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侯爵家の開催する婚活パーティで幼馴染と会ったんですが、すっかり落ち込んでいるようでした。

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 爵位の高い貴族ともなりますと、派閥を作るために色々なことを始めるようです。

 私の家の親戚筋であるサンボラ侯爵もまたその例に漏れないようで、茶会に参加するよう要請がきました。

 つまるところ、婚活パーティです。

 ここで幾つも結ばれるカップルができたら、まあサンボラ侯爵家の手柄やら恩やらが生じまして、みたいな感じでしょう。

 家としては逆らえませんし、私に婚約の話も無いので、参加するだけ参加することにします。


 会場は豪華絢爛で、私の拙い語彙力では表現できません。すごい。

 食事をパクパク食べながら見渡していると、壁の華から少し離れた一角に見覚えのある顔がありました。

 幼馴染の、あー、令息です。幼馴染だった筈です。私の中では。

 クッキーを皿に盛りつつ、やあ、と挨拶に向かいます。

 しかしなんかこう、幼馴染さん? なんか貴方、随分としょぼくれた風体になってますね。

「ああ、婚約破棄されてからはこんな感じだよ」

 幼い頃はもっと輝いていて高嶺の花のように思っていましたが、今では道端の雑草みたいですよ。

 破棄されて消沈したらこうも変わるものですか。

 えっ、しかも当主は弟さんが継いでいらっしゃる? 結婚もされてお子さんもいらっしゃる?

 はぁ、なるほど。やる気も活力もなくなるわけですね。女性不信もある。なるほど、おつらい。

「もうね、僕は何をして生きていけば良いのか分からないんだ」

 いや、泣きだされても困るんですが……!

 えぇ……しかも泣いている自覚が無い、と。

 あー、会場の視線をちらほら集めてますし、遠巻きにされてますし、もう帰りますよ。

 帰る場所が無いのに何処に帰るかって? 私の家にでも来て下さいよ。

 はいはい、大丈夫大丈夫。迷惑なんて気にしなさんな。どうせ私も行き遅れですからね。気にする人なんていませんよ。


 後年、この彼にでろでろに依存されることをまだこの時の私は想像もしていませんでした……。
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みんなの感想(1件)

penpen
2022.10.09 penpen

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解除
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