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episode2
神の御使
しおりを挟む二人は俺達が来た出入り口とは違う、別の方向に向かう。ティオ先生が壁に触れると、そこに扉が現れた。魔法で隠してあったのだろう。
その扉を潜ると、透き通った綺麗なクリスタルのある部屋に行き着く。転移石と同じ透き通った水色なので、恐らく転移石。
転移するのは三度目なので、最早慣れたものだ。
目を開けると、違う扉の前だった。
ーロゼ、ただいま。ー
「え?」
「?どうかしたか?」
ずっと見ていたティオ先生の背中が、ティオ先生が扉を開けてそう言う。しかし、その声は少し幼い。俺は思わず聞き返したが、それに返事をしたのは少しだけ大人になった先生だった。
白昼夢でも見たんだろうか。
ー…大声を出すと、また泣かれるのではないか?ー
「?ワタシの顔に何か付いているか?」
「…いえ…。」
マークリフ先生って俺キャラなのに、先生モードの時はワタシキャラなんだよなぁ。そういうキャラ嫌いじゃなかったけど、今日嫌いになりそうだ。
一人で悶々としながら眺めていると、先生が扉を開ける。
ーがっはっは、ティオは自分の子に好かれておらんのか?ー
馬鹿笑いしているのは、狼のような耳とふさふさの尻尾が似合わない大男。胸と腰の甲冑が銀色に眩しく光っている。
「戻ったか。…その者達が、例の?」
「あぁ。」
[レオナルド・ゴース・ファンド 27歳
獣人族 Lv.100 ギルド長
HP/73444 MP/61174
スキル/瞬間移動、魔力温存、危険察知]
ギルド長…魔王討伐パーティで唯一教員ではない人物だ。
そして、何か引っかかるものがあると思ってはいたが、それが何なのかハッキリ分かった。
勇者パーティのこの三人、HPとMP、スキルまでが全く一緒だ。
一体何故…?
ーおかえりなさい、みんな。ー
「っ…!」
「ゼロ?!」
「…悪い、大丈夫。」
「おいおい冗談だろ?そんな明らかに弱そうなのが神の御使だぁ?」
頭痛と目眩で壁に手をついた。少しだけ深呼吸をして、ボヤけた視界がティアを映し、やっと返事が出来る。
ロゼ先生も少し幼く見えるという事は、過去の会話を視てるのか。過去を視るのって、こんなに神経やられるんだな。意図的に視れるようにならないと、いつかこれで死ぬんじゃないだろうか。
「あれから何も変わっていないか?」
「あぁ。医者も原因は分からないと言っていた。」
扉を開けて入った先には、ベッドに横たわるロゼ先生の姿があった。
「!ロゼリア先生…。」
身体全体が青白く透き通っていて、どうにか姿形は保っているという感じだ。俺が気になるのは、ロゼ先生の身体から黒いモヤみたいなのが出ている。触れると静電気のようにバチッと火花が散った。
「昨日帰宅した時には、もうその状態だった。生徒達に聞いたら、ロゼはお前達と話した後、講堂に消えて行ったと聞いた。」
「お前達はロゼリアがこうなった理由を知っているのではないか?」
あの時、俺達の目の前でロゼ先生は強制送還された。それが原因か、或いは帰宅途中に何かがあったのか。
しかしなんとなく、強制送還が原因だという気がしている。根拠はないのだが、何故か。
「何者かに強制送還をされた。それ以外は知らない。」
「強制送還?!」
何か思い当たる節があるのだろうか。みんなが驚いた顔をしたので、不審に思い尋ねた。
「…お伽話で神が使う魔法の一つが、空間に穴を開け別の場所に飛ばすものだ。」
実際には、どんなに優れた魔法師でも使えない幻の魔法だという。だとすれば、神様の仕業か。
だけど、こんな事をする理由がわからない。狙いはロゼ先生?いや、あのモンスター達は俺達に向けた刺客だ。ロゼ先生だと簡単に倒せたかもしれないからだ。
魔法もろくに使えないLv.1の俺達を始末したかった。一体誰が、何のために?
そもそも、神様と俺達が出会った女神は、どんな繋がりがあるんだろうか。
「一昨日の夜、ロゼは神の御使が来ると言っていた。しかし、転入して来たお前達はLv.1。御使な訳がない。」
「だから、お前達が何らかの方法でレベルを偽り、ワタシ達を陥れているのだと思ったのだ。」
神の御使。なんだか恐れ多い二つ名だな。
しかし、この姿は自分達の理想の姿だ。女神には会ったが、神の力も偶然手に入れたもの。何かをお願いされた訳ではない。
ー…そんな国を二人が作ってください。…ー
いや待て。あの時、女神は俺達なら狂った世界を変えられると言った。
それがもし、神になって“世界自体”を変える事が出来るという意味だとしたら…。
「…マジか…。」
「ゼロ?」
始まりの地で聞こえて来た謎の声。あれがなんなのかはまだ分からないが、アイツは俺を新たな神だと言った。
女神が嘘を付いているようには見えなかったが、もしかして、力を手に入れたのも誰かの陰謀だったりするのか…?
「もしそうだとしたら…オレは、君達を絶対に赦さない。」
リアンがガンマの先を俺に向ける。俺に貸してくれたモノとは種類が違う。透視すると、中には鉛玉が入っている。
だけど、何故だかリアンがそのまま撃つとは思えなかった。
俺に向けられた瞳は怒りではなく、哀しみの色に染まっている。
リアンは、勇者一行と何か深い関係にあるのだろう。
ティアが手を取っている間、俺が撃たれる事はない。
「…言い訳するなら今の内だよ?」
「言い訳か…そうだな。」
俺はティアを引き寄せ、抱きしめた。そして空いてる手でリアンのガンマを奪う。
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