転生後、魔王は魔王の子として勇者は魔王の部下として物語は続く

夜月 雪

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第十九章…「夏休みに向けて」

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たまには空を見上げれば、星がたくさん輝いている。いつから見上げてない?と聞かれればいつからだろ?と返してしまうほどに見上げてない気がする。
暗くて静かな夜は好きで、時々こっそり外に外出して散歩したりしていた。
そして今日も夜の散歩をする。

「なぁ、お前は今のこの場所をどう思う?」

今日の夜は騒がしく、体が透けて人の形をなしていないそいつ等はすがるように少年にまとわりつく。
う~と唸りながら必死に。
少年はそんな人の形をなしていないそいつ等を悲しそうな瞳で見つめて、優しく撫でるようにする。そうするとそいつ等はう~と唸りながら嬉しそうに涙を流すように見える。まるで、やっと気づいてもらえたことを喜ぶように。

「大丈夫……俺はお前達が見えるし理解している、だから……安心して逝きな」

少年がそう呟くと少し強めの風が吹き、そいつ等を連れていく。
再び訪れた夜の静けさには、月の光が当たって照らされる紫の髪の少年だけが残されていた。その姿はまるで夜を支配する魔王の様に見えるのであった。

「さて、そろそろ戻らないとな」

はぁと小さくため息を吐くと少年は夜の道を歩き出す。
音をたてないようにドアを開けて中にはいる。2つのベッドのうちの一つに寝息をたてて眠っている少年。
その寝顔を見ていると、眠気に襲われ始めた少年も自分のベッドに入り眠りにつくのだった。



変わることのない朝。
ユリィにとっては地獄を生き抜いた成果を出したい朝。
テスト前日。
ふぁとあくびをしながら学園に向かう準備をしている隣で少し緊張しているユリィが準備していた。テストは明日だが、今日までしてきた勉強に終止符を打つべく、レイトは前日にレイトが予想したテストをしてもらうことになっていた。
いつもの時間に寮を出ればエリオとひなが噴水前で待っている。いつものメンバーが揃うといつものようにとうこうするが、今日は何度も言うがテスト前日ということで学園は休みということでレイトたち以外に登校しているものは生徒の中ではいない。
学園に着けば、サクラノがユリィ以外を満面の笑みで歓迎しながら準備した教室に案内する。

「うお~、緊張する」

「その緊張を明日に回せ」

「頑張ろうね、ひな!」

「うん……頑張……ろう………エリオ」

気軽に会話をしながらレイトが配るのを待つ。9時28分にテスト(予想)を配り始める。29分になる頃には回し終わり、書き物の準備も終わり、後は心を落ち着かせるために深呼吸をする。
壁にかかった時計を見つめながらレイトは、半になるのを待つ。
そして秒針が12に到達すると同時に半になる。それに合わせるようにレイトは口を開いた。

「始め!」

そう発せられると同時に、裏返しになっていた紙をめくる音が聞こえてくると書く音も聞こえてくる。
それを確認したレイトは、静かに自分の席に座りそっと目を閉じる。
もし、このテストが終われば一学期が終わる。全く通っていなかった一学期が。
そう考えれば、二学期からはきちんと通いたいと思う。
そう考えていると時間はあっという間に過ぎて行き、次に目を開けたときには30分も過ぎていた。レイトは軽く辺りを見渡した後、パンッと手を鳴らし終了を告げる。

「そこまでだ…点つけてる間は自由時間、そうだな……一時間後にまたここに集合だ」

壁にかけられた時計を見つめながらレイトがそう言うと、まず最初に立ち上がったのはユリィだった。そしてそれに続くようにエリオとひなも立ち上がり、教室から出て行く。残されたレイトは一人教室で丸付けを始める。



