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宮の外では、阿止里の姿を見た女達がまた色めいた声を出していた。
大和の女達からしても、阿止里はかなりの好青年に見えたようだ。
そんな中、瑞歯別皇子は遠くに佐由良が歩いてるのを見つけた。
(はぁー、いずれは合わせるのだから仕方ないか。)
『稚田彦、向こうにいる佐由良をちょっと連れて来てくれ。』
瑞歯別皇子は隣にいた稚田彦に耳打ちした。
『あぁ、あんな所に。分かりました、ちょっと行ってきます。』
そう言って稚田彦は佐由良の元に行き、そのまま佐由良を連れてきた。
そして佐由良も直ぐに阿止里に気付いたらしく、思わず声をかけた。
『ほ、本当に、阿止里なの?』
その声を聞いた阿止里は、思わず後ろを振り返った。そこには先ほど話しに出ていた佐由良が立っていた。
彼女は阿止里を見てとても驚いた表情をしていた。
まさか彼が代理で大和に来るとは思ってもみなかったようだ。
『さ、佐由良...お前なのか。』
佐由良が『阿止里、久しぶり......』と言う前に、阿止里は佐由良を思いっきり抱きしめた。
『佐由良、会いたかった!!』
その場にいた他の者は皆、余りの事に何も言葉を発しなかった。
だが瑞歯別皇子に関してはかなり動揺し、今にも手が出そうになった。
『皇子、ここは抑えて!』
稚田彦がとっさに、彼を止めて彼の耳元で言った。
瑞歯別皇子も稚田彦にそう言われて、必死に押し止めた。
『あ、阿止里、ちょっと皆が見てるわ。』
佐由良は必死で阿止里に言った。
そして阿止里もやっと観念して、佐由良から身を離した。
だがそれでも2人の距離はまだ近いままだった。
そして阿止里は佐由良の手をしっかりと握って言った。
『今回、大和の大王の元に訪問する話しが出た時に、乙日根様に自分が代理で行きたいと申し出したんだ。それでその際に佐由良のいるこの宮にも寄りたいとの希望を出してね。』
阿止里は満面の笑みで佐由良を見つめて言った。まるで愛しの娘に会えたかの如く。
ただそれを聞いた瞬間、今回のこの宮の訪問の理由が分かってしまった。
つまりこの宮の訪問は、阿止里個人の希望で実行されたという事だ。
『まぁ、今回のこの宮の訪問は、阿止里が決めた事だったのね。』
佐由良は嬉しいなら、呆れたやらで、内心とても複雑だった。
『悪い。ただどうしても、佐由良お前の顔が見たくてな。元気そうで安心したよ。』
そんな2人を見ていて、さすがに限界に来たのか、『ゴホン』と瑞歯別皇子が咳払いをした。
『阿止里殿、折角の親戚との再会中で申し訳ないんだが。そろそろ次の場所に移ろうと思う。』
『あぁ、そうですね。済みません、佐由良に会えたものだからつい...』
阿止里は瑞歯別皇子に謝った。だが佐由良に会えた事が余程嬉しかったのだろう。とても満足そうな表情だった。
(阿止里、吉備ではこんな事する子じゃ無かったのに......ちょっと意外だわ。)
やはりここは大和なので、日頃の環境から解放されたからなのかと佐由良は思った。
阿止里と一緒に来ている他の数名も何となく見覚えがある人達だ。
だが彼らも阿止里の態度にはかなり驚いているようだった。
そんな態度を見て、瑞歯別皇子の苛立ちはどんどん上がっていった。
だがそんな彼の思いは、佐由良には全く伝わってなさそうだ。
そんな状態に唯一気付いているのは稚田彦のみだった。
(これは、皇子もかなりご立腹の様子。後で何とか皇子の機嫌を損ねないようにする旨、佐由良に伝えておこう。そうしないと瑞歯別皇子の嫉妬が原因で何か問題が起きても大変だ。)
こうして瑞歯別皇子一行は移動する事になった。
すると阿止里は佐由良に耳打ちした。
『佐由良、また暇な時間が出来たら教えて欲しい。久しぶりだし、少し話しでもしないか。』
それを聞いた佐由良は内心複雑だった。
(そりゃあ、阿止里とは話したいけど、瑞歯別皇子の目も有るしな...
私と皇子の関係は宮の人達にはバレてる。それなのに阿止里と隠れて会ってたなんて事が知れたら、問題事になりかねない...)
『うーん、それはちょっと約束出来るかどうか分からない。私も一応采女の立場なんで、誤解を招くような事は避けないと...』
『お願いだ佐由良。そんなに長い時間はかけさせないから。それに俺達は親戚同士。上手い言い訳だって出来るさ。』
さすがの佐由良も、ここまで阿止里にお願いされると断り切れない。
(阿止里の事は、以前瑞歯別皇子にも話してるし、理解はしてくれるはず...)
