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番外編2
リリーの恋・5
しおりを挟むジョーゼットに話すだけ話してスッキリすると、夕刻になっていた。
「外は明るいけど、夏は大人が開放的だから気をつけてね。」
「うん。ありがとう、じゃあね。」
手を振って別れ、転移をして結界を抜けると、森林の香りがホッとさせた。
街も楽しいけれど、私は森や湖が好きだ。
少し散歩をしてから帰ろうと、サクサクと落ち葉を踏んで家とは逆向きに歩く。
結局、私は彼が好きで離れられなくて、家族としてしか愛されていないことが悔しいし辛いってこと。それが明確になった。
どうしたら、女の子として見てもらえるのか。やっぱりそれは、ちゃんと気持ちを伝えないと無理だろう。常日頃、いくら好きと言っても、家族愛としか思われていない。今日だってそうだった。
私の可愛いリリー、そう呼ばれるとくすぐったいほど嬉しかったけれど、今はチクチク胸が痛む。
ふと空を見上げると、鳥の鳴き声がして、やがて日が暮れる。
そろそろ家に戻ろうかと歩みを速めると、近くで誰かの声がした。
もしかして、彼が奥方達と散歩でもしているのだろうか。
妙に好奇心が湧いて、声のする方へ足を向ける。
「…さま…ですわ。」
近づいて来たのか、なんとなく会話になってきた。
「もっと、可愛い顔を見せて。」
彼の声だ。
私が聞いたことのない、低い声。
「あっ…シャーリーさまぁっ…」
甲高い女の人の声が響く。
何故か、そのまま歩み寄ってはいけない気がして、足音を殺して近づいた。茂みに身を隠してこっそりと伺うと、裸になった女の人達の中心に、彼がいた。
「いいわ、いかせてあげる。」
抱き上げた女の人の足が彼の腰に絡まり、ぴったりとくっついている。彼の腰が動く度に強く締まって、甘く獣のような声が上がった。
これは、性行為だ…
彼らは結婚しているのだから、子どもを産まなくてはいけないのだから、当然のことなのだけれど。
息ができない。
見たことのない彼の鋭い瞳が、三日月のように細まった。
「いきなさい、さあ。」
「ああっ…やっ…あああっ!」
ガクガクと震えて揺り落ちそうになる女の人の体を、ガッシリと受け止めた。
ドサッ…
「っ…何かいる?」
彼がこちらを見る。
そこで、初めて自分が尻餅をついてることに気づいた。
手足が震えて、体に力が入らない。
「うさぎかしら?シャーリー様、私が行きますわ。」
奥方かメイドの誰かが、こちらに近づいてきた。
嫌だ、絶対に見つかりたくない。
私は、咄嗟に転移魔法を使った。
目を開けば、驚いた顔のジョーゼットがいる。
「どしたの?忘れ物?」
「…ジョーゼット。」
今日で何回目かも分からない涙が溢れた。
「やっぱり、今日泊めて…」
眉を下げて笑ったジョーゼットは言った。
「今夜の夕食はね、私の当番なんだ。好きなもの作ってあげるよ。」
「…ハンバーグ食べたい。」
ジョーゼットに手を引かれて家の中に入ると、帰宅していたジョーゼット母に歓迎され抱きしめられた。
結界の中から転移魔法を使ったのは、生まれて初めてだった。
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