34 / 68
34P
しおりを挟む
「雄朝津間皇子がそんなふうに気にかけて下さっていたなんて、本当に知りませんでした。凄く嬉しいです」
忍坂姫は満面の笑顔で彼にそう言った。
忍坂姫としては、この件は本当に可笑しくて仕方がなかった。
だが彼がそんなふうに考えてくれるようになった事を知って、彼女はとても嬉しく思った。
しかも今回は自分の為に、わざわざこんな朝早くから会いに来てくれたのだから。
雄朝津間皇子も、忍坂姫からそんなふうに言われて少し照れ臭そうにはしていたが、内心はとても喜んでいるようだった。
「でも、その千佐名と言う娘、本当に大丈夫なんですか?
皇子が暫く来られなかっただけで、寝込んでしまったんですよね」
「まぁ、そうなんだよね。これは前々から本人や彼女の父親には言っているんだが。
大和の皇子である俺が、彼女を妃にするのは中々難しい。
だから彼女の幸せを考えるなら、他のもっと彼女を幸せに出来る男性を見つけた方が良いと俺は思っている」
雄朝津間皇子曰く、皇子自身も彼女の幸せを考えているとの事。
それで彼は、もう自分の事は忘れて他の男性を見つけた方が良いのではと説得もしたそうだ。
だがそれでも、千佐名は自分の側にいたいと言い、それだけで自分は十分幸せだとの事だった。
そして結局は、ずるずるとそのままの関係が続いているのだそうだ。
(その娘は、完全に雄朝津間皇子しか見えなくなってるのね)
忍坂姫は千佐名の事をそう思った。
「今まで俺に近付いてきた娘は、欲が強くて俺の皇子としての身分につられてくるか、割り切った関係で構わないと言う娘が大半だった。だがそんな中、千佐名だけが俺を純粋に好いてくれてたんだよね」
だからこそ、雄朝津間皇子は千佐名だけは少し特別扱いをしていたのだろう。
彼が前に言っていたように、おしとやかでとても柔順な娘なんであろう。
「ただその千佐名って娘は、本当に不敏でならないですね。
本当に世の中の男性が皆、今の大王みたいな人だったら、世の全ての女性が幸せになれるんでしょうけどね」
「まぁ、確かにそうだけど……てか、何でそこで大王が出てくるんだよ」
雄朝津間皇子はちょっと不満そうにして彼女に言った。
「別に良いじゃないですか。ちょっと例えで言っただけなんですから」
(今まで大王の話しをしても全く動じる事はなかったのに、どうしたのかしら?)
また千佐名自身も、彼女を本当に大切に思う男性が現れて、また千佐名もその男性の事を好きになれたら良いのにと忍坂姫は思った。
「とりあえず、千佐名の事を心から大切に思ってくれる男性が現れる事を祈るしかないですね」
「まぁ、そうだね。だがそんな相手がいきなり都合良く現れるとも、思えないけどね」
忍坂姫は何か良い方法はないかと、ふとその場で考えてみた。
「例えば私がその村の男性に、彼女に好意を持ってる若者がいないか、片っ端から聞いて回ってみるとか?」
それを聞いた雄朝津間皇子は、何て事を言うんだと少し呆れてしまった。
「忍坂姫、村にどんな男がいるか分からないのに、そんな危ない事を君にさせる訳にはいかないだろう。君はもっと警戒心を持った方が良い。もし村の男どもに襲われでもしたらどうするんだ」
雄朝津間皇子は、少しきつめの言葉で彼女に言った。
「雄朝津間皇子、本当にごめんなさい。私ついつい軽々しい事を口にしてしまって……」
忍坂姫は雄朝津間皇子にそう注意されて、思わずシュンとしてしまった。
「でもその千佐名って子の事、何故か私気になって。多分、本心では彼女も幸せになりたいと願ってるように思います。
なので、どうか彼女にも幸せになって貰いたいです」
忍坂姫はふとそんな事を思ってしまった。
