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しおりを挟む「もう、19歳になってます」
「何で言わないの?何なの?友達なのに?私に祝われたくないの?喧嘩売ってる?私が早く聞けば良かったかもしれないけどさ!」
めちゃくちゃ怒ってる!
サァーっと血の気が引いた。
「す、すみませんごめんなさい。そんなつもりはなくて」
「許さない」
「じゃ、じゃあ来年」
「ダメ!どれくらい過ぎてるの?」
「一ヶ月くらい…」
「チッ」
まさかの倫音さん舌打ち。めちゃくちゃ怒っていらっしゃる。でも、舌打ちの音も可愛いですね。
「ほんと、なんなの。日晴くん何考えてるか分かんない!」
「俺は、倫音さんがいつも楽しそうにしてたらいいなってことしか考えてないよ」
「ムカつく!」
「えー?なんでー?」
でもムカついてる倫音さん、可愛い。
「ムカつくったらムカつくの!」
上手く言えなくて癇癪を起こしている小さな子どもみたいだ。うっかり笑ってしまいそうになるのを堪える。
「言ってよ。俺、倫音さんが何に怒ってて、何が楽しくて、何が嬉しいのか知りたいな」
「ほんと、そういうとこズルい」
「教えて」
ムカつくとブツブツ言いながらも、彼女が話してくれようとするのが、嬉しい。
「日晴くん、全然自分のこと話さないし、歳だってずっと知らなかったし、今だって誕生日分かんないし、どこに住んでるのかも知らないし、私以外の友達いないのかなとか、いつもカフェに来てるけど勉強とか大丈夫なのかなとか、家族構成も知らないし、普段どんなことしてるのかも謎だし、もう全然知らない!日晴くんなんて知らない人じゃん!!」
倫音さんは一息で言い切ったからか、ゼーゼーと息が荒くなっていた。
「えっと…ありがとう」
自分の体がぽかぽかと熱くなってきているのが分かる。彼女が俺のことをそんな風に考えているなんて、思ってもみなかった。
「は?私、怒ってるんだけど?」
「うん、分かってる。でも、嬉しいなって思って」
知りたいと思われていたことが、嬉しい。俺に興味があったんだなってこととか、ちゃんと友達として認識してもらえてるところとか、嬉しくて顔がにやけそうだ。
「倫音さん、俺のこと知りたかったんだ」
「友達なんでしょ?!」
「うん、そう。ふふふ、ちょっと飛ばしちゃおうかな」
「えっ?!」
予定はなかったけど、高速に乗ってみた。
「どこ行くの?!」
「どこでもいいよ!でもここからだと、海とか?」
「海?!」
夜の海なんて行ったことがないから、倫音さんと行ったら楽しそうだ。
「大丈夫なの?海って夜に行ってもいいの?」
「ダメなの?」
「知らないよー!行かないもん!」
「じゃ、行ってみようか」
アクセルを踏んでどんどん加速すると、街の明かりが線のように流れていった。
「日晴くん、走り屋じゃん…」
ボソッと呟いた倫音さんの言葉に声を出して笑った。
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