Lv.1のチートな二人

Amane

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episode2

お前は強いよ。

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パァァァァンッ

鼓膜を破りそうな勢いで、破裂音が耳元で聞こえる。俺はリアンのガンマを奪い、自分で自分のこめかみにガンマを当てて撃った。
少しだけ耳鳴りがした後、また静けさが広がる。

「ガンマを弾いた…だと…?」

鉛玉は俺のこめかみ寸前で弾かれた。少しだけ頭に銃弾が当たった感覚はあった。
俺の行動とガンマを弾いたティアの壁に驚いた、マークリフ先生がなんとか言葉を絞り出す。
普通に考えれば、有り得ない光景だ。
自分でも驚いた。今になって、恐怖が体中を駆け巡る。

「バカ!」

ティアが勢いのまま俺の胸に顔を埋める。お互い、ドクドクと鼓動が落ち着く間もなく音を立てている。流石の俺も、なんて無茶をしたんだ!と心の奥で叫んだ。
力を込めていないと、足から崩れ落ちそうだ。それもそのはず。拳銃を自分に突き付けて撃つなんて、前世の自分からすると有り得ない行動だからだ。
想像以上に強い力でティアを抱きしめたのか、ティアの制服が少しシワになっていた。現実に戻った俺は、優しくティアの頭を撫でる。

「ごめん。」

心からの言葉だ。
俺は前世から、言葉通りのバカだった。
勉強が嫌いで、思い立ったら即行動。先の事なんか全く考えなくて、今どうするしか考えてない。
間違った答えさえ、間違った事に気付かないでやってしまう。これが俺の悪い所。
だけど俺は運が良かった。間違った時、叱ってくれる人がいた。大事があった時、心配してくれる人がいた。嬉しい時、一緒に喜んでくれる人がいた。寂しいとき、とにかく一緒にいてくれる人がいた。
生まれ変わっても、一緒にいる事を選んでくれたティア。
だから、俺が彼女を傷付けてはいけない。今度こそ、大切な親友を守らなければいけなかった。
バカで無鉄砲では済まされないんだ。これは、ゲームではない。命のかかった現実なんだから。

「…ううん、私こそごめん。何があっても、絶対に私が守るから。」

ティアは一呼吸置いて、俺に笑顔を向ける。こんな時、いつも彼女は強かった。
環境や境遇がそうさせたのかもしれない。だけど俺の知ってる彼女は、人の痛みが分かる、そんな優しい人間だった。
そんな彼女だからこそ、守ろうと決めたのだから。

「悟るにはまだ早いだろ。俺もお前を守る。」

震える足もなんとか戻り、まだ言葉を失っている四人の姿を見る。さて、なんて言ったら良いだろうか。

「多分、ロゼ先生が言ってた神の御使っていうのは俺達に間違いない。ガンマを弾いたこの力がその証拠だ。」
「だったら…」
「だけど、それは偶然もらった力だ。」

俺は、言い訳出来るほどこの世界の知識を持っていない。ボロを出して余計に怪しまれるくらいなら、嘘偽りなく話した方がマシだ。
例え、それがどんな結果になったとしても。

「俺達は、アリーヤとは異なる世界から来た。その世界で一度死に、時空の狭間で女神と出会い、もう一度命をもらった。」

姿はその時手に入れ、この世界に来たのはつい昨日なのだと説明する。
信じられないのは俺達も同じ。レベルが1以上にならないのはバグで、そのバグにより、神の力がスキルとして使える事。
全て話した。
右も左も分からない俺達だったが、Lv.1の俺達をリアンが仲間に加えてくれ、魔法を教えてくれた事、神の力について教えてくれたのは、他でもないロゼ先生だという事。

「唯一の理解者であるロゼリア先生に、私達がこんな事出来るはずないじゃないですか…。」

ティアが涙ながらに語る。そのお陰か、先生達も少し反省しているようだ。
俺が泣いてもこんな風に納得してもらえなかっただろうな。

「しかし、お前達が犯人でないなら…ロゼは一体…。」
「俺が原因を調べる。」
「!それも力なのか?」
「あぁ。ただし、条件がある。」

さっきの感覚だと、神の力はHPもMPも使わない代わりに、俺達に精神的苦痛が伴う可能性がある。
つまり、過去を見るにも、誰かを守るのも、俺達が心を強く持たなければいけない。それってかなり苦労すると思う。
これは経験談。前世で33年間生きて来ても身に付かなかった、心の強さだ。
俺達の平和ボケした頭は、まだこの世界のルールを知らない。だけど、そのルールを俺達が変えていける事が出来るのだとしたら、まずやらなくてはいけない事があった。

「戦闘訓練の授業のルールを変えてくれ。」
「るーる…?」
「規則だ。パーティのリーダーが降参と口にするまで、死ぬまで戦い続けるって規則を、辞めてくれ。」

リーダーの判断能力を試しているのか、パーティとしてのバランスを試しているのか、詳細は分からない。
しかし、あのままではリアンは本当に死んでいたかもしれない。

「あれはオレが…」
「リアン、お前は自分が弱いと思ってるみたいだけど、それは違う。」

俺が口にすると、リアンは驚いたような顔をする。
それもそのはず。あの声は、リアンの過去を視て聞いた言葉だ。普段のリアンは、自信と余裕のある自分を演じている。
余裕を見せないと、この世界では生きていけないからだろう。本当は自分が強いと思っていない、優しい性格。

「レベルが高ければ強いって概念、俺達が覆してやるよ。本当の強さってのは、目に見えるものなんかじゃない。」

弱い奴を倒して得た経験値なんて、そんな誇らしくもない経験を自慢気に語る世界。
リアンはそれをしなかった。仲間に入れてくれて、信じて任せてくれた。強い事が分かってもなお、守ってくれた。
たった2日だが、それで充分リアンの強さを証明出来る。

「お前は強いよ。」
「っ…」

俺がそう言うと、リアンは泣きそうになるのを耐えた。すぐに笑って「敵わないなぁ。」と言って俺に背中を向ける。
そんな可愛い所もあるんだな。
そんなリアンを、先生達も微笑ましそうに見ている。彼は本当に大事にされてる。

「ロゼが目覚めるのなら、誓おう。」

ティオ先生が頷き、俺も覚悟を決めた。ティアの手をギュッと握りしめて、目を閉じる。
一呼吸。ゆっくり吸って、スーッと細く吐く。細く、丁寧に、一本の糸を紡ぐように。

(俺に視せてくれ、先生。)

充分集中出来たら心の中でそう唱え、ゆっくり目を開く。




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