Lv.1のチートな二人

Amane

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episode2

世界の歴史

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▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼

「なぁ、リアン。」
「何?」
「お前、王様にならないか?」
「…嫌味言ってんの?」
「嫌味じゃないって。」
「…風刃ウインドカッター!」

リアンは持っていた杖に力を込めるが、魔法どころか風さえ起きなかった。
そんな姿が可愛いと言ったら、リアンは怒るだろうか。

「……」
「羽人族の翼は、魔力コントロールに必要なものなんだ。」
「そう。だからオレは魔法が使えない。」

たしかに、今のリアンには魔法が使えない。今その力を解放してしまえば、きっと彼は自我を失ってしまう。
無自覚に人を傷付けてしまわない内に、器を作らないと。

「魔法なんて使わなくても、強くなれるさ。」
「え?」
「僕が教えてあげるよ。」

ーーーーーーーーー

…体中が、重くて苦しい…。毒か…。

「ユン!ユン、しっかりしてよ!」

…あぁ、僕は…“また”死ぬのか。
女神様…約束を守れなくて、すみません。

「許せない…絶対、許さない…!」
「ダメ、だよ…リアン…。」
「ユン…。」

復讐は、この世で最も醜いものだ。
決して考えてはいけない。
大丈夫。輪廻転生と言ってね、僕はまた生まれ変わるんだよ。
だけど、僕がキミに伝えたいのはそれじゃない。

「…リアン…キミは…、…強くなる…そして…王になるんだ…。」

キミが変えるんだ。この腐った世界を。
キミは、それだけの力を持っているんだから。

「出来る訳ない…ユンが敵わない相手なんて…魔法の使えないオレなんかじゃ…!」

…ここまでか…。

「…リアン…キミに、コレを…ー」
「ユン!」

リアン、キミの翼は失ってなどいないよ。
キミは、魔力に長けた父と、神のように強い母から生まれた“奇跡そのもの”だ。
二人が命に変えても守りたかった、宝なんだ。

どうかそれに気付いて、キミに多くの幸せが訪れますように…。

「うわぁぁぁぁっ…!」

△▲△▲△▲△▲△▲

「っ!!!」

目が覚めてベッドから飛び起きた。
とても酷い夢だった気がするのに、思い出せない。変な汗で身体中がベタベタだ。
ふと窓の外を見ると、もう朝だった。
鏡に映った自分の姿を見る。本当に、男に転生してしまったんだな。

「ゼロ?」

コンコンとノックの後に、ティアが扉を開ける。ふわりとした寝衣がランタンで透けて見える。心臓に悪いから、その服は明日からやめてもらおう。

「うなされてたけど、大丈夫?」
「…あぁ…うん、平気。」

そうか、うなされてたのか。壁が薄いから、起こしてしまったんなら悪い事をしたな。
ティアが窓を開けると、外の空気が入って来て少しだけ気分が楽になった。

「朝ご飯作っちゃうね。」

それからティアが朝ご飯を作ってくれて、二人で食卓を囲む。二人の食事なんて前世では日常茶飯事だったが、姿が変わってからは昨日を除いて初めてだ。
美少女の作った朝ご飯を食べる優雅な朝は、悪くない。
調味料は地球とは違うが、砂糖、塩、酢、醤油、味噌に似た味の花や木の実が揃っているのはかなり助かる。
ティアも料理上手だから、俺はそっちの方面では役に立てなさそうだ。

二人で朝食を済ませ、今日は早めに登校する事にした。
ティアの無限通路で行っても良いが、せっかくなので色々見て回りたい。
病院、図書館、公園、どの店がどこにあるのか。地図のようなものを作って歩く。
途中、高い建物の間に挟まれたような、薄暗い路地を通る。

「この辺、さっき通って来た所とは随分雰囲気が違うね。」

ふと後ろから子供の走って来る音がした。ドンっと俺にぶつかって、走り去ろうとする子供の襟首を掴んで止めた。
その手に握られた俺の財布…ではなく巾着を取り返す。

「スラム街…か。」

都市部で極貧層が居住する地区だ。こんな裕福そうな異世界にも、やはり存在するんだな。
俺達は捕まえた子供に買っておいたパンを渡してその場を去る。

「これが現実なんだな。」
「ねぇ、ゼロが王様になったらさ…。」
「まだなるなんて言って…」
「変えようね。不平等に苦しむ人達なんて、居ない世界に。」

ティアの言葉に、俺は返す言葉を迷った。
正直面倒臭い。なんて言ったら、ティアは怒るだろうからな。
だけど、俺達の世界も貧困差は激しかった方だ。
仕事が出来る奴、出来ない奴、頭は良いのに苦労性な奴、仕事が出来ない上司。
きっと、この世界にも腐る程居るんだろうな。
俺だって、そんな世界は変えてやりたいとは思っている。今は無理だけど。

「ティア、そろそろ行くぞ。」
「うん。」

ティアが俺の手を取って移動する。それを見た他の住民達はどう思っただろうな。
だけど、もうこの辺りを来る事もないだろう。


学園について、校舎に入る。今まで騒ついていた校内が、ティアが「おはよう」と言うだけで誰もが黙る。
俺は慣れているとはいえ、ティアの方はこんな反応初めてだろうから…自分の事のように辛く感じる。

「おはよう、二人とも。」

こんな状況で声を掛けてくれたのは、リアンだった。
リアンの声に安心したのか、ティアが満面の笑みで返事をする。破壊力抜群のその笑顔に、周りの男も少しずつ返事を返してくれるようになった。

