【R18】みだりに近づかないでください!

はこスミレ

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「倫音さん、大丈夫だから落ち着いて」
 無理無理今すぐ死にたい。還らせて。
 包まれた腕から離れようともがくけれど、全然太刀打ちできない。
「俺が悪かったから、お願いだから一人で帰らないで」
 嫌だ、無理。本当このままとか無理だし、恥ずかしくて死ぬ。一人にしてほしい!
「あなたを守れないなら、俺はいる意味がないんだ」
 骨が軋みそうになるほど、強く強く抱きしめられた。
「ぐるじい」
「ごめん!」
 力が緩んだ隙に逃げようとしたけれど、一瞬で腕を掴まれて無理だった。
「一人にするのだけは出来ないから、ごめん」
「なんで…」
 涙声になってしまって、辛い。
「だって、絶対に変な男から声を掛けられるでしょ」
「いつもあしらってるし」
「ダメ、こんなに可愛い状態の倫音さんなんて、一気に食べられるよ。男は下半身でしか物を考えられないんだから、こんな夜に一人でいるなんて絶対にダメ。それに、どうやって帰るつもりだったの?」
 顔を見られないから、俯いたままの状態でコンコンとお説教される。
「…はじに迎えに来てもらう」
「来てもらえたとして、どこで待ってるつもりだったの?何時間かかると思ってるの?」
 日晴くんの声がどんどん低くなっていって、若干怖い。
「駅とか…ファミレスとか…一人でいるの得意だし」
「駅なんて絶対にダメ、終電間際の酔っ払いに無理やり連れて行かれる。ファミレスもダメ、男の集団客に囲まれるよ!」
 それは無いと思うけど…
「全部ダメじゃん」
「そうだよ、だから倫音さんは一人になっちゃダメ!」
「なんなのー?!私はどうせ一生一人なんだから、いいんだよー!放っておいて!」
 初めてちゃんと好きになった男の人から、こんな拷問受けるなんて聞いてない!もうやだー!
 グズグズと泣き出すと、日晴くんの大きな両手が私の頬を挟んで持ち上げた。
「放っておけないから、困るんだよ」
 雲が流れて、月明かりに照らされた日晴くんの顔は、いつもよりちょっと子どもっぽいのに、男の人って感じだった。
「なんでよ」
 ボタボタと涙がこぼれ落ちて、視界が歪む。
「倫音さんは俺の女神だから、汚しちゃいけないし、傷つけちゃいけないんだ」
 なにそれ、そんなの知らない。私は顔が世界で一番可愛いだけの、ただの女だよ。
「知らないよ!ばーかばーか!」
「うん、ごめん。俺が悪い」
「そうだよ、ばかあ!」
 既によく見えていない視界が暗くなり、唇に柔らかな感触がして、すぐに離れた。
 優しく指先で涙を拭かれ、そっと腕を引かれた。
「帰ろう」
 私は何も言わずに車に乗り込み、バッテリーが切れて眠ってしまった。


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