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番外編
初めての温泉二人旅行・2
しおりを挟む高速を降りて、下道を行く。
少しずつのどかな風景になり、やがて山道に入った。
「わー、めっちゃ山!」
紅葉はまだ始まっていないけれど、緑は深く、秋の訪れを感じる。
2人で遠出って、楽しい。
急な坂道をくねくね登ると、ポツポツとお店が増えて、拓けた場所に大きなお店が何軒も並んでいる。
その広い駐車場に、またわざわざバックの仕草をしてくれて、灘くんが駐車する。
嬉しいけど、旅行中ずっとするんだろうか。かっこよすぎて身が持たないよ。
「うどん!」
この温泉地で有名なのが、うどん。コシが強いのが特徴らしい。
お座敷に上がり、広間に通された。家族で来ている人、夫婦、親戚の集まりっぽい人達、女性グループ、いろんな人達が楽しそうに食べている。
メニューを見ると、もり、かけ、天ぷら付き、天丼、カツ丼、たくさんあって迷う。
「どうしよう!!迷う!!」
「俺、もり。山菜天ぷらかなぁ。」
「うーん…!じゃあ私はキノコの天ぷらにする!!」
注文をして、出された緑茶を飲む。美味しい。
「灘くん、今日一緒に来られて嬉しい。」
「えっ、今?このタイミング?」
「うん、言いたい時に言う。」
「じゃあ俺も。今日のほとりめちゃくちゃ可愛い。」
「ひー!やめて!!くそっ!灘くんの運転してる姿かっこいい!」
「俺のことはもういいよ!!やめろ!食いしん坊可愛い!」
「ぎゃー!やめて!鳩胸が好き!」
お互いを褒めながら嫌がっていると、うどんが運ばれてきた。
揚げたての天ぷら、ツヤツヤのうどん、濃い出汁のつけ汁。
「いただきまーす!」
「いただきまーす。」
うどんをつるっと啜ると、コシがあって、硬めの茹で加減。
天ぷらはアツアツで、噛んだところから湯気がのぼる。キノコはぷりぷりでジューシー。
「おいしーい!」
「うん、うまい。」
天ぷらを塩で食べたり、つけ汁に浸したり、うどんをつるつるしていたら、あっという間に食べ終わってしまった。
きゅうり食べておいて良かった。
「本当、ほとりって美味しそうに食べるね。」
「どうも、どうも。」
「ここ、温泉まんじゅうの発祥地って言われてるらしいよ。」
「食べる!!!」
「んじゃ時間もちょうどいいし、一回チェックインしに行こうか。」
お会計をして(また灘くんがさりげなく支払ってた!)、お店を出る。
着いたのは、坂道の上の方。
駐車場から宿まで、ケーブルカーで移動するらしい。
「きゃー!テンション上がるー!やっぴー!」
興奮して盛り上がっていると、灘くんが大笑いしている。
「アッハハ!だから、ここにしようと思ったんだ。ほとり、こういうの好きでしょ。」
「好き!ありがとう!」
宿の方に案内されて、ケーブルカーに乗り込む。ガタンガタンと揺れながら、坂の上の建物まで移動する。
「楽しい!!なにこれ!!でももう着く!」
「あはは、短い。」
ケーブルカーのドアを開けてもらい、中に案内される。
レトロな館内は落ち着いていて、ロビーを眺めていると、灘くんがチェックインを終えていた。
「ありがとう、ごめん!」
「いいよ。部屋行くって。」
仲居さんが案内してくれた部屋は、すごかった。
12畳くらいの和室に、もう一部屋あり、引き戸の向こうには絶景の露天風呂が付いていた。
「すっご…」
館内の説明をしながらお茶を入れてくれて、仲居さんは帰って行った。
とりあえずお茶をいただいてから、温泉まんじゅうを食べる。美味しい。
「灘くんなにここー!すごい!」
ワクワクして話しかけると、八の字眉で笑っている。
「喜んでもらえて良かった。洗い場もある露天風呂付きだし、夕飯は部屋食だから、一切部屋から出なくても過ごせるんだ。」
「すごい!上げ膳据え膳、至れり尽くせり!」
るんるん気分で露天風呂を見に行くと、大理石のお風呂に、ジョボジョボと音を立ててお湯が溢れている。
「ひえー!贅沢!しかもシャンプーとかが、ちょっといい値段するブランドのやつ!!」
「盛り上がってるねぇ。」
後ろから灘くんが覗いてくる。
「すごい!嬉しい!楽しい!大好き!」
「歌い出しそうだね。」
「踊り出すよ!さぁ灘くんも一緒に!元ダンス部でしょ!」
「よし、じゃあ俺が歌うから踊って!」
「逆じゃないの?!」
ふざけ倒していると、急に腕を引き寄せられた。
「わっ」
後ろから抱きしめられて、頭の上に灘くんの顎が乗る。
「今から、温泉街歩く?それとも、一切部屋から出ないで楽しむ?」
「え?」
灘くんを見上げようと顔をずらすと、厚くて柔らかい唇が降ってきた。
むちゅりと舌で口をこじ開けられ、上顎を舐められ、舌を吸われる。
気持ちいい。
たっぷりと口内を蹂躙され、解放された時には、足がガクガクしていた。
「…うう、こんなのされちゃったら部屋出られなくなっちゃうよ…」
「決まりだね。」
灘くんが口の周りを舌で舐めて、嬉しそうに笑った。
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