「フン、男って馬鹿な奴ばっか。」

リアンの後から、シロナとクロエの二人も現れる。昨日大怪我を負ったクロエだが、ティアの治癒魔法で傷は大丈夫そうだ。
相変わらず、二人は俺達に対してツンケンしながら席に着いた。

「…静かにしろ。」

騒つく教室から突然声が聞こえて、生徒は静まり返る。扉が開いてもいないのに、いつの間にか教壇に人が立っていた。
黒いフードとマスクが、中二病っぽさを醸し出している若い男。悪魔のような角と尻尾がある事から、魔人族だという事が窺える。

[マークリフ・ツァイト・リーグ 27歳
魔人族 Lv.100 エスポワール学園 教官
HP/73444 MP/61174
スキル/瞬間移動、魔力温存、危険察知]

他の生徒が怯えたように彼を見る。
その漆黒の瞳が俺を捉えた瞬間、何故だか懐かしさを感じた。こんな人、会ったことないはずなのにな。

「…今日はこの世界の歴史についてだ。」


《昔々、世界にまだ何もなかった頃。名もなき荒野に、一人の男と、一人の女が現れた。
男は絶対的強さを、女は生み出す力を持っていた。
男と女は協力し、世界と、人々を創り出した。
世界は、男の名前から“アリーヤ”と名付け、一番初めに創った国を、女の名前から“アナスタシア”と名付けた。
優しい女は、自分がいなくても人々が暮らせるよう、6つのエレメントを生み出す。負けず嫌いの男は、人々の知恵と勇気を試すため、レベルの制度を作った。
いつの日か消え去った二人の男女を、人々は神と崇めたのだった。》


「世界の歴史、か…。」

地球の始まりは、ビッグバンという大爆発だ…と言うように、どの世界にも始まりがある。
時代を重ねて語り継がれるのは、前世となんら変わりない。
ただ異世界の始まりは、俺にとって興味深いものだった。

「争いは続き、それを統率する王が生まれた。エレメントに守られた六人の王と、その王達を統べる世界王、そして悪しき者を統べる魔王。」

魔王は何千年と世界を侵し続け、世界王は勇者召喚の儀式を行った。

始めに召喚された勇者は、まさに物語の主人公そのもの。仲間を携え、見事に魔王に勝利した。
その後も何度も魔王が生まれ、勇者が召喚された。
勿論、全ての勇者がその時代の魔王を倒した訳ではない。また、男性であるとも限らない。
敗れる者、魔王の伴侶となった者、病に倒れた者、仲間内で殺し合った者、勇者の武勇伝は、全て物語になって残されるようになった。

「勇者が魔王を倒し、今は平和な時を過ごしているが、いつまた魔王が復活するとも知れん。ワタシ達はその為にこの教壇に立つ事を決めた。」

Sクラスの教官達は皆、魔王を倒した勇者や、その仲間なのだそうだ。
年齢的にも、ロゼ先生の仲間と見て間違いないだろう。どうりでレベルが他の人と桁違いな訳だ。
しかしその話が本当なら、勇者も教師をしているという事だ。栄光を築き上げた英雄が、騎士団ではなく教師になるなんてな。

「勇者は必ずしも召喚されるとは限らない。時には賢者の子や王族が勇者として世界を救う時代もあった。」

勇者を支える仲間は皆、この学園のSクラスを卒業した者や、在校する生徒の可能性が高いとされる。
それほどSクラスは価値があるクラスなのだ。だからここの連中は誇り高い人が多く、俺達みたいな底レベルの奴を馬鹿にするんだ。

馬鹿にするのは簡単だ。だが決して、楽をしてこのクラスにいる訳ではないだろう。苦しい事や辛い事を乗り越えて、血の滲むような努力をした結果、自信を持ってここにいるに違いない。
ここにいる奴らからすれば、俺達は権力を持つ貴族が金を積んでSクラスに入れた、世間知らずの子供。
努力をしていれば、レベルも1なはずはないしな。

「この世界において、レベルは最も重要。いくら才能があろうと、経験がなくては赤子も同然。いいか、自分を評価するのは自分ではない。認められなければ、それは評価とは言わない。」

コイツ、わざわざ俺を見て言いやがったな。
ロゼ先生は女神の御告げとやらで俺達の事を理解してくれたが、他のメンバーはそうはいかないのかもしれない。Lv.1のレッテルは、思ったより面倒そうだ。

(評価、か…。)

評価なんてされればされる程、課せられる事へ重みが出るというのに…なんでわざわざ認めて欲しいんだろうか。

幸いにも、俺達を認めてくれたのはこの世界における神。だからこの力があり、Lv.1でもSクラスに入れる素質を持っていた。
文字通り、コネで入った世間知らずの子供に変わりない。だから俺には、どれだけ馬鹿にされて腹が立っても、言い返す事が出来ない。
それに、どれだけ俺が反抗したとしても、信じてくれた女神の気持ちは汲むべきだろう。持てる力全てを使って、限界までこの世界を変えてやる。それが俺のこの世界での役目だ。

「では次の授業はティオと行う。準備が出来次第、競技場へ集合しろ。」

そう言うと、マークリフ先生は瞬間移動したように消えてしまった。
他の生徒がどっと疲れたように机に突っ伏している。
リアンも余程気を張ったのだろう。溜め息を一つ溢していた。

「マークリフ先生、ちょっと怖かったね。」

ティアもそう言って苦笑いしてる。だけど俺には、どこか寂しそうに見えた。




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