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しおりを挟む「目の前でイチャイチャしないでもらえますー?!」
灯里がニヤニヤしている。絶対に言いたいだけだ。ブロッコリーを咀嚼して何か言い返そうと考えるけれど、うまい言葉が出てこない。
「灯里ちゃん、それ目の錯覚だから!俺の倫音ちゃんが、こいつとイチャイチャする訳ないでしょ」
さも当然のように星野がやってきて、空いていた灯里の隣に座った。
「あ、光流くんだ!」
「こんにちは、星野さん」
私はいつも通り無視するけど、二人はちゃんと挨拶をしている。えらいな二人とも……私の場合は調子に乗ってくるから絶対にしない。
そんな星野は日晴くんにガンを飛ばしている。
「光流くん、いくら日晴くんがモテるからって、敵視するの大人気ないよ?」
ニコニコ笑って人の痛いところを突いてくるこの灯里の特技は、いつか刺されるんじゃないかと心配になる。
「そっ、そんなことないから!」
「そうですよ、星野さんはそんなダサいことしませんよ。それに、俺より星野さんの方がモテますし。いつも女の子に囲まれてるじゃないですか」
穏やかそうに微笑んだ日晴くんは、食後のお茶を飲んでいる。
「そ、そうだな…」
いや、絶対に日晴くんの方が囲まれてる人数多いでしょ。でも、星野のプライド的に言い返せないよな。というか、なんだそのプライド。
本当に私のこと好きなら、もっとちゃんとした態度を取っていれば、こっちもそれ相応で対応するのに。そういうところだよ。
「俺の方は多少声を掛けられてるだけで、本命って方もいないですしね。そういう方には誠実に対応させていただきますけど」
「それー!!」
思わず日晴くんの二の腕を掴んで揺さぶった。
「それだよ、日晴くん!そうなの!だってさ、いっつも下心しかないんだよ?!それで対応しろって何様だって感じじゃん!やっぱり日晴くんもそう思う?!」
同じように考えている人が好きな人だなんて、私はすごく嬉しくてうっかり本心を吐露してしまった。
日晴くんは、一瞬驚いてから優しく頷く。
「気持ちには気持ちを返したいよね」
「そうなの!ほんと、あわよくばとか、ヤリモクで声かけてくるやつ死ねって感じ」
「倫音、本心ダダ漏れ!めっちゃウケる」
大笑いしている灯里の横で、星野が私をじっと見ていた。
「じゃあ倫音ちゃんは、俺の気持ちには答えてくれるってことだよね」
は?何を根拠に?
私の表情を読み取ったのか、星野が微笑んだ。
「俺、真剣に倫音ちゃんのこと好きだよ」
伝わったことないけど。
「星野、私以外にもいっぱい女の子いるじゃん。そんな人に応える義務ない。モテる男が好きっていう性癖ないし」
こいつが、私の中身を見ていたことなんて、ないだろう。どうせ、理想を押し付けているんだし。
「分かった」
何が分かったのか知らないが、星野はそのまま退席して行った。
「ありゃー…倫音、やっちゃったな」
「え、何が?」
「倫音さん、何かあったらすぐ呼んでくださいね。例え、俺が講義中だとしても」
二人からの反応が思っていたのと違って、私はちょっと不安になった。
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