大和の風を感じて2〜花の舞姫〜【大和3部作シリーズ第2弾】

藍原 由麗

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12P《市辺皇子との交流》

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  翌日の朝、忍坂姫おしさかのひめ雄朝津間皇子おあさづまのおうじのいる宮の部屋の中で目を覚ました。
  今日から1ヶ月間はこの宮で生活をする事になる。

「はぁー今日も良い天気ね」

  忍坂姫はその場で思わずあくびをした。昨日は思いも寄らない雄朝津間皇子の発言を聞いて、ただただ驚きと悲しみでいっぱいだった。

  昨日雄朝津間皇子との話しが終わった後、衣奈津いなつにも一応事情を伝えたが、予想通りかなり怒っている様子だった。
  そこを彼女は必死になだめて、何とか納得して貰えるようお願いした。

  そもそも今回の婚姻は、2人の意志を尊重して進めるものだ。一方的に雄朝津間皇子を責める事も出来ない。

  また自身が雄朝津間皇子に惹かれている事は、衣奈津には言わないでおいた。

「とりあえず、今日から何をやって過ごしたら良いんだろう」

  忍坂姫は使用人ではないので、別にこの宮で働く必要もない。要は客人の扱いだ。

  とりあえず、この宮には今回初めて来たので、まずは宮の中を探索してみようかとも思った。

  彼女がそんな事を考えていると、部屋の外から女性の声が聞こえて来た。

「忍坂姫様、お早うございます。朝のお食事をこのお部屋にお持ちしても宜しいでしょうか」

  どうやらこの宮の使用人の女性のようだ。

「えぇ、分かったわ。今丁度起きた所なの。少し時間をあけてから持って来てもらえる?」

  それを聞いた使用人の女性は、「分かりました。ではそのようにさせて頂きます」と言って部屋を離れていった。

  それから忍坂姫は服を急いで服を着替えた。

  そして暫くすると部屋に朝の食事が運ばれて来た。

「本日より、姫様のお世話をさせて頂きます、伊代乃いよのと申します。何とぞ宜しくお願いします」

  部屋に食事を持って来た伊代乃は、そう挨拶をした。見た目は忍坂姫と差ほど年の変わらないように思える。

「伊代乃ね、分かったわ。ちなみにあなた歳はいくつなの?」

「歳ですか、今は14です」

  忍坂姫は自分と歳が余り変わらない事を知って嬉しくなった。
  出来るなら彼女とは仲良くしたい。

「じゃあ、私の1つ下かしら。伊代乃これから宜しくね」

  忍坂姫は笑顔で彼女にそう答えた。

  それを聞いた伊代乃はとても驚いた。彼女は皇女と聞いている。そんな彼女が使用人の自分に、こんな気さくに声を掛けてくるとは、思ってもみなかった。

「皇女様から、そんな風に言って頂けるとは思ってもみませんでした。そんな気さくに話されて宜しいのですか?」

「えぇ、私は別に気にしてないわ。あなたとは歳も近いようだし、出来れば仲良くしたいと思ったのよ」

  それを聞いた伊代乃はとても感動した。彼女が皇女と聞いていたので、もっと気難しい姫かと思っていた。


「そんな風に言ってもらえて、本当に嬉しいです。こちらこそ宜しくお願いします」

  伊代乃は少し照れたような感じで答えた。そんな彼女を見ると、彼女も年相応の女の子に思えてくる。


  その後、忍坂姫は運ばれてきた食事を頂く事にした。

  そして食事をしながら、忍坂姫はふと伊代乃に声を掛けた。

「そう言えば、雄朝津間皇子は今どうされてるの?ご自身の部屋で食事でもされてるのかしら」

  とりあえず雄朝津間皇子の普段の生活が、どのようなものか聞いておこうと思った。

「雄朝津間皇子は今日は朝早くに起きられて、周りの村を見に行かれてます。この宮の管理は皇子がされてますが、それ以外の時は外に出られてる事も多いですね」

  彼女の話だと、雄朝津間皇子は表だって国の政り事には余り携わっておらず、裏での細々した事に動いているらしい。
  昨日の盗賊に関しても、周りの村人達から話しがあった為、それで退治に行っていたようだ。

「へぇー、意外に忙しくされてるのね」

  忍坂姫は汁物をすすりながら言った。

「えぇ、でも周りの村の人達からの評判はとても良いですよ。先日も盗賊を無事退治されたので、村の村長からお呼ばれがあり、その日は村長の家に泊まられたそうです」

(なる程、だから先日は会う事が出来なかったのね)

「きっと食べ物や、お酒が沢山振る舞われて、帰れなくなったんでしょうね」

  忍坂姫は彼女の話しを黙々と聞きながら食事をすすめていた。

「まぁ、あそこの村長の家には時々通ってられましたからね。そこの村長の娘がたいそう綺麗なんだそうで……」

  それを聞いた忍坂姫は一瞬食事が止まった。

  そんな彼女を見た伊代乃は一瞬「しまった!」と思った。こんな話しを忍坂姫の前でするべきでは無かった。

「つまり、先日もその家の娘に手を出していたと言う事?」

  こっちからわざわざこの宮に出向いたと言うのに、皇子本人はその村長の娘と戯れていたと言うのだ。
  そう思うと、忍坂姫はふるふると怒りが込み上げて来た。一体どこまで人を馬鹿にするつもりなのだろう。

「忍坂姫様が先日から来られてますので、さすがにこの1ヶ月の間は、どこかの娘の元に通う事はなさらないと思います」

  伊代乃は慌てて彼女にそう言った。
つまり雄朝津間皇子はこれまでも、複数の娘の元に通っていたのだろう。

「べ、別に、男性が特定の娘の元に通うのなんて普通でしょう。そんな事気にしてないわ」

  忍坂姫はそうは言ってみたものの、やはりこの事については結構ショックを受けた。

(はぁー先が思いやられるわ……)

  こんな話しを聞いてしまうと、もう食事をする気が失せてしまった。
  とは言ってもある程度は既に食べ終えてはいたが。

「伊代乃、悪いけど食事はもう良いわ」

  そう言って、伊代乃に食事を片づけてもらうようお願いした。

  それを聞いた伊代乃も、慌てて彼女の食べかけの食事を下げた。

(それと今日は衣奈津いなつ達が帰るはずだわ。見送りだけしておこう)

  それから忍坂姫は衣奈津達の見送り為、部屋を後にした。
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