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こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日追いかけっこ♡
受け 九重 羽瑠(ここのえ はる) オメガ 21歳
攻め 九重 真澄(ここのえ ますみ) アルファ 23歳
________________________
また、あの人がくる…!!!!!
急いで物陰に隠れたのはいいけれど、いつもすぐにあの人に見付かってしまう。
今日こそ見つからずひっそり過ごしたいと思っていたのに、アフタヌーンティーを一緒にされたいそうですと数刻前に言伝にきたメイドの言葉にびっくりしたのと同時に、
「あ、逃げなきゃ」
反射的に口にしてしまい身体も動いてしまった。
時は5年前に遡る。
僕、九重 羽瑠(ここのえ はる)は、稀なオメガ性であの人………………アルファ性の旦那様と政略結婚をした。
旦那様は九重 真澄(ここのえ ますみ)。
僕の2つ歳上で、僕が16歳の時に婚約者となった。
彼のご両親が会社を経営していて、僕の父が社長の秘書を行っているということで少々家族間交流があった。
そして、自分たちの子供を結婚させるのはどうかとかなんとかで、社長からの提案を飲まないわけにいかない父は僕を政略結婚に…………ということである。
そしてつい半年前に結婚をしたわけだが、僕は未だに彼が苦手なのだ。
16の時、初めての顔合わせ。
オメガ性が判明したばかりなのと、政略結婚という言葉に自分はモノでしかないのかと酷く落ち込んだ。
両親は唯一の子供ということで沢山の愛情を注いでくれたけど、オメガ性というのは繊細で大事に大事にして、そして良い人と結婚して欲しいなんて願いもあったのかもしれない。
両親と相手の両親、そして当人達。
アルファは見た目麗しく、佇まいも美しく、所作も声色も優しいが、男でオメガ性で政略結婚というアルファのこの男には不釣り合いな自分が、酷く惨めに思えて、一瞬にして九重真澄を見るのを辞めた。
この男が、アルファが恐い。
あの時感じた恐怖を結婚した今も尚引きづってしまっている。
あの人はすごく優しくしてくれる。好きに過ごしていいと広い部屋を宛がってくれて、よく聞くオメガの飼い殺しのようなことはしない。
初夜はあまりにも恐がる僕に無理強いはしないとセックスはしなかったし、発情期は結婚する前はひとりで腹の疼きを抑制剤でなんとか押さえ込んでいたけれど、結婚してからは1度も来ていない。
結婚と旦那様への恐怖心から発情期が来ていないのは明白だった。来ないなら来ないでいいし、あまり旦那様に近付かないでいようと、毎日逃げ回っている。
こんなんじゃ、いつか見放されて離婚……。
「はぁ…逃げたい。でもここから逃げてもどこにも行けない」
せっかくメイドが僕の好きな洋菓子を用意してくれたのに、旦那様と一緒にアフタヌーンティーなんて無理だ、と逃げてしまっては好意もお菓子も無駄にしてしまう。
「どこか、知らない場所にひとりで行けたらな…………」
「羽瑠、見つけた」
「っ……!」
旦那様だ。見つかってしまった。どうしよう。
「一緒にティータイムにしようと思っていたのに、こんな所まで…もしかしてかくれんぼしたかったのかい?羽瑠はかわいいね」
さっきの発言を聞いてたんだ。逃げたいなんて…。どうしようどうしよう。怖い。旦那様の目を見れない。
「あっ、う…。ごめ、ごめんなさい。あの、」
「あぁ、大丈夫。怖がらないで?羽瑠は私が怒ってると思ってるのかもしれないけど、怒ってないよ。ただ、転んだりして怪我してないか心配なんだ」
緊張で息がまともにできなくて、旦那様の声が遠くに聞こえる。
ああ、苦しい、怖い。助けて。
不意に、ふわりと香った優しい匂い。その匂いに安心して身体が重くなる。
「おっと…。ふふ…安心して寝ちゃったの?かわいいなぁ」
あたたかい。
あたたかいなにかに包まれてそれで、すごく優しい匂いがした。
受け 九重 羽瑠(ここのえ はる) オメガ 21歳
攻め 九重 真澄(ここのえ ますみ) アルファ 23歳
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また、あの人がくる…!!!!!
