111 / 154
番外編2
リリーの恋・3
しおりを挟むある夏の日、彼は奥方3人とメイド数名を引き連れてやってきた。
「久しぶりだな、この感じ…いつも一人で来てたのに。」
「そうね、まあ女の子が増えたことだし。休暇も必要よね。」
少し嫌そうな顔をした父と、意に介すこともなくニコニコ笑って談笑する彼が、畑を前に立っていた。
「国王なんだから、避暑地があるだろ。うちに来なくても…」
「ここだから、来るのよ。」
唇を釣り上げて蠱惑的に笑う彼の横顔を見て、不安になった私は、玄関から飛び出して抱きついた。
「しゃいちゃん!」
「あら、私の可愛いリリー。元気だった?」
大きくてキレイな手が、私の頭を撫でる。
「うん。しゃいちゃんは、今日から何日いるの?」
「んー、そうねえ。3日くらいかなあ。それ以上空けちゃうとね、こわーいオジサン達に怒られちゃうの。」
彼は、まだ私が子どもだと思ってる。そういう風に、扱うのだ。言葉も、態度も、小さな子どもをあやすように。
「そういえば、アンバーは?」
「知らない!」
私の顔を見てから、父の顔を見る。
「最近、しょっちゅうケンカしてるんだよ。前はベッタリだったのに。」
「アンバーが悪いの!」
「あらら。まあ、そういう時もあるわよね?ソーヴィ。」
「うるさい。」
「お父さんも、しゃいちゃんと仲悪かったの?」
「そもそも、リリーやアンバー程、仲が良いわけじゃないから。」
プイッと横を向く父は、私の父親というより、彼の弟の顔をしていた。
「やだあ、お姉ちゃん悲しいわあ。」
「兄だろうが!」
「いいじゃない、どっちでも。ねえ、リリー?」
切れ長の目を柔和に細めて微笑む彼は、さっき見た顔とは真逆だった。
「うん…私はしゃいちゃんが好きだから、何でもいいよ。」
「嬉しい、私の可愛いリリー!私もあなたが大好きよ。」
ギュッと強く抱きしめられると、嬉しいはずなのに胸がチクチクした。
ふと彼の後ろを見ると、こちらをチラチラと伺っている女性たちがいた。
きっと、彼の奥さん達だ。
そう思ったら、急にこの場から消えてしまいたくなった。
「しゃいちゃん、私、学校の子達と遊びに行く約束があるから、もう行くね。」
「そうなの?夜は帰ってくるんでしょう?」
「うん、じゃあね!」
「気をつけて!」
背後で手を振っているであろう彼に答えず、走って森へと向かった。
どうしても涙が堪え切れずゴシゴシと手で拭い、結界を抜けて転移魔法を使う。
たどり着いたのは、近くの町。ここには、学校があり友達もいる。
門を抜け、商店街を通って端の小さな店に入れば、店番をしている友人がいた。
「リリーじゃん。今日って、愛しの君が来る日じゃないっけ?」
くるくるの巻き毛を伸ばし一つに束ね、丸い瞳をキラキラさせた、ゴシップ好きの親友。
「女連れで来た…無理。」
「あちゃー…側室3人だよね。1人じゃなかったんだ。」
上がれば?と指で奥を指し、冷蔵庫からお茶を注いだ。
ありがたくいただく。全力で移動してきたから、喉がカラカラだった。
「おいしい…」
「まあね、リリー父作のハーブだから、美味しいでしょ。」
そういえば、父は薬草を卸しているのだった。
「で、聞きましょうかね?不平不満を。」
「うえーん!ジョーゼット!!」
せっかく止めてきた涙が、また流れ始めた。
2
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。
南田 此仁
恋愛
ブラック企業を飛び出すように退職した日菜(ヒナ)は、家で一人祝杯を上げていた――はずなのに。
不意に落ちたペンダントトップへと手を伸ばし、気がつけばまったく見知らぬ場所にいた。
周囲を取り巻く巨大なぬいぐるみたち。
巨大化したペンダントトップ。
あれ?
もしかして私、ちっちゃくなっちゃった――!?
……なーんてね。夢でしょ、夢!
と思って過ごしていたものの、一向に目が覚める気配はなく。
空腹感も尿意もある異様にリアルな夢のなか、鬼のような形相の家主から隠れてドールハウスで暮らしてみたり、仮眠中の家主にこっそりと触れてみたり。
姿を見られたが最後、可愛いもの好きの家主からの溺愛が止まりません……!?
■一話 800~1000文字ほど
■濡れ場は後半、※マーク付き
■ご感想いただけるととっても嬉しいです( *´艸`)
『完結・R18』公爵様は異世界転移したモブ顔の私を溺愛しているそうですが、私はそれになかなか気付きませんでした。
カヨワイさつき
恋愛
「えっ?ない?!」
なんで?!
家に帰ると出し忘れたゴミのように、ビニール袋がポツンとあるだけだった。
自分の誕生日=中学生卒業後の日、母親に捨てられた私は生活の為、年齢を偽りバイトを掛け持ちしていたが……気づいたら見知らぬ場所に。
黒は尊く神に愛された色、白は"色なし"と呼ばれ忌み嫌われる色。
しかも小柄で黒髪に黒目、さらに女性である私は、皆から狙われる存在。
10人に1人いるかないかの貴重な女性。
小柄で黒い色はこの世界では、凄くモテるそうだ。
それに対して、銀色の髪に水色の目、王子様カラーなのにこの世界では忌み嫌われる色。
独特な美醜。
やたらとモテるモブ顔の私、それに気づかない私とイケメンなのに忌み嫌われている、不器用な公爵様との恋物語。
じれったい恋物語。
登場人物、割と少なめ(作者比)
女公爵になるはずが、なぜこうなった?
薄荷ニキ
恋愛
「ご挨拶申し上げます。わたくしフェルマー公爵の長女、アメリアと申します」
男性優位が常識のラッセル王国で、女でありながら次期当主になる為に日々頑張るアメリア。
最近は可愛い妹カトレアを思い、彼女と王太子の仲を取り持とうと奮闘するが……
あれ? 夢に見た恋愛ゲームと何か違う?
ーーーーーーーーーーーーーー
※主人公は転生者ではありません。
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる