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Chapter13 - Side:Sugar - B
201 > 再会−04(回顧ー後編)
しおりを挟む急性アルコール中毒で。
〝あの時の俺は……絶対に付き合えないことがわかってる汐見が隣にいて、自棄になって……自分でもわからないくらい飲んで、楽しくなって……汐見も楽しそうに笑ってたから、つい……〟
30代になって急性アル中で病院行きなんて、めちゃくちゃ恥ずかしかった。恥ずかしいにも程がある。病院で診察した救急医の対応の冷たさからも俺がいかに大人気ないことをしたかが自覚されて、恥ずかしさで今すぐ帰りたいくらいだった。
俺が悪酔いするのは醸造酒だけだ。度数が高くても蒸留酒はそこまで問題なく飲める。そして、醸造酒の中でも日本酒が一番、悪酔いする。だけど、その時に飲んだ日本酒は俺好みの甘さもあって、つい飲みすぎたんだ。苦手だと思っている日本酒をガブ飲みするくらい、その時の俺のテンションは高かった。
酔った勢いで汐見の肩を組んで〈春風〉との新婚生活への質問しながらクダを巻いたのはうっすらと覚えている。
だけど、その後の記憶が一切ない。
覚えていないが一緒にいた汐見によると、俺は「ちょっと眠る」と言って汐見の隣で横になったまま、何をしても動かなくなったらしい。
◇◇◇
意識が戻って目を覚ましたら、めちゃくちゃ明るい部屋にいた。
救急処置室で点滴を受けていた俺は、俺の息子に猛烈な異物感と尿意を感じて起きたんだ。
その時、そばには汐見が俺の手を握ったままベッドに突っ伏して寝てて。
看護師さんによると救急隊員が到着するまでずっと体を摩りながら付き添っていて、処置室に来ても心配だからそばにいさせて欲しいと言っていた、と。
それを聞いて俺は…………泣いてしまった。
もう、泣くしかないだろ。
結婚して1年過ぎても溺愛してる嫁がいるのに、その嫁を家に置いて出張に来てる汐見に、俺はこんなに迷惑をかけてる。それなのに。
俺を心配するあまり病院まで付き添っただけじゃなく、帰る予定の日の翌日まで病院に措置入院することになった俺に付き合って、そのまま一緒に飛行機の便の予約を変更してたんだ。
それを考えると、居た堪れなくなると同時に、俺に対してそこまでやってくれることが、どうしようもないほど嬉しくて。
こんな酷い状態の俺でも、絶対に見放したりしない汐見に、どうしようもないくらい想いが募って、切なくて────
〝お前に大事にされればされるほど……俺はお前が諦められなくなる……お前が欲しくてどうしようもなくなるんだ……〟
汐見は親友として俺を大事に思ってくれてる。
汐見にとって俺たちは、ただの親友なのに。
そんなこと関係ないとでも言いたげに。
〝お前が結婚しちまったから、もう俺は……お前のそばにいられないと思ったのに……〟
結婚したら、お前が大事にするのは〈春風〉だけだと思ったんだ。
なのにお前は、結婚前と変わらず、俺にちゃんと誠意を持って対応する。
〝汐見……なぁ……想ってるだけなら、いいよな?〟
飲んだ後、俺の家で寝ている汐見にやってたように、見た目より意外と柔らかい汐見の髪の束を摘む。
それだけでは足りなくて俺は……堪らなくなった俺は、そっと汐見の後頭部を撫でた。
〝絶対に……言わない……お前に、絶対……迷惑、かけないから……〟
俺が汐見を親友として見ていたのは最初だけだ。
……いや、最初から────
〝忘年会の後に話した、あの時から……〟
汐見のボロアパートで初めてまともに話した時から。
気になって気になって、でも自覚はそれほどないままに友達付き合いが始まった。
出会って半年くらい経った後から、もしかしたら……と思い始めたくらいで。
それまで、俺の恋愛や性的欲求の対象は女性だったから。
汐見が『男同士なんてあり得ない』って言葉に最初は何も感じなかった。
『俺だってそうだ』と同意さえしていた。
だけど自覚するようになってからは、毎回、その言葉に抉られて、打ちのめされて────
◇◇◇◇◇
ぼーっと見ている橋田の背後にある水槽は上下2段になっている。目測でおそらく2mくらいのものじゃないかと思われるものが上に3本、下の段にも同じものが3本。上の段の水槽には1本に一匹ずつデカいアロワナが悠々と泳いでいて。
その中でも特別紅くて大きいアロワナの一匹が、バシャっと跳ねたのを見て、俺は、はっ、とした。
〝……先週の汐見、は……〟
俺が汐見に決死の思いで告白した……いや、告白してしまった時。
〝いつもの口癖の……〟
『男同士で付き合えるわけないだろ』とは言わなかった。
〝いつもみたいに……否定……しなかった……〟
俺は、内心、否定されるだろうと覚悟の上だったのに。
〝それって…………〟
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