる。
歳は大泊瀬皇子よりも10数歳年上だ。
そして大泊瀬皇子とは従姉同士の関係になる。
「今日久々に阿佐津姫が私の所に会いにきてくれたの。最近大和も色々と物騒なことが続いてるから、彼女も少し気にしていたみたい」
忍坂姫はそう大泊瀬皇子に説明する。
彼女は阿佐津姫との会話でかなり盛り上がっていたようで、とても機嫌が良い。
「本当にそうなの。それで叔母様の顔を見るために、物部の者に連れてきてもらったわ」
阿佐津姫は少し愉快そうにしながら、大泊瀬皇子につげる。
(この人はどうも上から目線で話しかけてくる所がある。見た目は割りと良いのだが、この性格はどうにかならないのか……)
彼は自身の事を全く棚に上げておきながら、そのように彼女の事を思っていた。
阿佐津姫はどうやら少し気の強い女性のようだ。
だが忍坂姫と彼女は割りと話しが合うようで、頻繁とはいかないがたまに会うと、いつもこうやって雑談等をして楽しんでいた。
「それで叔母様から聞いたけど。大泊瀬、あなた最近葛城の姫の元に通ってるそうね」
阿佐津姫はとても興味津々そうにして彼に聞いてきた。
それを聞いて大泊瀬皇子は思った。
今この2人がこれほど盛り上がっているのは、恐らく自分の話を話題にしていたのであろう。
「そうなの。これには本当に驚いたわ。だって、大泊瀬の恋がやっと報われたのだから」
忍坂姫も自身の息子のことではあるが、余りに面白いのか、少し笑いを堪えながらそう話す。
「と言うより母上、どうして阿佐津姫にそのことを話したのだ。まだこの件については、余り話さないで欲しいといったはずだが……」
大泊瀬皇子は少し苛立ちながらいった。
草香幡梭姫との婚姻の件もあるので、彼的には余り騒ぎ立てはしたくなかった。
だがその割りに、頻繁に韓媛の元に通っているので、少々説得力にかける所はある。
「まぁ、それは悪いとは思ってるわよ。ただ今日は、阿佐津姫と最近あったことを色々を話していたら、ついついその話しをするはめになってね……
でも私と阿佐津姫は気心しれた仲だから大丈夫よ。別に2人の邪魔をする気もさらさらないし」
忍坂姫は少し申し訳無さそうにしながらいった。
「そうよ大泊瀬。私も特に周りにいいふらすなんてことはしないから、安心して」
阿佐津姫もそう彼にいう。
だが余り悪びれてる感じには見えない。
大泊瀬皇子もそれを聞いて思わず肩を落とした。どのみちここまで話されていたのであれば、もうどうすることも出来ない。
ここは阿佐津姫の言葉を信じるほかないだろう。
それまで必死で笑いを堪えて話していた忍坂姫も、そんな彼を見て急に表情を変える。
「大泊瀬、前回の眉輪の件に関してあなたが起こした行動について、今回は目をつぶることにしました。亡くなった2人に関しても、抵抗しなければあなたが殺されていたのだから。
それに大王の暗殺を子供だからといって許していたのでは、また同じようなことが起きるかもしれない……」
忍坂姫からすれば、亡くなった2人の皇子と大泊瀬皇子、どちらも大事な自身の息子である。どちらが亡くなったとしてもきっと同じように彼女は涙を流して、酷く悲しんでいたはずだ。
「でも、あなたも今は大切な姫が出来た。そんな彼女を守るためにも、今後は余り無茶なことはしないでちょうだい」
大泊瀬皇子は母親である忍坂姫にそう言われて、思わず言葉が出なくなってしまった。
韓媛は絶対に自分が守って幸せにする。彼女の前でそう誓っていった。
それは彼女の父親を死なせてしまった償いと、そして彼女のことが他の誰よりも大切な存在だからだ。
まだ大王が決まってない中、大和の皇族と大臣達との協力で、今はこの国をまとめている。
今日は彼の母親である忍坂姫から、自分の部屋に来るよういわれていた。
「くそ、今のままでは母上の負担が多くなってしまう。もっとしっかりとした体制を整えていかなければ。
そうしないと、いずれ母上の無理がたたってしまうかもしれない」
大泊瀬皇子はそんな自身の母親のことを心配した。
今大王が不在の上に、大臣も変わったばかりだ。そう考えると葛城円の存在は本当に大きかった。
彼が今後の政り事をどうしていくべきか、あれこれと考えながら歩いていると、ようやく忍坂姫の部屋の前までくる。
(とりあえず、まずは母上の話を聞いてみよう)