彼女とは実際に会った事はないが、少し気になってしまう。
彼女も辛い恋をしているのだろうから。
そんな彼女の話しを聞いた雄朝津間皇子は、彼女は何故こんなにも、他の娘の事を心配出来るのだろうかと思った。思えば七支刀の時もそうだった。
(まぁ、そこが彼女の良い所なのかもしれないな……)
雄朝津間皇子は忍坂姫の事を見て、そんなふうに思った。
「とりあえずこの件に関しては、ここでどうこう言ってても仕方ない。
ところで、忍坂姫。朝の食事がまだだろう。俺も食べてないから一緒に食べないか」
雄朝津間皇子にそう言われ、まだ食事をしていなかった事に彼女は気が付いた。
そして彼女は少し照れながら「はい」と皇子に返事をした。
そんな彼女が少し可愛らしく見えた。
伊代乃の話しだと、市辺皇子は昨日寝るのが遅くなった為、まだ起きて来てないとの事だった。
そこで彼女にお願いして、彼女の部屋に2人分の食事を持ってきてもらうようお願いした。
伊代乃も「はい、分かりました」と言って、快く引き受けてくれた。
それから暫くして、部屋に2人分の朝の食事が運ばれてきた。
そして食事を始めてから雄朝津間皇子は思った。
彼女がこの宮に来て、2人だけで食事をしたのは、これが初めての事であったと。
(今日は、何か彼女を独占している気分だな。食事の時はいつも市辺が一緒だったから)
そう思うと、雄朝津間皇子は何だかとても嬉しく思えてきた。
こうして2人は、始めて2人だけで朝の食事をとる事となった。
忍坂姫は満面の笑顔で彼にそう言った。
忍坂姫としては、この件は本当に可笑しくて仕方がなかった。
だが彼がそんなふうに考えてくれるようになった事を知って、彼女はとても嬉しく思った。
しかも今回は自分の為に、わざわざこんな朝早くから会いに来てくれたのだから。
雄朝津間皇子も、忍坂姫からそんなふうに言われて少し照れ臭そうにはしていたが、内心はとても喜んでいるようだった。
「でも、その千佐名と言う娘、本当に大丈夫なんですか?
皇子が暫く来られなかっただけで、寝込んでしまったんですよね」
「まぁ、そうなんだよね。これは前々から本人や彼女の父親には言っているんだが。
大和の皇子である俺が、彼女を妃にするのは中々難しい。
だから彼女の幸せを考えるなら、他のもっと彼女を幸せに出来る男性を見つけた方が良いと俺は思っている」
雄朝津間皇子曰く、皇子自身も彼女の幸せを考えているとの事。
それで彼は、もう自分の事は忘れて他の男性を見つけた方が良いのではと説得もしたそうだ。
だがそれでも、千佐名は自分の側にいたいと言い、それだけで自分は十分幸せだとの事だった。
そして結局は、ずるずるとそのままの関係が続いているのだそうだ。
(その娘は、完全に雄朝津間皇子しか見えなくなってるのね)
忍坂姫は千佐名の事をそう思った。
「今まで俺に近付いてきた娘は、欲が強くて俺の皇子としての身分につられてくるか、割り切った関係で構わないと言う娘が大半だった。だがそんな中、千佐名だけが俺を純粋に好いてくれてたんだよね」
だからこそ、雄朝津間皇子は千佐名だけは少し特別扱いをしていたのだろう。
彼が前に言っていたように、おしとやかでとても柔順な娘なんであろう。
「ただその千佐名って娘は、本当に不敏でならないですね。
本当に世の中の男性が皆、今の大王みたいな人だったら、世の全ての女性が幸せになれるんでしょうけどね」
「まぁ、確かにそうだけど……てか、何でそこで大王が出てくるんだよ」
雄朝津間皇子はちょっと不満そうにして彼女に言った。
「別に良いじゃないですか。ちょっと例えで言っただけなんですから」
(今まで大王の話しをしても全く動じる事はなかったのに、どうしたのかしら?)
