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episode2
黒き太陽
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目を開けると、俺は学園の前に立っていた。意思はあるが、感覚がない。
意思だけがロゼ先生の過去に飛んだって形なんだろうか。
まだ日が傾く前の暖かい空気の中、ロゼ先生を囲む影が見える。
ローブを見に纏った者達だ。数は10人、フードを深く被っているせいで分かりにくいが、多分男性ばかり。
ロゼ先生はロッドを構えて様子を伺っているようだ。
「…貴方達は何者ですか?」
「黒き太陽。」
言われてみれば、黒いローブの背中に太陽の刺繍がある。“黒き太陽”と名乗っておきながら、ちゃっかり刺繍が金色な所が、より中二病を思わせる。
目立ちたいのか、影に隠れたいのか、どちらなんだろうか。
「アリーヤ様が仰っているのだ。お前達は、私達の信仰を阻む者だと。」
男達はあっという間にロゼ先生を囲った。過去だから、相手のステータスを表示出来ない。
人数的にはロゼ先生が不利だ。
「私達の邪魔立てる物は、黒き太陽に焼かれて塵になるが良い。」
男達の武器は、みんな魔導書。広げて呪文を唱え出す。
「ーー爆ぜろーー」
聞き覚えのある言葉が聞こえたと思うと、大きな音を立てて炎と爆発が起こる。煙がゆっくりと流れて晴れた瞬間、男達はもちろん、俺も息を呑んだ。
ロゼ先生には擦り傷一つ付いていない。ロッドの先端から光のカーテンが降り注いで、攻撃から身を守ったのだ。
「その程度のレベルで、ワタクシに傷を付けられるとでも?」
ロゼ先生は呪文を唱え、ロッドを一振りする。すると、氷の塊が先端を尖らせ、男達に向かって行く。
避ける事が出来なかった男二人が氷に貫かれて倒れる。
!!
よく見ると怪我は急所を逸れていて、ちゃんと生きている。苦しそうに呻いている声が聞こえる。
次の瞬間、小さな炎が横切った。
「フン、どこを狙っている。」
「あなたこそ、どこを見ているのですか?」
先程まで男達に囲まれていたはずのロゼ先生は、いつの間にか中央ではなく男の後ろに回り込んでいた。
その瞬間、瞬く間に男のロッドが燃え上がり、その炎が三人巻き込んで燃え盛る。しかしこれも、燃えているのはローブだけ。
残っている男達が水魔法を使うが、比べ物にならないほどの大きな炎が男達を燃え上げているように見える。そして気を失った瞬間に消える。これは幻覚か?
「あと半分ですね。」
「ヒィィッ、こんなに強いなんて聞いてないぞ!」
「あら、ワタクシは魔王を倒したパーティに所属していたのですよ?」
男達の顔から血の気が引いた。逃げる男を一人も残さず捕まえる。そして、一人も死なせずに倒していく。
物体を持たない俺も、思わず息を呑む。これが、Lv.100の実力。
「あなたで最後です。」
物凄い速さで敵を倒す先生の後ろに、影が見えた。
「!?」
「そろそろ眠ってもらいますよ。」
もう一人居たのか。深く被ったフードから、長い髪が出ている。
静かに囁いた声だが、俺の耳には届いた。若い女性の声だ。
その人物は、六つのエレメントの欠片をロゼ先生に押し付ける。すると、欠片は先生の身体に溶けるように吸い込まれた。
「っ!!?な、にを……」
「さて、あなたはどれだけ耐えられますか?」
パリンと音が鳴り、ローブの女性は男達を連れて姿を消した。
一人になったロゼ先生は、よろよろと立ち上がる。すでに身体が透けている。エレメントの欠片…もしかして、六つの属性を押し付けたのか?属性が相容れない場合は反発する、とかなんだろうか。
「ぅ…ユン……ごめんなさい…。」
ユン?なんで今、彼の名前が出て来るんだろうか。
そんな事を思っていると、空に引きつけられる感覚に襲われる。ロゼ先生の姿が遠くなって行き、雲を越え、星が見えた瞬間、視界は真っ暗闇に変わった。
△▲△▲△▲△▲△▲
「!!」
暗闇から目を開くと、目の前には見慣れない天井が見える。現実に戻って来たようだ。
酷く疲れているのが分かる。まるで風邪を引いた時のように、頭が痛くて身体が重い。
「ゼロっ!」
ティアが涙を流して俺に抱き付いた。暖かい感触が、少しずつ俺を現実に連れ戻す。
どうやら、ここはロゼ先生が眠っていた部屋とは別の部屋のようだ。
「あの後すぐに倒れたんだよ。病院に運ぼうと思ったけど、レティシアちゃんが待ってくれって。」
ティアは涙を拭って頷いた。どうやら、俺が何か情報を掴んで帰って来ると信じてくれていたようだ。
「俺、どれだけ眠ってた?」
「1時間程だ。それで、ただ眠っているだけに見えたが、何か分かったのか?」
マークリフ先生の、明らかに疑っているような眼差しが痛い。
魔王討伐パーティの恐ろしさを知ったばかりだからか、少し言葉が詰まった。
回復メンバーでさえあのレベルだとすると、攻撃メンバーである後の三人はどれ程強かったんだ。
俺達に挑んだ時は、多少手加減していたのかもしれないな。
「クリフ、もっと優しく言ってやれ。すまない、根は良い奴なんだ。」
マークリフ先生の肩に手をやり、苦笑いしながらティオ先生が言う。
リアンは優しい笑みを浮かべている。
俺もゆっくりと体を起こして、深呼吸すると、少しだけ頭がハッキリした。
改めてみんなのステータスを見ると、横に属性が見える。ティオ先生が火・水・風。マークリフ先生が、土・闇。レオナルドギルド長は魔法が使えないのか、属性は表示されていない。そしてリアンが風・光。
ティオ先生だけ属性が三つな所を見ると、勇者が特別なだけで、適性は基本二つなんだろう。
「もう一度、ロゼ先生の所に行こう。」
また部屋を移動して、ロゼ先生の部屋へとやって来た。
[属性:火・水・風・土・光・闇]
火と光以外の属性は、赤い文字で表示されている。赤い文字の属性は普段は使えない属性なんだろう。
「単刀直入に言うと、属性が過重してるんだと思う。」
「過重?そんな事があり得るのか?」
「リアン、俺達に渡してくれたエレメントの欠片があるだろ?それを使って確かめる。」
そう言うと、リアンはポケットから巾着を取り出した。6つの欠片を取り出す。試しにリアンに握ってもらうと、指の隙間から緑と黄色の光が漏れる。
「どんなに強い魔法師でも、基本属性は二つだよ。三つは、歴代の勇者しか持った事がない。」
どうやら、“勇者”という称号に、一つ属性が付与されるようだ。
リアンに頼んで、その欠片を眠っているロゼ先生に握らせる。すると、指の隙間から全ての色が漏れたのだ。
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