巨大魔物討滅作戦

広畝 K

文字の大きさ
53 / 140
第十章:始動

53話

しおりを挟む
 シュガーの先導する第二部隊は、熊の遺体が放置されている広場に着いた。
 深緑の濃い空気に混じって、僅かな異臭が漂っている。
 それは熊の遺体から湧き出る腐臭であり、前日にも増して腐敗と溶解が進んでいることを物語っていた。

「うひゃー、これは酷いぞ」

「虫食いが多すぎる。魔力の痕跡も微かだし……」

 二人の仲間が表情を歪めて熊の遺体を検分している間にリーダーは通信機からアンテナを伸ばし、耳元に本体を当てながら、別働隊へと連絡を取り始める。
 相互に密なる連絡を取り合うことこそが未知の土地における作戦行動を支える基盤であると、確かな理解を得ているためだ。

「こちら二部。応答されたし」

『こちら一部。通信精度極めて良好』

「二部了解。第一地点に到着。繰り返す、第一地点に到着」

 微かな雑音も入ることなく、明瞭な声音が通信機から響いてくる。
 第一部隊はまだ山頂まで至っていないであろうにも関わらず、通信精度の水準が非常に高い。
 これはおよそ、一般に普及している魔道具では考えられないほどの、質の高さと言って良かった。

(これだけ質の高い魔道具の補助があるなら……結構楽できるわね)

 第二部隊のリーダーは胸中で任務の達成を確信しつつも、しかし油断は厳禁だと自身に戒め、目の前の報告に注力する。
 この小さな通信機が第三部隊においても問題なく稼働するならば、通信に関する問題はほぼ解消されるためだ。

 一つひとつの不安を消して、確実に任務を遂行していく。
 それこそが冒険者としての、仕事におけるプロ意識というものだと彼女は知っている。

『一部了解。二部の第一地点到着を認定する。一部より三部へ通達後、追跡を開始されたし』

「二部了解。一部より通達後、追跡を開始する」

『一部了解。再度通達を待たれたし』

 通信を終えたリーダーは軽い満足の息を吐き、小型で手軽なその通信機を腰のベルトに差し込んだ。
 アンテナも、忘れずに畳んで通信機本体へと収納する。
 その頃合いを見計らってか、あまり間を置くこともなく、メンバーのロアがリーダーへと近づいてきた。

「お疲れ様、キーリ。通信は問題無さそうですね」

「ええ、これは使えそうよ。後は耐久性に問題が無ければ、買い取りも検討したいくらいね」

 腰元の通信機を軽く叩いて、第二部隊リーダーのキーリはロアに感嘆の語調で応えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...