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夏の合宿編
合宿2日目ーネガイゴト
しおりを挟む「………………。」
「………………。」
お互いに喋ることなく私達は洞窟の中をひたすら歩く。
(こいつがお前をダメにしたのか?か……………。)
私自身尖った性格してるから、知らず知らずのうちにも他の人を傷つけたりとかしてるのかな……。
(はぁ~。)
昔から私は喧嘩ごとには良く縁があるけど、やっぱり喧嘩は嫌だなぁ。
何ともいえないあの空気が苦手だ。
まぁでもあの両親の子供なので誰でも臆することなく立ち向かえるのは良かった。
「………………………めん。」
「えっ?」
私が一人考え事をしてると勢也君が小さい声で何かを話した。
「ちょっと言い過ぎた、ごめん。」
いつもの勢也君に戻ったのか、冷静さを取り戻したようだ。
「関係の無いことに巻き込んで悪かった。あの事は忘れてくれ。」
その言葉を私は拒否する。
「やだ、何があったのか教えて。」
私は勢也君の方をじっと見る。
「はぁ~、分かったよ。」
私に折れた勢也君は語りだす。
「俺って、中学時代からバスケの試合ではほとんど負けたこと無いんだよね。」
「へぇ~、中学の頃から凄かったんだね。」
でも、妙に引っ掛かる言い方だな。
「そんで、勝つのが当たり前だと思っていたある時、秋桜中と練習試合をすることになったんだ。」
松白君のいた中学校か。
「秋桜中なんてバスケじゃ弱小校だし、正直せいぜい次の大会への肩慣らし程度だと思っていたんだ。」
「だが、実際はそんな簡単なものではなかった。」
「いざ、試合を始めてみると同点に近い状態がずっと続いた。………そう、一人化け物みたいなやつがいたんだ。」
「バスケってのは1on1、つまり一対一の場面が必ずでてくるんだ。そして試合中に俺は何回もそいつと勝負をしたが一回も勝てなかった。」
「…………もしかして、それが松白君?」
「そう。今のあいつとは全然違うやつだったけどな。」
「結局、その試合自体は何とか勝つことができたが。勝負では完全に負けていた。」
勢也君は大きな溜め息をつく。
「………まぁこんな感じだ。さっきは俺が勝手に今のあいつに失望して感情的になってしまったんだ。」
「そんなことがあったんだ。」
明かされる勢也君と松白君の関係。
バスケに真面目な勢也君だからこそ、きっとあんなに怒ったんだろう。
「あっ。」
暗いはずの洞窟に明るいロウソクの灯火のついた祠みたいな場所がある。
恐らくここが目的の場所だろう。
「……綺麗な場所だな。」
勢也君もじっとそれを見つめている。
「そうだね。」
洞窟のでこぼこな壁に乱反射した光が、神秘的な空間を作り上げている。
「………勢也君始めようか。」
「うん。」
最後の私達がやることはお参りみたいなことだった。
事前に先生にどうすればいいかは聞いていたので、難なく進めることができた。
みんなの思いが募ったロウソクの灯り。
私達を明るく、暖かく照らしている。
そしていよいよ…………。
「……じゃあ火を消すよ。勢也君は願い事は考えた?」
「俺は大丈夫。あんたの方こそ準備はいいのか?」
「私も大丈夫。………よし、じゃあ消すね。」
そういって私は火を消す。
みんなの思いと私達の思いを乗せて。
そしてそれは2日目最後のイベント肝だめしの終わりを告げるものでもあった。
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