大和の風を感じて【外伝】

藍原 由麗

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1P《外伝 瑞歯別皇子の思い(その1)》

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これは、瑞歯別皇子みずはわけのおうじが佐由良の事をまだ好きになる前の頃の話である。

秋の収穫祭も無事に終わり、これから冬の準備に取り掛かる頃合いだった。

「今日はちょっと冷えるな。早く部屋に戻るとするか」

皇子がそう思って歩いていると、何やら女達の声が聞こえて来た。
どうも雑談をしているらしく、かなり盛りあがっているようだった。

「あぁ、采女達か」

瑞歯別皇子は彼女達に気付かれないように、彼女達のいる部屋の裏を通って、部屋に帰ろうとした。

すると会話の中から気になる話しが聞こえて来た。

「この中じゃ、佐由良が一番可愛いと思うけど、あなたは確か恋はした事が無いのよね?」

采女の女の一人が彼女に言った。

「えぇ、そうなの。以前仕えていたいた宮で、住吉仲皇子すみのえのなかつおうじにはちょっと憧れはあったけど、でも結局単なる憧れで終わってしまったし……」

(そう言えば、以前そんな話しを聞いてたな。すっかり忘れていたが) 

瑞歯別皇子は思わず足を止めて、女達の会話を隠れて聞いた。

嵯多彦さたひこの事件以降、皇子は佐由良の事が少し気になっていた。

特に話しをする事はなかったが、彼女を見かけると、ついつい目で追っていた。

「ここでは皇子の手が付くか、家臣に譲られるかのどちらかしかないわ」

すると別の采女の女が聞いてきた。

「ねぇ、佐由良?あなたはどんな男性が好みとかあるの?」

「え、好み?」

「そうよ、例えばで」

(うーん、好みね~)  

佐由良はその場で考え出した。 


外で聞いていた皇子も、意外な質問が出たので、思わず聞き入った。

「やっぱり優しい人かしら...あとは余り怒鳴ったり怒らない人」

それを聞いた瑞歯別皇子は、胸がグサッとした。

「何か余り特徴的な感じじゃないわね。後半はむしろ嫌いな人って感じだし」

皇子は何も言葉が出てこなかった。

(やはり、もう少し優しく接してやるべきか)


「あとは、何かこう自分の事を必死で守ってくれそうな人が良いかも」

それを聞いた采女の女達は「あぁ、それは良いわね~」と口々に言ってくれた。

(自分を守ってくれるヤツか……)

瑞歯別皇子の中で、この言葉が一番興味を引いた。

(前回の嵯多彦の時は、むしろ俺が助けられたからな)


そこまで話しを聞いた彼は、その場を後にした。

「しかし、つくづく俺は嫌われるような事しかしてなかったな。それなのにあいつには俺を庇って怪我までさせてしまった」

(今度、もしあいつが危険な目に合うような事があれば、今度こそ俺が守ってやる。
あいつはただ普通に笑顔でいてくれたらそれで良い)

そう心に誓って、皇子は部屋に戻って行った。


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