【R18】次に目を開けた時、イケメンのベッドの中に異世界転移してました。

はこスミレ

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番外編2

リリーの恋・12

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 学生時代に嫌という程経験していたから分かってはいたけれど、私は国民性に反してあまりにも貞操観念が硬いらしい。母が異世界人ということも影響があるのかな、と思ったこともあったが、アンバーがそうでもないから、個人の性格なんだと思う。
 何より、強く想う人がいるのに、他の誰かとなんて有り得ない。
 だから、私は未だに綺麗な体のままである。

「ねえ、リリー!仕事終わったらご飯でもどう?」
 ふわふわの金髪が、私の周りを舞う。
「エルさんは、酔うと周りに迷惑をかけるので、行きたくありません。」
「えー!そんなあ!悲しい事言わないでよ。あっじゃあ、個室に二人なら迷惑かからないよね?」
「私に迷惑がかかるじゃないですか。」
「ううっ、辛辣!リリーとご飯食べたいよおー!」
 室長が言っていた「もう一人の方がモテる」というのは、どの辺を指すのだろう。
 お顔は整っているし可愛いと思うけれど、明け透けで子どもっぽく、スキンシップが多い。酔ったらナンパしまくりだし、女性を持ち帰ることもしばしば。
 持ち帰られる女性の気持ちが分からない。
「アストロン室長、この迷惑な先輩をどうにかしてもらえませんか。」
「リリーさん、ごめんね。コイツ、どんなに注意しても治らないから、災害だと思ってくれると助かる。」
「…部署移動を希望します。」
「そんなあ!仲良くしようよお!」
 二人は大学での先輩後輩の仲で、職場もたまたま一緒になり、室長曰く腐れ縁だと言っていた。
「リリーさん、分析速いし確実だから、移動しないでほしい。エルより戦力だよ。」
「では、エルさんの部署移動を希望します。」
「えっ、二人とも酷くない?!」
 室長が嘆くエルさんの肩を叩いて、デスクへ戻っていった。
「…今日は諦めるけど、次は諦めないからね!」
 捨て台詞を吐いて立ち去る姿に、思わず吹き出してしまった。
 仕事にも環境にもすんなり溶け込めたのは、二人のおかげだと思っている。家名を聞いても特に反応せず、仕事振りを評価してくれるのは、とても嬉しい。
 父の仕事を手伝うのが好きだったのもあり、こういった研究作業は性に合っているし、植物と共にある生活は幸せだ。
「あ、リリーさん。この前話してた新種の花の細胞培養の許可が下りたから、リリーさんにお願いしようと思ってるんだけど、いいかな?」
 資料が積まれたデスクから、首だけを後ろに傾けた室長の顔が見えた。
「いいんですか?!やりたいです!」
「じゃあ、よろしくね。花は中央の温室で育ってるみたいだから、20株ほどもらってきて。」
「了解しました!今から行ってきてもいいですか!」
「うん、いいんだけど俺は今離れられなくて…エルでも良ければ連れて行って。」
 無の顔で言うので、笑ってしまった。
「二人とも俺の扱いが酷い。」
「エルさん、お願いします。」
 連れ立って研究室を出る。
 ポケットから綿の厚い手袋を取り出し、装着した。母はこれをグンテと呼んでいたなあ、と懐かしく思う。
「ねーねー、リリーってさ。好きな人いるでしょ?」
 ニヤニヤ笑って聞いてくるから、はぐらかすのも面倒だった。
「いますよ。」
「おっ、素直。珍しく身持ちが硬い女の子だから、そうなのかなーと思ってたんだよねえ。そして、相手は独身ではない。」
「…そうですね。」
「当たったー!やっぱりね、そうだと思ったんだよね!」
 無邪気に喜ばれている。
「だってさ、もしこんな可愛い子が自分のこと好きだったら、すぐ受け入れちゃうじゃん?そうじゃないってことは、特定の相手がいる訳でしょ。」
 胸の奥がズキズキするのを、気のせいだと思い込む。
「…そういうことでは、ないんですけど…面倒なんでそれでいいです。」
「うえ?違うの?予想が外れたー。」
 相手は選り取り見取りでも、今の私は選んではもらえないのだ。
「そんなことより、仕事しましょう。」
「クールだなあ。そういうところも、可愛いよね。」
 掴み所がなくて不思議な人だ。
 半眼になりながら、温室の中へ入った。

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