霧隠あさひは今日も忍べてない!

まるたん・しもんず

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第1話

第一章

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私の名前は霧隠あさひ。13歳の中学2年!
…今、(忍者かよ!)って思ったでしょ!?
…うん、まあ正解。霧隠流忍術の宗家に生まれたからね。ちなみに今の当主は私のおじいちゃん。でもね、別に私は本格的な忍者ってわけじゃないだよ。小学校低学年の頃までは確かにおじいちゃんにシゴかれて忍者の特訓みたいなのさせられたけど…女の子っぽくないからさ、名張から桑名にお父さんとお母さんと私で引っ越すことになったタイミングで辞めちゃった。だから女子中学生にしては足が速かったり高くジャンプできたり…あと「変わり身の術」と「分身の術」が使える程度の普通の13歳だよ。
…そう思ってた時期が私にもありましたよ。でもね、中学に入って入部したハンドボール部で思い知らされたの。私がちょっとだと思ってた足の速さやジャンプ力はちとおかしいことに…そんなわけで普通がいい私はちょっとだけ運動神経がいい風に見せるために努力したんだ!力の加減って難しいんだよ。結果、我がハンドボール部は創部以来初めての県大会に出場しちゃった…そんなこんながあったのが中学一年の時の出来事。
そんな私に転機が訪れたのが今から話す中学二年に進級した年だったのね。

——4月、新学期。

私はクラス分けの発表を校庭で確認する
「B組か…」
これから一年間通う2年B組の教室に入る。そして黒板に貼られた紙で自分の席を探す。前から三列目という微妙な位置の机の上に鞄を置いて椅子に座ると
「あさひ~、今年はおんなじクラスだね。よろしく!我が女子ハンドのエース」
と声をかけてきたのは同じハンドボール部で小学生の頃からの友達である『水谷碧』だ。
「うん、碧と同じクラスって小五の時以来だね。」
と笑顔で返してみたよ。
「てかさ、あさひの前と隣の席、転入生みたいだよ。どっちもみたことない名前だったでしょ?」
と碧がなんとなく楽しそうに言ってきた
「へぇ~…確かにこの後頭部は初めてみるかも…」と私は隣の席で机に突っ伏して眠っている転入生らしい男子の後頭部を見つめる。
「なんか教室入ってくるの見たって子の話だと結構イケメンらしいよ~」
と碧は興味津々みたい。
私はあんまり興味が湧かず
「ふーん」
と生返事で返した。
そんなやり取りしてると教室の前の扉から颯爽って言葉がピッタリな感じでとんでもない綺麗なギャル?みたいな女の子が入ってきて黒板の席割りを眺めたと思ったら私の前の席に座る。そして机に鞄を置くとくるりと私の方に向き直り
「ねえねえ、あたし今日からこの学校に転入してきた木全澄夏っていうの!よろしくね。あなたが霧隠さん?」
ととてつもなくかわいい笑顔で自己紹介と私のことを聞いてきた。
私と隣に立っていた碧もあまりの可愛さに少し呆けちゃったけど私はなんとか頑張って
「う、うん…そうだよ。霧隠あさひっていうの。よろしくね、木全さん」
返事をすると木全さんは身を乗り出して
「ねえ、霧隠さんってやっぱり忍者なの!?」
と目を輝かせて聞いてきた。
その時、隣で机に突っ伏してていた黒髪頭が
「忍者…?」
と言いながら顔を上げてこちらに顔を向けてきた。
うん。碧の言ってた通りなかなかにイケメンだと思う。少し目つきはキツそうだけどパーツ一つ一つが整っててちょっと幼い感じもポイント高いかも。
なんて考えていたら前の席の木全さんがさらにこちらな顔を寄せて
「で、どうなの?忍者なの!?」
と興奮気味に聞いてくる。うう…その美しすぎるお顔を近づけられるとおんなじ女子でもドキドキしちゃうよ
そんなドキドキで少し顔が赤くなってると思われる中なんとか
「に、忍者って…んなわけないじゃん!確かにそれっぽい名字だけど…それなら服部さんや猿飛さんも忍者になっちゃうよ!」
となんとかごまかそうとしてみた。そしたら隣で呆けてた碧が笑い出して
「いや、服部さんはいるだろうけど猿飛さんは流石にいないって」
と大爆笑。その目に涙が浮かぶほどだ。
木全さんは相変わらずの美少女スマイルで
「そっかあ、そうだよね。いやさ、私って名古屋の方から引っ越してきたから…三重って伊賀市とかあるから忍者のイメージがあってさ。そしたら後ろの席の人が霧隠さんだったから早速忍者に遭遇!?みたいに勝手に盛り上がっちゃった。ごめんね。」
と謝ってきた…いやそれより、木全さん名古屋からこの桑名に越してきたの?スゲー!シティガールってやつじゃん。どおりでここらの女子中学生とは一線を画すわけですな。
「木全さん名古屋から来たんだ!いいなぁ…名古屋かぁ…都会出身とか羨ましいよお」
と本音がダダ漏れな私。
「うーん…ごめん。名古屋の方からだけど厳密には名古屋の隣の尾張旭市ってところからなの。愛知県民あるあるで愛知県出身と言わずに名古屋出身って言っちゃうんだよねぇ」
と申し訳なそうに苦笑いする木全さん。苦笑いの顔も美少女だ。
「へぇ~尾張旭市…なんか聞いたことはあるかも」
と私が言うと木全さんは
「まあ、特にこれといった特徴のないベッドタウンだよ。市はなぜか紅茶の街ってPRしてたけど…」と頭を掻く
何?紅茶の街?めっちゃおしゃれタウンじゃん。桑名なんて安永餅かはまぐりの街でしかないのに!一応長島温泉もあるけど…うん、おしゃれ感ゼロだわ。
「…なんだ、忍者じゃないのか…なら俺には無関係だな」
と隣で私と木全さんのやりとりを無言で眺めてた黒髪イケメンがボソリとつぶやいた。あれかな?ちょうど私たちの年齢ってか学年が患う将来黒歴史として思い出しては身悶えしてしまうことになるという例の病気が発症してるのかな?
そんな厨二と思われるお隣さんにも思い切って挨拶してみるか。
「あの、私は霧隠あさひ。君も転入生でしょ?一年間おんなじクラスだし仲良くしてね」
とお隣さんはまたもボソッと
「神崎宵だ…」とだけ返してくれた。
(よい?なんか変わった名前)と思った私は思わず
「宵って変わった名前だね。本名?」と聞いてしまった。
神崎くんは「フッ」と軽く笑ったあと
「なかなか勘が鋭いな…しかしお前たちに名乗れる名はこれだけだ」と呟いた。
完全に発症していらっしゃる上にかなり重度のものらしいことはわかった。隣に立ってる碧なんかどうみてもドン引きした顔してるし。木全さんも困って…ん?
「なになに?ひょっとして秘密がある感じなの?もしやどこかの秘密組織的な?」
スゲーノリノリじゃん!私にもそうだったけど木全さん距離の詰め方なかなかに大胆だな。
木全さんの詰め寄りに厨二じゃなくて神崎くんは
「…そうだな。だがお前たちごときが知る組織ではないことだけは教えておいてやる」
とこちらもノリノリなのか唇の片方だけ上げて得意げな顔していた。碧がそっと耳元に顔を寄せて
「あさひ、大変そうだけど頑張って」と小声で呟いてくれた。
これはなかなか波乱の予感のする新学期の始まりなことで…
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