急いで物陰に隠れたのはいいけれど、いつもすぐにあの人に見付かってしまう。
今日こそ見つからずひっそり過ごしたいと思っていたのに、アフタヌーンティーを一緒にされたいそうですと数刻前に言伝にきたメイドの言葉にびっくりしたのと同時に、
「あ、逃げなきゃ」
反射的に口にしてしまい身体も動いてしまった。
時は5年前に遡る。
僕、九重 羽瑠(ここのえ はる)は、稀なオメガ性であの人………………アルファ性の旦那様と政略結婚をした。
旦那様は九重 真澄(ここのえ ますみ)。
僕の2つ歳上で、僕が16歳の時に婚約者となった。
彼のご両親が会社を経営していて、僕の父が社長の秘書を行っているということで少々家族間交流があった。
そして、自分たちの子供を結婚させるのはどうかとかなんとかで、社長からの提案を飲まないわけにいかない父は僕を政略結婚に…………ということである。
そしてつい半年前に結婚をしたわけだが、僕は未だに彼が苦手なのだ。
16の時、初めての顔合わせ。
オメガ性が判明したばかりなのと、政略結婚という言葉に自分はモノでしかないのかと酷く落ち込んだ。
両親は唯一の子供ということで沢山の愛情を注いでくれたけど、オメガ性というのは繊細で大事に大事にして、そして良い人と結婚して欲しいなんて願いもあったのかもしれない。
両親と相手の両親、そして当人達。
アルファは見た目麗しく、佇まいも美しく、所作も声色も優しいが、男でオメガ性で政略結婚というアルファのこの男には不釣り合いな自分が、酷く惨めに思えて、一瞬にして九重真澄を見るのを辞めた。
この男が、アルファが恐い。
あの時感じた恐怖を結婚した今も尚引きづってしまっている。
あの人はすごく優しくしてくれる。好きに過ごしていいと広い部屋を宛がってくれて、よく聞くオメガの飼い殺しのようなことはしない。
初夜はあまりにも恐がる僕に無理強いはしないとセックスはしなかったし、発情期は結婚する前はひとりで腹の疼きを抑制剤でなんとか押さえ込んでいたけれど、結婚してからは1度も来ていない。
結婚と旦那様への恐怖心から発情期が来ていないのは明白だった。来ないなら来ないでいいし、あまり旦那様に近付かないでいようと、毎日逃げ回っている。
こんなんじゃ、いつか見放されて離婚……。
「はぁ…逃げたい。でもここから逃げてもどこにも行けない」
せっかくメイドが僕の好きな洋菓子を用意してくれたのに、旦那様と一緒にアフタヌーンティーなんて無理だ、と逃げてしまっては好意もお菓子も無駄にしてしまう。
「どこか、知らない場所にひとりで行けたらな…………」
「羽瑠、見つけた」
「っ……!」
旦那様だ。見つかってしまった。どうしよう。
「一緒にティータイムにしようと思っていたのに、こんな所まで…もしかしてかくれんぼしたかったのかい?羽瑠はかわいいね」
さっきの発言を聞いてたんだ。逃げたいなんて…。どうしようどうしよう。怖い。旦那様の目を見れない。
「あっ、う…。ごめ、ごめんなさい。あの、」
「あぁ、大丈夫。怖がらないで?羽瑠は私が怒ってると思ってるのかもしれないけど、怒ってないよ。ただ、転んだりして怪我してないか心配なんだ」
緊張で息がまともにできなくて、旦那様の声が遠くに聞こえる。
ああ、苦しい、怖い。助けて。
不意に、ふわりと香った優しい匂い。その匂いに安心して身体が重くなる。
「おっと…。ふふ…安心して寝ちゃったの?かわいいなぁ」
あたたかい。
あたたかいなにかに包まれてそれで、すごく優しい匂いがした。
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