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第三部
Sky's The Limit・23-1
しおりを挟む「なにそれ…ずるい」
「うっ、ぐるじい」
結構な腕力で体を締め付けられた。
「しばらく耐えて」
きいくんがそういうなら、頑張ります。
「ごめん、うそ」
ぱっと緩められて息が吸えた。
「なかちゃん、俺と別れない?」
やっと身動きが取れるようになったので、体を少し話して顔を合わせる。眉毛が下がって、捨てられそうな子犬みたいになっていた。
「そもそも別れるという選択肢が無いですけど?」
「アイドルじゃなくてもいい?」
アイデンティティを失っても、好きでいてくれるのか。
突きつけられた問題が、きいくんにとってどれほど大きかったのか。
ばんばんと、きいくんは、別物として対応していたことが、彼の認識を誤らせてしまったのかもしれない。
「伴喜一が生まれて来て、アイドルになってくださったことに感謝してますし、今もなお生きていることに感謝してますし。ばんばんがアイドルじゃなくなってしまうことは、すごくすごくすごく、すごーく悲しいけど、それとこれとは別では?」
アイドルのばんばんも、彼氏であるきいくんも、全部含めて愛してるし、伴喜一を愛してるから、アイドルじゃなくなったから別れるとかおかしくない?
「アイドルのばんばんだから付き合った訳じゃないですし。それだと、アイドルと付き合いたいって御用達のクラブに通う女みたいですね、私。そうなってくると、ばんばんと別れたら、その繋がりを利用して他のグループのメンバーとお付き合いをすることに」
「わー!ごめん!ごめんなさい!すみませんでした!怒らないで!」
言ってるうちに自分にムシャクシャしてきた。
「いえ、私のせいなので。もう何年も付き合ってるのに、きいくんをそんな風に不安にさせてしまって…私の愛の伝え方が間違っていたせいで」
担当としての自分を出し過ぎたのが悪いんだ。もっと彼女然としていれば、きいくんが苦しむこともなかったはず。
「違うから!違います!俺が、俺が臆病で弱虫で勝手に落ち込んでいじけてたせいです!」
「いやしかし、私が足りないばかりに」
「もうやめてー!本当、俺が恥ずかしい!申し訳ない!自覚したので!ごめんなさい!」
大きな手のひらで口を押さえ、これ以上何も言えなくされた。
「弱気になって負のループに入ってました。すみません。なかちゃんの愛を疑ってごめんなさい。うん、疑ってはないんだけど自信なくなってたっていうか」
うんうんと悩んでいる姿を見て、あまりの可愛さにうっかり笑ってしまった。
「えっと…その、俺とずっと一緒にいてくれますか」
口元から手が離れて、潤んだ瞳に見つめられる。
「はい」
照れて恥ずかしくなっていると、再び強く抱きしめられた。
「なかちゃん、結婚して!」
「えっ、それは無理!」
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