『分かったわ。じゃあちょっとだけね。』
佐由良は仕方ないかと思い、渋々了承した。
『あぁ、佐由良。本当に有り難う。』
こうして瑞歯別皇子一行は、そのまま宮の中を案内して回った。
また佐由良からの報告で、今回の訪問者の中に怪しい者は見あたらないとの事だった。
そして佐由良の方も仕事や、今日の宴の準備にと忙がしく回っていた。
大和の女達からしても、阿止里はかなりの好青年に見えたようだ。
そんな中、瑞歯別皇子は遠くに佐由良が歩いてるのを見つけた。
(はぁー、いずれは合わせるのだから仕方ないか。)
『稚田彦、向こうにいる佐由良をちょっと連れて来てくれ。』
瑞歯別皇子は隣にいた稚田彦に耳打ちした。
『あぁ、あんな所に。分かりました、ちょっと行ってきます。』
そう言って稚田彦は佐由良の元に行き、そのまま佐由良を連れてきた。
そして佐由良も直ぐに阿止里に気付いたらしく、思わず声をかけた。
『ほ、本当に、阿止里なの?』
その声を聞いた阿止里は、思わず後ろを振り返った。そこには先ほど話しに出ていた佐由良が立っていた。
彼女は阿止里を見てとても驚いた表情をしていた。
まさか彼が代理で大和に来るとは思ってもみなかったようだ。
『さ、佐由良...お前なのか。』
佐由良が『阿止里、久しぶり......』と言う前に、阿止里は佐由良を思いっきり抱きしめた。
『佐由良、会いたかった!!』
その場にいた他の者は皆、余りの事に何も言葉を発しなかった。
だが瑞歯別皇子に関してはかなり動揺し、今にも手が出そうになった。
『皇子、ここは抑えて!』
稚田彦がとっさに、彼を止めて彼の耳元で言った。
瑞歯別皇子も稚田彦にそう言われて、必死に押し止めた。
『あ、阿止里、ちょっと皆が見てるわ。』
佐由良は必死で阿止里に言った。
そして阿止里もやっと観念して、佐由良から身を離した。
だがそれでも2人の距離はまだ近いままだった。
そして阿止里は佐由良の手をしっかりと握って言った。
『今回、大和の大王の元に訪問する話しが出た時に、乙日根様に自分が代理で行きたいと申し出したんだ。それでその際に佐由良のいるこの宮にも寄りたいとの希望を出してね。』
阿止里は満面の笑みで佐由良を見つめて言った。まるで愛しの娘に会えたかの如く。
ただそれを聞いた瞬間、今回のこの宮の訪問の理由が分かってしまった。
つまりこの宮の訪問は、阿止里個人の希望で実行されたという事だ。
『まぁ、今回のこの宮の訪問は、阿止里が決めた事だったのね。』
佐由良は嬉しいなら、呆れたやらで、内心とても複雑だった。
『悪い。ただどうしても、佐由良お前の顔が見たくてな。元気そうで安心したよ。』
そんな2人を見ていて、さすがに限界に来たのか、『ゴホン』と瑞歯別皇子が咳払いをした。
『阿止里殿、折角の親戚との再会中で申し訳ないんだが。そろそろ次の場所に移ろうと思う。』
『あぁ、そうですね。済みません、佐由良に会えたものだからつい...』
阿止里は瑞歯別皇子に謝った。だが佐由良に会えた事が余程嬉しかったのだろう。とても満足そうな表情だった。
(阿止里、吉備ではこんな事する子じゃ無かったのに......ちょっと意外だわ。)
やはりここは大和なので、日頃の環境から解放されたからなのかと佐由良は思った。
阿止里と一緒に来ている他の数名も何となく見覚えがある人達だ。
だが彼らも阿止里の態度にはかなり驚いているようだった。
そんな態度を見て、瑞歯別皇子の苛立ちはどんどん上がっていった。
だがそんな彼の思いは、佐由良には全く伝わってなさそうだ。
そんな状態に唯一気付いているのは稚田彦のみだった。
(これは、皇子もかなりご立腹の様子。後で何とか皇子の機嫌を損ねないようにする旨、佐由良に伝えておこう。そうしないと瑞歯別皇子の嫉妬が原因で何か問題が起きても大変だ。)
こうして瑞歯別皇子一行は移動する事になった。
すると阿止里は佐由良に耳打ちした。
『佐由良、また暇な時間が出来たら教えて欲しい。久しぶりだし、少し話しでもしないか。』
それを聞いた佐由良は内心複雑だった。
(そりゃあ、阿止里とは話したいけど、瑞歯別皇子の目も有るしな...
私と皇子の関係は宮の人達にはバレてる。それなのに阿止里と隠れて会ってたなんて事が知れたら、問題事になりかねない...)
『うーん、それはちょっと約束出来るかどうか分からない。私も一応采女の立場なんで、誤解を招くような事は避けないと...』
『お願いだ佐由良。そんなに長い時間はかけさせないから。それに俺達は親戚同士。上手い言い訳だって出来るさ。』
さすがの佐由良も、ここまで阿止里にお願いされると断り切れない。
(阿止里の事は、以前瑞歯別皇子にも話してるし、理解はしてくれるはず...)
『分かったわ。じゃあちょっとだけね。』
佐由良は仕方ないかと思い、渋々了承した。
『あぁ、佐由良。本当に有り難う。』
こうして瑞歯別皇子一行は、そのまま宮の中を案内して回った。
また佐由良からの報告で、今回の訪問者の中に怪しい者は見あたらないとの事だった。
そして佐由良の方も仕事や、今日の宴の準備にと忙がしく回っていた。
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