75 / 154
3章 譲位騒乱
67・いつもそばに
しおりを挟むソーヴィの指が、女神様からもらった石を撫でると、ぽわっと白く光った。
「何したの?」
「魔力量の探知が出来るなら、保有も出来るんじゃないかと思って、ちょっといじってみた。今は、俺の魔力がちょっと入ってる状態。」
「えっ!ソーヴィすごっ!でも、私は魔法使えないよ?」
優しい手が髪を撫でる。
「もし離れ離れになっても、その魔力をたどって、俺は必ずアユリの元へ行ける。」
なにそれ…死んじゃうくらいかっこいい…!
「ソーヴィ好き…」
「俺も。」
触れるような口付けをして、微笑み合った。
「私も、なんかいろいろやってみる!訓練とか!」
「うん、それぞれ、できることをしよう。本当は何も無い方がいいんだけどね。巻き込んで、ごめんね。」
切なそうに顔を歪めるソーヴィを抱きしめて、首を振る。
「大変な時は力になりたいし、楽しいことは増やすの!ソーヴィが、私と楽しいことたくさんしようねって、言ってくれたんだよ。」
「…アユリ、ありがとう。絶対に俺が守るから。」
「私も、絶対にソーヴィのこと守るよ!」
そのために、この力があるんだ。
話し合った結果、私は何かあったらまずは部屋に逃げ込む。それがダメなら能力で相手を倒して、できるだけその場から離れて隠れる。必ずソーヴィが迎えに来てくれるから。
ソーヴィは、とりあえず殺さない程度に相手を倒し次第、私を迎えに来る。で、あっさり決まった。
「じゃあ私、ちょっと部屋まで逃げる練習する!」
玄関の外に出てから、ドアを開けて自室へ駆け込んでみると、廊下に置いてある荷物が邪魔だった。
「荷物どかしておこうか。」
「うん!」
こうやって、準備しておけば、何かあっても狼狽えないで済む。
備えあれば憂いなし!
それから、日々は穏やかに過ぎて行き、何事も無く暮らしていたんだけれど。
災難は突然やってきたんだ。
私がトラックに轢かれてしまった時のように。
普段はめったに注文なんて来ないのに、どうしてもソーヴィが届けないといけない商品の発注が入った。
「断ってもいいんだけど。」
「ダメだよ、欲しがってる人がいるんだから、届けてあげようよ。だってそれ、お薬でしょ。」
「…うん。ごめんね、ありがとう。俺と街に出るより、家にいた方が安心だから、アユリは待ってて。」
「分かった!」
ソーヴィは心配そうに笑って、荷物を持って出発した。
「よーし、じゃあ私は畑仕事でもしようかな!」
そろそろ収穫できるハーブがあったはず。
カゴを持って庭へ出て、プチプチと葉を摘んでいると、なんだか辺りが暗くなってきた。
雨でも降るんだろうかと空を見上げると、雲は一切出ておらず、なんだか様子がおかしかった。
そのままじっと見ていると、空の天井にヒビが入り、バキバキと音を立てて崩れていく。
「えっ…これって…」
一度、見たことがある。
あの時も、これと全く同じ…ガラスみたいに、ソーヴィの結界が割れたんだ。
「やばい。」
ヒュッと喉が苦しくなって、カゴはそのままに家へ駆けた。
玄関を閉め、一目散に部屋へと走り、そのドアの鍵も内側からかける。
ソーヴィは、どうしているだろう。
結界が破れたこと、分かったかな。
ドクドクと心臓が強く脈打ち、変な汗が流れてくる。
チェストの横に掛けてある、避難バッグを持ち、胸に抱きしめた。
家の外で、ドカン、バキバキ、ガシャン、と破壊音がする。
「どうしよう、ソーヴィ。」
早く帰ってきて…
腕にはめたブレスレットの石を、指で撫でた。
3
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。
南田 此仁
恋愛
ブラック企業を飛び出すように退職した日菜(ヒナ)は、家で一人祝杯を上げていた――はずなのに。
不意に落ちたペンダントトップへと手を伸ばし、気がつけばまったく見知らぬ場所にいた。
周囲を取り巻く巨大なぬいぐるみたち。
巨大化したペンダントトップ。
あれ?
もしかして私、ちっちゃくなっちゃった――!?
……なーんてね。夢でしょ、夢!
と思って過ごしていたものの、一向に目が覚める気配はなく。
空腹感も尿意もある異様にリアルな夢のなか、鬼のような形相の家主から隠れてドールハウスで暮らしてみたり、仮眠中の家主にこっそりと触れてみたり。
姿を見られたが最後、可愛いもの好きの家主からの溺愛が止まりません……!?
■一話 800~1000文字ほど
■濡れ場は後半、※マーク付き
■ご感想いただけるととっても嬉しいです( *´艸`)
『完結・R18』公爵様は異世界転移したモブ顔の私を溺愛しているそうですが、私はそれになかなか気付きませんでした。
カヨワイさつき
恋愛
「えっ?ない?!」
なんで?!
家に帰ると出し忘れたゴミのように、ビニール袋がポツンとあるだけだった。
自分の誕生日=中学生卒業後の日、母親に捨てられた私は生活の為、年齢を偽りバイトを掛け持ちしていたが……気づいたら見知らぬ場所に。
黒は尊く神に愛された色、白は"色なし"と呼ばれ忌み嫌われる色。
しかも小柄で黒髪に黒目、さらに女性である私は、皆から狙われる存在。
10人に1人いるかないかの貴重な女性。
小柄で黒い色はこの世界では、凄くモテるそうだ。
それに対して、銀色の髪に水色の目、王子様カラーなのにこの世界では忌み嫌われる色。
独特な美醜。
やたらとモテるモブ顔の私、それに気づかない私とイケメンなのに忌み嫌われている、不器用な公爵様との恋物語。
じれったい恋物語。
登場人物、割と少なめ(作者比)
女公爵になるはずが、なぜこうなった?
薄荷ニキ
恋愛
「ご挨拶申し上げます。わたくしフェルマー公爵の長女、アメリアと申します」
男性優位が常識のラッセル王国で、女でありながら次期当主になる為に日々頑張るアメリア。
最近は可愛い妹カトレアを思い、彼女と王太子の仲を取り持とうと奮闘するが……
あれ? 夢に見た恋愛ゲームと何か違う?
ーーーーーーーーーーーーーー
※主人公は転生者ではありません。
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる