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71《大泊瀬皇子の決心》
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一方韓媛の方も息長での出来事のあと、葛城の元に帰ってきていた。
今回は本当に悲しい結末を向かえることとなり、彼女の衝撃もとても大きいものとなった。彼女の親戚でもある市辺皇子の死は未だによう受け入れられていない。
ただ大泊瀬皇子も肩に怪我を負うことになり、それでも彼が命に別状がなかったことには本当に安堵している。
そして今までずっとすれ違っていた市辺皇子と阿佐津姫も、最後の最後でやっと互い思いを通わせることができた。
そういう意味では、この3人の災いは無事に断ち切れたのかもしれない。
「災いを断ち切るって、本当に色々あるのね」
韓媛はふと自身の短剣を眺めながら呟く。
この剣のお陰で自分も含めて何人もの人を救うことができた。
だが天の理でもあるのか、どんな災いでも断ち切れるという訳ではなさそうだ。
「あと息長の帰りに阿佐津姫から聞いた話しも、本当に驚いたわ……」
これは息長からの帰りに、阿佐津姫が韓媛にだけ話したことである。
それは市辺皇子が阿佐津姫に婚姻を申し込むより少し前の出来事で、2人は当時から余り仲が良くなかった。
だが互いに何か思うことがあったのか、一時だけ恋人のような関係に陥っていた時期があったとのこと。
でも互いに好きだとか告げる訳でもなく、ただただ大瀬を交わすだけの関係だった。
そののち2人は全く会わない期間が続き、その後に市辺皇子が阿佐津姫に婚姻を申し込んだのだった。
だが阿佐津姫からしたら、そんな市辺皇子がとても自分に本気だとは思えなかったようで、自身の意地も相まって彼との婚姻を断ってしまったようだ。
この2人が当時、互いに自身の思いを素直に伝えていれば、もしかすると今回は違った結果になっていたかもしれない。
だがそれは結局のところ誰にも分からないことだ。
「まぁそういう意味では、私はまだ良い方なのかもしれないわね。大泊瀬皇子は割りと恋には真っ直ぐなようだし」
だが大泊瀬皇子の場合、その真っ直ぐさが少々厄介な部分でもあるのだが、そこはもう目をつぶることに彼女はしている。
「結局のところは、きっと皆がそれぞれの形で幸せになるのが一番良いことなのね」
人の幸せとは一人ひとり違うものだ。ましてやそれを他人が決めることでもない。
韓媛がそんな風に考えている時だった。急に彼女の部屋の外から女性の声が聞こえてくる。
どうやらこの家の使用人である布津与のようだ。
「韓媛様すみません。実は今ちょうど大泊瀬皇子が来られました。何でも韓媛様にお話しがあるとのことで……」
布津与は彼女の部屋の外からそう話し掛けてきた。
(大泊瀬皇子が私に話し……)
いよいよ次の大王を決めることになり、その最有力者が大泊瀬皇子だということを韓媛も知っている。
なので、もしかするとその辺りに関わる話なのかもしれない。
韓媛はいずれ大泊瀬皇子の妃になるのだから。
「分かったわ布津与。ではこの部屋に皇子を案内してもらえる?」
大泊瀬皇子が韓媛の元にやってきた時は、彼女と皇子はいつもこの部屋で会うようにしている。
彼らの場合、既に半分通い婚のようになっていたので、大泊瀬皇子が来た日は、そのまま彼は韓媛の家に泊まり、翌日自身の宮へと帰っている。
「それが大泊瀬皇子がおっしゃるに、今日は外で韓媛様とお話ししたいとのことです」
それを聞いた韓媛は何とも奇妙だなと思った。自分に話しがあるなら、尚更部屋で話した方が良いだろうに。
(大泊瀬皇子、一体どうしたのかしら?)
「布津与、分かったわ。大泊瀬皇子は今外にいるのかしら?それなら私が皇子の元に行ってくるわ」
どうやら布津与の方もそのつもりで、韓媛の部屋にやってきているようだった。
「はい、大泊瀬皇子は外で韓媛様をお持ちになられてます」
それを聞いた韓媛はすぐさま立ち上がり、部屋を出てそのまま大泊瀬皇子の元に行くことにした。
(どうか、余り良くない話でなければ良いけれど……)
ここ最近は、本当に良くない出来事ばかりが起こっていた為、韓媛も少し不安になる。
だが大泊瀬皇子を外で待たせているため、彼女は急いで彼のいる場所へと向かった。
今回は本当に悲しい結末を向かえることとなり、彼女の衝撃もとても大きいものとなった。彼女の親戚でもある市辺皇子の死は未だによう受け入れられていない。
ただ大泊瀬皇子も肩に怪我を負うことになり、それでも彼が命に別状がなかったことには本当に安堵している。
そして今までずっとすれ違っていた市辺皇子と阿佐津姫も、最後の最後でやっと互い思いを通わせることができた。
そういう意味では、この3人の災いは無事に断ち切れたのかもしれない。
「災いを断ち切るって、本当に色々あるのね」
韓媛はふと自身の短剣を眺めながら呟く。
この剣のお陰で自分も含めて何人もの人を救うことができた。
だが天の理でもあるのか、どんな災いでも断ち切れるという訳ではなさそうだ。
「あと息長の帰りに阿佐津姫から聞いた話しも、本当に驚いたわ……」
これは息長からの帰りに、阿佐津姫が韓媛にだけ話したことである。
それは市辺皇子が阿佐津姫に婚姻を申し込むより少し前の出来事で、2人は当時から余り仲が良くなかった。
だが互いに何か思うことがあったのか、一時だけ恋人のような関係に陥っていた時期があったとのこと。
でも互いに好きだとか告げる訳でもなく、ただただ大瀬を交わすだけの関係だった。
そののち2人は全く会わない期間が続き、その後に市辺皇子が阿佐津姫に婚姻を申し込んだのだった。
だが阿佐津姫からしたら、そんな市辺皇子がとても自分に本気だとは思えなかったようで、自身の意地も相まって彼との婚姻を断ってしまったようだ。
この2人が当時、互いに自身の思いを素直に伝えていれば、もしかすると今回は違った結果になっていたかもしれない。
だがそれは結局のところ誰にも分からないことだ。
「まぁそういう意味では、私はまだ良い方なのかもしれないわね。大泊瀬皇子は割りと恋には真っ直ぐなようだし」
だが大泊瀬皇子の場合、その真っ直ぐさが少々厄介な部分でもあるのだが、そこはもう目をつぶることに彼女はしている。
「結局のところは、きっと皆がそれぞれの形で幸せになるのが一番良いことなのね」
人の幸せとは一人ひとり違うものだ。ましてやそれを他人が決めることでもない。
韓媛がそんな風に考えている時だった。急に彼女の部屋の外から女性の声が聞こえてくる。
どうやらこの家の使用人である布津与のようだ。
「韓媛様すみません。実は今ちょうど大泊瀬皇子が来られました。何でも韓媛様にお話しがあるとのことで……」
布津与は彼女の部屋の外からそう話し掛けてきた。
(大泊瀬皇子が私に話し……)
いよいよ次の大王を決めることになり、その最有力者が大泊瀬皇子だということを韓媛も知っている。
なので、もしかするとその辺りに関わる話なのかもしれない。
韓媛はいずれ大泊瀬皇子の妃になるのだから。
「分かったわ布津与。ではこの部屋に皇子を案内してもらえる?」
大泊瀬皇子が韓媛の元にやってきた時は、彼女と皇子はいつもこの部屋で会うようにしている。
彼らの場合、既に半分通い婚のようになっていたので、大泊瀬皇子が来た日は、そのまま彼は韓媛の家に泊まり、翌日自身の宮へと帰っている。
「それが大泊瀬皇子がおっしゃるに、今日は外で韓媛様とお話ししたいとのことです」
それを聞いた韓媛は何とも奇妙だなと思った。自分に話しがあるなら、尚更部屋で話した方が良いだろうに。
(大泊瀬皇子、一体どうしたのかしら?)
「布津与、分かったわ。大泊瀬皇子は今外にいるのかしら?それなら私が皇子の元に行ってくるわ」
どうやら布津与の方もそのつもりで、韓媛の部屋にやってきているようだった。
「はい、大泊瀬皇子は外で韓媛様をお持ちになられてます」
それを聞いた韓媛はすぐさま立ち上がり、部屋を出てそのまま大泊瀬皇子の元に行くことにした。
(どうか、余り良くない話でなければ良いけれど……)
ここ最近は、本当に良くない出来事ばかりが起こっていた為、韓媛も少し不安になる。
だが大泊瀬皇子を外で待たせているため、彼女は急いで彼のいる場所へと向かった。
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