また千佐名自身も、彼女を本当に大切に思う男性が現れて、また千佐名もその男性の事を好きになれたら良いのにと忍坂姫は思った。
「とりあえず、千佐名の事を心から大切に思ってくれる男性が現れる事を祈るしかないですね」
「まぁ、そうだね。だがそんな相手がいきなり都合良く現れるとも、思えないけどね」
忍坂姫は何か良い方法はないかと、ふとその場で考えてみた。
「例えば私がその村の男性に、彼女に好意を持ってる若者がいないか、片っ端から聞いて回ってみるとか?」
それを聞いた雄朝津間皇子は、何て事を言うんだと少し呆れてしまった。
「忍坂姫、村にどんな男がいるか分からないのに、そんな危ない事を君にさせる訳にはいかないだろう。君はもっと警戒心を持った方が良い。もし村の男どもに襲われでもしたらどうするんだ」
雄朝津間皇子は、少しきつめの言葉で彼女に言った。
「雄朝津間皇子、本当にごめんなさい。私ついつい軽々しい事を口にしてしまって……」
忍坂姫は雄朝津間皇子にそう注意されて、思わずシュンとしてしまった。
「でもその千佐名って子の事、何故か私気になって。多分、本心では彼女も幸せになりたいと願ってるように思います。
なので、どうか彼女にも幸せになって貰いたいです」
忍坂姫はふとそんな事を思ってしまった。
彼女とは実際に会った事はないが、少し気になってしまう。
彼女も辛い恋をしているのだろうから。
そんな彼女の話しを聞いた雄朝津間皇子は、彼女は何故こんなにも、他の娘の事を心配出来るのだろうかと思った。思えば七支刀の時もそうだった。
(まぁ、そこが彼女の良い所なのかもしれないな……)
雄朝津間皇子は忍坂姫の事を見て、そんなふうに思った。
「とりあえずこの件に関しては、ここでどうこう言ってても仕方ない。
ところで、忍坂姫。朝の食事がまだだろう。俺も食べてないから一緒に食べないか」
雄朝津間皇子にそう言われ、まだ食事をしていなかった事に彼女は気が付いた。
そして彼女は少し照れながら「はい」と皇子に返事をした。
そんな彼女が少し可愛らしく見えた。
伊代乃の話しだと、市辺皇子は昨日寝るのが遅くなった為、まだ起きて来てないとの事だった。
そこで彼女にお願いして、彼女の部屋に2人分の食事を持ってきてもらうようお願いした。
伊代乃も「はい、分かりました」と言って、快く引き受けてくれた。
それから暫くして、部屋に2人分の朝の食事が運ばれてきた。
そして食事を始めてから雄朝津間皇子は思った。
彼女がこの宮に来て、2人だけで食事をしたのは、これが初めての事であったと。
(今日は、何か彼女を独占している気分だな。食事の時はいつも市辺が一緒だったから)
そう思うと、雄朝津間皇子は何だかとても嬉しく思えてきた。
こうして2人は、始めて2人だけで朝の食事をとる事となった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
(学園 + アイドル ÷ 未成年)× オッサン ≠ いちゃらぶ生活
まみ夜
キャラ文芸
年の差ラブコメ X 学園モノ X オッサン頭脳
様々な分野の専門家、様々な年齢を集め、それぞれ一芸をもっている学生が講師も務めて教え合う教育特区の学園へ出向した五十歳オッサンが、十七歳現役アイドルと同級生に。
子役出身の女優、芸能事務所社長、元セクシー女優なども登場し、学園の日常はハーレム展開?
第二巻は、ホラー風味です。
【ご注意ください】
※物語のキーワードとして、摂食障害が出てきます
※ヒロインの少女には、ストーカー気質があります
※主人公はいい年してるくせに、ぐちぐち悩みます
第二巻「夏は、夜」の改定版が完結いたしました。
この後、第三巻へ続くかはわかりませんが、万が一開始したときのために、「お気に入り」登録すると忘れたころに始まって、通知が意外とウザいと思われます。
表紙イラストはAI作成です。
(セミロング女性アイドルが彼氏の腕を抱く 茶色ブレザー制服 アニメ)
題名が「(同級生+アイドル÷未成年)×オッサン≠いちゃらぶ」から変更されております
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
偽夫婦お家騒動始末記
紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】
故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。
紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。
隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。
江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。
そして、拾った陰間、紫音の正体は。
活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。
書籍化の打診が来ています -出版までの遠い道のり-
ダイスケ
エッセイ・ノンフィクション
ある日、私は「書籍化の打診」というメールを運営から受け取りました。
しかしそれは、書籍化へと続く遠い道のりの一歩目に過ぎなかったのです・・・。
※注:だいたいフィクションです、お察しください。
このエッセイは、拙作「異世界コンサル株式会社(7月12日に電子書籍も同時発売)」の書籍化の際に私が聞いた、経験した、知ったことの諸々を整理するために書き始めたものです。
最初は活動報告に書いていたのですが「エッセイに投稿したほうが良い」とのご意見をいただいて投稿することにしました。
上記のような経緯ですので文章は短いかもしれませんが、頻度高く更新していきますのでよろしくおねがいします。
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる