【R18】みだりに近づかないでください!

はこスミレ

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 いつものところにいるからって伝えたけれど、ちょっと気合入れ過ぎて早く着いてしまった。だって、二限目なかったんだもん。
 落ち着かなくて、何をするでもなくぼんやりと外を眺めている。
「倫音ちゃん!」
 わお、懲りずにやって来る。求めてるのは君じゃないのに。全然好みじゃないし、どうなりたいとか考えもしないけど、こんな風に求められて好かれる方が、幸せなのかもしれない。
「何でそんな諦めずに来れるの?」
 私が返事をすると思っていなかったのか、星野が嬉しそうに笑った。
「好きなんだ、倫音ちゃんが。もちろん一目惚れみたいなもんだし、相手にされてないって分かってるけどさ。無視されても、俺のことを認識してるから、無視するってことじゃん」
 最早、健気に見えてきた。全然好きじゃないけれど。
「そうなんだ…」
「俺に興味持った?」
 向かいの席に座って、持参していたらしいパンの袋を取り出した。
「特には持ってないけど、前よりはましかな」
「やった、これからじゃん!」
 このポジティブさ、見習いたい。
「女の子達は?どうしたの」
「あー…一応話してはいるけど、平行線」
 気まずそうにしているので、罪悪感はあるのかもしれない。
「あんなに好かれてるのに、何が嫌なの?」
「倫音ちゃんがそれ言う?」
 確かに、それもそうだ。
「最近、アイツと一緒にいないんだね」
「忙しいみたい」
 本当は違うけど。
「寂しい?だから俺と話してくれてる?」
 寂しいのは寂しい。だけど、それより怒りの方が大きいしストレス!
「そんな身代わりみたいなことしない」
「…ちょっとグサっと来ること言うなあ」
 自分で問いかけた癖に身に覚えがあるらしい。というか、その発想が無ければ質問しないだろう。
「倫音さん!」
 大きな声で名前を呼ばれた。
 驚いて二人でそちらを向くと、鬼の形相をした日晴くんがこちらへ慌ててやって来る。
「アイツ、あんなに怖い顔できんだ」
 私も同じこと思ってた。
 日晴くんに、星野と距離を取るように後ろから手を回され、囲い込まれるように椅子ごと引きずられた。
「そんな必死になんなくても、取って食べたりしないっつうの」
「下半身で物を考える男は信用なりません」
「…お前も男だろ」
「そうですよ、だから信用してません」
 星野は呆れたような顔で首を振った。
「くそ面倒なやつだな…倫音ちゃん、そいつが嫌になったら、俺はいつでも待ってるからね」
 食べかけのパンを一気に口に入れると、星野は立ち去っていった。
「日晴くん、離してもらっても?」
 私の言葉にビクッとして、日晴くんが離れた。

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