【R18】みだりに近づかないでください!

はこスミレ

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 は?何この人、出来すぎてない?
 既に人として完成されてませんか?
「支払いは是非私に…!」
「良いお値段しますけど、大丈夫ですか」
 ぶんぶんと頭を振って肯定する。
「ついでに服の方も…」
「もっと濡れても良いくらいなんですけど、もう乾き始めちゃってるんですよね」
 ほら、と言ってシャツの襟を見せる。
「申し訳ない…!」
「面白かったから良いですよ!じゃ、お店に行きましょうか。駅の反対側なんですけど」
「いくらでも歩きます」
 かんかん照りの下、申し訳なさと感謝でいっぱいになりながら歩いた。


「改めまして、先程は本当にありがとうございました。二度も危ないところを助けていただきまして」
 深々と頭を下げて謝罪をする。
「とんでもない、ご無事で何よりです。立ち入ったことをお聞きしますが、あの方は…」
「あー…弟の知り合いで」
 私の気まずそうな顔を見て悟ったのか、労うように頷かれた。
「大変ですね、それだけ美人だと」
「自分でもそう思います」
 大きくため息を吐くと、彼が笑った。周りの空気が明るくなるような笑顔だった。
 こういう普通っぽい人、私の周りにはいないなあ。
「えっと、倫音さん?」
 名前を呼ばれて、まだ自己紹介もしていないことに気づいた。
「あっ、はい!名乗らずに申し訳ない。伴倫音と申します」
「朝丘日晴(ひばり)です」
 お互いにぺこりと頭を下げる。
「素敵な名前ですね」
「あはは!よく言われます」
 ちょうど良く運ばれて来たかき氷を目にして、頬が緩む。
「甘いもの、好きですか?」
「物によりますけど、このかき氷はめっちゃ好みです!美味しそうー!」
 かき氷の上に、スライスされた桃がこれでもかとのっかり、その上に大量の練乳がかかっていて、中にはラズベリーのシャーベットが入っているらしい。
「美味しそうですよねえ」
 朝丘さんのかき氷は、煮詰めたイチゴとシロップがだくだくにかかっていて、真っ赤に染まっていた。ニコニコしながら、ゴロゴロの苺と真っ赤な氷を口に運んだ。
 私も、桃をフォークで突き刺してバクっと噛み締めると、柔らかくてジューシーですごく桃ー!って感じがする。
「朝丘さんも、甘いものお好きなんですか?」
「この時期はかき氷が一番好きですね。冬はチョコレートとか、お汁粉とか」
「良いご趣味ですね」
「はい、よく言われます」
 目を合わせて、ふふっと笑う。
 なんだこれ。さっきまで修羅場だったとは思えない穏やかさ。
「そういえば、さっきはどうして結婚前提なんて言ったんですか」
 桃とラズベリーシャーベットのマリアージュを楽しみつつ、あの驚きの理由が知りたくなった。

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