【第1部完結】佐藤は汐見と〜7年越しの片想い拗らせリーマンラブ〜

有島

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Chapter15 - Side:Other - E

221 > 出社−03(佐藤、色々緩む)

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[Side:Other]



 佐藤の所属する営業部と汐見の所属する開発部は同じ3階にある。

 あのまま開発部の前で押し問答するわけには行かなかったため、汐見は瞬時に判断して会議室に佐藤を連行した。
 連行された佐藤の方は、挙動不審になりながらも汐見についていく。

〝まったく……どんだけ注目を浴びるつもりなんだお前は……〟

 汐見の内心など知らない佐藤は、とにかく汐見の顔を見たくて、本人の姿だけでも確認しておきたくて、つい。
 つい、フラッと開発部のドアの前に立っていたのだ。

 今日は、週末直前の金曜日だ。
 結局、汐見は昨日(木曜日)まで佐藤に姿を見せることはなかった。

 当然のことながら、LIMEも総無視。
 その間も、結局───佐藤は汐見のマンションに2日に1回は電信柱の影に隠れて、様子を見に行っていた。



 最初に行った時、日中だったのもあり、かなり悪目立ちしていることに気づいた佐藤は週明けの月曜日に様子を見に行こうと思った時は、ちゃんと考えて行動した。〝夜に行けばいいじゃないか〟と。
 誰かに見つかった場合、相当良くない状況になることを全く考えず、それでも汐見の姿見たさのあまり、その行動の意味までは考えていなかった。

 大体は就業後、一旦家に帰ってから濃い色の上下に着替え、黒い帽子を持って佐藤のマンションまで行く。
 汐見の部屋が見えるマンション前の電信柱に到着してから、帽子を被り、汐見がベランダに出てくるのを待つ。

 しかし──佐藤が行ったところで、汐見がベランダに出てくる瞬間は一度も訪れなかった。
 そのことに落胆すると同時に、ベランダから見えない部屋の灯りが点いてる様子がわかると居宅してることにひとまず安心した。だが、時折、その明かりすら見えないことがあると、不安のあまり1日に1回、1通だけ!と自分に課している汐見宛の『LIME日記』に加えて『今どこにいる?』と、もう1度送りたくて仕方なかった。

 が、その内容を送ると、後で自分で自分の首を締めそうだと直感した佐藤は入力した後、送信ボタンをタップする直前に決死の思いで消していた。

 その状態でなんとか1週間を過ごしたものの、下北沢から『休暇の延長申請されてるらしい』と聞いて、佐藤は絶望した。

〝汐見はもう……俺に会わずに…………俺の、前から……〟

 先週1週間の状況からして、汐見は出社してくるまで無反応だろうということを予想してはいたものの、あまりの無反応加減に、もう佐藤のメンタルはズタボロだった。
 結局、その1週間の間、橋田からも連絡は来ず、汐見の状況がどうなっているのか、佐藤は全くわからなかった。

 汐見に会えない会社に行く意味を見出せず、何度欠勤しようと思ったかわからない。

〝欠勤して、1日中、あそこで張ってれば、絶対に会えるはずなのに……〟

 だが、汐見を見張るために欠勤するのはやめた。そんなことが仕事の虫の汐見に知られたら、それこそ、嫌われそうだと思ったからだ。
 1日見張ることはしないにしても、先週は火曜日と木曜日だけだったが、今週は月・水・金に様子を見に行くことにしていた。



 だから、今日も重い足を引きずりながらちゃんと定時の9時ギリギリに出勤した。そしてしばらくすると、部内の他の女子が

「聞いた!? 汐見さん、今日出勤してるんだって!」
「え?! ほんと?! 今回の休暇、長かったよね~」

「ほんと、そうよね! 1ヶ月くらい?」
「ん~、そんな感じ?」

 小声で噂しているのを盗み聞きした佐藤は、その瞬間、何も考えずに汐見の内線番号を押していた。

 電話越しに聞く、久しぶりの汐見の声に、思わず涙腺が緩みそうになったのは仕方がない。

〝お昼は無理……でも、仕事の、あと……〟

 内線で話した時、汐見が『見ておけよ』と言っていたのが何だったのかわからなかったが、直後にLIMEで『昼は先約があるから、話は終業後に。それでいいか?』と来たのを見た佐藤は、もう天にも昇る気持ちだった。

〝こんなに……お前の一言で……俺は天国にも地獄にも行くんだ……〟

 未読だったLIMEのトークが全て既読になったのを見て、佐藤は安堵した。

 それから10分くらいはソワソワしながら、それでも汐見の言うことを聞いて部内に留まっていたが。
 ──先週から度々、開発部に顔を出しに行く習慣がついた佐藤は知ってしまったのだ──開発部の就業時刻が10時~19時であるため、10時までならドアが開きっぱなしになっていることを。
 なので。

〝ちょっと……ちょっとだけ……汐見の顔見たら、すぐ戻る……そう……だから……〟

「あー、ちょっと自販機行ってくるわ。なんかあったら俺の携帯にLIMEして」
「え? あ、はい。って開発部に行くんですよね?」

「……自販機に行ってくる」
「……わかりました。自販機越えたとこの開発部まで足伸ばすってことですね」

「……とにかく。なんかあったら連絡、な」

 そう言って営業部を出た。
 ドアの前までは少しゆっくりと。ドアを出てからは、極力足音を立てないように小走りに。全速力で。

〝汐見……汐見……よかった……ちゃんと会社に来てくれた……!〟

 少し息が上がったが、そんなことどうでもよかった。
 そして、開発部のドアの前に着くと、ちょうど汐見がディスプレイを睨んでいるところだった。

〝っは~~~っっ! いた! いる!! 汐見が! ちゃんと!! そこに!!!〟

 見た目以上に視力が良い佐藤は、汐見の顔を凝視した。

〝あっ! 髪切ってる! 髪、短いと出会った時のこと、思い出す……印象がちょっと幼くなるんだよな…………はぁ……かわいぃ……〟

 汐見を見ると思考が乙女のようになってIQが残念な仕様になるのは佐藤の通常運行だ。誰が見ても可愛いという感想を抱くことのない汐見の強面を見てそう思えるのは佐藤だけだったが、それでも佐藤には本当にそう見えてるのだから仕方がない。

 そして、案の定、目立ちすぎる佐藤は早々に汐見に見つかり

「おい」
「ふぁっ!?」

「……なにやってんだ、こんなところで……」
「し……そ、の……顔、み、たくて……」

「……仕事終わってから、ってLIMEにも送ったよな?」
「そ……だけ、ど……」

 剣呑な音声の汐見の声すらも、佐藤には甘美な響きに聞こえる。

「わかったよ。ちょっと、待て」
「え?」

「調べてくる」
「何を……」

 何かをしに、また自席に戻った汐見が何事かキーボードを叩いた後、戻ってくると同時に

「行くぞ」
「え? どこに?」

「403会議室」
「えっ?!」

 上の階の会議室に行くことを告げられた。
 佐藤は、驚きながら、でも汐見に連行されることすら嬉しくて、涙腺の次は頬が緩みっぱなしだった。

〝……会社に来たってことは……どういうあれかわからないけど、でも……よかった……俺見て嫌な顔しなかった……〟

 汐見がどういう話をするのか、佐藤は予想すらしていなかった────

 



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