Lv.1のチートな二人

Amane

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episode3

笑顔の裏側

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▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼

「ねぇ蒼空、次はどんな展開にする?」

高校生の頃、茉莉と一緒に“異世界に召喚される”小説を考えてた。
主人公が異世界に召喚されて、仲間と出会い、魔王を討伐する話。ありきたりだけど、二人の趣味が似ている事もあって、満足の行く出来になっていた。

「んー、そうだなぁ…仲間の裏切りとか?」
「良いねぇ。男女のパーティには恋愛のゴタゴタが付き物だよね!」

あの頃は、自分の理想を口にする事が楽しくて仕方がなかった。

△▲△▲△▲△▲△▲

「……」

懐かしい夢だ。最近よく昔の夢を見る。今の性別が男だから、ときどき変な感覚に問わられる。
前世で男性経験がなかった訳ではないから、自分の身体を見ても何とも思わないが、やはり複雑なものだ。

「俺、男なんだよなぁ…。」

鏡に映った自分の姿を見て、溜息を吐く。
程良く付いた筋肉、細過ぎず、太すぎず、背丈も180はある。見た目は前世の理想の男性像そのもので、全く申し分ない。
自分に惚れる事はないが、クロエとシロナにときめいた事は一度もない。二人とも可愛いとは思うが、そもそも殺気の方が強くてそれどころではない。
二人よりリアンの方が好きだと感じるが、そもそもリアンは男なので、この感情は友情だと信じたい。
ティアが一番大事ではあるが、親友という感覚がどうしても拭えず、恋愛感情は芽生えない。

「今日は何考えてるの?」

食事を終えたティアが、笑顔を向けてくれる。やっぱりティアの隣が一番落ち着く。この先の事は、まだ考えなくても良いか。

「新しいスキル、試してみようと思ってな。」

俺達がこの世界に来て、約三ヶ月。今日から風の月、ここでの生活も大分慣れて来た。
クラスの連中は相変わらずだが、リアンとロゼ先生達のお陰で、少しずつ話してくれる人数が増えた気がする。
黒き太陽の一件はあの日以来特に変わった事はなく、普通の学校生活が送れている。
だけど用心するに越した事はない。俺とティアは“アリーヤ”について、より真剣に学んだ。そして、“武器”や“魔法”については実践形式で学んだ。
始まりの地は、あの日以来魔物が出没するようになった。そして、何をしても変化がなかった俺達のステータスは、その魔物を倒した時だけ変化する事に気が付いた。
そして、俺のステータスに新しく追加された神のスキル。

[物体生成]

世界の歴史で習ったが、アリーヤは二人の神が作った世界。
男性は絶対的強さを、女性は産み出す力を持っていたとされている。
おそらく、この物体生成は女性の神の、産み出す力に近いだろう。
“物”であれば、ある程度の想像が出来れば作れる。

「物って…一体何を作るの?」
「試しに、スマホでも作ってみようと思って。」

俺達がバラバラに行動する事があっても、連絡手段として使える何かが欲しかった。
テレパシーみたいに、心と心で会話出来る便利な事は出来ないようなので、一番イメージしやすいスマホにしたのだ。

学園に到着し、授業を受ける。魔法術式の展開の仕方や詠唱方等、面白い授業ばかりだ。俺は魔法が使えないが、巻物などのアイテムを使った魔法なら使える。
その機能を、どうにかスマホにも組み込めないだろうか。そんな事を考えながら、授業が終わった。

「レティシアちゃんならともかく、ゼロが真剣に授業を受けるなんて珍しいね。」

リアンの席は俺達のすぐ後ろの席だ。俺は授業を耳で覚えるタイプなので、ノートを取る事も少ない。そのため、熱心にノートを取った俺が珍しかったのだろう。

「今更成績気にしたって将来は変わらないのに、バカって何考えてんだか。」
「あら、実践で全く役に立てない人が人の事バカに出来るのかしら?」

シロナの言葉を、ティアが冷静に切り捨てた。
最近、シロナとクロエの二人は俺達を敵視している。クエストでも邪魔ばかりして来て、事ある毎に俺達に厄介な敵を押し付けて来る。
そのせいか、完全にティアが喧嘩腰だ。実際に喧嘩したところで、ティアには敵わないのは分かっているはずなのだが。

「まぁまぁ二人とも、可愛い顔が台無しだよ。」

リアンは相変わらず中立。そもそも、リアンは何故このパーティに居るんだろうか。
クラスで五番目とされる強さを持っているリアンと、下から数えた方が早いシロナとクロエ。
パーティは三人以上で組むのが条件とされているが、リアンは一年の時は違うパーティだった。シロナとクロエは、どうして二人だけだったのだろうか。
そんな疑問を抱きつつ、講堂にやって来た。

