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しおりを挟むこの前の修羅場で分かったことがある。
日晴くんは、まじで私のことを女として見ていない。
「はじー!!!」
ノックもせずに元要の部屋のドアを開けると、パンイチで筋トレをしていた。
「えらいな、仕事熱心!よいよい!」
「なに、りん…」
ポタポタと落ちる汗をタオルで拭い、仁王立ちの私を見上げる姿は、ファンが見たら絶叫ものだろう。
「日晴くんが、私のこと友達だと思ってる!全然相手にされてなかった!」
ちょっと手を繋いだり、二回抱きしめられたくらいじゃ、中学生カップルにも及ばない。そう、日晴くんには大したことではないのだ。
「えー…何でそうだと思ったの?」
「本人から聞いた」
ハッキリと、大切な友達だからそういう目で見ていないと言われた。思い出すだけで涙が出そうで、心臓がドクドク言い出す。
元要が首を傾げつつ、腹筋を開始した。
「俺にはどう見ても、りんのことを好きだと思ったけどな…」
「いいよお…そういうフォローは」
余計に悲しさが増す。
「んー…りんは、どうなりたいの?日晴くんと付き合いたいの?」
ふっふっと息を吐きながら、体を捻らせて辛そうな動きの腹筋が続く。
私は元要のベッドに座り足を投げ出した。
「他の女の子と仲良く話してるの、見てるのが嫌。優しくしてるのも嫌。私とだけ仲良かったはずなのに」
すごく身勝手な言い分だと分かっているけれど、嫌なものは嫌なのだ。私だけであって欲しい。
「…いつも一緒にいるんじゃないの?バイト先も来るんでしょ?」
「一緒にいても、友達じゃ意味ないの!こんなに美し可愛く生まれても、全然活かせてない!!中身が伴わないから!」
だから、友達以上に思われないのだ。
「良かったじゃん、ずっとりんが求めてた人に出会えて」
今度はゴムチューブを出して足で踏み、腕の力で引っ張りだした。負荷がすごそうだ。
「そうだけど…こんなに無力感に苛まれると思わなかった」
「でも、勉強頑張るくらい好きなんでしょ。真面目だよねえ、りんは」
そんなこと言って、元要だって毎日努力してるじゃないか。
「お互い様」
「そんなりんに、年頃の男子として助言してあげる」
年頃の男子…確かに、世間的にはそうかもしれないが、元要がそこに位置するだろうか。幼い頃から特殊な環境におり、独特の性癖を持っているから、参考になるかは分からないが一応聞いておく。
「どんな?」
「好きな子に迫られたら普通に落ちる」
「いやだから、日晴くん私のこと女として見てないんだって」
なんだその無理難題!
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