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第十章:始動
52話
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翌朝、日も昇りきらぬ白空の頃である。
山の空気は肌を切るように冷えており、集まった者たちの吐息を白い湯気へと変えてゆく。
作戦参加者の集まった場所は村の奥、山の頂への入り口だ。
疎らな木々で囲まれた小さな広場は深い森への入り口にもなっていて、水気の篭もった重い空気がゆっくりと降りてくるのをすぐ側に感じられる。
「皆、揃ったようだな」
重く沈み込むような冷たい空気の中、ギルドマスターは覇気の篭もった口調で言った。
その鋭さは身を切る冷たさよりなお強く、聞いた者の油断を切りつけて熱い血潮を湧かさんとする、熱い気持ちの表れであったろう。
「第一部隊は山頂へ赴き、通信機材を設置して通信網の構築に当たること。
連絡の有無で作戦行動の成功確率が大幅に左右される。抜かるなよ」
防寒装備に身を包んだ第一部隊の面々は鋭い眼光を煌かせ、無言の首肯をもって返事とした。
他の冒険者たちに軽く手を上げ、老練の狩人を先導とし、暗い森へと足を踏み出してゆく。
「第二部隊は対象の討伐だ。狩人の先導に従いつつ、周囲を警戒して先手を取れる状況を得ること。
攻撃を与える前に通信機にて連絡し、万一に備えてくれ。
特にシュガー、お前はまだまだ甘いところがあるから第二部隊の注意を良く聞くことだ」
「分かってますって!」
討伐部隊を先導するシュガーが、明るい声音で返事をした。
少なからず緊張してはいるものの、昨夜までに生じていた恐怖感は微塵も見られない。
(この状態ならば、無事に役目を果たせるだろう)
ギルドマスターは彼女に良しと頷き、その肩を軽く叩いて勝気な笑みを見せる。
「うろたえるなよ。いざというときは、冒険者を盾にしてでも逃げろ。
彼女らはそれを許せるだけの力量がある」
ギルドマスターの視線の先で、第二部隊のリーダーである女性剣士が親指を立てて微笑んでみせた。
任せておけと言わんばかりの力強さを湛える笑みで、見る者に勇気と安心感を与えてくれる。
シュガーは彼女に頷き返し、ギルドマスターに「いってきます」と告げ、第二部隊を率いるために、森へと怯まず進んでゆく。
ギルドマスターは一息つくと、最後の第三部隊にも訓示を述べた。
彼らの役目は巣穴となりうる洞窟に、魔力反応を感知させる魔道具を設置するというものであるが、これもまた魔物に遭遇する危険性が高い。
決して油断することのないように、と注意を述べた彼女は、足取り強く森へと入ってゆく彼らの姿を見送った。
「みんな、無事に戻れよ……!」
彼女の願う声は森の暗がりに、ほんの僅かな余韻を残した後、纏わりつく湿気の重みに耐えかねて、押し潰されるように消えたのだった。
山の空気は肌を切るように冷えており、集まった者たちの吐息を白い湯気へと変えてゆく。
作戦参加者の集まった場所は村の奥、山の頂への入り口だ。
疎らな木々で囲まれた小さな広場は深い森への入り口にもなっていて、水気の篭もった重い空気がゆっくりと降りてくるのをすぐ側に感じられる。
「皆、揃ったようだな」
重く沈み込むような冷たい空気の中、ギルドマスターは覇気の篭もった口調で言った。
その鋭さは身を切る冷たさよりなお強く、聞いた者の油断を切りつけて熱い血潮を湧かさんとする、熱い気持ちの表れであったろう。
「第一部隊は山頂へ赴き、通信機材を設置して通信網の構築に当たること。
連絡の有無で作戦行動の成功確率が大幅に左右される。抜かるなよ」
防寒装備に身を包んだ第一部隊の面々は鋭い眼光を煌かせ、無言の首肯をもって返事とした。
他の冒険者たちに軽く手を上げ、老練の狩人を先導とし、暗い森へと足を踏み出してゆく。
「第二部隊は対象の討伐だ。狩人の先導に従いつつ、周囲を警戒して先手を取れる状況を得ること。
攻撃を与える前に通信機にて連絡し、万一に備えてくれ。
特にシュガー、お前はまだまだ甘いところがあるから第二部隊の注意を良く聞くことだ」
「分かってますって!」
討伐部隊を先導するシュガーが、明るい声音で返事をした。
少なからず緊張してはいるものの、昨夜までに生じていた恐怖感は微塵も見られない。
(この状態ならば、無事に役目を果たせるだろう)
ギルドマスターは彼女に良しと頷き、その肩を軽く叩いて勝気な笑みを見せる。
「うろたえるなよ。いざというときは、冒険者を盾にしてでも逃げろ。
彼女らはそれを許せるだけの力量がある」
ギルドマスターの視線の先で、第二部隊のリーダーである女性剣士が親指を立てて微笑んでみせた。
任せておけと言わんばかりの力強さを湛える笑みで、見る者に勇気と安心感を与えてくれる。
シュガーは彼女に頷き返し、ギルドマスターに「いってきます」と告げ、第二部隊を率いるために、森へと怯まず進んでゆく。
ギルドマスターは一息つくと、最後の第三部隊にも訓示を述べた。
彼らの役目は巣穴となりうる洞窟に、魔力反応を感知させる魔道具を設置するというものであるが、これもまた魔物に遭遇する危険性が高い。
決して油断することのないように、と注意を述べた彼女は、足取り強く森へと入ってゆく彼らの姿を見送った。
「みんな、無事に戻れよ……!」
彼女の願う声は森の暗がりに、ほんの僅かな余韻を残した後、纏わりつく湿気の重みに耐えかねて、押し潰されるように消えたのだった。
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