【R18】次に目を開けた時、イケメンのベッドの中に異世界転移してました。

はこスミレ

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3章 譲位騒乱

69・囚われの身

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私達の家から、転送されてたどり着いたのは、豪華絢爛な意匠を凝らした、お姫様のための部屋、みたいな場所だった。
ハニーブロンドに青い瞳が、仰々しく言う。
「今日からここが、君の部屋だよ。あんなに小さくてみすぼらしい場所、君には似合わない。」
パンパンと手を叩くと、どこからともなく侍女達が現れて、私を取り囲む。
「さあ、彼女に相応しい服装にしてくれ。」
彼は部屋を出て行った。
私は、このままでいい。
ソーヴィのくれたランジェリーと、シャーリーの服がいい。
抵抗も虚しく、侍女たちに服を脱がされ、風呂に入れられ、童話の中のお姫様のように磨き上げられた。
もう、髪からも、服からも、ソーヴィと同じ匂いがしない。
ソーヴィ、どうしてるかな。無事に解放されたかな。
きっと、ソーヴィは苦しむんだろうな。
結局、私はソーヴィを傷つけている。幸せにしたかったのに。一緒に幸せになりたかったのに、できなかった。
私は一度死んでるから、もういいけど。
「ソーヴィ…」
名前を呼んだら、耐えられなくなった。
ふかふかの天蓋付きベッドに横たわり、枕に顔を押し付けて、声を殺す。
ソーヴィに会いたい。優しくして、甘やかして、照れながらはにかむ顔が見たい。
思えば思うほど、枕が冷たくなっていった。


朝昼晩、豪華な食事。
色とりどりの野菜、霜降りのお肉、鮮魚や貝類、前の世界でも中々食べられないような、あまりにも豪華な料理たち。
でも、食べても味がしない。食欲もわかない。
ソーヴィの作ってくれた、採りたてのハーブサラダや、オニオンスープ、オシャレなカフェみたいなサンドイッチ、湖で釣った魚の煮込み、そういうのが食べたい。
何をしても、何を見ても、ソーヴィのことしか考えられない。
ここに滞在しているのも、何日目なのかすら、分からない。
お兄さんは仕事を終えて、夜になってから私の元にやってくる。
幸いなことに指一本すら触れられないけれど、毎日華美なドレスに着替えさせられて、お人形のように扱われているのだ。
「私のパフィオペディルム…なんて美しいんだ。」
そう言って、ずっと眺めている。
正直、気色悪い。でも、もうどうでもいい。
気が済むまで鑑賞したら、部屋を出て魔法で鍵をかけていく。
私が逃げ出さないように。

いつものように、ベッドに寝転がり、ぼんやりと天井を眺めていると、どこからか声が聞こえてきた。
「アユリさん、アユリさん!」
「…誰?」
可愛らしい、子どものような声…
「天使ですよ!アユリさん!」
「えっ?!天使!」
ガバッと起き上がって、辺りを見回す。
良かった、侍女も誰も部屋にいない。
「女神様が大変心配されてまして、励ましに行ってきてと頼まれました。」
「…ありがとう。」
今の今まで、忘れてた。
「アユリさん、気をしっかり持ってください。まだ諦めないで、チャンスはあります。」
「…逃げ出すってこと?」
この牢獄の中から、どうやって。
「そうですね…いつでも動けるように、筋トレとか運動とかしておきましょう。」
「えっ、筋トレ?!…いやまあ、このドレスめっちゃ重いから、いい負荷にはなると思うけど。」
「諦めなければ、必ず道は開けます。だから、しっかり気を持ってくださいね!」
天使の声に、ホッとする。
「ありがとう、ちょっと元気出てきた。」
「僕のこと、たまには呼んでくださいね。」
「…うん、もしかしたら頻繁に呼ぶかもしれない。」
一人でいるのが、辛すぎる。
「ありがとう、天使。」
「いいえ、では、また。」
声が消えて、また一人になったけれど、大丈夫。
まだ諦めない。
ベッドから降りて、天使の言う通り、とりあえずスクワットから始めた。

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