「ねぇリアン、今日はAランクのクエストにしようよ。」
「Aランクは倒す魔物のレベルが高い。オレ達のレベルではまだ無理だよ。」

クエストにはFからAまでのランク付けがされており、それぞれ適性レベルがある。
Fランクは掃除等の雑用なので、基本的に誰でも受けられる。Dランクは鉱石や薬草集め等で、少しだけ魔物と戦うのでLv.20~30。Cランクは魔物狩りでLv.30~40。エスポワール学園の生徒は、基本的にCランククエストを進める。
Bランクはより強い魔物討伐。Lv.40~60で、強さと数も多いのでパーティで挑むのが基本だ。
Aランクは勇者クラスが挑む事が出来る難関クエスト。Lv.70~90でダンジョン攻略や、高レベルの魔物狩り、素材集めがある。勇者クラスのパーティが余裕で攻略出来るらしいが、そもそもこの世界に勇者クラスが少なすぎるため、危険なクエストとされている。
そして、元勇者である先生達や、ギルドの最強戦士達が受けられる、特別クエスト、Sランク。適性レベルは70以上。このクエストは、災害級の魔物討伐。災害級と言っても、全部が全部襲って来る魔物ではない。基本的には、こちらが何もしなければ襲って来る事はない。その為、滅多にクエストとしては上がって来ないのだ。

「それ、シロ達には高レベルの魔物討伐は無理って言ってんの?」
「基本的にSクラスが受けられるのは、Bランクまで。最初にそう習っただろう?」

Lv.70以上のリアンなら、余裕で勝てるだろう。だけど、このパーティにはレベルが曖昧な俺達二人と、一般より強いだけの二人しかいない。
もし強い魔物に束で襲われたら、危険なのはシロナ達の方だ。

「女の子二人くらい、リアンなら守れるでしょ?」
「そうだよ。だってルークくんのパーティに居たんだもんね。」
「……」

最近分かった事がある。彼女達がリアンとパーティを組んでいるのは、リアンの強さに肖っただけ。
どんなに強い敵が現れても、リアンならある程度倒せる。パーティの経験値は全員に割り振られるので、そうして楽にレベルアップをしていたんだろう。
リアンはイケメンで人当たりも良く、クラスの人気者。そんな彼を独占出来て、優越感に浸りたいのだ。
ティアも俺も、そんな二人が気に食わない。だけど相手は子供。見た目は若返っても、俺達は仮にも33歳の大人なんだから。

(守ってやらなきゃな…俺達が。)

作り笑顔で応えるリアンを見て、心からそう思った。

「じゃあ、今回はレアフォークス討伐で勘弁してくれないかな?」

リアンが選んだクエストは、レアフォークス20匹討伐。レアフォークスは、風の国の森に生息する大人しい魔物だ。
夜行性なので昼間は洞穴に身を隠す。名前の通り、あまり目撃される事もないうえ、群れで行動する事がないので、20匹討伐はかなり苦労するだろう。

「ありがとう、リアン。」
「?リアン。そのクエスト、ちょっと待て…」
「え?」

シロナの笑顔に嫌な予感がした。
気が付いた時には、エレメントは紙を吸い込んでいた。
表示されたクエスト内容を見る。

[エスポワール学園 クエスト
グランスネークの涙入手]

文字が浮かび上がり、魔法陣が光った。

「!グランスネーク?…なんで、Sランクのクエストが…。」

シロナは、リアンがなんとかしてくれるだろうと余裕そうな顔をしている。三ヶ月前までは、災害級のトロールを見て嘆いていた奴とは思えない。一方クロエの方は、少しだけ躊躇している気がした。
間違いない。この事態を招いたのはシロナとクロエの二人だ。
だけど、どうしてこんな事をする必要があるのだろう。
リアンといれば、Bランクのクエストを地道にこなせばランクは上がる。わざわざ命の危険が迫るSランクを受ける必要がない。

「グランスネークって?」
「体が細長く、渦を巻いて生息する災害級の魔物だよ。」

神の使いと呼ばれる事もあるという。名前の通り、大蛇って事だな。
グランスネークの涙は、滴り落ちる時に個体に変わる。
入手するには攻撃しなければいけないが、その皮膚は硬く、魔法攻撃も吸い込む特殊な皮をしているようだ。

「上書きの巻物だね。どうしてこんな事を?」
「だってシロ達、早くレベルアップしたいんだもん。」
「…安易な考えだね。災害級をオレ一人で倒せると思っているのかい?」
「そこはそのお荷物達と協力してよ。」
「そうね。トロールを倒したくらいだし、よっぽどのスキルを持ってるんでしょ。」

呆れたな。ここまでハッキリ協力する気がないと言う奴、初めて出会った。怒りを通り越して、最早可哀想とさえ思う。

「…わかったよ。じゃあ、二人はそのグランスネークを見つけて来てくれるかい?」
「え?」

以外にも、リアンはこのクエストを引き受けると言う。

「そ、そんなの無理だよ!」
「それじゃあこのクエストは破棄する。どうする?」

Sクラスのクエストは、それぞれ点数がつけられる。
F=10、E=20、D=30、C=40、B=50、A=60。
しかし、達成出来ない場合、前回のクエストの点分マイナスになる。
Sクラスはこの点数によって、戦闘訓練の相手が変わる。そして、総合得点の高いパーティは、将来を約束される。
クエストを破棄するという事は、前回の得点を無駄にすると言う事だ。
そもそも、この二人はリアンが断ると思っていなかったのか?

「…わかった。」
「うん、じゃあ見つかったらこいつを投げて知らせて。」

リアンに赤い石のようなものを渡され、二人は渋々動き出した。




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