【R18】みだりに近づかないでください!

はこスミレ

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「日晴くん、ずっと前から好きでした。付き合ってください」
 放課後の誰もいない教室、傾く太陽、赤く染まる頬、セーラー服を着た同級生、勇気を出した告白。
「ごめんね。俺、好きな人がいるんだ」
 申し訳なさそうに微笑むと、彼女は見る見るうちに瞳を潤ませていく。
 あなたも、こんな気持ちだったのだろうか。それとも、もっと猥雑な感情に晒されて不快だったのだろうか。
「それじゃあ」
 泣き出した彼女を慰める訳にもいかず、その場を後にする。だって、同情なんかしてしまったら勘違いされてしまうから。
 学び舎を後にし、迎えに来ていた車に乗り込む。
「日晴様、お帰りなさいませ」
「ただいま」
 グレーの学ランのホックを外し、ため息を吐く。
「今夜のご予定ですが」
「分かってる、もちろん行くよ」
 まだ彼女には会えない。会いたい。
 だけど、今耐えなければ、ずっとそばに居続けることはできないから。
 ゆっくりと深呼吸をし、窓の外を睨みつけた。

 まだ小学生だった頃、父親の仕事関係でパーティーに連れて行かれることがしばしばあった。人脈づくりとして様々な業界に顔出し、仕事を広げて行く。今思うとあのパーティーは、現在の朝丘商事にする為に必要不可欠なことだったんだと分かる。
 でも俺はまだ小さく、その場が退屈で仕方なかったし、他の参加者が連れてきていた子ども達とも、うまく馴染むことが出来なかった。
 ある時、たまたま連れて行かれたパーティー会場には、大きな庭があった。連れてこられていた子ども達は、みんな庭に出て鬼ごっこをして遊んでいた。
 やっぱり上手く馴染めなかった俺は、パーティー会場にいるよりはましと、遊んでいるみんなをベンチに座って眺めていた。
「なあ、りん!こっち来いよ!俺が守ってやるからさ!」
「イヤだって言ってるでしょ!引っ張んないで!」
 鬼ごっこの最中、大柄な男子が、一人の女子を無理やり連れて行こうとしていた。
「なんでだよ!俺、強いのに」
「力が強いからいばってるなんて、すっごいダサいからやめた方がいいわよ」
 そう言うと、女子は思いっきり体を回転させて体当たりをし、よろけた男子から一気に離れた。
「私、ガキに興味ないの」
 じゃ、と言って立ち去ると、男子は顔をぐしゃぐしゃにして反対方向へ走って行ってしまった。
 すごいシーンに立ち会ってしまった…と思っていると、件の女子がこちらに近づいて来る。
 その女子は、とてつもない美少女だった。
「隣、空いてる?」
「どうぞ」
 はーあ、と大きくため息を吐いてベンチにもたれた。

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