巨大魔物討滅作戦

広畝 K

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第十章:始動

54話

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 一般に普及している携帯型通信魔道機械、通称【通信機】はその設計上、屋内で使われることを前提として作られている。
 ゆえに、外部からの強い衝撃に耐えられるようにはなっていない。

 しかし、いつでも遠くに言葉を伝えられるという利便性は屋内に留め置くには惜しいと徐々に認識が広がってきているため、近いうちに一般でも耐久性の向上した通信機が登場することは間違いないとされている。

 特に冒険者、傭兵、軍人、兵士などといった、荒事を専門とする者たちは、通信機における頑丈という要素は必要不可欠であるとして共通の認識を持っている。
 緊急時における通信機の重要性に対する市民意識の低さを嘆きつつ、それでも使わぬわけにはいかないため、大陸にて一般普及されている脆弱な通信機を使用せざるを得ないのだ。

 もっとも、一部の国々では頑丈さを目的とした設計の屋外用通信機も製造されていることは知られている。
 知られてはいるが、それらは広範に普及していない。

 なぜなら、それらは一様に不良品の烙印を押されており、いずれの屋外用通信機においても、その通信精度は大陸で一般的に普及している屋内用に劣っていることが検証によって明らかにされているためだ。
 天候の是非によって精度は極度に左右される上に、開けた広い場所での短距離間でしか役に立たず、さらには屋内用と比較して非常に高額であるから、専制国家に属している富裕層の私兵団や国家直属の親衛隊くらいにしか使用されていないのが実情である。

「まあ、そんなことより痕跡の方はどう?」

「ばっちり回収できたぞ!」

「ぶい」

 キーリのパーティ後衛を担当する双子の兄妹ロンとメロは、上々の成果であるとリーダーに報告した。
 死後数日は経過していて朽ち果てつつある死体から、魔物の残した魔力紋がしっかりと取れることは珍しい。

「一般の奴じゃうんともすんとも反応しなかったからな!
 村長さんの用意した魔道具は半端じゃないぞ!」

「そう……メロはどう思う?」

「優れた技術者とのコネがあると思われる」

「そうね、私もそう思う」

「やはり、メロもキーリもそう思いますか。
 任務が無事に終わったら、村長に相談を申し入れたいところですね……」

 キーリ率いるパーティメンバーは、今回村長から渡された魔道具の非凡さをしっかりと認識していた。
 それは一般に普及している魔道具と比較して、という考え方であったが、だからこそ用意された魔道具の質の良さが心地よく感じられたのである。

 そういった彼女たちの感想は、ひっそりと気配を希薄にして様子を窺っているシュガーの耳に入っており、その心を十分に満足させていた。

(そうでしょう、そうでしょう!
 なんてったって、ソルトくんの作った特別な魔道具だからね!
 そんじょそこらの魔道具とは比較にならないよね!)

「シュガーさん、少し良いかしら?」

「はい、なんでしょう」

 弟分の作った魔道具の好評価を聞いて表情筋を緩ませていたシュガーは、キーリに声を掛けられた瞬間、慌てて表情を真剣なものに戻した。
 キーリは特に不審を覚えず、魔力紋を取った探知機を手に持ったまま、シュガーを近くに呼び寄せる。

「熊の死体から採取できた魔力紋の反応が見られたんだけど……」

 キーリたちが言うには、その反応がどうやら二手に分かれているとのことらしい。
 どちらも森の奥に続いているものの、その方向が違っているのだそうである。
 片方は山頂へ向かうように傾斜の上方へ、もう片方は山を下りるかの如く傾斜の下方へ続いているという。

「狩人としての貴女の意見を聞かせて欲しいと思ってね」
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