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しおりを挟む「えっ、倫音…何でそれ」
「お腹空いたから」
席に着いた途端、灯里からダメ出しが入る。
「もっとあったじゃん!学祭限定のメニュー!」
「美味しそうだったけど、量が足りない」
「屋台でクレープとか食べるでしょ?!」
「それはそれ、これはこれ」
私達のやり取りで、日晴くんが笑う。
「すごい、話で聞いてた通りのやり取りですね」
「倫音、どんなこと話してんの?!」
「普通だよ、普通」
「あ!見つけた!」
うわ…見つかった。
星野がズンズンとこちらにやってくるのが見えた。
「灯里、教えたの?」
「ううん、光流くんの根性じゃない?」
やってきた星野がテーブルの横に立ち、じっと日晴くんを見つめる。
「こんにちは。倫音さんのご友人ですか?」
キラキラと音がしそうな笑顔で日晴くんが問いかけると、星野がウッと動揺した。
なにそれ、日晴くんのそんな攻撃力の高い笑顔、初めて見た。
「そ、そうだけど。いや、友達以上恋人未満っていうか」
「は?」
友達だった覚えもないが?
狼狽た星野が頬をかく。
「に、なりたいなーみたいな」
「そうですか。俺は倫音さんのカフェ友で、朝丘日晴といいます」
キラキラしたままの日晴くんが、私を見て同意を求めてくる。仕事中の元要みたいな顔だ。
「あ、はい。カフェ友です」
「そして、結婚前提のお付き合い宣言をした元彼」
「は?!何それ?!どういうこと?!いつの間に付き合って別れたの?!」
うっわ、灯里…余計なことを。絶対に面白がってやってる。
わざわざ説明も面倒だからそのままでいいわ…星野に何と思われようとどうでもいい。
諦めて牛丼を食べ出す隣で、日晴くんが簡単に訳を話す。
「そんな……倫音ちゃん、俺のこと呼んでくれたら良かったのに」
連絡先知らんし、知ってても呼ばん。
「光流くんには、荷が重いと思う!」
「うっ…灯里ちゃん辛辣だよ?」
場を引っ掻き回して楽しんでいる灯里に任せておき、あったかいお茶をズズっと飲む。
「倫音さんは、俺のこと呼んでくれますよね?」
急にそんなことを言い出すから、危うくお茶を鼻から吹き出すところだった。
「あっ…はい…そうですね」
「そんなあ、倫音ちゃん!」
「光流くん、サークルの女の子達と学祭回るんじゃなかったの?」
「ぐぅ…でも俺、まだ諦めてないからね!倫音ちゃん!」
対応が面倒だから、そのまま牛丼を掻き込むことにした。
「くっ、冷たい!でもそんなところもいい!」
星野は悔しそうにしながらも、女子達のもとへ旅立って行った(完)
「倫音さん、すっごい塩対応ですね。むしろ氷点下?」
「倫音は、気を許した人以外には、大体こんな感じですよ?」
灯里が面白がって笑う。
「そっか、じゃあ俺は倫音さんの心の中に入れたんですかね」
柔らかく笑って言うから、急に心拍数が上がった。
「そ、そうですか…ね」
「倫音めっちゃ照れてるー!珍しい!」
「灯里うるさい」
「おっと、灯里ちゃんにそんなこと言っていいとかなー?」
ニヤニヤする灯里を無視して牛丼を食べ終えた。
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