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第三部
Sky's The Limit・23-2
しおりを挟む「なんで?!えっ、なんで?!」
両肩を掴まれてガクガクと揺さぶられる。
「ファンとして無理いいい」
揺さぶる両腕を上からタップすれば振動が止まった。
「ばんばんは、お芝居がしたくてサンキュウ!と事務所を辞めます」
「はい」
そうですね、という声が聞こえて来そうな返事だ。
「そのあとすぐ、一般女性と結婚しました。では、ファンはどう思うでしょう」
この問いに関して正解が出せないほど、この人はアイドルをやって来てない。
「あーうん、そっか…なかちゃんは、そっちを優先するよね」
はああとため息を吐いて、きいくんは肩を落とした。
「いいんだけどな、言いたい人には言わせておけば」
「私が嫌!ばんばんを貶めるようなこと、絶対にしたくない!私の矜持が許さない!」
ここまでプロ彼女としてやって来たのに、最後の最後で彼の汚点になるなんて、絶対に嫌だ。
「彼女と結婚する為に、アイドルと事務所を辞めたなんて言われた日には自決する」
「そんなにぃ?!」
「そんなに!」
そんなことになったら一生自分を許せない。
「俺、早くなかちゃんと家族になりたい。なかちゃんとの子ども欲しい」
ブーブーと唇を尖らせているのも、その気持ちも可愛すぎだし、きいくんの子どもとか天使だと思うし遺伝子残したいから、うっかり承諾してしまいそうだけど、無理です。
「きいくんのこと大好きだけど、まだサンキュウ!が解散するの受け入れられてないから、結婚とか無理」
つい本音も出てしまった。
「……ごめんなさい」
申し訳なさそうにするきいくんに、私は強く首を振る。
「それは違う。私が勝手にそう思ってるだけ。きいくんの人生なんだから、やりたい事をするべき。謝るのはおかしい」
それぞれの感情を操作なんてできない。私の心は私のものだし、彼の志しは彼のものだ。それを周りがどうこう言うのは違う。
きいくんは私を見て、ふっと笑った。
「ありがと……でも、じゃあいつならいいの?いつまで待てばいい?」
うるうるのお目々で見つめられると、罪悪感が半端ない。小動物をいじめているみたいな気持ちになる。
「えーっと……解散して一年くらい?」
「分かった、一年ね。絶対だからね」
あ、なんか言質取られた感じする。
きいくんの顔が近づいて、柔らかな唇が呼吸を止めた。何度も角度を変えて重なり、段々と深く甘くなる。
「んん」
髪に指を入れて地肌を撫でられ、びくりと体が反応した。彼の背中に腕をまわし、力一杯抱きしめる。
「なかちゃん、大好きだよ」
私も、という返事は、きいくんの中に飲み込まれた。
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