大和の風を感じて2〜花の舞姫〜【大和3部作シリーズ第2弾】

藍原 由麗

文字の大きさ
45 / 68

45P 《半島からやって来た男》

しおりを挟む
  この時代、隣の半島の国から多くの渡来人が渡って来ていた。
  そしてその人達は、大和付近の様々な地域に住むようになった。
  そんな彼らは大陸からの技術や物、建築、知識等様々なものを伝えてくれる。

  瑞歯別大王みずはわけのおおきみのいる丹比柴籬宮たじひのしばかきのみやから、馬で少し行った所にも、沢山の渡来人が住んでいた。

  そしてその半島から、今回ある1人の男が複数の同伴者を率いてこの国にやって来ていた。

「この国に戻って来たのは6年ぶりか。聞いた話しによると、前の大王が崩御し、あの弟皇子が大王になったと聞く。あの忌々しい皇子が」

  そう発言した男の名は嵯多彦さたひこと言って、元々は豪族葛城かつらぎの者だ。
  6年前、大和に復讐をしようと計画をしたが、当時まだ皇子であった瑞歯別大王によって失敗に終わり、その後隣の半島に逃れていた。

「あの男には、必ず復讐してやる。その為にわざわざ戻って来たんだ」

  すると嵯多彦の横に1人の男がやって来た。どうやら彼の同伴者らしい。

「ここが倭国わこくか。初めて来たが、中々活気があって良さそうだ。
  何でも、この国は今の王になってからは泰平の世で、とても平和だと聞く」

  彼はどうやら半島の人間らしく、この国に来たのは初めてのようだ。

大炯でひょん、そんな事は俺が知った事ではない。まずは今の大王に対しての復讐だ。お前もそれに協力すると言うから、連れて来てやったんだからな」

  嵯多彦は隣にいる大炯に対して、少し苛立った。彼は元々半島で殺し屋を生業にしており、そんな彼の腕を買って嵯多彦は仲間に誘い入れた。

「もちろん、それは協力する。ただ俺のいた国はずっと戦の絶えない有り様だった。だからこの国のような平和な治世下の中で暮らせる人々は恵まれている。そんな国に少し興味もあったからな。
  それと噂で聞いたが、以前この国には聖帝と呼ばれた王がいたそうだな」

  それを聞いた嵯多彦は、さらに怒りが込み上げてきた。

「あぁ、今の大王の父親の事だ。人々はその大王の偉大な功績を称えて、聖帝と呼んでいた。だが俺からしたら、そんなやつの事はどうだって良い!」

  嵯多彦は怒りの余り、その場にあった土器を思わず叩き壊してしまった。

(人々から聖帝と称えられた大雀大王おおさざきのおおきみ。俺も数回しか見た事がないが、あの磐之媛いわのひめが心の底から惹かれた男だ。
  そしてその息子達が今の大和を支えている)

  嵯多彦は瑞歯別大王をまず抹殺する事で、大和王権を揺らがせ、それから徐々にこの王権を衰退へと持っていこうとしていた。

  そして大和王権が倒れてしまえば、恐らく周りの豪族同士で争いが起こり、倭国内で大混乱になる。
  それに半島で倭国を征服したいと考える者達もいる。あとはそいつらに任せたら良い。

  瑞歯別大王への復讐、それが今の彼の全てだった。

(今の俺には何の権力も無いし、兵を持てる力もない。であれば、頭を使って動くしかないからな)


  嵯多彦はそんなふうに考えていた。そして酷い悲しみを抱いて死んでいった磐之媛の無念を、何とか晴らしてもやりたかった。

  そして嵯多彦はその計画を実行する為、しばらくこの辺りに滞在する事にした。瑞歯別大王のいる宮もここからさほど離れていないと聞く。

  そんな中ふと彼はある事を思い出した。

(そう言えば、今の大王は妃を1人娶り、その后との間に1人の姫をもうけたと言っていたな。何でもその妃は吉備の姫だとか)

  その時嵯多彦の脳裏には、ふとある1人の娘の顔が浮かんできた。

「それはきっとあの吉備から来た娘の事だろう。やはりあの男は、あの娘を自分のものにしていたようだな」

  嵯多彦はそんな事を思う中、もう後戻りは出来ないと思っていた。
  この復讐の為に自分は半島に行き、そこで6年間も生きてきたのだ。

  そんな事を思いながら、嵯多彦は大炯を連れて他の同伴者達の元へと向かって行った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

(学園 + アイドル ÷ 未成年)× オッサン ≠ いちゃらぶ生活

まみ夜
キャラ文芸
年の差ラブコメ X 学園モノ X オッサン頭脳 様々な分野の専門家、様々な年齢を集め、それぞれ一芸をもっている学生が講師も務めて教え合う教育特区の学園へ出向した五十歳オッサンが、十七歳現役アイドルと同級生に。 子役出身の女優、芸能事務所社長、元セクシー女優なども登場し、学園の日常はハーレム展開? 第二巻は、ホラー風味です。 【ご注意ください】 ※物語のキーワードとして、摂食障害が出てきます ※ヒロインの少女には、ストーカー気質があります ※主人公はいい年してるくせに、ぐちぐち悩みます 第二巻「夏は、夜」の改定版が完結いたしました。 この後、第三巻へ続くかはわかりませんが、万が一開始したときのために、「お気に入り」登録すると忘れたころに始まって、通知が意外とウザいと思われます。 表紙イラストはAI作成です。 (セミロング女性アイドルが彼氏の腕を抱く 茶色ブレザー制服 アニメ) 題名が「(同級生+アイドル÷未成年)×オッサン≠いちゃらぶ」から変更されております

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...