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 天体観測へ向かうには、それぞれの家まで迎えに行くのは効率が悪い為、大学集合解散になっている。車を持っている人はほぼいないから、大型レンタカーを借りて行くらしい。
 みんな行き慣れているらしく、まごつくことなく適当に分かれて車に乗り込んだ。
「伴さんが来るって聞いたから楽しみにしてたんだー!」
「伴さんの参加を聞いて、欠席してたやつが参加になったよ」
 特に交流のない人々から声を掛けられる。仲の良い人たちからは、元要と呼び分けるために名前で呼ばれる為、名字呼びされるのは不思議な感覚だった。
「それは、どうも」
 特段嬉しいことでもないけれど、美し可愛い私はそう答えないと角が立つのだ。うー!面倒くさい!
 隣に座っている私の肩を、灯里がぽんぽんと叩いた。その手を自分の掌で押さえる。
「灯里ちゃん、伴さんと本当仲良いよねー!」
「うん、そう!」
 自信満々に答える灯里を胡乱げに見つめると、さらにドヤッと胸を張った。
「私が倫音を守る!」
「それ灯里ちゃんの役目なの?」
「普通、彼氏の役目では?」
「伴さん、彼氏いないの?」
 矢継ぎ早に女子たちから質問される。この車はほぼ女子が乗車しており、男子は運転手のみだ。
「いるでしょ、こんなに美人なんだから!」
「いないけど」
「いないの?!嘘でしょ?!」
「付き合ってないけど、それっぽい男がいっぱいいるとか?」
 どんな風に思われてるんだ。
「倫音は初恋を拗らせて、理想だけ高くなってるから、恋人はいません!」
「おい、ヤメロ」
 偉そうに言う灯里の腕を引っ張った。
「なにそれ?!どんな初恋なの?!」
「可愛い!」
「物心つく前からずっと好きだった年上のお兄さんが結婚しちゃって、それからずっとそのお兄さんを超える人が出てくるまで恋をしないと…!」
 ロマンチックに語りすぎでしょ!そこまで引きずってない!
 しかし、天体観測に行くくらいのロマンチスト乙女達には響いている。みんな攻撃をくらって身悶えていた。
「なにそれ…可愛い…」
「可愛すぎる…応援したい…」
「今日は伴さんに素敵な恋が訪れるように、星に願お?」
「そうしよ」
 星に願いを…
「倫音はね、顔だけじゃなくて中身も可愛いの。あと、男装すると恐ろしいほどかっこよくて」
「えっ?!男装するの?!コスプレ?!レイヤーさん?」
 うっわ、灯里…到頭言ったな。どれだけ私に男装が好きなのよ。完璧にアイドル全盛期の父親(キラキラ200%増し当社比)だから!
 いや私の方が断然可愛いけど!

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