教室を出た三人はそれぞれ自由を堪能していた。
ユリィは睡眠をひなとエリオは街に出て買い物をしていた。

「ひな、ひな!この服可愛くない?」

そう言ってエリオは一枚の服を見せてくる。ひなはその服を見てん~と少し悩む仕草をした後、並べられた服をゆっくりと見て行き、ピンときた服を手に取る。

「エリオ……なら…………こっち、かな」

「うわぁ、そっちの服の方が可愛い!」

楽しそうにきゃっきゃっと買い物を楽しんでいると、出入り口から入ってきた少女二人に声をかけられ、エリオとひなは振り向いた後に笑顔を見せた。

「ルイノギ!ルベル!」

「あら、おはよう」

「おはようございます」

「今日……は、どうし………たん……です?」

ひなの質問にルイノギとルベルは顔を見合わせた後にエリオとひなの側に近づき、こしょこしょ話のように話始める。
その行動に乗り始めるエリオとひなもこしょこしょと話始める。

「実はもうすぐ一学期が終わるから一回実家に帰ろうかと思ってるの」

「あぁ、そのための服ね」

「それもあるのですが、ルイノギ様には妹様がいるんです」

『!?』

ルベルの言葉にエリオとひなはルイノギに注目する。あのルイノギに妹。どんな雰囲気を身に纏った子なのだろう。
誰もがそうワクワクした気持ちを抱いていた。

「……私にとっては可愛い妹よ」

照れずにそう言うルイノギにエリオとひなは目をキラキラと輝かせながら迫る。
迫り方に驚きつつも、肩にかけていた小さな鞄の中から大切に保管さている1枚の写真を取り出すとそれをエリオとひなに見せる。その写真に写っていたのはルイノギと彼女をそのまま小さくした感じの女の子が満面の笑みで写っていた。

「え、めっちゃ可愛い!」

「抱き………しめ……たい、です!」

写真を見つめながらエリオとひなはそう呟いていた。ルイノギは少し恥ずかしそうにしていたがルベルは自分の携帯を取り出し、無言で携帯の画面をエリオとひなに見せた。途端に2人はルベルの顔を見た後再び画面を見て、キョトンとした表情を見せるルイノギを見つめる。何を見せているのか気になったルイノギも画面を見た後に顔を真っ赤にさせる。

「ちょ、ルベル!今すぐにその写真を消しなさい!」

「申し訳ございませんルイノギ様、既にエリオさんに送ってしまいました」

「なっ____」

ルベルの言葉にルイノギはエリオをすさまじい目力で見つめると、エリオは慌てて携帯を取り出して見るが首を傾げる。

「ルベル、私のところに来てないわよ?」

「あれ?…………あ、レイトさんに送ってしまいました」

確認したルベルが冷静にそう返す。
グサッとルイノギに言葉が刺さり、追い討ちをかけるかのように付け足す。

「既読も付いてますね」

「………死ぬわ」

『それは止めて!』

死のうとするルイノギを必死に止めにはいるひなとルベル。抵抗するルイノギにエリオは助け船のように呟く。

「まぁ、レイトなら無視するわね」

「…………そうだといいけど」

頬を膨らませながら体の力を抜いたルイノギをひなとルベルで支える。大分落ち着きを取り戻したルイノギはやけくそで服を買い漁っていたと後にエリオとひなは語る。


ルベルが送り間違いに気づいた頃。
教室内にピロリンと少し高めの音が鳴り響く。はぁと軽くため息をついたレイトは鞄の中から携帯を取り出して画面を開くと送られてきた写真を見つめながら首を傾げる。そんな時、戻ってきたユリィに気づき手招きをし、携帯画面を一緒に見つめながら同時に呟くのであった。

『………誰?』




写真事件?の件から更に数十分が過ぎた頃、レイトがいる教室にはひな、エリオ、ユリィがの3人が揃っていた。
教室内は緊張の空気が漂っており、ごくりと唾を飲めば聞こえてきそうなくらいに静かであった。そんな静かな空間にとんとんと紙の高さを合わせる音が響いた後、レイトが口を開く。