大泊瀬皇子はそう思って、部屋の外から声をかけた。
「母上、大泊瀬です。中に入っても良いですか」
すると中にいた忍坂姫から返事が返ってくる。
「大泊瀬、やっと来たのね。良いからそのまま中に入ってきてちょうだい」
大泊瀬皇子は忍坂姫にそう言われたので、そのまま何も言わずに中に入っていく。
彼が中に入ると、忍坂姫とは別にもう一人女性がやってきていた。どうやらその2人は雑談をしていたようだ。
大泊瀬皇子は、もう一人の女性の顔を見る。
少しふわっとした髪を櫛等で優雅に纏めていて、顔立ちもとても整っている。そしてこの女性とは彼も面識があった。
「見覚えがあると思ったら、阿佐津姫か。どうしてこちらに?」
大泊瀬皇子はそう言いながら、2人の元にやってきた。
彼女は亡き瑞歯別大王の唯一の皇女で、今は物部の元へ嫁いでいる。
歳は大泊瀬皇子よりも10数歳年上だ。
そして大泊瀬皇子とは従姉同士の関係になる。
「今日久々に阿佐津姫が私の所に会いにきてくれたの。最近大和も色々と物騒なことが続いてるから、彼女も少し気にしていたみたい」
忍坂姫はそう大泊瀬皇子に説明する。
彼女は阿佐津姫との会話でかなり盛り上がっていたようで、とても機嫌が良い。
「本当にそうなの。それで叔母様の顔を見るために、物部の者に連れてきてもらったわ」
阿佐津姫は少し愉快そうにしながら、大泊瀬皇子につげる。
(この人はどうも上から目線で話しかけてくる所がある。見た目は割りと良いのだが、この性格はどうにかならないのか……)
彼は自身の事を全く棚に上げておきながら、そのように彼女の事を思っていた。
阿佐津姫はどうやら少し気の強い女性のようだ。
だが忍坂姫と彼女は割りと話しが合うようで、頻繁とはいかないがたまに会うと、いつもこうやって雑談等をして楽しんでいた。
「それで叔母様から聞いたけど。大泊瀬、あなた最近葛城の姫の元に通ってるそうね」
阿佐津姫はとても興味津々そうにして彼に聞いてきた。
それを聞いて大泊瀬皇子は思った。
今この2人がこれほど盛り上がっているのは、恐らく自分の話を話題にしていたのであろう。
「そうなの。これには本当に驚いたわ。だって、大泊瀬の恋がやっと報われたのだから」
忍坂姫も自身の息子のことではあるが、余りに面白いのか、少し笑いを堪えながらそう話す。
「と言うより母上、どうして阿佐津姫にそのことを話したのだ。まだこの件については、余り話さないで欲しいといったはずだが……」
大泊瀬皇子は少し苛立ちながらいった。
草香幡梭姫との婚姻の件もあるので、彼的には余り騒ぎ立てはしたくなかった。
だがその割りに、頻繁に韓媛の元に通っているので、少々説得力にかける所はある。
「まぁ、それは悪いとは思ってるわよ。ただ今日は、阿佐津姫と最近あったことを色々を話していたら、ついついその話しをするはめになってね……
でも私と阿佐津姫は気心しれた仲だから大丈夫よ。別に2人の邪魔をする気もさらさらないし」
忍坂姫は少し申し訳無さそうにしながらいった。
「そうよ大泊瀬。私も特に周りにいいふらすなんてことはしないから、安心して」
阿佐津姫もそう彼にいう。
だが余り悪びれてる感じには見えない。
大泊瀬皇子もそれを聞いて思わず肩を落とした。どのみちここまで話されていたのであれば、もうどうすることも出来ない。
ここは阿佐津姫の言葉を信じるほかないだろう。
それまで必死で笑いを堪えて話していた忍坂姫も、そんな彼を見て急に表情を変える。
「大泊瀬、前回の眉輪の件に関してあなたが起こした行動について、今回は目をつぶることにしました。亡くなった2人に関しても、抵抗しなければあなたが殺されていたのだから。
それに大王の暗殺を子供だからといって許していたのでは、また同じようなことが起きるかもしれない……」
忍坂姫からすれば、亡くなった2人の皇子と大泊瀬皇子、どちらも大事な自身の息子である。どちらが亡くなったとしてもきっと同じように彼女は涙を流して、酷く悲しんでいたはずだ。
「でも、あなたも今は大切な姫が出来た。そんな彼女を守るためにも、今後は余り無茶なことはしないでちょうだい」
大泊瀬皇子は母親である忍坂姫にそう言われて、思わず言葉が出なくなってしまった。
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