口が悪くてスミマセン。

osho

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秋の桜海祭編

文化祭ーミス桜海 決勝戦⑨

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数々あるおとぎ話や童話の中で選ばれた今年のお題は『シンデレラ』





私は今まさに、その『シンデレラ』になっている。










コツン…………コツン…………。







一歩、一歩大事に歩いていく。






私の歩きに応じてまるでガラスの靴で歩いているかのような効果音が入る。









入り口からステージまでの道のり。そんな短い距離の間で私は会場にいるお客さんにせていくのだ。








(落ち着け、もっと深く集中するんだ私。)







松白君は私に合わせて、雰囲気を崩さず王子様らしくかっこよく歩いていく。









それに比べて私は少しぎこちない気がする。






(もっと、もっとなりきるんだ。)






そう、あの二回戦でピアノを弾いていた時のように私は今、集中していた。







橘先輩のような派手な音楽とは違って私達が会場に流しているのは静かな環境音と少しの音だけ。





そして会場の照明は私達を照らすスポットライト以外に無い。








つまり、私と松白君を引き立てるために無駄なものは排除してあるのだ。











あの騒がしかった、みんなが静かになってこちらを見ている。





まるで、舞踏会に来たシンデレラに注目するかのように。








私はいつの間にかここがミス桜海の会場であることを忘れそうになるくらい集中していた。













そして私は中央の道を歩き終わり、いよいよステージ上に登ることになる。





ステージには普段、両サイドに小さな階段みたいなものが設置してあるが今は真ん中に設置してある。










(階段を登る時も、それっぽく登らないと………。)





私は松白と別れ階段を登ろうとした。












一段、二段………。










(……うわっ!)






……そのとき私は階段を踏み外し後ろに倒れそうになる。









(しまった、ヒールだから普段とは違うんだ……。)










やばい……………。











態勢を立て直せれない………。






私はそのまま後ろに倒れこむ。












……………ボフンッ。






私が倒れた先は床ではなかった。










「大丈夫?」




松白君が後ろから優しくお姫様だっこの形で私を支えてくれた。








「ごめん、ありがとう。」




私は小さい声でお礼を言った。








松白君はそのまま私をゆっくりと降ろした。








「そのまま少し待ってて。」







「…………?」





どういうことか分からなかったが、すぐにその意味に気づいた。






松白君は私が倒れた拍子に片方脱げたヒールを拾ってくれた。










そして片膝かたひざをつき私にヒールを履いてもらうように促す。





まるで、シンデレラの脱げたガラスの靴を届けてくれた王子様みたいに。










私はその差し出されたヒールを履き、今度こそステージに登った。




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