「それじゃあ、テストを返すけどまぁそのままの点数を受けとるんだな」

「点数が低いのか?」

「再テスト?」

「不安……だね」

ユリィとエリオ、ひなはそう話しているのを無視してレイトは封筒に入れたテストを机の上に置いていく。少し変わった返しかただなとユリィは考えたが魔族のテストはこんなものかと納得する。
テストを置き終わったレイトは教卓に戻ると開けていいと合図する。
3人は恐る恐る封筒の中から採点されたテストを取り出す。
カサカサと紙の音が鳴る中で微かに息を吸い込む音が聞こえたと思えば、テスト(仮)を中に放り捨てて泣きながら喜びの声をあげるレイトの予想テストを受けた3人。町中で出くわしたルイノギとルベルは足元に落ちてきたテストを拾い上げて問題を見た瞬間に固まった。
テストの内容が鬼畜で、誘うような嫌な引っかけ問題、計算に時間がかかりそうな数式、解りづらい抜き取り問題と腹黒いテスト。ルイノギは静かにテストを近くの机の上に置き、そっとレイトの側に寄り耳打ちする。

「あんなテスト絶対に無いわよね?」

「あるわけがない、あれくらいやらないと100点取れないからやっているだけだ……それにもしもの時のためでもある」

「…………?どこかに行くつもり?」

意味深めのレイトの言葉に目を細めて問うルイノギ。そんなルイノギに無言で横目で見た後、レイトは問うのだ。まるで答えを求めているかのような瞳で。

「お前には、この世界がどう見える?」

「?普通に平和ですわよ?」

「………そう見えるのか、俺には最悪な世界に見えるよ」

「それ、どういう意味なの__」

問い詰めようとしたルイノギの言葉を遮るかのように突如として教室のドアがガラガラと音をたて開く。誰しもがそちらに目を奪われる。もちろん、ルイノギとレイトも例外ではない。
ドアを開けたの一人の青年。一見わかりづらいが青年もまた、魔族である。胸元まで延びた髪は右肩に集められ束ね、髪に隠された小さな角は角度によっては微かに見える。そんな青年は教室内をきょろきょろと見渡していると一人の人物でその動きが止まる。

「ちょっとそこの……えっと、あの、その」

キリッとしていた表情が次第にもじもじとしだす。誰しもが首を傾げる。
視線の集まる空間に耐えられなくなった青年はずかずかと勢いよく歩き始めるとレイトを担いで教室の出口を目指す。

「うぉい!下ろせ!俺に用があるなら、わかったから下ろせ~!」

「レイト!!」

「ユリィ!」

レイトに手を伸ばした手をレイトは掴もうとしたがその手が届くことはなく、ユリィの手は空を掴む。
状況についていけていないエリオ、ひな、ルイノギ、ルベルはいまだにえ?え?とした反応を見せていたがそんな状況下でもユリィは一言残して青年の後を追うことにする。

「エリオ、ひなは待機!ルイノギとルベルも待機していてくれ!」

「え、ちょ!ユリィ!?」

「一体………何、が?」

残された四人はただ呆然と立ちすくすのみであった。


レイトを連れ去った青年を追って走り出していたユリィは、前にも使ったチョーカーの機能をもう一度起動させる。
ピピッと音をたて、頭の中に流れる映像は既にどこかに止まっている。その映像は校舎内の人気の無い場所、そして定番の隅っこ。
大体の場所を絞り、ユリィは行動を開始する。先生に会えば早歩きで横を通り、誰もいないときは廊下を走ったり近道をしたりする。

「何をするんだ!」

そんな声は突然廊下に響く。
ユリィは足を止めて、声がどこから聞こえてきたのかもう一度耳を済ませる。

「ですが!」

「黙れ!貴様は何様のつもりだ!二度とこんなマネをするな!」

「も、申し訳ございません」

そんな会話を聞いてユリィは大体理解する。軽くため息をした後、ゆっくりと近寄るが既にユリィの接近に気づいていたレイトが顔を上げると丁度ユリィも見下ろす。見下ろしてきたユリィの表情はどこか安心したように見えることからレイトは悪戯っぽく口元を隠しながら口を開く。

「心配してくれたのか?」

「………あぁ!そうだよ!心配して悪いか?」

頬を赤くしながらユリィがそう言い返すと、予想していなかったのか目を見開いて固まっているレイトがそこにはいた。
そして、二人の会話に追い付いていない青年も固まっていたが、ユリィの後ろから近づいてくる人物により固まった二人は我に帰ることになる。

