大和の風を感じて2〜花の舞姫〜【大和3部作シリーズ第2弾】

藍原 由麗

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「さてと、そろそろ本題に入るとするか」

  雄朝津間皇子おあさづまのおうじは急に深呼吸をした。やはり今回は何か用事があってここに来たみたいだ。

(雄朝津間皇子、一体何の用事があって来たんだろう)

「ただその前に1つ確認しておきたいんだけど。君、何でも葛城の皇子との婚姻が決まったんだってね。それは本当?」

(え、その話しが雄朝津間皇子にも知られていたの!)

  確かにこの婚姻を紹介してくれたのは瑞歯別大王だったので、これを彼が知っていても不思議ではない。彼はその後大王と会っていたと言っていたから、その際に聞いたのだろうか。

「は、はい。皇子もご存知かも知れませんが、大王からの紹介でその後思いのほかトントン拍子で話しが進んで行きました」

(この件と、雄朝津間皇子の話しって一体何の関係があるんだろう?)

  それを聞いた彼は、思わずその場でため息をついた。そして少し苦しそうな表情で彼女に言った。

「やっぱりそこは本当だったか、それで君は本当にそれで良いと思ってるの?」

「えぇ~と、そうですね。両親も安心しますし、相手の方もとても温厚で優しそうな人でしたので」

(きっと、それが皆にとって一番良いんだわ)

  忍坂姫は特に嬉しそうな感じでもく、そう彼に言った。

  それを聞いた雄朝津間皇子は、急に彼女の肩を掴んで言った。

「君の気持ちはどうなんだ。そいつの事が本当に好きなのか?」

  彼はとても真剣な目で彼女を見ていた。

  忍坂姫おしさかのひめは彼に急にそのような事を言われてしまい、訳が分からなくなってきた。

「皇子、何を言っているんですか!私は好きとか好きじゃないとか、もうそんなのは良いんです。
  私は自分の事を大切に思ってくれる人の元に嫁ぎたい、ただそう思っただけです!!」

彼女はそう言って、彼から顔を背けた。


(もう、私の事はほっといて……)


  そんな彼女の態度と言葉を聞いて、雄朝津間皇子はもう我慢の限界だった。


「忍坂姫、違うんだ。そんなの...俺が嫌なんだよ!!」

  雄朝津間皇子は思わず忍坂姫を思いっきり抱き締めた。
  そして彼は、続けて自分の想いを口にした。

「忍坂姫、俺は君の事が好きだ。本当に大好きなんだ。だから、君を他の男になんか渡したくはないんだよ!!」

  忍坂姫は急に彼にそんな事を言われてしまい、思考が止まってしまった。

「ち、ちょっと。皇子何を冗談を……」

  一体何が起こったと言うのだ。彼女は彼の言葉を中々受け入れる事が出来ないでいた。

「冗談なんかじゃない。本当の事さ。今日君の婚姻が決まったって大王から聞いて、もう頭が真っ白になったよ」

  それから2人は暫くそのままでいた。

  そして彼も少し落ち着いて来たのか、少し彼女から体を離した。

  それから雄朝津間皇子は、彼女の顔を見て優しく言った。

「忍坂姫、少し俺の話しを聞いてくれるかな?」

  忍坂姫は思わずコクコクと頷いた。

  すると皇子は、彼女の横に座り直してから話しをする事にした。




「君と知り合った当初は、君の事は本当に何とも思ってはいなかった。
  それが変わりだしたのが、七支刀の事件の後に君を傷付けてしまった時だった。君に嫌いと言われてしまい、その一言に対して凄いショックを受けたんだ」

(あの時、そんなに皇子が傷付いていたなんて私全然知らなかった……)

  そして彼は続けて話した。

「それでその時、自分は君に好かれたいと思っている事に気が付いたんだ。
  でも今までの俺は相手から言い寄られるばかりだったから、どうすれば君を振り向かせられるかが全く分からなかった。
  それに君は、俺みたいなやつよりも、もっと誠実な男を好いてるようだったしね」

  それから彼は彼女の手を握って、そして彼女の顔をじっと見つめて言った。

「だが、日に日に君への想いは強くなる一方だった。でも今の自分では、君をこの1ヵ月の間だけで振り向かす自信がどうしても持てなくてね。
  なのでこの期間が過ぎたら、期間を延長出来ないかと考えていた」

「え、延長!?」

  彼女は驚いた。彼が宮で期間について余り気にしていなかったのは、その為だったのだろうか。

「そう。とりあえず君には、俺の宮での滞在期間を延ばすか、もしくは俺が君の宮に通っても良いと思ってた」

「皇子が、私の元に?」

(これは本当に意外な話しだわ。まさかそこまで皇子が考えてくれていたなんての?)

  それから雄朝津間皇子は彼女を自分の方へ向かせて言った。

「忍坂姫、これからは君だけを一生愛すると誓うよ。だからお願いだ、どうか俺の妃になってくれないか」

  それを聞いた彼女は、ふと大王の妃である彼女の事が浮かんだ。

「でも、皇子が本当に好きなのは佐由良さゆら様ではないんですか?」

  彼女にそう言われて、彼は少し「あぁ、その件か」と思い出したようだ。

「その件についてもちゃんと説明する。確かに彼女の事は昔好きだったし、妃にしたいと言ったのも本当だ。
  でもだからといって、彼女を今の大王から奪おうなんて事は全く思ってない。
  彼女が大王の傍で幸せでいてくれたらそれで良いと思ったんだ」

  それから一息置いて、彼は続けて話した。

「だが、君は彼女とは違う。君が他の豪族の皇子との婚姻が決まったと知った時、本当に腹が煮えくりかえる思いだったよ。
  それなら、無理矢理にでも君を自分のものにしてしまおうかとさえ考えた」

  それを聞いた彼女は思わず動揺した。
  今まで割り切った関係を望んでいた彼からはとても想像がつかない。

(雄朝津間皇子がまさかそこまで想ってくれていたなんて)

「俺が今本当に一番好きなのは佐由良じゃない。忍坂姫、君なんだよ」
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