【R18】新入社員ヤンデレエルフの、教育係になりました!

はこスミレ

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第29話

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 人形のように動かなくなってしまったティリオンを放って、沙彩は家の周りを探検しようと外へ出た。
 家のある大きな木は、社会の教科書で見た杉の木よりも大きいようだ。どれだけ首を上へ向けても天辺が見えない。
「ジャックと豆の木みたい」
 さっきまで悲しくて不安だったけれど、お茶を飲んでお菓子を食べたら元気になってきた。
 お腹が空いているのは良くないのかもしれないと、残っていたお菓子をポケットに入っていたティッシュに包んで持ってきた。
「なんか面白いものあるかな」
 沙彩は元来、好奇心が強かった。
 迷子にならないよう、大きな木を中心にとりあえず一周してみることにした。
 木はこぶがあったり、苔生していたり、たまにキノコが生えていたりする。根っこも太く大きいものからボコボコと小さく枝分かれしていて、気をつけないと足を取られて転んでしまいそうだ。
 上の方で小さめの鳥が囀っている。探したら、ウサギやキツネがいるかもしれない。
 地面にキラッと光るものを見つけ、しゃがんでみると、ほんのり青白く光る透明な石が落ちていた。形は歪で、沙彩の手のひら少し余るくらいの大きさだ。
「きれいー!」
 拾った石をポケットにつめ、しばらく歩くと、今度はピンクの花の群生を見つけた。
 家のそばの公園でもよく見かける種類の花だった。
「ティリオンに似合いそう」
 多分、男の人だろうけれど、顔がきれいだし、着ている服もゆるくて長いワンピースのようなものを着ているから、頭に花を挿しても問題ないだろう。
 沙彩はその場にしゃがみ込み、茎を長めに残して手折っていく。束になるほど集めたら、一本ずつ束ねて交差し、大きな冠を作る。
「ふんふんふふーん」
 沙彩は鼻歌を歌いながら、夢中になって作っていった。
 自分の頭より少し大きめのサイズにしたら、今度は小さい輪っかを作る。最後に見栄えの良い一輪を残したら、花冠セットの完成だ。
 ふと顔を上げると、蝶の羽を持った小さな人がパタパタと飛んでいた。
「わ!ティンカーベルみたい!」
 どこかへ移動している最中なのか、こちらには気づかずに行ってしまった。
「はー、本当にここは妖精のいる国なのかも」
 ティリオンが仲間だと言っていたのも頷ける。
 沙彩は立ち上がり、残りの木の幹をぐるっと一周した。特に目立って面白いものは無かったが、妖精らしき生き物を見られたのは良かった。
 今度は、ティリオンに案内をしてもらおう。
 沙彩が家のドアを開けると、出てきた時と同じ格好でティリオンが固まっていた。
「勝手に飾っちゃお」
 沙彩は作った花冠をティリオンの頭に乗せ、小さな輪っかを手首に通し、残しておいた一輪を、ティリオンの指に結んだ。
「花嫁さんのできあがりー!」
 沙彩は満足そうに頷き、部屋の奥にあるベッドへ勝手に横になった。
「疲れた」
 少し目を閉じると、緩やかに眠りについた。

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