「あら、こんなところでどうしたのかしら……テストはおわっ____なるほど」

ユリィの隣から見下ろした一人の人物は、一瞬で理解したらしく冷めた瞳で青年に声をかける。

「こんなところで、突然、そのお方を、連れていくなんて…バカ!なんじゃありません?」

「な、なぜそんなこと言うんだ!貴様は」

「本当の事を言ったまでです!それにこいつは転生した勇者!そのお方のパートナーになります」

こいつと言いながらユリィを指差す人物。
ムカッときていたユリィだったが、自分の手を自分で制していそうだなと見つめながらレイトは微かなに思いつつも、見下ろす人物と青年のやり取りを見守る。

「何?そいつが勇者?なぜそんな奴が魔王様のパートナーなんだ!お前は何をしていた?」

「私だって知ったのは入学して、パートナーになってからですもの!何もできないわ!」

「これだから貴様に任せておけない」

青年がそう返すとユリィを指差して口を開こうとした時、耐えきれなくなったユリィが割ってはいる。乱入は歓迎だと、他人事のように思い続けるレイトであった。

「聞いていれば言いたい放題言いやがって!俺だってまさか転生して魔王とパートナーになるなんて思わなかったし、そもそも転生だって予期せぬ事態だったよ!」

「じゃあ、死ね!今すぐ死ね!」

「それは困る、パートナーがいなくなれば俺は退学になる……そしたら、戻る・・ことになる」

困った表情でレイトが青年に訴える。
何だろう、話がだんだんややこしくなってきた。
とにもかくにも、レイトは青年に今の状況を説明し、ユリィに青年の紹介を始める。

「ユリィ、こいつは魔王軍の元柱全軍の指揮官だったリビィ・ジランアだ」

「リビィ・ジランアだ、気安く呼ぶなよ名がけがれる」

「そうか、よろしくなリビィ」

無視してユリィはリビィを呼ぶ。
当たり前にムカついてひどい顔になっているリビィを制止しつつ、レイトはユリィを紹介する。まぁ、本来自己紹介は不要なのだが……まぁ、あれだ…あれだから仕方がないのだ。

「リビィ、こいつは元勇者だ
力も記憶も引き継いでいて俺のパートナー、現在の名はユリィ・マルバデアだ」

「と言うわけだ、今後ともによろしくなリビィ」

悪戯っぽく笑うユリィに今にも切りかかりそうな顔をしているリビィ。
両者を見ながらふとユリィの隣にいる人物を見る。少し頬を膨らませながら何か言いたげな顔をしていた。

「どうした?サクラノ」

「え、いえ!何でもございません!えぇ、何でも無いのですよ!」

突然声をかけられ驚き、声が裏返っていたが最後の方はなぜかリビィを睨んでいた気がする。まぁ気のせいかもしれないと考えながらレイトは階段を上がり上の階へ上がると当たり前のようにリビィも着いてくる。
そして忘れていたことを思い出し、頭を抱えたくなる衝動を押さえながらレイトは教室で待たせているだろうと思われる四人の言い訳を考えながら戻ることにする。
教室に到着するなり、四人に詰め寄られ怪我がないか、何もされていないかを次々と聞かれさすがのレイトもあわあわとしているとそれを見かねたユリィが間に入り口を開く。

「心配させたね、実は誤解があったみたいでね」

「誤解?」

「誘拐するのがですか?」

「え、あ、あぁ」

ルイノギとルベルの殺気のある睨みに少し驚きながらユリィは続ける。

「この人は………そ、そう!レイトの護衛だ!」

「護衛?」

「なぜですか?」

「それは……」

疑わしげに見つめてくるルイノギにルベル。
そして何も言わずに事の成り行きを見守ろうとしているサクラノ。
言葉に詰まりそうなるユリィに今度はレイトが口を開く。頬に汗が流れる。

「さ、最近俺とエリオが博士に拐われただろ…それで、今後も同じことがあるかもってことで、サクラノが手配してくれたんだ」

「……え」

「そ、そうなんだ!」

「じゃあエリオの護衛は?」

「まだ到着していないらしくて、そうですよね?サクラノ先生!」

見守るだけのはずがとっさのレイトの言葉で巻き込まれ、挙げ句のはてにはエリオの護衛は到着が遅れていると言う。それを確認するように呼ばれるが、サクラノはひきつった笑顔のまま固まっている。そんなサクラノに変わってリビィが口を開く。

「皆様に迷惑、ご心配をお掛けしてしまい申し訳ございません、エリオ・メイビィアさんの護衛はもうしばらくお待ちください」

「それは構いませんが、あなたの名前は?」

「これはまた失礼しました。
私は本日からレイト様の護衛を勤めさせていただきます、名はリビィ・ジランアと申します。気軽にリビィと。そこのユリィ・マルバデア!は気軽に呼ばないでくださいませ」

満面の笑みでユリィを拒絶しながら自己紹介をする。だがレイトは気になることができたため、後で聞くことにする。
名前を聞いた四人はそれぞれの反応をするが、とりあえずは無事に乗りきれたようであった。
この後すぐに解散となり、教室に残ったユリィ、レイト、サクラノとリビィ。
サクラノは涙目になったままレイトを見ているが、レイトはすぐにリビィに問う。他の元柱についてを。

「リビィ、他の柱は?」

「はい、ヨナ・サージリカとシベル・アルーカは軍務を離れて静かに農園を営んでおります、アルテ・ライは隠密に人間たちの暮らしを観察していると思われます」

「そうか」

それだけを返すとレイトは椅子に座り考え始める。
ちなみにだが、ヨナ・サージリカは女の元柱で担当は軍の隊長と救護班であり、魔王軍の生命線であった人物である。
シベル・アルーカ、男の元柱で担当は軍の隊長で、サクラノと並ぶ前衛であった。
アルテ・ライ、後衛の指揮かつ軍の隊長。後衛から前衛のサポートをしたり、攻撃したりしていた。
と、こんな感じの魔王軍元柱の紹介である。
紹介を終わった頃、レイトもまた案が浮かんでいた。だが、それができるか不安でもあった。

「決まったのか?」

もんもんと悩んでいると、ユリィがそれとなく聞いてくる。レイトは素直に答える。

「まぁ、一応な」

「どんなことだ?」

「ヨナをエリオの護衛につかせたい」

レイトの提案にサクラノとリビィが顔を見合う。別にこの提案が受け入れられなくても、別の提案もある。
レイトも期待はあまりしていない。
だが、そんなレイトの言葉にサクラノとリビィは頷き同意を示した後、それぞれが同意した理由をのべ始める。

「ヨナなら、もし怪我したときには治療もしてもらえますね」

「それにヨナは女性です、エリオも安心するでしょう」

「それじゃあ、決まりだ……すぐにヨナを読んでくれ、そうだな」

サクラノとリビィを何度か見てからよしっと小さく呟き指名する。

「リビィが行ってくれ、サクラノは一応学園の先生だし、俺のことは心配するな……ユリィが付いてるからな」

そう言ったレイトは小さく微笑んで見せる。そんな顔を見たリビィは、何か言いたげにしてはいたが渋々了承しする。
サクラノは、一息ついてからそれではっと小さくお辞儀して側を去る。リビィもまたサクラノの後を追うようにお辞儀をし、名残惜しそうにしていたがレイトが小さく早く行くよう促すとそそくさと行ってしまう。
教室に残されたレイトとユリィは、少しの間会話はなかった。会話を始めたのはチャイムが鳴ってから少ししてだった。

「明日のテスト……合格したら俺、人間の町に行ってあいつらに挨拶してくる」

そうきり出したユリィに机に頬を付けながら眠たそうにするレイトは小さくそうかとだけ返すと、それ以降口を開かなくなった。
次の日のテストは、レイトの指導を受けたユリィ・ひな・エリオは高得点を叩きだし、無事に一学期を終え、夏休みを迎えた。
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